本著は、私の最初のシリーズ「康安寺サーガ」の三作目ですが、設定としてはこれが最初になります。

このあたりの構成は「スター・ウォーズ」でもあり、「レンズマンシリーズ」でも使用されています。

つまり時代的には近代から読んでいただき、その謎解きを理解するために中世、そして古代へを遡る形式です。

もちろん、もう一回逆に読まれれば、なお一層ご理解いただけるものと思います。

このシリーズでは、ひとつの象徴として滝と滝つぼがあるシーンが出てきますが、そこが高次元住人と我々四次元住人との唯一接することができる場というものです。

ここは、実は私が現在住んでいる熊本県にある滝をイメージしています。

このお話は、なぜ光求から森洋太郎に至る血統が作られたのかというプロローグとなっています。

熊本県山鹿市鹿央町にある康平寺がモデルなんですが、本当に資料が少なくて困りました。

西南戦争においてなぜあんな小さな庵が無事で、そこに天海二十八部衆が押し込められていたのか、ということから全てが始まったわけです。

ここに残されていた資料に基づいて、平安時代に最初の康平寺が建立されたこと、そして元寇の後に関東御教書によって祈祷の令が出され、そしてそこからどう「羽衣」まで続くのかを考えて書きました。

しかしもうひとつ、どうしても書いておきたいことがありました。

それは、三韓征伐を行ったとされる応神天皇、神功皇后が千田神社に祀られているんですよ。

それに加えて、千手観音は菊池一族の守護神であったこと、加藤清正以前は大湿地帯があったこと、などを加味していったわけです。

それに、クマソにはタケルという英雄がいたこと、天照大御神は元々熊襲の神であった説もあり、古事記からヤマトタケルのクマソ伝説がどう発生したのかを想像してみた時に、どうしても古代を描かなければならないと思った次第です。

それが冒頭に出てくる最強後続遺伝子を持つクマソタケルのナムチという存在を作りました。

ナムチとヤマトのスサが戦い、交流することで後続遺伝子は中央と九州にそれぞれ残されたという発想をし、そこから史実にある平城天皇第三皇子高岳親王までこぎつけました。

古事記にある東征の物語を入れてみて、それから後続遺伝子同士が引き寄せ合ったとしてみたわけです。

高岳親王の存在によって、蛇骨が呼び起され、同時に迦楼羅も呼び出されてしまいました。

その遺伝子を与えられたユキと業徳の子孫がこの地に残り、鎌倉時代後期に現在の康平寺を建立したとしてみました。

こうして完成したのが本著「時の大河」です。

パズリング、結構大変でした。