10年目に入った福祉タクシー。

幸いにも現在まで無事故無違反で運行しています。

あと何年続けられるかわかりませんが、安全第一で走ります。

利用いただいているお客は「通院」が一番多くて、

定期的な検査とお薬を出してもらうための受診がほとんどです。

持病ときっちり付き合っておられるお客の

送迎は年何回かの“ドライブデート”のような雰囲気です。

 

 今回報告したいのが施設関連のお客です。

三カ所の施設、有料老人ホームと障害者施設に出入りしています。

施設の一番の問題は慢性的な人手不足です。

職員の定着率が低く、要因は仕事の内容に見合った

身分保障がされていないことに尽きます。

 

 病気入院されていた施設入所者が退院になり、

病院から施設へ連れ帰る。

以前なら施設に出向き車イスと職員さんを乗せて病院へ。

駐車場で待つこと数十分。

手続きが済んだ職員と利用者を乗せて施設へ送り届けることだけでした。

往復の運転だけが私の仕事でした。

ところが最近は施設担当者から

佐藤さん、一人で行ってくれる?」

との依頼。

「いいですよ」

と答えると子細な説明があります。

まず施設に赴き車イスとお金を預かります。

退院される方の名前と病室を教えてもらいます。

病院の駐車場で車イスを降ろし、押して院内へ。

詰所で用件を告げて看護師の案内で病室へ。

まず請求書を預かり1階の会計窓口へ。

領収書を提示し、サマリーや服薬袋を受け取り、

患者さんの日用品などを袋に詰めてもらい、

以上一式と利用者さんが乗る車イスを押して駐車場へ。

晴れて退院です。

退院の書類への署名も求められます。

「代理の方ですね?」

福祉タクシーです」

「職員さんや家族さんは?」

「今、どちらも忙しくて来れないそうです」

「そうですねぇー」と担当者もあっさり了承してくれます。

ここが今日のご時世なのです。

病院も忙しい、出来るだけ早く退院してほしい。

施設の人手不足も聞いている。

まあ間違いなかろう」の呼吸です。

時代の反映と福祉タクシーを続けてきた“信用”が為せる

ことだと思っています。

 

 

 ある御夫婦を紹介します。数年前からの利用者です。

それまで利用されていた介護タクシーが廃業したため私に

仕事が回ってきました。奥様が脳腫瘍で15年の長患い。

数度の手術をくぐり抜け車イスで言語が少し不明瞭。

その妻を支える白髪の夫君。

それはそれは献身的な介助の日々です。

入院手術となれば連日病室を訪れる、

デイの帰りの時間が遅いから疲れる妻を私のタクシーで迎えに行く。

彼女とヘルパーさんを乗せさとう福祉タクシーで

週一回のスーパーへの買い物。

帰宅時間には必ず夫君が玄関口で待ってくれています。

妻在宅時はヘルパーの支援を受けながら介護し、

夜は一人で。妻の不具合が進んでも甲斐甲斐しく寄り添う。

ヘルパー女史いわく「全国愛妻家協会会長」

「すごいご主人ですね」と車イスの彼女に話しかければ

「当たり前やんか、夫婦やもん」

出来ませんよ、言えませんよ、なかなかここまでは・・・。

夫婦にもいろいろありますが、お手本としたいご夫婦です。

 

福祉タクシーは人との出会い。勉強になります。




佐藤さんはホームヘルパー二級の資格をもっておられます。

感謝を送りたいですね。