柔と耕作(松田)の新婚日記 17日目 (午後編第2部)
文書量(文字数)が膨大な為、一日を8分割で表記しています
車中では柔と耕作が話していた。
耕作「寝技の練習って君が高校でやってた様な事なんだよね?」
柔「そうなんだけど、富士子さんがどんな練習方法を考えるか知りたかったの。」
耕作「あれ以外にもやり方って有るのかな?」
柔「有るよ?相手の寝技を返す時は最初から寝技を掛けた状態から始めたりするけどね。」
耕作「あ、そうか、君がやってたのは寝技を掛ける為だけの練習方法なんだね。」
柔「そうなの、ただ、あれとは別に投げ技から寝技って言うやり方も有るよ。」
耕作「確かに、本番だとそうなるしね。」
耕作「高校で返す時の練習をしなかったのは何でなの?」
柔「それは先生もご存知だと思ったからだよ。」
耕作「そうだね、三浦は知ってそうだな。」
柔「まあ、時間が無かったって言うのも有るけどね。」
柔「それに、あたしが高校の皆に一番教えたかった事って、あなたも知ってるじゃない?」
耕作「皆に一番教えたかった事?」
柔「もう忘れちゃったの~?」
耕作「・・・、あ~、如何に素早く動くかって事か。」
柔「あの寝技の練習もそうだったでしょう?」
耕作「確かに、如何に素早く寝技に持ち込むかだったね。」
柔「そうだよ~、第一今教えてるのは大学生なんだからね?」
耕作「なるほど、教えられる方のレベルに合わせた練習方法じゃないと意味無いのか。」
柔「そう言う事なのよ、だから高校での練習は参考にならないから。」
耕作「それで富士子さんに寝技の練習方法を考えさせようしたのか。」
耕作「もしかして、君が今まで言った以外の練習方法を考えさせようとしてるの?」
柔「それが出来れば高得点を挙げても良いけどね~。」
鴨田「そろそろ着くっすよ。」
柔「あ、は~い。」
鴨田が車を会社の前に停車させたので柔と耕作は鴨田の車から降りた。
柔「鴨田さん、ありがとう~。」
耕作「鴨田、すまんな。」
鴨田「お疲れ様っす、車を駐車場に入れて来ます。」
鴨田は車を置きに行った。
柔と耕作は会社のビルに入り上に上がって編集部のドアを耕作が開いて柔を先に入れ
自分は後から入った。
耕作「編集長、お待たせして申し訳有りません。」
編集長「おお、待ってたぞ。」
耕作「これが昨日の分になります。」
編集長「ちょっと確認させて貰うぞ。」
耕作「はい、どうぞ。」
編集長「なるほど、高校での柔さんの指導の流れを纏めているのか。」
柔「どうでしょうか?」
編集長「中々面白い内容ですよ、柔さんの意図が良く分かる構成になってます。」
柔「そうですか、良かった~。」
編集長「今日の西海大での練習はどうでしたか?」
柔「それはですね~、明日の主人の原稿を見て貰えば良く分かると思います。」
編集長「そうですか、それは早く見てみたい物です。」
耕作「柔~、ハードル上げるなよ~。」
編集長「何を言っとるか。」
編集長「柔さんがこう言ってるんだから、それなりに書いて貰わないとな。」
耕作「分かりました、頑張ります。」
編集長「あ、そうそう、取材の件だが俺の方からも社長に柔さんの意向は伝えてるから。」
耕作「そうですか、それは助かります。」
編集長「その代わりの連載も楽しみにしてるからな。」
耕作「はい、それはもう構想は出来ていますので。」
編集長「ほう、そっちも楽しみだな。」
耕作「それではこれで失礼します。」
柔「どうも、お邪魔しました。」
編集長「明日も頼むからな。」
耕作「はい、分かってます。」
