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かなり時間が経過して10時を回った頃に柔が皆に話し掛けた。
柔「そろそろ休憩しましょうか?」
陽子「そうですね、皆、休憩して良いそうだよ。」
全員「分かりました。」
温子「お茶かコーヒーを淹れてきましょうか?」
陽子「そうね、お願いしても良いかしら?」
温子「分かりました。」
温子「ところで、お茶が良い人居ますか?」
柔「あっ、あたしはお茶をお願~い。」
温子「良いですよ、注いできますね。」
温子「他の人はコーヒーで良いですか?」
耕作「構わないよ。」
陽子「良いよ。」
恵美、雅「コーヒーで良いよ。」
美香、真紀、由紀「それで良いよ。」
陽子「1人は大変だろうから、由紀も手伝ってあげてね。」
由紀「は~い、分かりました。」
温子と由紀は部屋を出て行った。
雅「私、お菓子持ってきたんですけど、どうですか?」
陽子「良いわね、柔さんと松田さんは如何ですか?」
柔「頂こうかな?」
耕作「俺は良いから、他の人で食べて。」
陽子「分かりました。」
雅「じゃあ、持って来て配ります。」
雅も部屋を出て行った。
柔「陽子さん?さすがね。」
陽子「え?何がですか?」
柔「皆に信頼されてるのが良く分かるわ。」
陽子「そうですか?」
柔「うん、皆、あなたの言う事は良く聞いてるもん。」
柔「あたしが居ない時は陽子さんに代わりを頼んでも良いかしら?」
陽子「代わりって、まさか、柔道の指導じゃないですよね?」
柔「そのまさかなんだけど、頼めるかな?」
陽子「え~、無理ですよ?私にそんな技量は無いですし。」
柔「大丈夫、あたしが指導が出来る様に教えるから。」
陽子「柔さんみたいにちゃんと教える事なんて出来ませんよ~。」
柔「そんな事は無いよ?」
柔「皆の信頼が厚いから、ちょっとした要領を教えるだけでも良いのよ。」
柔「それをどうすれば良いかはちゃんと教えるよ。」
柔「だから、どうしても陽子さんにやって欲しいの。」
陽子「柔さんがそこまで仰るなら出来る限り頑張ってみます。」
柔「良かった~、陽子さんなら出来ると思ってるから。」
柔「そう言う訳で、あたしが居ない時は陽子さんに代わりをお願いする事になったから、
皆、その時はよろしくね。」
全員「分かりました。」
恵美「陽子?頑張って?」
美香「陽子先輩なら必ず出来る様になりますよ。」
真紀「先輩、よろしくお願いします。」
陽子「こらこら、まだ、私はまだ出来ないからね?」
陽子「でも、柔さんに指導して頂いて出来る様になったら、その時はよろしくお願いね。」
恵美「陽子なら出来る様になるって。」
柔「他の3人にも今言った事は教えてあげてね。」
陽子「分かりました。」
ドアが開いて雅がお菓子を持って戻ってきた。
雅「持ってきたよ・・、何か話してたの?」
陽子、恵美「お帰り。」
美香、真紀「お帰りなさい。」
柔「お帰り~。」
耕作「お帰り。」
柔「今、陽子さんにあたしが居ない時は代わりやって貰う様にをお願いしたところなの。」
雅「え?柔さん、止めちゃうんですか?」
柔「違うよ~、あたしが練習に参加出来ない時だけだから。」
雅「あっ、そう言う事なんですね、すみません、早とちりして。」
雅「陽子?頼りにしてるよ?」
陽子「だから、まだ早いんだって。」
陽子「柔さんから代わりが出来る様に指導して貰ってからじゃないと、今は無理よ。」
雅「それもそうね、でも、期待してるよ。」
陽子「分かってるって、頑張るよ。」
雅「そうだった、お菓子どうぞ~。」
雅はお菓子を耕作以外に配って回った。
柔「雅さん、ありがとう~。」
陽子、恵美「ありがとう。」
美香、真紀「雅先輩、ありがとうございます。」
再びドアが開くと温子と由紀がお茶とコーヒーを持ってきた。
温子、由紀「お待たせしました~。」
