オープニング3秒でノックアウト。私はパリに恋してしまいました。
あらすじハリウッドで売れっ子の脚本家ギルは、婚約者イネズと彼女の両親とともにパリに遊びに来ていた。パリの魔力に魅了され、小説を書くためにパリへの引越しを決意するギルだったが、イネズは無関心。2人の心は離ればなれになり……。
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お洒落な夜のパリを舞台に、ウッディ・アレンらしい角度から、御馴染みの皮肉を織り交ぜたロマンティックコメディー。少し違うけど「それでも恋するバルセロナ」のパリ版と解釈すると、なんかストンと落ち着きます。
婚約者との意見の不一致がきっかけで、別行動をすることになった主人公が、パリ市街の夜道を歩いていると、ひょんなことから1920年代に迷い込んでしまいます。事態を飲み込めないまま身を任せた行き先はジャン・コクトー主催のパーティーで、彼はどんどん20年代の世界へのめりこみ、そんな彼を芸術の名だたる巨匠達が取り囲みます。
観客席で私はある不思議な現象を目の当たりにしました。
ヘミングウェイ、フィッツジェラルド夫妻、ガートルード・スタイン、パブロ・ピカソ…20年代を代表とする芸術家が登場するたびに「私はこの人物を知っている」と言わんばかりに高らかに笑っている人がいて、気がつけば暗黙のルールで知っている人が出たら笑うという状況が劇場内に蔓延していたのです。
そこで興味深かったのが、婚約者イネズとパリで偶然の再会を果たすインテリ男です。
博識ぶった彼を鼻持ちならないヤツに描くことで、観ている側を優位に立たせつつ、実は指した指の先には観客席の薀蓄野郎がいたりするのではないかと。
狙っていた?
かどうかは定かではありませんが、いきなりスクリーンを飛び越えて客席に語りかける演出の先駆者で有名なウッディー・アレン監督が、今回は直接語りかけることをせずとも、いつの間にか観ている側が作品の一部として巻き込まれている構成に仕立て上げたのだとしたら、それはもう参りました、と言わざるを得ません。
