観れたら観たいなぁと思っていたのでラッキーでした。
たまたまチャンネルを回したおかげで、市川海老蔵さんの5年間に密着したドキュメンタリーを途中から観ることができました。
昔々お付き合いしていた方のお姉様が夫婦揃って歌舞伎狂だそうでして、まだ彼が海老蔵襲名の前から、歌舞伎界において彼が別格なのだということは伺っていましたが。
如何せん、善し悪しなどはおろか、歌舞伎も学生時代に一度観たきりの私です。
昨今のメディアに取り沙汰される姿だけでは、なかなか判断の難しい面があります。
しかし、やはり然るべき場所に立つと、纏う空気が変わるといいますか。
演者としての魂というものを感じさせられます。
興味深かったのは彼が何百年分の市川家を背負っていることを、楽しんで模索している姿でした。
市川家には代々が十八番とする御家芸があるそうなのですが、(代々大事に箱にしまうように守ってきたということからおはこの語源になったそうです)、その中の何作かは現在では歴史の中にしまいこまれ、演じられてない作品もあるそうで、市川海老蔵さんはそれらにもう一度命を吹き込むという試みに奔走していました。
リメイクとは言っても資料のほぼない状態から紡がれた新作に等しいのですが、市川さんは歴史に敬意を払いつつ、この作品が後世に渡って繋がってくれたらよいと仰いました。
若いからこそ、できることがある。
勢いに救われることもあるかもしれない。
もう少し歳を重ねれば、もう少し慎重にことを運ばなければならなくなるかもしれない。
思いつきで出る言葉ではないと思いました。
また、もう一つ興味深かったのは、團十郎さんを振り返るコメントで、
父は白血病になってから生きたと思うのです。
それまでは背負っているものに苦しんでいたけれど、病と対峙して、初めて生きたと。
お師匠さんとして、父親として、ちゃんと背中を見てきたのだなぁ。
そんなことを思いました。
私たちは生まれる場所を選ぶことはできませんが、生まれた場所で地に足をつけて生きていかなければなりません。
彼は生まれつき主人公で、主人公があるべき姿をわかっていて、その上で藝に磨きを、と前に進んでいます。
自分ひとりだけで生きることはできないということを悟り、人形になり切るといいますか。
つくづく洗練され、審美眼があり、不躾な所作に粋をも感じさせるしなりがあり。
そんな流れるような心地よい生き方を感じました。
とても面白いですね。
市川海老蔵という人間は。