前回、枚方市に住む高齢者の方から寄せられた投稿の続き

第6稿です。

 

 

 

「年寄り二人暮らし」⑥

 

―2021年―

2021年新しい年。夫は意識もしっかりし、何とか生かされていたが、病院食が食べられず「何でもいいから差し入れてください」との事。

買い物など自分で出来ない。料理もままならない私は、夫の入院中に生協に申し込み、生協の食事になっていた。

すごい出来合い食品に驚きつつ、電子レンジを使い何とか食べられるようになった。

 

夫への差し入れも毎日とはいかないが、手紙をつけて娘が持って行ってくれると「食べた」とメールがあり、そのメールに「次はピザのマルゲリータ(トマトソースの上に、具材としてモッツァレラチーズバジルの葉を載せたもの)がいい」とか「トリドールの卵焼きが食べたい」に、そんな言葉覚えてるんやな~」とびっくりした。

 

その内差し入れを持参したときは看護師の詰め所へ行くと「リハビリで車いすを押してもらって出てくる」というイキな計らいで、ほんの少し言葉を交わすことが出来た。

病院の対応に感謝である。そして少しづつ歩行器を押して歩けるようにもなって、それも3ヶ月だから、転院を考える時期となり2月には関西医大の香里病院に移った。

 

 香里病院へ救急車対対応のベッドで移送するため「一人だけ同乗できる」と言われ私が乗ることになった。

そのことを50年来の友人夫婦に話すと「その時に生き返ったことをSさんは、どう思っているのか聞いてみたい」と言ったので「聞いてみるわ」。

この問いに対して夫は「生き返ったのではなく死に損なったんだよ」と明確な答えが返ってきた。「Sさんらしいね。安心した」と友人は涙声で言ってくれた。

 

 

 香里病院の担当医が、枚方病院からの報告に目を通され、ハッとされた様子で

「大変なところを通って来られたんですね」

とおっしゃるので

「医学の勝利ですね」

と私が言うと

「いえいえ、本人の生きようとする力です」

「ゆっくり過ごして、少しでも良くなられるように」

と言って下さった。

 

 この病院でも食べ物を差し入れてください。とのことで、私達や友人達の様子を手紙にして併せて差し入れをすると、メールや電話が返ってきて、なんとなく夫が元気になりつつあるな~と思えた。

 

 生協でウイスキーボンボンを買って、1回につき2~3個を差し入れると「ウイスキーボンボンは旨かった」とメールが届き「ヤッタ!」 

 

3回くらい差し入れたら(病院から)

「ちょっとお話が」

「ウイスキーは病院では困るんです」

「やっぱりな~」

「分かってられたんですか」

「はい」

夫からは「ウイスキーボンボンは召し上げられました」とメール。また、次も何か考えよう・・

 

 介護保険の申請で夫は「要介護5」となり、そしてそろそろ退院を考える時期となり、相談員、本人。家族が集まり、病院や施設も紹介されたが、心臓の疾患があると難しい様子で、相談員さんからは「ターミナル(終末期に行われる医療のことを考えられる施設を紹介されたりしたが、すぐに決められる訳ではない。

 

 私はまだリハビリのことを考えていて「リハビリのできる病院を」。折角少しは歩けるようになているのだし、トイレにも行けるとのことだし、家に帰って過ごしたいだろうと思っていた。

 

家の近くの病院が「心臓に関しては何もできないが、リハビリ入院なら受け入れる」と言って下さり、夫も私も「もう充分生かされてきた。家にいても何かあった時、すぐに対応できないのだから、それでいい」とその病院に転院した。

 

ところがその病院が「足のむくみから、心臓に水が溜まっている。心不全が疑われる」前の病院に帰りなさい」と言って下さり再び香里病院に入院となった。心臓のことは出来ないと言われた病院が異変に気付いて下さりありがたかった。

 

 香里病院では心不全は落ち着き、かなり歩けるようになり、トイレも自分で行けるようにまでなったが、食欲がでない。温かいソーメンなら食べられるので、ニューメンをいっぱいいただいた。

「とにかく食べられないことには元気になれない。食べるためにも家に帰りなさい」

 

ということで退院となった。(やはり3か月後)

 

第7話につづく・・・・・

 

 

 

 

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「すずらんのつどい」は2015年9月「すずらんの集い―いっしょに考えてみませんか福祉・介護―」をテーマとしてケアマネジャー経験者を中心に結成しました。常時メンバーは5名。

拠点は大阪府枚方市の北部、楠葉地区においています。

近づく超高齢化社会を見つめ、高齢者福祉の学習、関係者との情報交換、枚方市の高齢者施策についての話し合いなどの活動をしています。