温子と由紀は手分けしてお茶とコーヒーを配った。
温子「柔さんはお茶でしたね?」
柔「そうよ、ありがとう~。」
由紀「松田さんはコーヒですね。」
耕作「そうだよ、すまないね。」
温子、由紀「後は全員コーヒーでしたね。」
陽子、雅、恵美「2人とも、ありがとう。」
美香、真紀「温子、由紀、ありがとう。」
柔「それじゃ、頂きましょうか。」
耕作「頂きます。」
陽子、他全員「頂きま~す。」
柔「温子さん?由紀さん?」
温子、由紀「はい。」
柔「さっき、他の人にはお話したんだけど。」
柔「この先、あたしが練習に参加出来ない時には陽子さんに代わりをお願いしたから。」
温子「そうなんですか?」
柔「直ぐにそうって言う訳じゃなくて、先々そうなるって言う事ね。」
由紀「え~、柔さん、教えてくれないんですか?」
柔「由紀さん?たった今、先々だって言ったよ?」
柔「由紀さんは先走り過ぎだよ。」
由紀「あっ、そうでしたね、すみません。」
陽子「由紀は早とちりが過ぎるから仕方ないけど。」
雅「少しは直さないと。」
恵美「後々、苦労するよ?」
由紀「先輩~、皆で言われると落ち込むんですけど~。」
温子「またまた、本当は嬉しいくせに。」
由紀「えへ、バレちゃいました?」
温子「バレバレよ、顔が微笑んでたし。」
柔「なるほど、由紀さんは慌てん坊さんなんだ。」
由紀「あ~、柔さんに知られてしまった~。」
柔「昨日で既に分かってたけどね~。」
柔「あたしも昔はその気が有ったから、気にしなくても良いよ。」
柔「ただ、柔道の練習で早とちりしちゃ駄目だからね?」
由紀「はい、気を付けます。」
陽子「柔さん?休憩時間の今だからお聞きしたい事が有るんですけど、良いですか?」
柔「良いよ、どんな事を聞きたいの?」
陽子「不躾な事を聞くんですが、お二人は如何して結婚しようと思ったんですか?」
柔「それって、言わなかったっけ?」
由紀「聞いて無い気がします。」
柔「そうか、えっと、お互いを必要としたからかな。」
陽子「必要ですか?」
耕作「柔?その言い回しだと他の人には分からないと思うよ。」
柔「そうかな?」
耕作「具体的にどう必要なのかを言わないと。」
柔「それもそうね。」
柔「あたしは柔道をする上でも、普通に生活していく上でも主人の存在が無いと駄目なのよ。」
温子「柔道に関しては昨日お話を聞いてる限りでは理解出来ましたけど。」
恵美「普段の生活でって言うのは、私達は知らないから分かりませんよ。」
柔「それもそうか。」
耕作「俺にとって、柔が傍に居る事で凄く癒されるからかな。」
柔「あたしもそうかな。」
陽子「お互いの存在が癒されるって事なんですね。」
柔「そうなの。」
柔「あたしの場合は、それに加えてとても安心するのよね、傍に居てくれるだけで。」
雅「良いな~、私もそう言う人が見付からないかな~。」
真紀「ですよね、中々そう言う人って居ませんもんね。」
柔「もし、皆がそう言う人を見付けたいと思うなら、好意を寄せてる方が居れば、その方と
まずはお話しないと分からないと思うよ。」
美香「お話ですか?」
柔「うん、見ただけじゃ分からないでしょう?そう言う事って。」
恵美「確かに、その人と話してみて初めて分かる事ですよね。」
柔「そうよ、だから、見てるだけじゃなくて自分から話し掛けるとかしないと。」
陽子「なるほど、声を掛けられるまで待ってちゃ駄目って事ですね。」
柔「そうそう、ただ、最初のうちは普通に世間話する感じで良いと思うよ。」
温子「要は声を掛けるかどうかで、その先に行けるかが決まる訳ですね。」
柔「待ってるだけじゃ駄目って事ね。」
柔「皆は当然好意を寄せてる人って居るよね?」
陽子「私達、昨日言いませんでした?」
柔「あっ、そうか、まだ居ないって事なのね。」
陽子「ひょっとすると自分では気付いて無い可能性も有りますけど。」
柔「それなら、あたしと同じだよ。」