柔と耕作は編集長に会釈をすると編集部を後にした。
柔達は下に下りると柔が腕を組んできて歩き始めた。
耕作「今日はほんとに積極的だね。」
柔「うふふ、こうしてると安心なんだも~ん。」
耕作「そうなんだ。」
柔「ところでお買い物ってもしかしてあれの事なの?」
耕作「そのつもりなんだけど、薬局ってこの辺りには無かったよね?」
柔「あたしもこの辺りは不案内だからな~。」
耕作「君の町内には有った?」
柔「薬局が?」
耕作「うん、でも、君は健康優良児そうだから知らないか。」
柔「昨日倒れそうになったのに?」
耕作「いや、あれは偶々だよ、今まで無かったって君も言ってたじゃない?」
柔「まあ、そうなんだけどね。」
柔「確かね~、通りに面した所にあった気がするよ。」
耕作「そうか、じゃあ、一旦戻ろうか。」
柔「そうだね、ここで探すよりは良いよね。」
耕作はタクシーを停めて柔を先に乗せ自分も乗ると柔の実家を目指した。
暫く走って柔が住む町内に入る所で薬局が有ったのでそこでタクシーを停めて柔達は降りた。
柔「どうする?あたしが買いに行こうか?」
耕作「いや、君は顔を知られてる可能性が高いから俺が行ってくるよ。」
柔「あたしはここで待ってたら良いの?」
耕作「少し離れた場所で待ってて。」
柔「うん、分かった。」
柔は耕作が薬局の中に入って行ったのを見届けると少し離れた場所まで移動した。
柔「(大丈夫かな~、あの人って今迄あれを買った事なんて無いはずだから。)」
柔「(ちゃんと買えるか不安だな~。)」
柔「(買えたら帰って見せて貰いたいな~、どんなのか知らないし。)」
柔「(そもそも、あたしってそういう物に関しては全然知らないのよね~。)」
柔「(桜お姉ちゃんは名前だけは教えてくれたけど。」
柔「どう言う使い方をするか迄はお話してくれなかったからな~。)」
耕作が柔の所へやって来た。
柔「どうだった?」
耕作「一応は買えたけど、帰って話そうか。」
柔「うん、そうだね、戻りましょう。」
柔と耕作は腕を組んで柔の実家に戻って行った。
実家に着くと木戸を潜って玄関から中に入った。
柔「戻ったよ~。」
耕作「ただいま、戻りました~。」
玉緒が返事をした。
玉緒「お帰りなさい。」
玉緒「2人共お疲れ様でしたね、上に上がってて良いわよ。」
柔「は~い、そうするね~。」
柔と耕作は玄関を上がると台所へ行き耕作がポットを持ち柔はカップ2つと
茶葉の入った急須を持って2階へ上がって行った。
2階の部屋に入ると耕作はポットを机の上に置きベッドに座った。
柔はお茶を注ぎコーヒーを淹れて耕作にコーヒーを渡しながら寄り添って座った。
柔「はい、あなたの勇気を称えたコーヒーだよ。」
耕作「ありがとね、確かに、かなり勇気が要ったよ。」
柔「あなたは今迄買った事無かったんでしょう?」
耕作「勿論だよ、知識としては有るけど。」
柔「ね~、あなた?」
耕作「使い方は箱の中に説明書が入ってるはずだから、それを見てね。」
柔「あは、分かってたのね~。」
耕作「君は好奇心の塊だからね、それ位分かるよ。」
柔「どんなのなの?」
耕作「えっとね、これなんだけど。」
耕作はポケットから小さな箱を取り出して柔に渡した。
柔「箱に入ってるんだ~、小さいね?」
耕作「まあ、箱自体は小さいけどね。」
柔「開けてみても良い?」
耕作「箱だけ開けてね、中身を開けたら使えなくなるみたいだから。」
柔「うん、分かった~。」
柔は箱を開けて中身を取り出した。
柔「これなの?」
耕作「そのはずだよ。」
柔「ね~、これ全部繋がってるよ~、面白いね~。」
