シアターにまつわるファンタジー


☆ ☆ ☆ ☆


ここは郊外の昔ながらの映画館、シネコンのように入れ替えもなくシートも狭く硬い。
観客もまばらだ




今日はあなたが昔好きだった映画のリバイバル。笑えてハッピーになれる作品




「先に入ってて!後ろの席ね♪」




映画が始まると時間をずらしたあなたが隣に座った。

大きな身体、目深に被ったキャップ、みんな映画に見入っている。誰も気付く人はいない。




今、私たちが外で出来る唯一のデート



今の二人には暗闇でも大切な時間




「これからもっと大きな山がやって来るから、その前に少しだけ時間が出来たんだ。」




寝る時間もないのは知ってる。
なのに自分の事より、私の事を考えてくれる、優しい人




映画は笑ったり、勇気を貰ったり、感動したり、やっぱり今見てもおもしろい作品。



あなたも時々クスクスと声を出して笑ってる。
笑い皺を刻みながら。



リラックス出来てるみたい♪



映画もいよいよ山場に近づき、観客の笑い声はさっきより大きい。横目でみたあなたも大笑い。





なのに、ふとした時に私に悲しい感情が入り込んできた。




この映画が終わると二人の時間も終わっちゃう。


次はいつ会えるのかな?


楽しい魔法が溶けちゃいそう


今より、会えないまでの時間に、


自分に負けそう。


涙が滲む。


観客は笑ってる、声を出さなかったら泣いてもわからないかも。あなたにも気付かれないし。


膝に置いた手に自然と力が入る。




その時私の手に、分厚い大きな手がのってきた。





あなたが見つめていた。


涙で滲んだ私の目を。



穏やかな海のような深い眼差しで。



温かい手でギュッとにぎりしめられた。



あなたは首を振って、笑顔で「だいじょーぶだよ」と囁いた




全ておみ通しのあなた、

ごめんね、

いてくれるだけでいいのにね。


涙が溢れ出しそう。



今度は顔を近づけて何か言って来た



「・・・・・ていい?」

え?

「キス  していい?」




驚く私に人差し指を口に付けて、
「シーッ!」と仕草をするあなた。

イタズラっこみたいな瞳で見てる。



私の涙も止まって笑顔になっていた。




笑顔のあなたの優しい唇が重なってきた。