7/8(2021)付けの「年寄り二人暮らし③」で触

れられていた「デンマークでの福祉の旅」ですが、

いまから20年以上前に枚方市では、

海外の福祉行政の実態習得のため、

海外へ研修派遣をしていました。

 

s・mさんはその研修派遣メンバーの一員として、

デンマークへ行っておられます。

その時のレポートが見つかりましたので、

ここに掲載させていただきます。

 

先にも述べたとおり、

このレポートは20年以上前のデンマークの取り組み

です。

ただ、今読み返しても何ら古さを感じないのは何故で

しょう??

日本が立ち遅れてるからか??

現在のデンマークの状況も何かの機会があれば、

調べてみたいと思います。

 

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デンマークではリハビリを受けながらカウンセリング

を受けている。

これは何かすごい!。

身も心もリフレッシュして歩けなかった人が補助器具

を使いながらもしっかり歩けるようになり帰って行か

れる姿を見せてもらった。

「デンマークでの福祉の旅」(注1)の中で、

リハビリセンターの所長が

「別の人間になって帰っていく」

と言われたのを思い出した。

その時は「へーえ!そんなに!」

と思って聞いていたが、今は少しはうなずける。

「リハビリはカウンセリングでもある」と。

と、述べておられます。

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私のデンマークレポート ①

福祉は人権

 成田から11時間。

バルト海を超えて、やっとコペンハーゲンに着いた。

寒い。やはり冬だった。

バスに乗り込み、ホテルまでの道で、どこでも絵に描

けそうな美しい街並みに、ついつい声が出てしまう。

が。私が「ウーン」と唸ってしまう位びっくりしたも

のが、道路だった。

 

歩道と車道の間に自転車道がある。

「何が怖いかって自転車が一番怖い」

と盲人の方にしょっちゅう聞かされている。

これなら安心して歩ける。

歩く人も、自転車も車もみんな認めて大切にしている。

これこそが、福祉の原点ではないか。

大げさに言えば人権がしっかり守られているのではな

いだろうか?。

はやくも福祉の一端を見てしまったような、そんなデ

ンマークが私を温かく迎えてくれたような第一歩であ

った。

 
 

「施設」の「在宅化」

「プライエム」といわれる老人ホームは、

日本の「特別養護老人ホーム」とはかなり様子が違っ

て、地域のセンターとなったり、「在宅化」といわれ

る改革を進めている最中だった。

 

これが最高だと言わず、常に改革を掲げているのに

驚いた。

 

そのプライエムは個室が当たり前。

それも家具や装飾品、敷物、絵画。家族の写真、観葉

植物等、今まで大切に使ってきた物をそのまま持ち込

んで、美しく飾られた部屋、バス、トイレに、小さな

冷蔵庫もあった。

共同の場のホームやカフェテリア、売店があり、入居

している人は、きれいな服装で、きちんと髪を整え、

お化粧やアクセサリーもしていて、明るく笑顔が美し

い。

事務所もピチーッと整理されている。

専門の掃除係がいて、クリーンなのは当然かもしれな

いが、どこにも異臭がしない。

カフェテリアには近くに住んでいる老人や一般の人た

ちも昼食を食べに来ている。

安くて栄養バランスのとれた昼食が食べられ、

だれにでも開放されている。

 

売店ではいろんなものが売られていて、ワインやビー

ルも並んでいる。

そのあたりが日本の施設にない開放的な明るさが広が

る。

 

 

あるセンターで、昼食時、私たちが訪れると、ピアノ

を弾いておられた老人が、私たちをみるとすかざず

「スキヤキソング」で歓迎してくださり、とてもうれ

しかった。

この昼食は在宅の老人や障碍者にも配送されている。

給食センターも兼ねている。

 

住民の高齢化が進み、要介護老人が増えてくると、

ホーム形式では財政的にもたなくなるということから

改革が始まった。

「ホーム」のノウハウと「訪問看護」のノウハウを一

緒にする。

ホームヘルパーを増やし、24時間ケアーを可能にす

る。在宅のためにケアハウスや高齢者用住宅を増や

し、その住宅の近くに「リハビリセンター」や「デイ

ケアセンター」を作る等、街づくりまでやっている。

 
 

「老人ホームでのサービスに要する費用より、在宅で

いろいろなサービスを提供するほうが、はるかに安上

がりだ。そして、いかにホームが個室といえども一部

屋では家庭とは言えない。家族が来ても、狭くて居る

ところもない。

ちゃんとした住宅に住むことのほうがより自然なこと

である。そして施設に入ると職員を頼り切って自立が

損なわれる」

という。

 

このような福祉制度は、

(1) 可能な限り今ある生活形態を継続する「継続性の

 

  保証」

 
 

(2) 今ある能力を維持し開発する「残存能力の開発」

 

(3) 老人自身の意思を尊重する「自己決定の尊重」

 

の三原則にある。

そしてホームは増設されないどころか、全廃の方向に

ある。そして在宅ケアに移行していくのである。

 
 

訪問看護師やホームヘルパーを増やして手厚い介護と

同時に、1987年に「高齢者住宅法」が施行され、

地方自治体に高齢者住宅を大量供給できるように定め

られた。

これによって、高齢者(障碍者)住宅を建設し、長い

目で見れば施設を建てるよりも安上がりで、在宅ケア

が充実することとなった。ホルベック市の場合、この

改革(家具の配置換えという)は、政策決定過程に政

治家は一切口出ししないという条件で、市民参加のも

とに行われた。

 

老人のために何をするかではなく、自分たちの老後を

どうするか。

そして高負担高福祉を選択、合意していく。

地方お分権の強い「自治の国」だと聞いていたが、

この話は大きな感動を持って聴いた。

(つづく)

 
 
 
また暑い夏が戻ってきましたが、
皆様どうぞご自愛くださいね。
コロナが一日も早く収束することを祈ります。
医療現場の皆様
介護現場の皆様
沢山の方々の努力に応援と、
コロナにかかられた方々に一日も早い回復をお祈りします。