耕作「その方が使い勝手が良いからじゃないかな?」
柔「ね~、あなた?」
耕作「だ~め、開けたら使えなくなるって、さっき言ったばかりでしょう?」
柔「やっぱり駄目か~。」
柔「説明書ってこれかな?」
耕作「そのはずだけど?」
柔は説明書を広げて読み始めた。
柔「へ~、こうやって着けるんだね~。」
柔「これって普通の状態じゃ無理だよね?」
耕作「それはそうだね。」
柔は説明書と中身を畳むと名残惜しそうに箱の中に直し蓋を閉めた。
耕作「じゃあ、どこかに直しとこうか。」
柔「どこが良いかな?」
耕作「直ぐ使う物でもないしな~。」
柔「あなたのバッグの中は?」
耕作「あ、それ良いかもね。」
耕作は柔から箱を受け取ると立ち上がって自分のバッグの底の方に直しベッドに座った。
柔「ね~、買う時に何か言われた?」
耕作「特に言われなかったかな?」
柔「そうなんだね~。」
柔「あれってサイズとか無いの?」
耕作「どうして?」
柔「服とか着る物にはサイズが有るじゃない?」
耕作「そうだね。」
柔「あれって着ける物だよね?」
耕作「その通りだけど?」
柔「それなら、あれにもサイズが有るのかなって思っただけなんだけど。」
耕作「なるほど、的確な論法だね。」
柔「ね~、どうなの~?」
耕作「勿論サイズは有るよ。」
柔「やっぱりそうなんだ~。」
柔「それで、あなたのサイズは?」
耕作「何で、そうサイズに拘るのかな?」
柔「だって~、あなたのって・・。」
耕作「はい、そこまでね~。」
柔「え~、何で~。」
耕作「そう言うのは君が実感してるんだから良いでしょう?」
柔「やだ~、あなたったら~、そう言う事を言うんだね~。」
耕作「だって、君が言ってた事だよ?」
柔「あは、確かに、そう言ってたね~。」
耕作「そう言う事は君の胸の内に秘めてて欲しいかな~。」
柔「あなたとあたしだけの秘密って事なの?」
耕作「そうそう、俺達だけが知ってる秘密だよ。」
柔「そうなのね~、あなたとあたしだけの秘密か~、良いよね~。」
耕作「分かってくれたかい。」
柔「うん、もう聞かないね~、秘密か~、うふ、何だか嬉しくなっちゃった。」
耕作「という事で、この話はお終いね。」
柔「分かった~。」
耕作「話は変わるけど、さっき話してた寝技の練習方法の事で聞きたい事が有るんだ。」
柔「どう言う事を聞きたいの?」
耕作「君自身は何か考えてるの?」
柔「あなたとの夜の寝技の練習なら考えても良いんだけどな~。」
耕作「こらこら、人が真面目に聞いてるのに、そんな事を言うかな~。」
柔「うふ、ごめんね~、冗談だから~。」
柔「そうね~、一応は考えてるかな?」
耕作「どんな事をしようと思ってるの?」
柔「あなたならどう言う風にしたら良いと思う?」
耕作「何か、前も同じ事を聞かれた気がするけど。」
柔「うふ、確かに同じ事を聞いたね、それで寝技に関してはどうなの?」
耕作「寝技か~、俺も全部は知らないんだよな~。」
柔「さあさあ、どうなのかな~?」
耕作「そうだね~、俺なら寝技を組み合わせて教えるかな?」
柔「どう言う事なの?」
耕作「具体的にどうとは言えないけど。」
耕作「寝技を掛けて失敗したら次に掛けるのは違うのにするって言う感じで教えると
相手に逃げられ難くなるんじゃないかって思ったんだ。」
柔「さすがですわ~、あたしの旦那様だけの事は有ると思いますわよ~。」
耕作「その言葉遣いは・・、君が考えてたのと同じって事なのかな?」
柔「まさに、その通りでございます。」
耕作「じゃあ、何で富士子さんにそう言ってあげなかったの?」
