柔と耕作(松田)の新婚日記 25日目 (午後編第1部)
文書量(文字数)が膨大な為、一日7分割で表記しています。
*一部修正
柔達は駐車場へ行き車の傍で助手席と後部座席のドアを開けて待っている耕作の元にやって来た。
柔「あなた、お待たせ~。」
耕作「余り待ってなかったよ。」
耕作「それじゃ、皆、乗ってね、乗ったら道場へ向かうから。」
陽子達「はい、分かりました。」
柔「分かった~。」
耕作は柔と陽子達が荷物を持って乗ったのを確認すると自分も乗り込み道場を目指して車を出した。
柔「向こうに着いて直ぐに着替えるけど、暫くは休憩するよ。」
陽子「食べて直ぐの運動が体に良く無いからですか?」
柔「そうね、本来、食後2時間以上は間を空けた方が良いのよね。」
由紀「そうだったんですね。」
温子「以前は業務が終わってからの練習だったので、そう言う事は考えなくて
良かったんですよね~。」
真紀「会社はどうして今の時間帯に変えたんでしょう?」
柔「皆はどう思う?」
恵美「やっぱり、それなりの成績を残して欲しいからじゃないですか?」
雅「それなりでも良いと思うけど。」
雅「もっと良い成績を残して欲しいから今の時間に変えたんだと思います。」
柔「雅さんが言う事が一番近いかもね。」
陽子「団体戦で優勝しなさいって事ですよね?」
柔「最終的な目標はそこかな。」
美香「最終的って言う事は、その前も有るって事なんですか?」
柔「そうなるよね。」
陽子「もしかして、誰かが個人優勝するとか。」
柔「そうだね、それが一番最初に達成出来そうな目標では有るね。」
恵美「しかし、個人優勝もかなり難しいですよ?」
柔「あたしが昨日見た限りでは厳しいけど難しいとは思わなかったよ。」
温子「柔さんがそう思われたのなら可能性は有るんですね。」
柔「そうね、温子さんが言う様に可能性は高いと思ってる。」
柔「皆にも知ってて欲しいから話しておくけど。」
柔「現状、優勝を狙える可能性が有るのは温子さんだと思うよ。」
温子「まさか~、私には無理ですよ。」
柔「そのまさかなの、温子さんの体重だと対象のクラスに有力な選手が居ないのよ。」
雅「やったじゃない~、温子~。」
柔「あっ、早とちりはしないでね?」
雅「え?どういう事ですか?」
柔「今のままだと優勝は厳しいよ、今以上に技量を上げないと駄目ね。」
温子「ですよね。」
柔「でも、あたしの指導に付いてこれたら必ず今以上の技量になれるのは、あたしが保証するよ。」
陽子「凄いよ、温子、柔さんのお墨付きを頂いたじゃない。」
温子「分かりました、柔さんにそこまで言われたら頑張るしかありません。」
温子「私も出来る限りの事はしますので、ご指導よろしくお願いします。」
柔「それでね、その為にも今日の練習の事だけど。」
由紀「柔さんが直接指導して下さるんですか?」
柔「そうするつもりよ。」
由紀「本当ですか?嬉しいな~。」
柔「喜んで貰うのは良いけど、皆を落ち込ませる可能性が有るの。」
陽子「それは何故なんですか?」
柔「皆の技量は昨日見た限りではまだまだ十分とは言えないのよ。」
陽子「やっぱりそうですか。」
耕作「そろそろ着くよ、続きは道場に入ってから話してね。」
柔「分かった、そうするね。」
陽子達「分かりました。」
耕作は道場の駐車場に車を止めて先に降りると助手席と後部座席のドアを開け皆を降ろした。
耕作「俺は鴨田が来るのを待って、来たら一緒に中に入るから。」
柔「分かった~、先に中に入ってるね。」
柔達は道場に入る前に一礼して中に入ると更衣室へ向かった。
更衣室に入ると皆は着ていた服を脱いで柔道着に着替えた。
陽子「柔さんが着けてるインナーを早く買わないといけないですね。」
柔「そうだね、動きがかなり良くなると思うから早く買った方が良いよ。」
温子「えへへ、私は買いましたよ。」
由紀「あ~、本当だ~、どうなの?やっぱりかなり違う?」
温子「もう全然違うよ、とても動き易いから。」
陽子「やっぱり、そうなのね。」
恵美「今日帰りに買おうかな?」
雅「皆で買いに行こうか?」
陽子「そうしましょう、皆?良いよね?」
美香、真紀、由紀「良いですよ~。」
恵美、雅「勿論よ。」
温子「私も別なのを買おうかな?」
柔「そうね、多くて困る事は無いと思うから買った方が良いわよ。」
温子「ですよね、買ってきます。」
柔「それじゃ、道場に出てさっきの話の続きをしましょうか。」
全員「はい。」
柔達は更衣室を出ると道場の中央で車座に座った。
柔「えっと、どこまで話してたっけ?」
陽子「皆の技量がまだまだ不十分だって、柔さんが仰った所まででした。」
柔「そうだったね。」
