炉の灰は、風炉とは違う。
よく何を燃やして、灰を作るのですかという質問を受ける。
なんでも燃やせば灰である。
灰に変わりはないはず。
だが、利休さんのころから茶人たちは良質な灰を求めて、郊外の農家を回ったという。
昔は、竈を使い煮炊きをしていた。
灰はその四隅に残る、これが時代物の灰で重く舞い上がらない灰という事で少しずつもらって集めたという。
ものを燃やした新しい灰は、茶人たちは使わなかったのである。
茶人にとって一番の茶道具は灰。
お家元でも、利休さんの時代の灰は桐の箪笥に仕舞うという。
それほど大事な灰は、次の世代に引き継がれ、また世代を経てさらにさらに良質な灰になっていくのである。
私の灰も祖父の実家の新築で、茶道によいからと頂いた灰。
鎌倉時代からの郷士の家柄。
囲炉裏の灰だが、本当に古い。
形を灰匙で作るのが易しい。
炉の灰型は火箸だけで掻き上げて造る。
一番、炉の灰で苦労するのは、湿し灰であろう。
最近は、お道具屋さんで買う人もいる。
手が荒れるし、この時代、灰を動かすのは苦手という方がおおいい。
正直残念である。
湿し灰が出来ないと、その先の奥秘である真の鱗灰が視野に入らない。
私も随分長く湿し灰を造るのもいつか鱗灰に挑戦したいからである。
今は、炭は奥伝、奥秘の先であるという。
だが、慌ててお稽古しても炭も灰も出来る訳がない。
ビルばかりになったのでやむおえないのだろう。
炭は教える側も今はヘトヘト!
炭や灰を知らない若者に、説明は声がかれるまでする。
今年の灰作りはいつもと違う。
右手を使わない。
左手で番茶の煮汁の湿り具合をみる。
これは灰に色と香りを付け、灰の殺菌作用を高める。
湿し灰を炉に蒔くのは、普通は5回。
昔はたくさんまんべんなく撒いた。
右で見るより、左では感じが違う。
篩いに入れて、左手で落としていく。
なかなか、はかどらない。
左だと力が入り過ぎて、湿し灰のサラッとした感じが出ないのには参った。
途中から、痛いのを我慢して、右手でする。
これで暮れの最後の準備も整い、クリスマスケーキの予約に行く。
何軒も歩いたが、やはり幼馴染のいつもの店。
早く予約したお蔭で、初めてペコちゃんのお皿を二枚もサービスしてもらう。
世の中も、どんどんスピードアップ!