少しあいた窓、夜風が肌をかすめる、


この時期の少し冷たい空気は心を浄化させてくれるような気がする。


大好きな、でも切ない季節、

ベランダに出てビールを開ける。自然とあなたの顔が思い浮かぶ。


私の部屋にある、あなたの好きな海の絵も、ひまわりも、持ち主の不在が続いてる。



仕方ないけど、今は深海の底に眠る、難破船のような気分。



ずっと、誰にも発見される事はない。



私達の事は彼の環境が激変してからは、暗黙の了解の如く秘密にしている



でも私も今、かなり揺れていた。この先二人の未来はあるのかどうか。



ぼんやり考えているその時、宅急便が来た。




贈り主は偽名だけど、すぐにわかった。

彼だ。



まだ、今のように騒がれていない頃、二人で温泉旅行に行った。



「私たち、怪しく見えるかな?」ふざけて書いた名前だった。二人とも記帳しながら笑っていた。午後のひだまりのカウンターで。



中を開けると見覚えのあるデニムが、


以前あなたがオーダーメイドで業者に頼んだんだと、嬉しそうに履いてた。生地を何枚も使った独特のステッチのデニムだった。


よくみると、サイズが私用に作ってあった。すその折り返しにはギンガムチェックの裏地がほどこされており飾りボタンが付いていた。


段ボールの底には手紙が入っていた。


手紙は封筒に番号がふってあり3通あった。1番から読んで!と赤い文字。



中を開ける



「そのⅠ、このデニムは世界にひとつ、俺とお前だけのオリジナルです。」



二通目
「このデニムには秘密のポケットを作りました!三個あるか探してみて!」


よく見てみると、お尻の内側に隠しポケット、裾のボタンを留める裏に二つ目。もう一つはどこ?わからない。

思わず三通目をあける。

「わからなかったろ!普通は右にしか付けない所!左のポケットを見て!」


左の下の方に手をやると小さなポケットがあった。その時指先が何か硬い物と紙にに触れた。



それは小さく折りたたまれた手紙と見覚えのある指輪だった。



最後に会った時、不安でどうしようもない気持ちになり、泣きながらあなたに返したペアリングだった。


あの時最後まで黙って何も言わず家まで送ってくれたあなたを思い出す。


手紙にはこう書いてあった。


「心は一つだから、
今は指輪出来ないけれど、俺もこのデニムの同じ場所に入れて持ってるから。たとえデニムが色褪せても一緒にいて欲しい。」と



涙が溢れる。



あなたを信じる事が出来なかった、弱い自分でごめんね。



その時携帯が鳴った。



あなただけのオリジナルナンバーで。