柔「その事を実感して貰う為に、今日はあたしが皆と乱取りをします。」
由紀「そうなんですか、やっと柔さんと組めるんだ~。」
柔「あっ、最初は対峙した状態から始めるから。」
陽子「試合で挨拶が終わった状態からって事ですね?」
柔「そう言う事ね。」
恵美「対峙した状態から私達は如何すれば良いんでしょうか?」
柔「見てるだけって言う訳にはいかないのは分かるよね?」
雅「そうですね、試合だと組み手争いを仕掛ける事になります。」
美香「それをやっても構わないという事ですか?」
柔「やって貰わないと先に進まないから。」
真紀「分かりました、言い方が乱暴ですけど、柔さんに掴み掛かれば良い訳ですね?」
柔「ふふふ、確かに、言い方は乱暴だけど、その通りよ。」
柔「でも、その時点で既に技量に差が出てるって言うのが分かるのは覚えておいてね。」
温子「今迄の説明で何となく分かりました。」
温子「柔さんに安易に掴み掛かった場合は、その人が相手の技量を見極めて無いって
言う事になるんですね。」
柔「良く分かったわね。」
由紀「今の説明でも良く分からないんですけど。」
陽子「あのね?相手の技量も見極めないで安易に組みに行くのは危険だって言う事なのよ。」
陽子「その為に相手の技量をちゃんと見極める事が出来ないと駄目なの。」
陽子「柔さんは皆にその見極めが出来るかどうかを確かめるつもりよ。」
柔「陽子さん、さすがね、今の説明で良いわよ。」
陽子「ありがとうございます。」
陽子「でも、皆が組みに行った時は如何されるんですか?」
柔「そうね、申し訳ないけど、足技で対処します。」
由紀「投げられるって事なんですか?」
柔「そうなるかな。」
陽子「でも、見極めてるかどうかって分かるんでしょうか?」
柔「あたしには良く分かるよ。」
柔「だから、長い時間見てるだけで組んで来なかった場合も同じ様に投げます。」
真紀「誤魔化せないって言う事なんですね。」
柔「そうだよ、だから、皆、真剣に対峙してね。」
全員「はい、分かりました。」
柔「それが終わったら乱取りをしますから。」
温子「組んだ状態から始めるんですね?」
柔「そうね、皆はあたしに技を仕掛けて良いわよ。」
恵美「柔さんからは仕掛けて来ないんですか?」
柔「うん、あたしからは絶対に仕掛けないよ。」
柔「だから、皆は遠慮せずにどんどん技を仕掛けてね。」
陽子「それで柔さんはどう対処されるんですか?」
柔「あたしは皆が仕掛けてくる技を封じたり空かしたりするから。」
温子「なるほど、そう言う事ですか。」
雅「温子?何か分かったの?」
温子「皆の技を掛ける動作の速さを確認されるんですね?」
柔「そうなの、さすがね。」
由紀「どういうことですか?」
柔「今後の練習内容を決める時の参考にしたいの。」
由紀「どう参考にされるんですか?」
柔「どんな練習にすれば皆の技の速さを上げる事が出来るか考え無いといけないからね。」
由紀「そう言う事なんですね。」
陽子「柔さん、全員を何度も相手して大丈夫ですか?」
柔「7人だから、多分余裕かな?」
由紀「やっぱり、柔さんは凄過ぎます。」
温子「そう言えば、短大の時は5人抜きしても呼吸が全然乱れてませんでしたね。」
柔「良く覚えてるのね。」
恵美「そうだった、思い出しました、あれは凄かったです。」
真紀「柔さん、どんなトレーニングを・・。」
陽子「皆も昨日見たでしょう?柔さんがトレーニングをしてる所を。」
恵美「凄かったですよ、スピードが半端なく速かったのは覚えてます。」
雅「そうだったわね、だから、早く終わってました。」
柔「今はとある事情で全部のトレーニングはやって無いから早く終わってるのも有るかな。」
美香「とある事情ですか?」
由紀「どんな事情何ですか?」
柔「えっと、今はまだ言えないけど、来週には詳しく説明するから。」
陽子「そうなんですね、分かりました。」
柔「ところで、皆は今週の日曜日にあたしの家に来られるかな?」
陽子「何かするんですか?」
柔「懇親会みたいなのをやりたいかな~って。」
由紀「良いですね~、私は必ず行きますから。」
陽子、雅、恵美「私も行きます。」
温子「是非、お邪魔したいと思います。」
美香、真紀「私も必ずお邪魔させて頂きます。」
柔「全員OKね、分かった、食事会になると思うから期待しててね。」
陽子達「良いですね、楽しみにしてます。」
柔「皆は手ぶらで来てね。」
陽子「そう言う訳にはいきませんよ。」
柔「分かったわ、じゃあ、何か飲み物を皆で買って持って来てくれたら嬉しいかな。」
柔「あっ、アルコールは駄目よ、帰れなくなると困るでしょう?」
陽子「分かりました、皆で買ってお持ちしますから。」
