新型コロナ感染症が巷で騒然となる前の昨年11月、

介護関係者が国を提訴する大きな出来ごとがありました。

それは

2019年11月1日、ホームヘルパーの藤原るかさんら

3人が国家賠請求訴訟を起したのです。

訴訟内容は(ヘルパーは)労働基準法が守られない劣悪な労働環境におかれている。

その原因は、事業所にではなく、介護保険の仕組みにある。

国は規制する権限を行使しなかった

というものです

 

訪問介護の現場の問題点として

①利用者の急用や入院など予定の変更が日常的に起きるため、

仕事の特定がされず就労時間が保証されない、実質的「ゼロ時間契約」であり、

1日の訪問件数が契約期間中に半減することが日常的に起きている。

 

②キャンセルが発生した際の賃金が支払われない。

 

③数軒の家を掛け持ちする移動時間が労働時間として算定されない。

 

④待機時間は労働時間として算定されず、

 業務報告書の作成や鍵の管理のための事業所への出退勤も算定されない

その結果、全産業平均の月給が33万3,700円(2016年厚労省調査)のところ、

ホームヘルパーは8万3,000程度と低賃金となり

(介護職全体では22万7,275円)

短時間勤務の福祉施設介護員の平均賃金より2万5,000円低い。

これは、数軒の家を掛け持ちする拘束時間が算定されていないことが原因で、

介護時間が年々短縮される中、1日の実労働時間が平均3.6時間となっているから。

その結果、高い離職率を生みだしている

(近時調査で1年間の離職率は16~17%。うち3年未満の離職は65%)

介護時間の短縮と、こまぎれ化で利用者の尊厳を確保して介護することが難しく、

労働者の尊厳も利用者のケアを受ける権利も侵害されている

と主張されています。

(2020年1月25日発行旬間誌「ふぇみん」より)

 

介護の現場を支える基盤となるヘルパーの方々の労働基準の改善は

ほんとうに急ぐ必要があります。

働き甲斐があり、労働に見合った賃金を保証する制度に

根本から見直さなければなりません。

特に、新型コロナ感染で揺れ動く中、介護の現場はまさに「3密」の世界であり、

マスクも不足し、防護服も充分にいきわたらない中で、

身体介護をする介護士・ヘルパーの方々への精神的・物質的援助が必要です。

 

しかしながら、政府は120日の第1回公判、

320日の第2回公判で、国側の主張として

「未払い賃金への対応は事業者の義務。保険制度と請求の趣旨との関連は明らかでない」

と訴えの棄却を求めているのです。

 

これは問題の本質をみようとせず、国が監督義務を完全に放棄した姿勢を示すものであり、

この事案をひとごとのように放置する姿勢は、現在のコロナ感染まん延の対策に有効な手立

てを提案されても、

それを無視し非常事態宣言をだしたあとは何の対策も考えつけない

現政権の無能さと表裏一体のものです。

このような政府の姿勢を許し続ければ、近いうちに介護崩壊をおこすのは目に見えており、

それは、利用者を介護状態から治療が必要な状態へと進行させ、

結果的に医療を圧迫するもので、医療崩壊の引き金となりかねません。

 

本件裁判を担当する山本志都主任弁護士によれば

「『国の規制権限の不行使の違法性』などが今後、裁判の争点になる見込みだ」

 とのことでした。

 

裁判の行方を注視し、藤原るかさんらを応援し続けたいと思います。

原告団への連絡はhelpersosyou@g-care.orgまで

公判日は「はたらく女性の全国センター」サイトで(http://wwt.acw2.org/

次回(第3回)の日程は、6月9日(火)10:15~ 709号法廷で 

コロナ感染対策のため傍聴制限があります。