いまから20年以上前に枚方市では、海外の福祉行政の実態習得のため、
海外へ研修派遣をしていました。
「年寄り二人暮らし」の投稿をいただいたs・mさんはその研修派遣メンバーの一員として、
デンマークへ行っておられます。
その時のレポートの第4回目(最終回)を掲載させていただきます。
 

私のデンマークレポート④

 
シンプルライフの勧め
事前研修では枚方のデイケアセンターで実習させていただいた。
入浴は一人ひとり丁寧に洗ってあげ、補助器具を使って湯船に入るのだが、どの方も「あーいい気持ち!」と喜ばれた。なんと大変な仕事だろう!!
 
そしてデンマークに行って個室のバストイレを見たとき、「何かスッキリしている」のに気が付いた。
補助器具のモデルハウスのバストイレも広くてすっきりしていた。
「シャワーだけなのだ」。
車イスで十分入れる。デイケアセンターで 集団入浴などしないのだ。
あたり前のことを納得した。
 
今の老人に
「シャワーだけですませる」となれば
「たったひとつの楽しみまで取り上げる」と叱られてしまうだろう。
でも、私たちはシャワーで済ませる生活に慣れた方がいい。なにかそんな気がした。
 
食事も同じことだ。デンマークはチーズやハム、果物は沢山あったが、何種類もの料理が並ぶでもなく、質素だった。
 
テーブルウエアを美しくセットし、熱々のお皿に熱々の料理が何よりのご馳走なのだ。
グルメなど言わず質素な食事をすることも、自立したひとの条件となるはず。
何故なら私たちが在宅で老後を暮らす頃は、電子レンジが貸し出され、冷凍になった給食が宅配されてくるだろう。
 
 
なるべく添加物を使わないで、きちんと調理されたものを冷凍にするなら、それも合理的で、人手も少なく、コストダウウンにつながる。そんなわけでシンプルライフを実行しよう。
 
 
 
おわりに
 
 
どの施設に行っても、経済効率からか随分数字を聞かされた。
その数字はデンマークの福祉がいかに高水準化を語り、いかに質を落とさず経済的にやっていこうと努力していることを教えてくれた。
 
「私たちの税金だから」が印象に残る。「常に人間らしく生きられるようにお手伝いをする。私たちの最高のサービスは笑顔です」と締めくくられた。
 
人間らしく当たり前に生きる。正に人権が守られている姿が具現していた。
 
一方で「在宅化で老人は孤独になっている」とTVで放映されたが、今、デンマークの福祉制度を見てきて「ちょっと変だぞ」と思った。
 
デンマークの施設はすべて個室だから、老人の状況は在宅とそう変わらない。
部屋から出ていけば職員がいたり、カフェテリアやホールには人がいるが、在宅の人もヘルパーが来てくれるし、外に出れば人がいるし、センターにも行ける。車イスの人は送迎してくれる。
 
「在宅だから孤独」は飛躍がありすぎる。4人1部屋なら孤独にならないか。
気の合わないどうしが同室だったら悲劇だ。もっとみじめな孤独を感じるのではないだろうか?
 
今、日本で家族同居で深い孤独を感じている人が多いと聞く。
 
つまり、孤独は個人の問題なのだ。「笑顔でサービス」を受けても孤独を感じる人はいる。
 
岡本先生も「孤独に有効な手だてはない」と話しておられた。
そこでやはり宗教を信じる人は強く、生かされ、生きているのだろうと父の姿を重ねて思った。
「創作的な活動をする人は生き生きしていますよ」と、リハビリセンターでも聞いた。
 
駆け足の11日間でしたが、「高齢者福祉」ということを考える貴重な体験をさせて頂き感謝している。
 
良き同行の友を得たことも旅の大きな財産となることでしょう。
 
(完)