柔「富士子さんには自分で考える癖を付けて貰いたいかなって思ったから。」
耕作「なるほど、指導する立場に立つって言うのはそう言う事も含めてだからか。」
柔「うん、そう言う事なの。」
柔「何時までも、あたしを当てにしてたら、いけないって事なんだよね。」
耕作「だから、君は富士子さんに早く自立して欲しいって言ってたのか。」
柔「そうなの、あたしに聞く時はどうしても自分には分からない時にして欲しいの。」
柔「色々考えてると良い案も浮かび易いからね。」
柔「推理するのと一緒だと思うよ。」
耕作「推理するのと一緒って、何が?」
柔「色んな断片を組み合わせて1つの考えに纏める所かな?」
耕作「君って推理小説とか読んだ事有るの?」
柔「ううん、読んだ事は無いけどテレビで見た事は有るかな?」
耕作「君の知識って殆どがテレビなんだね。」
柔「おじいちゃんに付き合わされて仕方なく見てたんだけどね。」
耕作「滋悟朗さんの影響がこんな所にも。」
耕作「しかし、仕方なく見てた割には良く覚えてるよね~。」
柔「一応興味が有って見てたからね、途中からだったけど。」
耕作「そうか、興味が有る事は良く覚えるんだ。」
柔「そうだよ~、あなたに教えて貰った事は全部覚えてるよ?」
耕作「俺が教えた事って碌な事が無かった気がするんだけど。」
柔「あたしにとっては興味のある事だから良いのよ~。」
耕作「いかん、また脱線してるし。」
柔「うふふ、何時もの事じゃない?」
耕作「そうなんだけどね。」
耕作「それで、さっきの案だけど富士子さんが考えた案が駄目な時に披露するつもりなの?」
柔「そう言う事になるのかな?」
柔「ただ、富士子さんの案に少し修正を加えて使えるならそれで良いと思うよ。」
耕作「ほんとに感服する位用意周到なんだね。」
柔「あたしの柔道も同じだと思うけど。」
耕作「確かに、君は全てに対応可能な技を全部身に付けてるからね。」
柔「でも、身に付けて無い技も有るのよね~。」
耕作「え?君でも身に付けて無い技とか有るの?」
柔「うふ、あなたとの夜の・・。」
耕作「は~い、そこまでね~。」
柔「あ~ん、言わせて貰えなかったよ~。」
耕作「ほんと、君って直ぐそうやって茶々入れるの好きだよね~。」
柔「うふふ、あなたの反応を見るのが好きなの~。」
耕作「まあ、真面目に話すだけじゃ駄目なのは俺にも分かるから良いけど。」
柔「冗談はさて置いて、富士子さんには技の数を増やして欲しいのよね~。」
耕作「対処出来なかった事が出来る様になるからでしょう?」
柔「うん、そうすれば今迄勝てなかった相手にも勝てる様になると思うのよね。」
柔「ただ、それだけで増やして欲しいって思ってる訳じゃ無いの。」
柔「ね~、あなたは富士子さんに足りない物って技以外に何か思い付かない?」
耕作「富士子さんの技以外に足りない物か~。」
柔「選手として柔道をやってる同年齢と決定的に違う事なんだけど、分からない?」
耕作「決定的に違う事・・、あ~、そうか~、場数もしくは実戦経験だね?」
柔「そうなの、こればかりは対戦数を増やすしかないんだけど。」
柔「そうなった時に不利になるのが技の少なさなのよね~。」
耕作「確かに、それは言えてるね。」
耕作「それで今日みたいな練習の指導をさせる事で覚える様に仕向けてるんだ。」
柔「そう言う事なんですよ~。」
耕作「でも、何でそこまで急いで覚えさせようとしてるの?」
柔「あなたなら分かると思うんだけど?」
耕作「俺なら分かるって?どう言う事?」
