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柔と耕作(松田)の新婚日記 26日目 (午前編第2部)
文書量(文字数)が膨大な為、一日を8分割で表記しています。 |
下に下りた2人は台所へ行き、そこに着くと何時もの様に耕作はポットを流しの横の置いて
テーブルの椅子に座った。
その間に柔もカップと急須を洗ってカップを食器棚に直し急須に新しい茶葉を入れてお茶を
2杯注ぐと片方を耕作に渡しながら隣に座った。
耕作「お茶、ありがとね。」
柔「おかあさんが来るまで、もう少し時間が有るからお話出来るね。」
耕作「そうだね。」
耕作「そう言えば、さっき道場で俺の考えを分かってるかの様な行動してたけど。」
耕作「俺が何を考えてるか分かったの?」
柔「そんな事、あたししてた?」
耕作「俺が君を最初に見た時に頷いてたでしょう?」
柔「・・・、あ~、あれはあなたがあたしを見たからちゃんと見てるよ~って言う意味で頷いたの。」
耕作「その時、俺は見ててくれてるんだって思ったから、俺の考えが分かったのかと思ったんだ。」
柔「さすがにそこまでは分からないよ~。」
耕作「でもさ、その後、俺がトレーニングを止めようとした時に君は首を横に振ってたでしょう?」
柔「あれも、まだ少し早いと思うよって言う意味で首を振ったの。」
耕作「俺が止めようとしてたのが分かったからじゃないの?」
柔「そうなるのかな?」
柔「あなた、あの時動作を止めてたでしょう?だから止めるのかなって思ったのよ。」
耕作「確かに、動きを止めて君を見てたな。」
耕作「2度目の時も動きを止めた後に君を見たから、俺が止めようとしてたのが分かったのか。」
柔「そうで~す。」
柔「それで、もう十分だから止めても良いよって言う意味で頷いたの。」
耕作「俺の動きを見ただけで何を考えてるか理解してたのか、ある意味凄いな。」
柔「あなたの考えは概ね分かる様になってたしね。」
耕作「以心伝心だね。」
柔「そうね、それはあなたも同じでしょう?」
耕作「同じかな、俺も君が何を考えてるかは概ね分かるよ。」
耕作「ふふ、お互いに変な事を考えられないな~。」
柔「変な事って?」
耕作「あ、いや、例えで言っただけだから、深く考えなくて良いよ。」
柔「そうなの?」
柔「あたしはてっきり愛し合う事でも考えるのかと思っちゃった。」
耕作「それは変な事じゃなくて、2人にとっては当たり前の事じゃない?」
柔「そうだった、愛し合ってる2人にとっては自然の成り行きだったね。」
柔「とすると、あなたが言った変な事って何なの?」
耕作「だから、それは深く考えなくて良いんだって。」
柔「分かった~、あなたがそう言うなら考えない様にするね。」
耕作「そうしてね。」
耕作「しかし、君に対して迂闊に例え話が出来ないな~。」
柔「どうして?」
耕作「今みたいに君が勘違いする事が多いからね。」
柔「そうかな?」
耕作「さっきも例え話した時に早とちりしてたでしょう?」
柔「・・・、あ~、そうだったね。」
柔「あたしが早とちりしたから、あなたが『例えだよ』って言ってたね。」
柔「あなたのは例えかどうか分からない時が有ると思うんだけど・・。」
耕作「そうだと思ったから、例え話は出来ないって言ったんだ。」
柔「その方が良いかも、あたしって早とちりし過ぎる傾向が有るみたいだし。」
耕作「その様だね、言葉に敏感だから余計に早とちりしてるのかも知れないね。」
耕作「これからはもし例え話しないといけない時はどんな事の例えかちゃんと説明するよ。」
柔「そうして貰うと助かるわ~、早とちりしなくて済むし。」
玉緒がやって来た。
柔「あっ、おかあさん、おはよう~。」
玉緒「2人とも、おはよう。」
耕作「玉緒さん、おはよう~。」
