「埋まったね・・・」
2010年11月4日、函館ラサール高校相撲部6人の目の前で土俵が雪で完全に埋まっていた。
土俵といえば屋内あるものと思うかもしれないが、それはプロの相撲部屋の世界。高校の相撲部にそんな設備があるわけがない。
屋根もない、グラウンドの隅、ただの地面の上に徳俵とおいたもの、それが相撲部の活動場所だった。
雪が降れば当然、土俵が埋まる。
仕方ないから屋内のどこかで相撲するのかといえばそうではない。徳俵のない相撲は相撲ではないのだ。
結局寒さをおして外でラグビーの真似をするか、教室や廊下で筋トレしたり走ったり、それしかできない。今日の部活は後者になった。
そして部活の最後は恒例となった3-3に分かれての屋内リレー。2回の階段をスタート、校舎の長い廊下をダッシュして向こう側の階段から1階へ。1階の廊下を走ってきてこちら側の階段から上がってバトンタッチ。
これで負けたチームが帰りのコンビニでジュースをおごる決まりだった。
相撲部といっても「いわゆる相撲部」で想像するような太ったやつはほとんどいない。それが函館ラサール高校相撲部の弱さでもあった。つまり、結構ふつうに走れるのだ。
第1走者の小石と菊川はほぼ互角でバトンタッチ。予想通りだ。しかし第2走者が問題だった。正確には第2走者の渡部が問題だった。彼は部内唯一の「いわゆる相撲部」で想像できる体型だったからだ。そもそもこのリレー、渡部がどちらのチームになるかでほぼ勝敗は決まっていた。
渡部とほぼ同時にバトンを受け取った上村が第3走者の古田にタッチしたときには当然渡部の姿はない。ただおかしかったのは古田が快足をとばしてゴールインを決めても渡部が現れなかったことだ。しかも古田も渡部の姿を見ていなかった。
途中でトイレにでもいったのだろう、先にコンビニでジュースでも飲んでるんじゃないかなど、くだらない軽口をたたいて談笑していたときだった。校庭で女子のけたたましい悲鳴がなった。
こうなるとやじうまである。渡部のことなどそっちのけで2階から校庭に駈け出した。土俵の辺りに人だかりが
できている。なにか面白いことがありそうだ。
グラウンドを横切り、人だかりをかき分ける相撲部5人。そしてようやく最前列まで躍り出て、見た。
土俵の上だった。
渡部が死んでいた。