夜中の電話は、抜け殻の声だった。

あの頃のように、すぐ駆けつける事なんか出来ない。

俺は励ます言葉なんてない。

軽々しく「元気出せ」なんて言えるわけない。


出会った頃のビジョンが頭をよぎる。

あざだらけの細い手足と、右手の黒いリストバンド。

制服の首元から少し見えた縫い跡。


他の人はどうだか知らない。

俺には綺麗で神聖なものに見えたんだ。






電話越しに、俺はアコギを弾く。

あいつの好きなアルペジオ。

そして、「歌って」と言う。

少しの沈黙の後「何を?」と聞かれる。


俺は「バトルクライ」とだけ言う。



打ち合わせなんてしなくても合わせられるという事が、俺の誇り。

泣きはらした後の掠れた歌声が聞こえた。