玉緒「あなた達、また、ここで話し込んでたのね。」
玉緒「それなら、もう少し上に居て話してても良かったのに。」
柔「良いのよ~、お話の切りが良かったから下りてきたの。」
玉緒「それなら良いんだけど、何時も先に下りてきてるから。」
玉緒「以前みたいに、私が呼ぶまで上に居ても良いと思ったの。」
柔「気遣ってくれて、ありがとう~。」
柔「でも、今のままで良いと思ってるよ。」
玉緒「あなたがそう思ってるなら、それで良いわよ。」
柔「それじゃ、朝ご飯の用意するね。」
玉緒「今日は、あなたが作るのかしら?」
柔「そうしようかと思ってたけど、良いよね?」
玉緒「構いませんよ、私はお手伝いするわね。」
柔「お願いしま~す。」
柔と玉緒は何を作るか話し合った後に2人で朝ご飯の用意を始めた。
耕作「(柔、自分が作るとか言って無かったのに、どういう風の吹き回しなんだ?)」
耕作「(たまには自分も作らないととは言ってたけど・・。)」
耕作「(また、柔の思い付きで作るって決めたのかな?)」
耕作「(それとも、玉緒さんが『作るの?』って聞いたからなのか?)」
耕作「(たまに柔の考えが良く分からない時が有るんだよな~。)」
耕作「(それからすると、柔の方が俺よりも考えを読む能力は上なのかもしれない。)」
耕作「(そう言えば、アメリカでも俺の考えを読んでた時が結構有ったな。)」
耕作「(やっぱり、女性の方が勘が働き易いのか?)」
柔「あなた?何か考え事でもしてるの?」
耕作「あっ、ちょっとね、色々と考えてた。」
柔「ふ~ん、何を考えてるか大凡見当は付くけど・・。」
耕作「後で上に上がったら話すよ。」
玉緒「あら?ここで話せない様な事なのかしら?」
耕作「そんな事は無いですけど、話すと長くなって料理の邪魔をしそうなので。」
玉緒「それなら仕方ないわね。」
柔「何のお話なのか楽しみにしてるからね~。」
耕作「余り楽しい話じゃ無いかもしれないよ?」
柔「それでも良いのよ~、あなたのお話を聞くだけでも楽しいんだから。」
耕作「まあ、期待はしないでよ。」
柔「は~い。」
柔と玉緒は再び朝ご飯の調理に専念し始めた。
耕作「(柔、何か凄く期待してそうな笑顔だったな・・。)」
耕作「(それにしても、玉緒さんまで食い付いてくるとは思わなかったな~。)」
耕作「(実際、話すと長くなるのは間違いじゃないから、直ぐに納得してくれて助かった。)」
耕作「(しかし、柔の奴、相変わらず、料理中でも俺の事は見てたんだな。)」
耕作「(さっき話してた様な変な事を考えて無い分助かったかも。)」
耕作「(柔も俺が何を考えてるのか分かってそうだったな。)」
耕作「(どれ、そろそろ食器を用意しておくか、もう直ぐ出来上がりそうだし。)」
耕作「柔?何を用意すれば良いのかな?」
柔「何時も、ありがとう~。」
柔「え~っと、大皿1枚に中皿と小皿を4枚ずつで、後は何時もので良いよ。」
耕作「分かった、テーブルに並べておくよ。」
柔「うん、それで良いよ。」
耕作は立ち上がって食器棚の所へ行くとうわれた食器を出してテーブルに並べ、再び椅子に座った。
柔「ありがとう~。」
耕作「どう致しまして。」
玉緒「何時も見てるけど、あなた達、楽しそうで良いわね~。」
柔「うふふ、それがモットーだからね~。」
耕作「俺も柔の楽しそうな笑顔を見られるのが嬉しいから今のままで良いと思ってます。」
玉緒「そうなのね、柔?良かったわね。」
柔「うん、あたしも主人が喜ぶ姿を見るのは楽しいの。」
玉緒「本当にあなた達はお似合いの夫婦ですよ。」
玉緒「一緒になってくれて、私も嬉しいわ。」
柔「おかあさんにそう言われると、あたしも一緒になって良かったって改めて思うよ。」
柔「あなたもそう思ってるよね?」
