バレンタインにまつわるファンタジー









☆ ☆ ☆ ☆









寝ないで作ったチョコなのに、どうして!









転んでラッピングごとぐちゃぐちゃ。









作り直す時間もなくて、足も痛いけど、待ち合わせの場所へ向かった。









あなたの車に乗ったら、すぐに聞いてきた。









「今日、何の日だ?」



子供のように、ニコッと身を乗り出して私を見てる。









ごめんね、チョコ、めちゃめちゃになっちゃった。

プレゼントをうつむいたまま見せた。







楽しみにしてたのに、ごめんね。











「ドライブ行こっか」





チョコの事は何も言わず、あなたは車を滑らせた。窓にどんどん夜の明かりが吸い込まれて行く。









いつもは話しながらドライブするのに今日のあなたは余り話さない。









湾岸沿いをしばらく走った。車が着いたのは暗い路地の裏口だった。







「ちょっと目、つぶってくれる?俺がいいって言うまで。」









大きくて柔らかな手に引かれながら歩く。



どこかの通路?エレベーターに乗る、







「まだだよ」



いたずらな声が聞こえる。





どこかのフロアに着いた音がした。









足元がじゅうたんのようなものでフワフワする。









「最後!ここで止まってみて。まだ、目はつぶったままね。」









立ち止まっていると背中と膝の後ろに手がかかった。そのままふわりと持ち上げられた。





抱かれたまま歩いていく。ベッドような感触の所

に優しく腰を下ろされた。





「さ、目開けていいよ!」





そこはホテルの一室、ジュニアスイートだった。







ベージュを基調にした部屋には、オレンジやイエローの小物があった。



窓の外には海が見えている。





冷やされたシャンパンと沢山の花が飾られてあった。





「あーやっと着いたー!黙っておいたからドキドキしたんだよ!」







ホッとした表情で微笑みながら言った。







「驚かせたいから裏口から入れて貰ったの。」







びっくりしたよ!







「バレンタイン、男からっていうのもありだろ?俺からの気持ち。」





そう言うとあなたはとなりに腰かけた。







「さっきのチョコ、ちょうだい。」







めちゃめちゃになってるよ!









「そんなの全然、気にしてないから。」





あなたはおいしそうにチョコを食べて始めた。









「これ、うめぇよ!お前も食べる?」





口元にチョコを持って来た。









その指がそのまま頬に触れた。髪を撫でてあなたが言った。







「日付変わってしまったけど、ありがとう。」













「いい?」









深い瞳に見つめられて、目を閉じた。







チョコレートより甘い夜が始まった。