柔「あたしも最初は恋愛感情とか無くて主人とは単に知り合っただけだから。」
陽子「そうだったんですか。」
柔「何度か会う事を繰り返してるうちにお互いに恋愛感情が芽生えたかな。」
恵美「なるほど、とても参考になります。」
柔「あっ、そろそろお仕事を再開しましょうか。」
陽子「そうですね、分かりました。」
全員「はい。」
柔達全員は再び仕事を始めて、耕作も原稿を書き始めた。
耕作「(柔の奴・・、また恋愛指南でもするのかと思ったけど。)」
耕作「(さすがに途中で打ち切ったか。)」
耕作「(でも、健闘を祈るって言ってから、俺達の事を出したのかも。)」
耕作「(確かに、俺達も最初は知り合っただけだったからな。)」
耕作「(その後、恋愛感情がお互いに芽生えたのもほんとの事だし。)」
耕作「(以前、柔が他でやった様に気付かせる事も大事なんだな。)」
柔が小声で話しかけてきた。
柔「ね~、さっき、あたしが皆に話した事を考えてるの?」
耕作「良く分かったね。」
柔「それは分かるよ~。」
柔「あなたの顔を見てると、気難しそうにしてたからね。」
耕作「皆に誰か好意を抱いてる人が居るかも知れないって事を気付かせようとしたんだろう?」
柔「あは、それも分かってたのね。」
耕作「君も言ってたじゃない?人数が多過ぎるから紹介は無理だって。」
柔「そうなのよね~。」
柔「だから、今迄に誰か居なかったかを気付かせようって思ったの。」
耕作「それで良かったと思うよ。」
耕作「誰も居ないはずは無いと思うし。」
柔「個別に相談されたら、その時は何か考えて挙げないといけないかな~。」
耕作「個別になら俺も或る程度協力出来るかも。」
柔「その時はお願いね。」
耕作「出来る限り力になるつもりだよ。」
耕作「でも、紹介するだけで、後は本人達に任せるんだよ?」
柔「勿論よ、桜おねえちゃんの時もそうだったじゃない?」
耕作「そうだったね。」
耕作「じゃあ、その辺りは心配しなくても良さそうだ。」
柔「あっ、ごめんね、お仕事の邪魔して。」
耕作「いや、俺は君と話すのは邪魔にならないって以前も言ったでしょう?」
耕作「それよりも俺と話す事で君の仕事が停滞する方が心配だよ。」
柔「大丈夫、一段落着いたから話し掛けたんだもん。」
耕作「そうか、それなら良いんだ。」
柔「じゃあ、またお仕事の続き始めるね。」
耕作「頑張れよ。」
柔「は~い、あなたもね~。」
柔は自分の仕事を始めたが、また、周囲の人に何を話してたのかを聞かれて、それに答えていた。
耕作「(やっぱり、皆、柔の事を気に掛けてるんだな。)」
耕作「(今は皆は柔の些細な事でも知りたいと思ってるからかな。)」
耕作「(まあ、俺も興味の対象になってるのは間違いないだろうけど。)」
耕作「(この先も俺と柔に関する事は聞かれるんだろうな~。)」
耕作「(しかし、何度も同じ話をしてる気がする。)」
耕作「(聞かれたのは別な人だから、仕方ないと言えば仕方ないか。)」
耕作「(俺は別に柔との事を敢えて話さなくても良いと思ってるけど。)」
耕作「(柔はそう思って無いからな~。)」
耕作「(柔が話す以上、俺も話さざるを得ないんだよな~。)」
耕作は肩を叩かれて振り向くと、そこには温子が立っていた。
耕作「どうかしたの?」
温子「すみません、お忙しいのに。」
耕作「いや、そこまで忙しく無いよ。」
耕作「それで俺に何か用かな?」
温子「お時間を取らせて申し訳ないんですけど・・。」
耕作「それも気にしなくて良いよ。」
温子「お聞きしたい事が・・。」
耕作「どんな事を聞きたいの?」
温子「あのですね、松田さんが柔さんを好きだと思ったのは何故なんですか?」
耕作「その事か~。」
耕作「何と言えば良いか。」
耕作「俺の所為でマスコミに追われる状況になった時に守ってあげないとって思ってたんだ。」
温子「そんな事が有ったんですか。」
