思い出の向こうへ週に一度、京都に帰っていた。5歳の弟と電車に乗った。弟はずっと窓の外を見ていた。何かを指差すわけでもなく、ただ静かに。僕はその横で、スマホも見ずに、ただ一緒に揺られていた。何を話したかは覚えていない。でも、あの時間の静けさだけは、はっきり覚えている。京都の家は、もうすぐ思い出のほうへ移っていく。それでも、あの電車の時間だけは、いまも僕の中で静かに揺れている。