近所のコンビニの近くの家に、かわいい白いムク犬がやってきたのは10年以上前のことだった。
「白いゴールデンレトリバーかな?」
と、思うような子犬だったが、ちょっと秋田犬のような日本犬の雰囲気もあった。
私は、勝手に『シロ』と名付け、その家の前を通る度にその可愛さに癒されていた。
しかし、半年経っても1年経っても大きくならず、結局ちょっと大き目の柴犬くらいの大きさでとまってしまった。
それでも可愛いことには変わりなく、吠えもせず、道路に面した柵から指を入れると、ちょっと匂いを嗅ぎ指先をそっと舐めるという、実に私好みに奥ゆかしい犬に育った。
もう十年以上経ち、老犬になったシロは最近は寝てばかりいた。
先日の雪が降った翌日、通りかかると珍しくシロは立ち上がって、どこか向こうの方を見ていた。
家の人に聞かれないようにそっと声をかけたが、聞こえない様子。ただ、じっと小屋の向こうの上の方を見ている。
「年寄りだからなぁ……」
と、独りごちて通り過ぎた。
次の日、通りかかると、シロは居なくなっていた。
小屋の前に置いてある、いつもシロが寝て居た毛布はそのまま……。
小屋の上の雪が溶けかけていた。
昨日、また通りかかると、毛布が片付けられ、私とシロを隔てていた柵が開けっ放しになっていた。