耕作「勿論だよ、君と一緒になれて、この上なく幸せに思ってるよ。」
玉緒「あらあら、今からでもまた結婚式を挙げそうな雰囲気だわね。」
柔「もう~、あかあさんったら~。」
滋悟朗が台所にやって来た。
玉緒「おとうさん、おはようございます。」
滋悟朗「おはようさん。」
柔「おはよう~、おじいちゃん。」
耕作「滋悟朗さん、おはよう~。」
玉緒「もう直ぐ出来上がりますから。」
柔「居間で待ってて良いよ。」
滋悟朗「いや、ここが豪く賑やかぢゃったから、待てんで来てしもうたからここで良いぞい。」
玉緒「よろしいんですか?」
滋悟朗「構わんよ、偶には良かろう。」
玉緒「分かりましたわ、座ってお待ち下さい。」
柔「もう出来てるから、直ぐに用意するね。」
滋悟朗「慌てんでも良いぞ。」
柔「大丈夫よ。」
滋悟朗が椅子に座ると同時に柔はお茶を注いで滋悟朗に渡した。
滋悟朗「すまんな。」
耕作「やっぱり、五月蠅かったですか?」
滋悟朗「そんな事は無かったぞい。」
滋悟朗「楽しそうな話声が聞こえたから来てしもうただけぢゃ、気にするな。」
耕作「そうでしたか、それなら良かったです。」
柔、玉緒「お待たせしました。」
柔と玉緒は出来上がった料理を手際よく皿に盛り付けして茶碗とお椀にご飯と味噌汁をよそって
テーブルの上に並べると柔は耕作の隣に玉緒は滋悟朗の隣に座った。
滋悟朗「おお、今朝も美味そうぢゃのう。」
玉緒「頂きましょうか。」
4人「いただきます。」
滋悟朗「この大皿の料理は玉緒さんが作ったのかの?」
玉緒「それは柔が作ったんですよ。」
滋悟朗「そうぢゃったか、柔も料理が更に上達したのう。」
柔「そうかな?」
耕作「滋悟朗さんの言う通りだよ、以前よりも上達してる。」
柔「それなら頑張った甲斐が有って良かった~。」
玉緒「耕作さんのお母様にも色々教えて頂きましたものね。」
柔「そうなの、あれでレパートリーも一気に増えたのよね~。」
滋悟朗「そうぢゃったな。」
滋悟朗「ところで、その覚えてきた料理とやらは全部作ってはおらんよな?」
柔「そうね、まだ半分も作って無いかも。」
滋悟朗「何時かは作ってくれるんぢゃろうな?」
柔「心配しなくても良いよ。」
柔「あたしが作らなくても、おかあさんにも作り方とかは教えてるから。」
滋悟朗「そうなのか?玉緒さんや。」
玉緒「はい、ちゃんと柔から作り方は聞いてますよ。」
滋悟朗「それなら、今度作ってくれんかのう。」
玉緒「そうですね、近いうちに作りましょうか。」
滋悟朗「そうしてくれ、楽しみにしとるからの。」
滋悟朗「柔は柔道の方に専念してくれれば構わんから。」
柔「あたしもそのつもりだから安心して良いよ、おじいちゃん。」
滋悟朗「あの中の誰でも良いから代表選手になる様にして欲しいもんぢゃで。」
柔「代表選手か~、出来ない事もないけど、皆があたしの練習に付いてこられるか次第かな~。」
滋悟朗「儂も結構厳しく鍛えておったが、お前はそれ以上に鍛えるつもりなんか?」
柔「今のままでは、おじいちゃんも無理だって分かってるはずよ?」
滋悟朗「そうぢゃな、今のままでは無理ぢゃ。」
柔「だから、今以上に技の切れが上がる様な練習をするつもりなの。」
滋悟朗「そうなんか。」
滋悟朗「以前も言うたと思うが、あそこの練習はお前に任せておるから好きな様にするが良いぞい。」
柔「そうさせて貰うね。」
玉緒「おとうさん?耕作さん?お替りは如何ですか?」
滋悟朗「貰おうかの。」
耕作「少しだけお願いします。」
玉緒「柔?お願いしても良いかしら?」
柔「良いよ。」
柔は滋悟朗と耕作から茶碗を受取るとお替りをよそいそれぞれに渡した。
滋悟朗「すまんな。」
耕作「ありがとね。」
柔「あっ、そうだ、おじいちゃん?」
滋悟朗「何ぢゃ?」
柔「今度の日曜に部員達が家に来るからよろしくね。」
