信吾の病気 8
                 清水景允

 
 入院手続きが終わった。
信吾は、それほど重大なことになっているとは思っていない。
全く自覚症状が無いのである。
入院その日から検査がはじまった。
医大の第一外科は11階である。
入院した、その日エレベータを待っていたが、中々降りて来ないので階段を利用し11階の病室へ向かった。
11階まで上がるのに途中で休まなければならない程、体力が弱くなっている。
今までの自動車生活が体力を弱らせたのである。
これでは、手術に堪える体力がない、心配だ・・・。
そこで、階段を筋肉トレーニングの手段として、11階から地下1階、地下1階から11階まで上下し始めた。
 初日は一回上下しただけで汗が噴き出し、途中で休まなければならなかった。
そのトレーニングは検査の合間の少しの時間を見つけ上下するのである。
検査は10日間続いた。その間、階段トレーニングは続く。
その内に、足早で階段を上下出来るまでに体力が付いて来た。

 11階の西側の廊下の窓から勤めている工業高校が見える。
東側の窓からは、その頃、君枝が自動車運転免許を取得していたので、永山に帰る君枝の運転する自動車を見送ることができた。
 病室では別にする事がないので、入院生活紀を書き始めた。
 病院では一週間の日程の中で手術の曜日が決まっていたが、信吾の場合、突然担当医から手術曜日でない「明後日、手術を行ないます・・・。」と告げられた。
医師団は5名で構成されている。
それぞれ、代わる代わる挨拶に病室に来て、たわいない話をして病室を出て行った。

 手術当日、胃腸の中の物を全て排出し病室で待機していると、若い可愛い看護師が小さな注射器を持って病室に入って来た。その注射は皮下注射で看護師と二言三言話していた様な気がする。
その内、思考力が薄れて行くのである。
『これが麻酔の第一段階だな・・・。』と信吾は思っていると、ベッドごと廊下に出された。
午前9時頃である。
君枝や、お袋、君枝の母親が廊下で待機している。
その前を、信吾が横たわっているベッドが進む。
なにやら、君枝が言っているようだ・・・。何を言っているのか分からない。
 手術室は4階である。
エレベータで4階の手術室へ向かう。
信吾は、興味津々、今置かれている信吾の状態をイメージしながら観察するのであった。
やがて、手術台らしいところに移された。
背中がヒンヤリと冷たく感じる。
鼻口にマスクがつけられた。
『全身麻酔だな・・・。どのように麻酔が効いて行くのかな・・・。我慢出来るところまで我慢してやれ・・・。』と、ふざけた事を考えている内に眠ってしまったらしい・・・。