ちょっと古い話。
一昨年の冬、親知らずが痛くなった。
私の親知らずは、上は普通に生えているのだが、下のは、前方に向かって真横に生えている。
こいつが厄介者で、年に何回か伸びようとして、直ぐ前にある奥歯をグイグイ押して、普通に歯を噛み合わせることが出来ないくらい痛くなる。
しかも、変な格好で生えているので、よく磨けず、変な色になっている。
明らかに虫歯だ。
以前から虫歯なのはわかっていたのだが、この生え方をしている親知らずは、『大学病院での手術じゃないと抜けない』と言われていたので、
「面倒くさいなぁ」
の一言で、治療を先延ばしにしてきたのだ。
しかし、今回の痛さはちょっと我慢できる痛さではなくなってきた。
しかも、なんか歯を磨くたびにけっこう出血していて、吐いた歯磨き粉は赤が強いピンクになっている。
「仕方ない、そろそろ治療してやるか!」
ということで、ネットで調べて、仕事場の近くの“親知らずの抜歯”をやっている歯医者に行ってみた。
レントゲンなどを撮って、治療の椅子に座る。
優しげだがちょっと疲れた感じの先生が、レントゲンのフィルムをボールペンの先で指しながら、
「だいぶ虫歯がひどいですね」
と言った。
「そうですか……じゃ、やっぱり親知らずは抜かないといけませんか?」
「いや、親知らずはもちろん抜きますけど、その前の歯が相当やられてます」
「……っ!???」
「親知らずの色は変わってるけど、大したこと無いですね」
この歯痛は、親知らずではなかったのだ!
「親知らずの隣なので、まず親知らずを抜かないと治療できません」
これは大袈裟なことになってきた。
私が嫌いなこと……、それは大袈裟なこと。
「虫歯は、痛い方の左だけですよね?」
「いえ、右の方がよりひどいですね」
と、ボールペンの先をレントゲンの反対側に動かす。
「ほら、黒い部分が大きいでしょ?この黒いところが空洞なんです」
ああ!面倒臭いことになってきた。
私が、大袈裟なことより嫌いなこと……、それは面倒くさいこと!
しかし仕事が手につかないほど痛くなってきているので、手術をやってもらうことにした。
「じゃ、ちゃちゃっとやっちゃってください」
先生は、ちょっととまどった顔をして、
「ちゃちゃっとはできませんよ」
親知らずの抜歯の先生は、週一回しか来ないというのだ。
「次は○日です」
その日は仕事は休みである。
仕事場まで、車で2時間。
休みの日に、仕事場まで来るのは面倒臭い!……が、改めて歯医者を捜すのは、もっと面倒だ!
私が面倒臭いことより嫌いなこと……、それは、もっと面倒なことだ!
私の積極的な消去法により、親知らずの抜歯の先生が来る日に再来院することにした。
~~~長くなったので『笑気ガス』 に続く~~~