滋悟朗「何しに来るんぢゃ?」
柔「親睦会をする事になって家でやるのよ、それで皆来るんだって。」
滋悟朗「それで、何で儂までなんぢゃ?」
柔「やだな~、おじいちゃんも一応は関係者なんだから参加してくれないと困るよ。」
滋悟朗「どうしてもと言う事なら参加するとしようかの。」
柔「皆もおじいちゃんが参加するのを喜んでたよ?」
滋悟朗「そうなのか、それなら是非参加せねばなるまいな。」
柔「そうしてね、今日皆にもおじいちゃんが参加するって話しておくからね。」
滋悟朗「頼むぞい。」
滋悟朗「今朝も朝から食べ過ぎたかもしれんな。」
滋悟朗「少し体を動かしてくるかの。」
玉緒「お食事はよろしいんですか?」
滋悟朗「ああ、良かろう。」
玉緒「耕作さんは?」
耕作「俺も満足しました。」
玉緒「柔は?」
柔「十分かな?」
玉緒「それじゃあ、お食事はこれで良いですわね。」
滋悟朗「そうじゃな。」
4人「ごちそうさまでした。」
柔「お粗末様でした。」
滋悟朗「そんじゃ、少し休んで体を動かしてくるとするかの。」
柔「おじいちゃん、程々にしとかないと午後も有るからね。」
滋悟朗「心配せんで良いわい、体を解す程度しかせんからの。」
滋悟朗は自分のは部屋に戻って行った。
玉緒「柔?後はお願いね。」
柔「うん、片付けておくね。」
柔「おかあさん?今日も洗濯?」
玉緒「今日はお昼からするつもりよ。」
柔「そうなんだ、部屋に戻るの?」
玉緒「そうね、虎滋朗さんが戻るまでに少し片付けようかと思ったの。」
柔「そっか、もう少ししたらおとうさんも戻って来るんだった。」
玉緒「そうよ、今以上に賑やかになりそうね。」
柔「そうかも、道場生も来そうだし。」
玉緒「それじゃあ、部屋に戻りますね。」
柔「は~い。」
玉緒も自室に戻って行った。
柔「あなた?」
耕作は既にお盆に食器類を載せて待っていた。
柔「あは、ごめんね~、待たせちゃったみたいで。」
耕作「気にしなくて良いよ、行こうか?」
柔「は~い。」
柔と耕作は台所へ行き耕作が食器類を流しの中に置く間に柔はお茶を入れてテーブルに置いた。
耕作はお盆を食器棚の中に直して椅子に座り湯呑を手に取って一口飲んだ。
耕作「お茶、ありがとね。」
柔「どう致しまして。」
柔はお湯を沸かすと鼻歌交じりに片付けを始めた。
耕作「そう言えば、道場と部屋の工事って何時から始まるんだろう?」
柔「おかあさんは近いうちって言ってたから、今週中には始まるんじゃない?」
耕作「作り始める前に設計図とか持って来て見せてくれないのかな?」
柔「それは大丈夫と思うよ、見せに来るって言ってなかった?」
耕作「そうだったかな?良く覚えて無いな~。」
柔「心配だったら電話で確認すれば良いよ。」
耕作「それもそうか、出掛ける前だと早過ぎるから、帰ってから確認してみるよ。」
柔「そうね、それが良いと思う。」
柔「終わったよ~。」
耕作「お疲れ~、相変わらず、早いな~。」
柔「ここでの片付けも慣れちゃったからね~。」
柔がお湯をポットに入れると耕作は立ち上がって湯呑を柔に渡し、柔はそれを洗って食器棚に直し
そこからカップ2つを出して急須を持ち、耕作はポットを持つと2人で寄り添って2階へ上がった。
2階の部屋に入ると耕作はポットを付けの上に置き、柔はお茶とコーヒーを入れてコーヒーを
耕作に渡しながら一緒に寄り添ってベッドに座った。
耕作「コーヒー、ありがとね。」
柔「どう致しまして。」
耕作「今日も昨日と同じ感じで練習するつもり?」
柔「ううん、今日は皆にトレーニングのやり方とかを教えないといけないよ。」
耕作「あ~、昨日言ってたね。」
柔「その後の練習方法も少しだけ変えるかな。」
耕作「ほお、どんな風に変えるの?」