耕作「それで守る為にはどうすれば良いか考えた結果、見守ってれば守れると思ったんだ。」
温子「見守る?柔道の試合とかをですか?」
耕作「それも有るけど、普段の生活でもそうした方が良いと思ったんだ。」
耕作「そうしているうちに、何時しか、柔に対して好意を抱いてる事に気付いたんだ。」
温子「なるほど、色んな場所で接触してるうちに恋愛感情に変化したって事ですね?」
耕作「端的に言えば、そう言う事になるね。」
温子「そうなんですね、分かりました。」
耕作「もしかして、君にもそう言う人が居るって事?」
温子「先程の柔さんのお話を聞いてて思い当たる人が居る事に気が付いたんです。」
耕作「君はその人に好意を抱いてるの?」
温子「相手がどう思ってるかは分かりませんけど。」
温子「私はその人に好意を抱いてるんだって分かったんです。」
耕作「なるほど、それじゃ、迷わずに声を掛けて切っ掛けを作らないと。」
温子「はい、今度会った時には私の方から声を掛けてみるつもりです。」
耕作「そうした方が良いよ、頑張って、俺も柔も応援するから。」
温子「ありがとうございます、頑張ってみます。」
温子「お時間を取らせてすみませんでした。」
耕作「その事は気にしなくて良いから、君は自分の事を考えて行動してね。」
温子「はい、分かりました、失礼します。」
温子は自分の席に戻って仕事を始めたが周囲の人に耕作と何を話したのか聞かれていた。
耕作「(まさか、あんな事を聞かれるとは思わなかった。)」
耕作「(皆に聞かれてるけど、ほんとの事は話せないだろうな。)」
柔が小声で話し掛けてきた。
柔「ね~、何のお話だったの?」
耕作「仕事は?」
柔「今のお話が気になって手に付かないのよ~。」
耕作「そんな大した事でも無いよ。」
柔「そう?あなたがどうしてあたしを好きになったのかとか聞こえたら気になるよ?」
耕作「そこはちゃんと聞こえてたのか。」
柔「それはね~、あなたの事だと良く聞こえるのよ~。」
耕作「そうだった、向こうに居た時から俺に関する事は良く聞こえてたね。」
柔「ね~、言えない事なの?」
耕作「どうするかな~。」
柔「もしかして、温子さんに彼氏が居るとか?」
耕作「そこまで分かってるなら言っても良いか。」
柔「やっぱり、そうだったのね。」
耕作「少し違ってて、彼女が好意を抱いてる人が居る事に気が付いたんだって。」
柔「なるほど、それであなたが何であたしを好きになったかってお話になったのね。」
耕作「そう言う事だよ、だから、取り敢えず、話し掛けてみたらって言ったんだ。」
柔「そう言う事か~、あなたも中々良いアドバイスをするのね。」
耕作「まあ、君の受け売りだけど。」
柔「ところで、鴨田さんには何時連絡するつもりなの?」
耕作「あっ、いけない、忘れる所だった。」
柔「ここから電話すれば良いよ。」
耕作「私用の電話になるから、どこか別な場所でするよ。」
柔「私用にはならないと思うよ?」
耕作「どうして?」
柔「だって、柔道部に関する事だから。」
耕作「それはそうだろうけど、良いのかな?」
柔「良いわよ、あたしがちゃんと説明するから。」
耕作「分かった、君がそう言うなら、ここから掛けるよ。」
柔「あたしは自分のお仕事の続きをするね。」
耕作「分かった、電話の件、ありがとね、助かったよ。」
柔「うふ、どう致しまして。」
柔が自分の仕事の続きを始めたので、耕作は鴨田に連絡を入れる為に編集部に電話した。
耕作「松田です、すみません、鴨田は居ますか?」
耕作「お願いします。」
耕作「鴨田か?」
耕作「鴨田、すまないけど、今日の14時前に猪熊家に行って滋悟朗さんを西海大へ
連れて行ってくれないか?」
耕作「分かってるって、お前が滋悟朗さんを苦手なのは。」
耕作「でも、滋悟朗さんも以前とは違ってきてるから安心して良いよ。」
耕作「すまないな、頼むぞ。」
