家賃滞納と安否確認 | ~人は、誰かにとっての登場人物である~

~人は、誰かにとっての登場人物である~

不動産会社勤務。仕事中にアパートの孤独死に触れ、
「人は、だれかに影響できる」というシンプルな事実に気付きました。仕事や家庭、その他、登場人物としての日常を、気づきとともに綴ります。

不動産管理会社に勤務しています。

 

ある1月の終わり、アパートの家主様から電話がありました。

 

「102号室の人なんだけど、年末から家賃が入ってないの。

もうすぐ2月じゃない。」

 

「そうですね」

 

「ちょっと連絡してみてもらいたいの」

 

「かしこまりました」

 

「それとね……新聞がドアノブに溜まってるらしいのよ」

 

「そうですか……」

 

「とりあえず連絡してみてくれる?」

 

「かしこまりました」

 

その後すぐに、僕は入居者へ電話連絡をしました。

しかし、電話は鳴るものの、出る様子はありません。

 

「病院にでも入院してるんじゃないの」

「どこかに行ってるんじゃないの」

など、管理部内では憶測が飛び交いました。

 

「今日は行って出てこんかったら鍵開けて」

 

「分かりました」

 

普段は警察立会いで鍵を開けるのですが、

家主さんの許可もあり、

僕が1人で開けることになりました。

 

外回りの用事を終わらせてアパートに着きました。

 

そのアパートは古く

今時のモニターホンなどはありません。

 

ドア横の壁に、小さなチャイムのボタンが付いているだけでした。

 

(結構新聞溜まってるな……)

 

ドアノブには、透明な手さげのビニール袋に1週間分ほどの新聞が溜まっており、

さらに地面にまで束になっていました。

 

 

僕はその小さなボタンをそっと指で押しました、が

中で音がした様子はありませんでした。

 

(電池切れかな……)

 

コン、コン。

 

「○○さーん、お世話になりまーす!」

 

(やっぱり返事がない、か。)

 

 

開けるか。

 

開けるしかないよな。

 

 

開けよう。

 

 

裏の家主さんに借りて、握っていた鍵。

 

そのドアは握り玉と呼ばれる、

円柱形のドアノブを握って回すタイプのもので、鍵穴がドアノブについていました。

 

鍵穴にゆっくりと差し込みました。

 

もう一度ノック

 

コンコン、コンコン

 

「開けますよー」

 

僕は腹から声が出ていませんでした。

 

 

 

僕はドアを正面にして左手側についたドアノブを右手で持ち、

右半身を前にして半身の姿勢になりました。

 

少し仰け反り気味で、

 

いつでも逃げられるように、体勢を整えてから

 

そっとドアを開けました

 

カチャ……

 

 

すると……