SLで水上駅に到着して、ホテルの送迎バスの時刻まで余裕があったので、駅周辺を軽装で散策するためにコインロッカーにバッグを押し込み、そのまま存在を忘れてしまったのです。
乗り合いのライトバンなので、さすがに途中で運転手さんに告白することができず、目にも眩しい新緑を、彼と感動しながら観ていたのに、片道40分の道程の中腹あたりで自分の失敗に気づいてからは、単なる流れる緑でした。笑
交通機関も乏しいので、タクシーの痛い出費は必至。。。
あうあうあー、です。
ホテルについてチェックインして、女将さんに部屋へ案内され、施設説明を受けている間も気はそぞろ。遠退いた言葉が右から左に流れていきました。
一通りの説明を受けた後、私は満を持して女将さんに事情を説明して、駅までの戻り方を尋ねました。
すると、女将さんはニッコリと笑って、
「なんだ、早く言ってくれればいいのに。随分と軽装だと思いましたよ。」と言って、先ほどの運転手さんに車を出すように頼んでくれました。
とは言っても、片道40分ですよ?
運転手さんとは言っても、宿のスタッフさんですから、運転だけが仕事ではないはず、、、
「そんな迷惑はかけられないです。」
と、恐縮していると、
今度は運転手さんもニッコリ笑って、
「気になさらないでください。あと、もしも私を信頼してくれるなら、鍵をお預かりして、私だけで取りに行ってきますよ。」
貴重品はコンパクトな手荷物に全て入れていたので、全く問題はなかったけれど、私は自分の良心と激しく闘っていました。
すると、運転手さんはさらにこう続けました。
「むしろせっかく来ていただいたので、その間に温泉を少しでも楽しんで欲しいです。」
泣きそうでした。
正直、一泊旅行だし、時間も貴重だったし、渡りに舟の提案であったことは言うまでもなく。。。
私は言葉に甘えることにして、コインロッカーの鍵を預けました。
もちろん、その間ちゃっかり温泉も楽しませていただきました。
翌日のチェックアウト後も、同じ運転手さんが担当してくれ、最寄り駅ではなく、私達の目指す目的地へと直接運んでくれました。
一時間の道中で、乗車したのは運転手さんと私達だけ。
昨日の御礼を改めて伝えて、しばらくの間
プライベートドライブに興じました。
運転手さんは今年の春、晴れてこのホテルに就職したフレッシュマンでした。
本当は声を大にしてバイネームで叫びたいけど、何かと不便な世の中を考慮してYさんと呼びます。
私達はYさんと話し続けました。
なぜ、ホテルに就職したのか。
今までどんな学部で学んで来たのか。
なぜ地元での就職を選択したのか。
Yさんは饒舌に答えてくれました。
都内の大学で美術史を専攻していて、染色に興味があること。
地元の伝統工芸を継承していくことが目標で、そのための一つ目のステップとして、接客業を選んだこと。
私より10歳も年下なのに、こんなにも志の高い好青年が日本にはまだいたのだ、という驚きに、溜息しきりの二人でした。
(しかも、小栗旬似。)
温泉もお料理も最高だった上に、こんなに気持ちよく過ごさせていただいて、このホテルは間違いなく「付加価値」を、「サービス」を、生業としているなぁと、終始感心させられっぱなしでした。
なんということでしょう。
別れ際に、Yさんに御礼を言われました。
「僕にとって水上駅のロッカーにいい思い出ができました。」と。
つい先日まで学生さんで、つい先日まで都内に住んでいて、ひょっとしたら、どこかで私達とすれ違っていてもおかしくない場所でアルバイトをしていたYさん。
ああ、素敵な出会いでした。
必ずまた行きます。
どうもありがとうございました。
どうもお世話になりました。
m(__)m