耕作「分かった、そうしてくれ。」
耕作は受話器を置いた。
耕作「(柔が言ってくれなかったら完全に忘れてしまう所だった。)」
耕作「(今日のお昼は何かデザートでも奢るかな。)」
柔は再び小声で話し掛けてきた。
柔「ね~、どうだった?」
耕作「安心して、ちゃんと迎えに行く手配は出来たから。」
柔「そう、良かった~。」
柔「万一、忘れてたりしたら・・。」
耕作「そうだよな~、帰ったら何て言われるか・・。」
柔「そうだ、今日のお昼はあたしが奢るね。」
耕作「急にどうしたの?」
柔「今日、あなたにお弁当を作ろうと思ってて忘れちゃったから。」
耕作「それ位気にしないで良いよ。」
柔「そんな訳にはいかないよ~、あたしはあなたの奥さんだよ?」
耕作「分かった、君の気の済む様にして良いよ。」
柔「じゃあ、あたしの奢りね~。」
柔「明日はちゃんとお弁当作るから。」
耕作「楽しみにしとくよ。」
柔は皆に向かって話し掛けた。
柔「それじゃ、そろそろお昼にしましょうか。」
陽子「もうそんな時間ですか?」
柔「ここは少し早めでも構わないって、昨日課長が仰ってたでしょう?」
陽子「そうでした、分かりました。」
陽子「皆、お昼にしよう。」
全員「はい、分かりました。」
陽子「柔さん達は今日も外食ですか?」
柔「そのつもりだけど?」
陽子「実は昨日帰りがけに皆で話し合って、柔さん達のお弁当を手分けして作ってきたんですよ。」
柔「え?そんな事を話し合ってたんだ。」
陽子「だから、ここでお昼は一緒に食べましょう?」
柔「あなた?そう言う事だそうよ、どうする?」
耕作「皆に申し訳ないから、ごちそうになるよ。」
柔「主人もこう言ってるから、ごちそうになるね。」
陽子「分かりました、皆、作ってきた物を持って来て。」
全員「分かりました、取ってきます。」
温子「私と由紀でお茶を淹れてきます。」
陽子「お願いね。」
温子「由紀、行こう?」
由紀「分かりました、行ってきます。」
陽子「私も皆と一緒に取りに行ってきます。」
柔「慌てなくて良いからね。」
陽子「はい。」
陽子達は全員部屋から出て行った。
柔「まさか、こんな展開になるとは思って無かったよ。」
耕作「それは俺も一緒さ。」
耕作「しかし、ほんとに陽子さんはリーダーシップが有るね。」
柔「そうね、これなら、あたしの代わりを任せても安心だよ。」
耕作「そうだな、後は君が彼女をちゃんと皆を指導出来る様に教えられるかだね。」
柔「あら~、今迄のあたしを見てきたあなたがそう言う事を言いますか?」
耕作「そうだった、出来るかどうかじゃなくて必ず出来る様になるって事か。」
柔「そうですわよ?」
耕作「時間がどれ位掛かるかって事だけだね。」
柔「陽子さんのやる気次第かな?」
耕作「それは大丈夫じゃない?」
柔「そうかもね、皆にも自分から宣言してたし。」
ドアが開いて陽子達全員が戻ってきた。
陽子「お待たせしました。」
恵美「それでは、私達の力作をご堪能下さい。」
雅「美香?真紀?お二人にお料理を渡してね。」
美香、真紀「はい、分かりました。」
美香「こちらが柔さんの分になります。」
真紀「こちらが松田さんの分になります。」
柔「ありがとう、美味しそうね~。」
耕作「態々、すまない、美味しそうだよ。」
温子と由紀が全員にお茶を配り終えた。
陽子「それでは、柔さん、お願いします。」
柔「分かったわ、皆、ありがとう。」
柔「では、今からお昼ご飯にします。」
全員「いただきま~す。」
柔「これ美味しいね~、誰が何を作ったの?」
陽子「私は唐揚げを作りました。」
恵美「私は肉じゃがを。」
雅「私は卵焼きを。」
温子「私はおにぎりを。」
美香「私もおにぎりです。」
真紀「私はサラダを。」
由紀「私は~アスパラのベーコン巻きを作りました。」
柔「そうなんだ、皆、お料理が上手なのね~。」
