森繁久彌さんの銀座の雀を朝から大声で怒鳴りながら、この道を駅に向かう。
新入社員のころ、会社は銀座の端っこだったが20階建てが二つ並び、その自分は超一流の代理店であった。
戦をしに行くような気合を掛けないといけない時代だ。
鬼の十則という厳しい掟がまだ生きていた。
仕事が終わり、夜が来るのが待ち遠しい、
会社が歓楽街である。
私は中学の親友が築地で料亭の息子、
なんでも美味しいものは教えてもらうから、サラリーマンの知らない穴場も知っていた。
銀座の夜は、歌の文句ではないが真夜中だって知っていた。
魚河岸さえ母の手伝いでもう隅から隅まで知り尽くす。
だが本職は市場調査、今でいうスパイのような仕事である。
時には一年も業界を調べなければならない。
ものを売るというのは、たとえデパートでは大変なことなのだ。
私はテレビ放送されたCMの効果を調べるのが多く、
割と楽であった。
だがしばらくして常務が通信衛星の会社を興し社長になることになる。
私は常務派、移らねばならなくなる。
だが銀座の夜が好き、朝も好き。
柳の雀もっと好き。
ボスの娘さんとの婚約を蹴って、妻と結婚。
多国籍企業なんて、変えてしまおうと恐ろしい理想に燃えていた。
人間の欲望を刺激して大きくなった企業は、その当時は許せない。
その為にあらゆる努力をして入った代理店。
これを変えなければ、日本は再生しないと思い込んだ。
すべては茶の湯の精神である。
大きな木材からパルプの無駄を省く仕事をボスから命じられた。
私の思い上がった根性を現実で叩き直す、ボスの命令。
一日30時間は欲しかった。
全国のオンライン化は、この業界がオフコンで魁であった。
富士吉田の赤潮は止まる。
日本の山は坊主にならずに済む。
貨幣も紙、
今日は銀座に行く。
お目当ての映画はもう終わっていた。
家内は紙の月を見ようと、
ダンヒルのお店が好きであった。
パイプもライターもダンヒルが最高であった。
そして車はジャガー。
今日は見つけてしまう。
でも子供のころの最初のジャガーは裕次郎さんが憎いあんきしょうという映画で東京から九州の無医村まで走る。
本当の愛を探す。
子供の私が分かるはずがないが、感銘と感動した初めての映画。
その主題歌も好きで、今でも唄う。