柔「隙を無くす為に如何に素早く技を仕掛けるかのやり方を教えて、それを練習させないとね。」
耕作「それが滋悟朗さんに言ってた技の切れの鋭さを増すって事になるんだ。」
柔「そう言う事ね。」
柔「まあ、一朝一夕には無理だろうけど、あの子達なら出来る限り隙を減らせると思うよ。」
耕作「さすがだね、僅か数日でそこまで皆の技量を見極めてるんだから。」
柔「それだけが、あたしの取り柄かもね~。」
耕作「またまた、謙遜しちゃって。」
耕作「他にも色々有るじゃないか。」
柔「敢えて言わなくても、あなたさえ分かってくれてたら、あたしは満足だも~ん。」
柔「そんな事より、昨日お話した事は忘れて無いよね?」
耕作「何だったっけ?」
柔「もう~、意地悪ね~、分かっててそんな事を言ってるんでしょう?」
耕作「ふふ、ちゃんと覚えてるから安心して。」
柔「ほら~、やっぱり、態とあたしを焦らそうとしてたんだ~。」
耕作「でも、その事は帰ってからにしようか。」
柔「それもそうだね、今から会社に行くのに話す内容じゃ無かったね。」
耕作「よしよし、それが分かってるなら今夜は・・。」
耕作「おっと、ここで俺が話したら意味が無くなるか。」
柔「そうよ~、あたしも話さないんだから、あなたも話しちゃ駄目よ~。」
耕作「帰ってからの楽しみという事にしよう。」
柔「うふふ、そうね、早く帰ってこないと・・。」
耕作「俺は分かってるつもりだけど、一応、念の為に確認ね。」
柔「何を確認するの?」
耕作「早く帰りたいからと言って練習を短くしようなんて考えて無いよね?」
柔「な~んだ~、そんな事か~。」
柔「あたしが柔道で手抜きした事が無いのは、あなたも十分に分かってるはずだよね?」
耕作「勿論分かってるさ、だから、念の為の確認って言ったんだ。」
柔「だよね、皆があたしの言った事をちゃんとやれてる場合は早く終わるかもだけど。」
柔「そうじゃない時は出来るまでやって貰うつもりよ。」
耕作「それでこそ、俺が好きになって、ここにこうして一緒に居る柔だよ。」
柔「うふ、あなたもあたしの事を十分に理解してくれてるね。」
耕作「君も俺の事は分かってるみたいだね。」
柔「そうよね~、2人はお互いを良く理解出来てると思う。」
耕作「だから、さっきも言ったけど、こうして一緒に居る訳なんだよね。」
柔は耕作に凭れ掛かった。
柔「あたし、とても幸せよ、あなたにそう言って貰えて。」
耕作「俺もだよ、君が幸せって言ってくれてとても嬉しいよ。」
柔「うふ、ほんとなら、ここでおねだりしたい所だけど、今は止めておくね。」
耕作「どうして?」
柔「今日は~、久し振りに~、お出かけ前にしようかな~って思ったからなの~。」
耕作「なるほど、アメリカではいつもそうしてたけど、戻ってからは余りやってなかったか。」
柔「そうなのよね~、だから~、今日は~。」
柔「良いよね?」
耕作「勿論だよ、君からそう聞いて、俺も久し振りにそうしたいと、今思ったよ。」
柔「お出かけ前のキスか~、楽しみだな~。」
耕作「ふふ、俺も楽しみだよ。」
柔「着替えは終わってるから、下りる前で良いよね?」
耕作「そうだな、出掛ける前だから下に下りてよりはここを出る時の方が良いか。」
柔「3日後に確定じゃないけど、どうなのか分かるのよね~。」
耕作「待ち遠しそうだね。」
柔「そうなのよね~。」
柔「あなたもなの?」
柔「あっ、以前から言ってたから待ち遠しいのは当然だったね。」
耕作「そうだよ、君がプレッシャーに~って言ったから言わなかったけど。」
耕作「凄く待ち遠しかったよ。」
柔「まあ、あなたも知ってる様に、はっきり確定って分かるのは更に3~4週間後だけどね。」
耕作「そうなんだよな~、公式に発表出来るのも、それ以降だしな~。」
柔「ね~、あなた?」
耕作「何かお願いでも有るの?」
