ウィーンのホラー・ファンタジー映画フェスティバル「スラッシュ」で日本の映画がたくさん登場 | おかるとぶろぐ

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"Fain would we remain barbarians, if our claim to civilization were to be based on the gruesome glory of war."
Kakuzo Okakura

ウィーンでは、2010年創立でまだ出来たてのホラー映画フェスティバル「Slash(スラッシュ)映画祭 」が、9月19日から29日までの10日間開催される…というわけでもう始まってます。プログラムを見てみると、純粋なホラー映画にとどまらず、スプラッター・ホラー・超常現象・不思議・恐怖系・ファンタジーなどの幅広いテーマにわたって幅広く取り揃えられている。オーストリアは、実はホラーや恐怖映画を撮る監督がかなりいるので、それらの作品の最新のものがこのフェスティバルで公開されるようだ。他はやはり米国の作品が多いが、日本映画界のホラー好きは世界に名高いためか、今回のスラッシュでも日本作品が全部で40作品のうち6作品あるので驚いた。

ウィーンにいると、なかなか日本の映画が見れないのは当然の承知なのだが、ウィーンで年に一度10月に開催される「ヴィエナーレ」という映画祭などでは、割合にたくさん日本作品を紹介してくれる。おかげで、毎年何やらの日本映画を観賞することはできるが、あまりジャンルを選ぶことはできない。また、私個人としては、ホラー映画はそれほど積極的に見に行くほどファンではない。だけど、今回のフェスティバルで公開される映画は日本のメディアでかなり報道されたり、メジャーな監督の作品だったりして、私も今までに聞いたことのあるものがいくつかあるので、どれかは見に行きたいなあと思っている。(後でよくプログラムを見てみたら、見たいと思っていたほとんどの作品の上映が今日までに終了していた・・・。)

スラッシュで公開される日本作品は次の通り
1.クロユリ団地(英語名は「The Complex」)
2.変態仮面(「HK:The Forbidden Super Hero」) 
3.贖罪(「Penance」)
4.完全なる首長竜の日(「Real」)
5.ラビット・ホラー3D(「Tormented」)
6.ヌイグルマーZ(「Gothic Lolita Battle Bear」)

こうやってあげていると、一体このホラー映画祭の映画選考基準とはいったい何なのかと思わずにはいられないのだが・・・。不思議系映画は日本の物が多いのだろうか。「クロユリ団地」は正統派日本風ホラー映画「J-horror」を確立した監督の一人、中田秀夫の作品であるくらいのことは知ってるが、その他の作品に関しては日本でどのくらい話題になったのか、よく分からない。

「変態仮面」に関しては、怪談関係で知り合ったピグ友さんの桜沢ユキさんのブログで知った次第ですが(2013年4月14日付「フォォォォォォォォォォォォ!!!」 )、あれって恐怖映画というよりコミックじゃあ?今日の某ウィーンの日刊新聞を読んでたら、ユキさんのブログで見た「変態仮面」の写真が目に飛び込んできて度肝を抜いたが、これがスラッシュ映画祭についての記事だとは読むまで気付かなかった。「ヌイグルマーZ」に至っては、主演の中川翔子がロリータの衣装を着ているし。中川翔子なんて、私はYoutubeの怪談番組の録画でしか知らないが、一応あの人は日本では、なんというか怪談アイドルみたいなものなんでしょうか?

黒沢清監督の2作品「贖罪」と「完全なる首長竜の日」も、あらすじを読む限りそれほどホラー映画というジャンルには当てはまらない気がしないでもないのだが・・・。とりあえず、「完全なる首長竜の日」のほうは、今年のスラッシュ映画祭の目玉作品とされているようで、オーストリアの新聞スタンダード紙は監督の黒沢氏との短いインタビューも掲載している。黒沢氏は、今回公開される自らの映画に関しての情報の他に、日本で幽霊系恐怖映画がジャンルとして成立した歴史的・社会的背景や、西洋と日本のホラー映画文化の違いなどを説明している。
(ドイツ語が読める方は「2013年9月19日付スタンダード紙掲載の黒沢清氏のインタビュー 」のリンクどうぞー。)

日本作品の他に個人的に注目しているの映画が、いくつかあるが、まず最初に、「My Amityville Horror 」だ。「マイ・アミティビル・ホラー」という名前を見た途端、怪談好きの心はときめき、この映画がニューヨークにある世界的に有名な幽霊屋敷「アミティヴィル」で、1975年に発生したポルターガイスト事件に関係したものだと即座に分かるだろう。これは2012年発表のアメリカ作品で、事件当時アミティヴィルに住んでいたラッツ家の子供達のうちの長男ダニエル・ラッツ氏に、当時の事件の模様を直接語ってもらうという形のドキュメンタリー映画であるようだ。

もう一つ注目なのが、映画祭中日本以外で唯一のアジア作品でフィリピンの「Tiktik:The Aswang Chronicles 」だ。「Aswang(アスワン)」とはフィリピンに古くから伝わる妖怪で、ネット配信のオカルトラジオである「オカルトいどばた議会第9回 」(リンクではアーカイブがダウンロードできます)のゲストであったフィリピン人とのハーフであるというkenshinさんが詳しく語っているが、日本とは全く毛色が変わった妖怪の話や強烈極まりない怪談は、大変エキゾチックで興味深かった。映画では主人公のマコイが、男の度胸を見せるため且つ家族を守るため、この「吸血鬼と狼男のミックス(?。映画祭ウェブサイトの紹介より)」のような妖怪アスワンに戦いを挑むという筋らしい。

他にもたくさん紹介したい作品があるが、最後にもう一つ、今年のスラッシュ映画祭での初公開でオープニング作品となった、オーストリアのホラー作品「Blutgletscher 」を紹介したい。ドイツ語で「Blut(ブルート)」は「血」、「Gletscher(グレッチャー)」は「氷河」を意味するので、タイトルは「血の氷河」とでもいう意味になる。ある時アルプスの氷河が真っ赤な血の色に染まっているのが発見される。氷河の研究施設では、研究者らが驚き戸惑って様々な調査を行っている間に、ある研究者の飼い犬が不気味な生物体に襲われたり、登山者の変死体が発見される。研究者たちの調査の結果、氷河の中に潜むバクテリアがアルプスの生物を変異させていることが明らかになる、そうこうしているうちに、バクテリアが人間への攻撃を始めるのは時間の問題なのであった・・・。

この映画の上映は19日のオープニングでとっくに済んでいるけど、オーストリアでは一般の映画館でも公開されるから、ぜひ見に行ってみたいものだ。