夜の桜にまつわるファンダジー

















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夜の桜を見にあなたと車で向かった。














周りには民家が数軒建ってるだけの、何も無い、小高い丘の上にその桜はあった。

















夜の闇に一本だけで立っている、樹齢数百年の仙人桜。




















ふもとに車を止めて、車に入れてるブランケットを持ち出す。




















自販機でホットを買って両手で持ちながら向かった。

















近くで見ると本当に大きな桜だった。

















幹の周りには、しめ縄が巻かれていた。

















一周するのも少し時間がかかるくらいだった。











地面からたくさんの棒で支えられていた。

















周りに人影はなくて、














ライトアップされた桜の下にあるベンチに座って、しばらく眺めた。

















音の無い世界。




















木と、私とあなたの三人だけ。

















その時、小さな風がふいた。

















ひらひらと舞い落ちる花びら、




















暗闇と白っぽい花びらのコントラスト。














あなたは嬉しそうな顔をして、花びらに手をかざしていた。

















その横顔を見ているだけで幸せで微笑んだ。

















ブランケットに舞い落ちてきた花びらを手に取っているときあなたは言った。

















「また、来年も来ような。」

















そうだね。と笑顔でうなずいた。

















右手を大きな手と繋ぐ。

















寒い中で出た白い息は、ため息ではなくて、幸せの吐息だった。