柔「自分達の分と別に作るのって大変だったでしょう?」
陽子「そうでも無いですよ、皆、それぞれに得意料理を作っただけなので。」
柔「それにしては見た目もだけど、味もしっかりしてるよ。」
由紀「褒めて頂いて、嬉しいです。」
温子「松田さんは如何ですか?」
耕作「俺のも美味しいよ。」
恵美「意地悪な質問をしても良いですか?」
耕作「俺に?」
恵美「そうですけど、駄目ですか?」
耕作「いや、構わないけど、柔の作るのとどっちが美味しいかって事でしょう?」
恵美「あら、良く分かりましたね?」
耕作「意地悪なって言う時点でピンときたよ。」
恵美「そうでしたか、それでどうなんですか?」
耕作「折角、皆で作ってくれて申し訳ないんだけど。」
陽子「恵美?あなたの負けよ?」
恵美「そうみたいですね、さすが、柔さんです。」
柔「え?主人はまだ何も言って無いよ?」
雅「分かりますよ?申し訳ないって仰いましたから。」
柔「あ~、そう言う事ね。」
柔「でも、あたしを目の前にして主人が皆の方が美味しいって言えるわけが無いよ。」
由紀「そうですよね。」
由紀「でも、実際に柔さんが作った料理が美味しいからそう仰ってる可能性が高いと思いますよ。」
柔「どうかな~。」
陽子「こうなったら是非とも柔さんの手作りのお料理を頂きたいですね~。」
真紀「そうですよ、食べてみたいです。」
柔「今度、うちに来た時に全部じゃ無いけど作って振舞うから。」
由紀「やった~、期待してま~す。」
柔「余り期待し過ぎなのもよく無いと思うけど。」
温子「そんな事は無いですよ、柔さん、とてもお料理が上手そうですから。」
柔「その言葉が一番プレッシャーになるな~。」
陽子「柔さん?今日の練習は指導して頂けるんですよね?」
柔「勿論、そのつもりよ、色々考えてきたから。」
由紀「本当ですか~?楽しみだな~。」
柔「楽しみにするのは良いけど、かなりきついかもしれないから覚悟はしててね。」
温子「それは、望むところです、柔さんの練習方法がきついのは分かってますし。」
柔「あら、どうして分かったの?」
温子「西海大の部員達を見てたら分かりました。」
柔「あたしが西海大で教えてたって言った事有った?」
陽子「いいえ、滋悟朗先生が自慢気にお話しされてたからですよ。」
柔「そうなのね。」
柔「全く、どこでも話して回るのは余り変わって無かったか。」
耕作「別に悪い事でも無いんだし、良いんじゃない?」
柔「そうだけど、どこでもって言うのがね~。」
柔「他に何か言ってなかった?」
恵美「そうですね~、お二人の仲がとても良いって言うのも仰ってたかな?」
柔「まったく~、余計な事も言い触らしてるのか~。」
雅「でも、そのお話をされてる時の滋悟朗先生はとても嬉しそうでしたよ。」
柔「そうだったんだ、じゃあ、別に良いか。」
美香「私達もそのお話を聞いてたので、お二人に早くお会いしたいと思ってたんです。」
由紀「だよね~、こうしてお会いして納得出来ましたよ。」
柔「納得って?」
由紀「お二人の仲がとても良いって言う事にですよ。」
柔「そうかな?」
真紀「そうですよ~、何をするにしてもお互いに良く話し合ってますし。」
温子「松田さんが柔さんに話し掛ける時って、凄く優しい表情をされてますよ。」
陽子「それに柔さんが松田さんに話してる時は凄く嬉しそうですからね。」
柔「そんな所まで見てたのね、恥ずかしいな~。」
陽子「恥ずかしがる事は無いですよ、私達も微笑ましく見てましたから。」
由紀「そうそう、羨ましいな~って見てました~。」
柔「そう思うなら、早く良い人を見付けないとね?」
由紀「あちゃ~、やり返されちゃった~。」
温子「でも、その通りかもしれませんね。」
柔「そうだよ、何と言っても心に余裕が出てくるから。」
恵美「柔さんにそう言われると説得力が違いますね。」
柔「皆の作ったお料理、とても美味しく頂きました。」
