月夜にまつわるファンタジー









☆  ☆  ☆  ☆









あなたからの電話。









もしもし?







「風邪引いてんのか?」







すぐに気付くね。









大丈夫よ!



ホントは熱が出てるんだけど、黙っておいた。











「仕事忙しいのか?」









忙しいけど大丈夫だよ!





あなたの方が大変でしょ?









「俺は全然大丈夫だよ」









いつも、大丈夫って言うね。











「今日の月、真ん丸くてきれいだな」









そうだね。











こんなふうに同じ月を見て話せるだけで嬉しい。









電話くれてうれしかった、ありがとうね。









「じゃあまた、なんかあったらすぐに電話しろよな!」





じゃあね。











電話を切っても小さく温かい物が胸にポワンと残ったままだった。











しばらくしてインターホンが鳴った。











外には、ニットキャップに眼鏡をかけたあなたが立っていた。











「お前、全然、大丈夫じゃないだろ!」











と言うと、オデコを引っ付けて熱を確かめてきた。冷たくて気持ちよかった。











「ほら。」





渡されたコンビニの袋には、アイスとプリン、パンやジュース、栄養ドリンクがどっさりと入っていた。











こんなに食べれないよ。









「いいから、食べてゆっくりしてろ!」

ぶっきらぼうにあなたは言った。











「次、会うまでに治しとけよ。」











こんなに優しくしてもらえるなら治らないでおこうかな?









「バカ!何言ってんだよ!」







そう言って頭を軽く撫でて笑ったあなたは、次の山場に向かって行った。









触れたところがまだ温かい。









夜がとろけるように甘く感じるのは、熱っぽいからだけではなさそうだった。