柔「分からない?じゃあ、ヒントね。」
耕作「うん、お願い。」
柔「あたしのおじいちゃんの事を考えれば分かると思うんだけど。」
耕作「滋悟朗さんの事を考える・・か。」
耕作「・・・、もしかして女性の指導者が居ないって事?」
柔「まあ、半分正解かな?」
耕作「今ので半分か・・。」
柔「じゃあ、少し視点を変える為のヒントね。」
耕作「うん、お願いするよ、今のままじゃ分からないから。」
柔「オリンピックとかの代表選手の年齢を考えてみて?」
耕作「・・・、あ~、分かった~。」
耕作「女性は選手としての寿命が短いんだ。」
耕作「なるほど、それで富士子さんにこれだけ急いで覚えさせようとしてるのか。」
柔「そうなの、富士子さんもどれだけ頑張ったとしても次のオリンピックまでが
限界だと思うのよね。」
柔「それもかなり厳しいの、今のままだと。」
耕作「やっぱり30を超えると駄目なのかな?」
柔「駄目って事は無いけどね、結婚とか出産の事を一切考えないならだけど。」
柔「ましてや、富士子さんは一度出産してるからね?」
耕作「ちょっと待って?そうなると君もじゃないの?」
柔「あたしの場合は幸か不幸か、あなたも言ってる様に天賦の才が備わってるらしいから。」
柔「それと小さい頃からおじいちゃんに鍛えられてたのも有るからね。」
耕作「だから、君は1年のブランクの後でも、あれだけ短期間で復帰出来たのか。」
柔「そうだと思うよ、普通だとあれだけ短い期間で元に戻すなんて出来ないと思う。」
耕作「それを聞くと出産後の君の回復も並大抵の努力じゃ厳しいのか。」
柔「あの時も並の努力以上の事をしてたからね。」
耕作「うん、それは俺も知ってるけど、あれ以上の事をしないといけないんじゃない?」
柔「多分、そうなると思うよ、練習とかトレーニングが一切出来なくなる期間が有るからね。」
耕作「う~ん・・。」
柔「あなた?」
耕作「うん?どうしたの?」
柔「あたしはあなたとの子供は絶対に生むからね?」
耕作「分かった、一瞬止めるべきか考えたけど、君の今の言葉でそれは無くなったよ。」
柔「うふふ、あなたならそう言ってくれると思ってたよ。」
耕作「まあ、まだかなり先の事だから、今はその事は考えない様にしようか。」
柔「そうだね~、今は考えなくて良いと思うよ。」
柔「それと年齢は若干違うけど、富士子さんも復帰出来た訳だしね。」
耕作「そうか、一応は大丈夫と思っても良いんだ。」
柔「うん、そう思っておかないとね?」
柔「後、おじいちゃんも太鼓判を押してたから。」
耕作「あ~、そう言ってたね。」
柔「上手くいけば出産後の4ヶ月か5ヶ月後が国際大会になるはずだから。」
耕作「なるほど、それなら十分に間に合いそうだね。」
柔「うん、3ヶ月以上有るから完全回復まで行けると思うよ。」
耕作「しかし、相変わらず君は先の事を見据えてるね。」
柔「あなたとの子供を産むって決意した時点でそこまで考えてたよ。」
耕作「君にばかり負担を強いる様で心苦しいな。」
柔「あなた?そう言う事はもう二度と口にしないでね?」
耕作「しかし、・・。」
柔「あなたが一緒に居るからあたしはここまで決意出来たのよ。」
柔「それに皆との対戦の約束もしたの。」
耕作「分かった、もう二度と言わないよ。」
柔「あなたが傍に居て支えてくれてる事があたしにとっては凄く勇気付けられる事なの。」
耕作「そうだよな、その為に俺は君と一緒に居る事を決めたんだから。」
柔「うふ・・。」
柔は耕作を見上げると目を瞑った、耕作はそれに応える様に柔の両頬を両手で包み込むと