柔「ごちそうさまでした。」
耕作「俺もしっかりと堪能出来たよ、ありがとう。」
耕作「それと、ごちそうさまでした。」
陽子「どう致しまして。」
陽子「皆も食べ終わったみたいね。」
陽子達「ごちそうさまでした。」
柔「あたしは羽衣課長に午前中の皆のお仕事の進捗状況を報告してくるから。」
陽子「はい、お願いします。」
恵美「後片付けは私達でやっておきます。」
柔「お願いね、行ってくる。」
陽子達「行ってらっしゃい。」
柔は羽衣の部屋に入って行った。
陽子「松田さんはゆっくりされてて下さい。」
耕作「すまない、後の事は頼むね。」
恵美「お任せ下さい。」
陽子達は全員の机の上をテキパキと片付けて、持ってきた物を戻す為に部屋を出て行った。
耕作「(ふむ、陽子さんを中心に全員が良く纏ってるな。)」
耕作「(柔も言ってた様に陽子さんに任せておけば柔道部も心配いらなそうだ。)」
耕作「(それにしても、柔、何時皆の仕事を見てたんだ?)」
耕作「(俺が気付いて無いだけで、ちゃんと見てたのかな?)」
耕作「(柔もこの部署のリーダーとしてちゃんとやってるって事か。)」
柔が羽衣の部屋から出てきて自分の席に座り耕作に話し掛けてきた。
柔「皆は後片付けして出て行ったのね?」
耕作「そうだよ、でも、直ぐ戻ってくると思う。」
柔「今、課長に報告して少しお話したんだけど。」
耕作「何か言われたの?」
柔「この後は直ぐに道場に移動して、そこで休んで良いんだって。」
耕作「ここで休んでるのを見られるのは良く無いからな~。」
柔「うん、それが理由みたいよ。」
柔「皆よりも余計に休んでるって思われたくないみたい。」
耕作「羽衣さんも色々気を遣って大変だな。」
柔「そうだよね、申し訳ないって思うっちゃうよ。」
耕作「まあ、羽衣さんの為にも何か結果を残さないといけないね。」
柔「そうなのよね~。」
柔「せめて誰かが個人優勝してくれれば、皆の見る目も変わると思うのよね。」
耕作「有望そうな子っているの?」
柔「あたしの見る限りでは温子さんが優勝を狙えそうかな?」
耕作「体重別とかで?」
柔「うん、あの子の体重で他にこれといった選手が居ないから有利なの。」
耕作「なるほど、って事は、温子さんを重点的に鍛える?」
柔「もう~、あなたったら~、あたしがそう言う教え方をして無いのは知ってるくせに~。」
耕作「そうだった、君は全体を見ながら底上げを図った練習が得意だったね。」
柔「そうだよ~、だから、その練習で技量が上がるかどうかは本人次第なのよ。」
陽子達が戻ってきた。
陽子「戻りました。」
柔「お疲れ様~。」
陽子「お二人で何を話されてたんですか?」
柔「今後の練習方針かな?」
恵美「ご夫婦でそう言う話もされるんですね。」
柔「そうね~、でも、どちらかと言えば柔道に関したお話の方が多いかも。」
温子「良いですね~、そう言うご関係で、羨ましいです。」
柔「そう思うなら・・。」
温子「早く良い人を見付けなさい・・ですよね?」
柔「あは、先に言われちゃったか~。」
柔「そうだ、課長から今直ぐに道場に移動して向こうで休憩しなさいって言われたよ。」
陽子「良いんでしょうか?」
柔「ここで休むよりもその方が周囲への影響を考えると良いんだって。」
恵美「なるほど、そう言う事ですか。」
陽子「分かりました、用意して駐車場へ行けば良いんですね。」
柔「そうして貰えないかな。」
耕作「俺は先に行って待ってるから。」
柔「はい、あなた?これ、車のキーよ。」
耕作「ありがとね、じゃあ、先に行ってるよ。」
柔「行ってらっしゃい。」
陽子達「行ってらっしゃ~い。」
耕作は柔に促されて裏口から出ると駐車場へ向かった。
柔「じゃあ、着替えと荷物を取りに行こうか、静かにね。」
柔「はい、そうしましょう。」
柔と陽子達は部屋を出て静かに荷物を取りに行くと裏口から駐車場へ向かった。