柔「違うよ~。」
耕作「あら、今回は違ったか。」
耕作「じゃあ、何かやりたい事でも?」
柔「あっ、ある意味お願いになるのかな?」
耕作「どういう事なの?」
柔「今度の検査で陽性だった時に発表って言うのは駄目なのかな?」
耕作「俺達にしてみれば、それでも良いんだけど、違ってた場合の事を考えると・・。」
柔「あたしは桜おねえちゃんを信じたいから発表しても良いかなって思うんだけど。」
耕作「う~ん・・、それじゃ、こうしたら?」
柔「どうするの?」
耕作「桜さんに発表の事を聞いてみてOKが出たら発表するって言う事でどうかな?」
柔「そうだね、何か、桜おねえちゃんに責任を負わせる感じで嫌だけど。」
柔「それでも、桜おねえちゃんが良いって言ってくれたら発表しましょう。」
耕作「ただ、手順は踏まないといけないよ。」
柔「まずは連盟に通知してからって事ね。」
耕作「その前に知らせないといけない人達が居るでしょう?」
柔「あっ、そうだった、富士子さん達とあなたのご両親、それとおかあさんとおじいちゃんね。」
耕作「もう一人いるけど、それは玉緒さんが知らせるから良いか。」
柔「おとうさんね、きっと、おかあさんが知らせてくれると思うよ。」
柔「その後に連盟に通知して、1年間は試合が出来ないって伝えないといけないね。」
耕作「そうだね、その後にうちの朝刊で発表かな。」
柔「それの前に社長と羽衣課長には知らせておきたいかな。」
耕作「それは君に任せるよ、俺も一緒には居るけど。」
柔「じゃあ、月曜日に羽衣課長にお話してから社長にかな?」
耕作「失礼にはなるけど、社長には電話で話すしかないよね。」
柔「そうだね、態々、私用で本社まで行けないし。」
耕作「それで、その日のうちに富士子さん達に話すか。」
柔「編集長には?」
耕作「俺が日曜に原稿を書いて、勿論、君の妊娠の事をだよ。」
柔「あ~、それを月曜に渡して火曜の朝刊って事ね。」
耕作「そうそう、そうすれば日を置かずして発表になるから。」
耕作「君の妊娠の事が外部に漏れる前に発表出来そうだ。」
柔「また、暫くは周囲が騒がしくなりそうね~。」
耕作「それは仕方ないよ、何せ君は有名人だから。」
柔「マスコミが押しかけて来れないのがせめてもの救いかな~。」
柔「あなたの会社の独占にしてて良かったよね~。」
耕作「そうだよな~、君の案だからね、独占にするって言うのは。」
柔「あの時はそこまで深く考えて無かったけど、あたし達にとっては有益だったね。」
耕作「先見の明が有ったって事だな~。」
耕作「おっと、段取りが出来た所で、そろそろ出かけようか。」
柔「そうね、余裕を持って行かないとだし。」
柔が耕作から離れて2人とも立ち上がりカップを机の上に置いて向かい合って立つと
柔が耕作を見上げて目を瞑ったので耕作は柔の頬に手を添えて短めのキスをした。
柔「お出掛けのキス、ありがとう~。」
耕作「こちらこそだよ、素敵なキスだったよ。」
柔「じゃあ、出掛けましょうか。」
耕作「荷物を持ったら出掛けるか。」
柔「そうね。」
柔がバッグを持つと耕作は柔の腰に手を回し、柔も同じ様にして寄り添って下に下りて行った。
下に下りた2人は玄関へ行き奥に声を掛けた。
柔「行ってきま~す。」
耕作「出掛けます。」
奥から玉緒が返事してきた。
玉緒「気を付けて行ってらっしゃい。」
柔「は~い。」
柔と耕作はお互いの腰に手を回したまま靴を履くと玄関を出て木戸を潜り表に出た。
外に出た2人はそのまま表通りを目指して歩いて行った。
柔「この格好も慣れてきたね。」
耕作「そうだな~、誰にも何も言われないのが良いよ。」
柔「この辺りの人達は皆知ってるしね。」
2人は表通りまで出るとタクシーを停め乗り込んで鶴亀トラベルの神保町支店を目指した。