優しく長めのキスをした。
柔「うっとりする位の素敵なキス、ありがとう~。」
耕作「君のキスもとても素敵だったよ。」
耕作「その時が来たら全力で君を支えるから。」
柔「うん、その時はあなたに全て任せます。」
柔「あ、でも子育ては、あたしもするから。」
耕作「そうしてくれるとかなり助かるよ。」
柔「親としての務めは、あなたと共同でやりたいからね~。」
耕作「以前もそう言う感じの話をしたね。」
柔「フクちゃんの時も愛おしかったけど、自分の子供だと一層愛おしく感じそう。」
耕作「そうだよな~、女の子なら君に似て可愛いと良いね~。」
柔「男の子なら、あなたみたいに逞しく育って欲しいかな~。」
耕作「どうせなら2人一度に欲しいって思うのは欲張りかな?」
柔「1人でも大変なのに?」
耕作「そうか~、富士子さん、大変そうだったからな~。」
柔「まあ、あたしの場合はおかあさんも居るから大丈夫とは思うけど。」
柔「だから、子育てに関しては、あなたの負担も相当減ると思うよ。」
耕作「でも、玉緒さんには余り負担は掛けたくないかな?」
柔「うふふ、それは考え過ぎだと思うよ?」
耕作「どうしてそう言えるの?」
柔「おかあさんからするとあたし達の子供って孫になるんだよ?」
耕作「孫だとどうなるの?」
柔「富士子さんのご両親の事を思い出してみて?」
耕作「富士子さんの両親?」
耕作「あ~、そう言えば富士子さんから奪おうとする位に可愛がってたね。」
柔「そう言う事だよ。」
耕作「玉緒さんもそうなるって事?」
柔「なると思うよ~。」
柔「それにもう一人忘れてない?」
耕作「あ~、滋悟朗さんか~。」
柔「加えて言うなら、おとうさんが帰ってきたら更に争奪戦を繰り広げそうなのよね~。」
耕作「そうか、あやして貰ったりは任せて良いのか。」
柔「うん、あたし達がする事はミルクを上げるのとオムツを換える事位しか無いと思うよ?」
耕作「でも、ミルクを上げるのって結構大変じゃない。」
柔「まあ、そうなんだけどね、後は夜泣きかな?」
耕作「そこで俺の出番になる訳なんだ。」
柔「それはあなたとあたしで交互に面倒を見る事になりそうね。」
耕作「君を寝不足にさせる訳には行かないから、出来る限り俺がするよ。」
柔「あなたにも無理はさせられないからね~、あたしもちゃんとするから。」
耕作「分かったよ、でも無理はしない様にしてね。」
柔「うん、それは心掛けるから。」
耕作「晩御飯の用意まではまだ結構時間が有るから少し寝たら?」
柔「あなたは?」
耕作「俺も眠くなったら寝るから。」
柔「じゃあ、また2人で横になろうか?」
耕作「そうだね。」
柔と耕作はカップを机の上に置くとベッドに寄り添って横になると向き合った。
柔「抱き付いても良い?」
耕作「良いよ。」
柔は片手を耕作の肩越しに頭の後ろに回しもう片方の手を背中に回して
片足を耕作の両足に間に入れて抱き付くと顔を耕作の胸に埋めた。
耕作も柔を支える様に片手で優しく抱き締めて空いた手で柔の頭を撫でた。
柔「気持ち良いな~。」
耕作「肩の方の手はきつく無いかい?」
柔「うん、大丈夫だよ。」
柔も耕作の項を撫でた。
耕作「そうされると何かゾクゾクするよ。」
柔「あ、嫌かな?」
耕作「ううん、心地良いのは同じだよ。」
耕作は柔の頭を撫で続けていた。
柔「眠くなっちゃった。」
耕作「寝て良いよ。」
柔「うん、そうする・・ね。」
柔はそう言い終わると寝てしまった。
耕作「俺も少し寝るかな。」
耕作は目を瞑って柔の呼吸を体で感じているうちに寝入ってしまった。