耕作と鴨田が中に入ってきて何か話し始めた。
陽子「柔さん?鴨田さんって新聞社のカメラマンなんですか?」
柔「そうよ、主人の後輩になるんだって。」
恵美「私達の事も撮ってるんですか?」
柔「どうなのかな?会社から許可を貰ってたら撮ると思うけど。」
雅「許可なくても撮って貰いたいかも。」
柔「後でどうなのか聞いてみるよ。」
由紀「お願いします。」
柔「写真を撮られるからと言って何時もと違う事をやっちゃ駄目だからね。」
温子「分かってます、何時もやってる様に振舞えば良いんですよね。」
柔「そうよ、普段の姿を撮って貰わないと意味無いんだから。」
柔「ちなみに新聞の記事に名前が出るかもよ。」
真紀「そうなんですか?」
柔「多分だけど、あたしの指導の仕方とかの記事で名前が出る可能性は有るから。」
美香「柔道に専念しておかないといけないって事ですね。」
柔「そうだね、そうして無いと記事にして貰えないよ。」
由紀「真面目に練習に取り組みま~す。」
柔「今後もそうしてね。」
柔「じゃあ、軽く柔軟から始めて、その後は各々でトレーニングをやってね。」
陽子「分かりました、皆、始めるわよ。」
全員「はい。」
全員が柔軟を始めたので、柔は耕作の所へ行った。
耕作「お疲れさん、話はどうだった?」
柔「色々話したよ、後、今日の練習内容とか。」
耕作「今日は乱取りだったよね?」
柔「うん、その前に対峙する事からだけど。」
耕作「そう言ってたね。」
耕作「何でそうするかも説明したんだ。」
柔「そうしないと、皆、納得してくれないでしょう?」
耕作「それもそうか。」
柔「聞きたい事が有るんだけど。」
耕作「何だい?」
柔「皆の写真も撮るの?」
耕作「必要になった時は撮るつもりだよ。」
柔「会社から許可は貰ってるの?」
耕作「勿論さ、羽衣さん経由で社長の許可は既に貰ってるから。」
柔「さすがね~。」
耕作「後は本人達に了承を貰わないといけないけどね。」
柔「あっ、それなら心配いらないよ。」
耕作「どうして?」
柔「さっき話してる時に皆から言われたんだけど、是非とも撮って欲しいんだって。」
耕作「そうなのか、でも、西海大に移動する時に俺も確認したいかな。」
柔「聞いても良いよ、同じ事を言うと思うけど。」
柔「じゃあ、あたしもトレーニングしてくるね。」
耕作「おう、頑張れよ。」
柔「は~い。」
柔は皆から少し離れた所に移動すると柔軟した後にトレーニングを開始した。
耕作「(柔の動きは見たところ以前とそんなに変わって無いな。)」
耕作「(昨日と同じで、部員達は柔がトレーニングを始めると視線が向いてしまうな。)」
耕作「(ただ、昨日は好奇の目で見ていたけど、今日は真剣に見てる気がする。)」
耕作「(きっと、柔が皆に技を掛ける時の速さの事を話したんだな。)」
耕作「(しかし、今、打込みを止めてるのは柔本人にとっては痛い所だな。)」
耕作「(上半身を使っての相手を引き寄せる動作はやってるけど、打込みとは違うからな~。)」
耕作「(もう、終わったのか、相変わらず、早いな。)」
柔が全部終わらせて耕作の元に戻ってきた。
柔「終わったよ~。」
耕作「お疲れさん、相変わらず、早いね。」
柔「でも、以前に比べると少し遅くなって無かった?」
耕作「ふふ、ちゃんと自分でも分かってるんだ。」
柔「それはね~。」
耕作「君が言う様に若干だけど遅くなってるよ、でも、今はそれでも十分じゃないかな。」
柔「そうだね、余り下半身に力を入れられないから仕方ないよね。」
耕作「その理由は皆には言うんだよね?」
柔「土曜日に検査に行くから、日曜日に皆が集まった時に話そうかと思ってる。」
耕作「なるほど、早目に事情を分かって貰ってた方が今後の為にも良いと思うよ。」
柔「あ~、駄目だ~。」
耕作「いきなりどうしたの?」
柔「皆、あたしを見習って早くしようとしてちゃんとやって無いよ。」
耕作「トレーニングを?」
柔「うん、最後までやらないと意味無いのに途中で止めてる感じになってる。」
耕作「どうする?今注意する?」
柔「ううん、皆が終わってから理由を含めてちゃんと説明するよ。」
耕作「しかし、ちゃんと皆の事を見てるんだね。」
柔「それは当然よ、何か有ったらいけないし。」
柔「終わったみたいだから、今の事を含めてお話してくるね。」
耕作「分かった、頑張って。」
柔「うん、頑張る。」
柔は皆の所へ行くとさっきの事を説明してる様で、皆は神妙な面持ちで聞いていた。
陽子達は納得したのか全員が柔に対して頷いていた。
それが終わると柔が陽子を指名して他の者を座らせると陽子と対峙した。
陽子は暫く柔を見ていたが、微動だにしない柔を見て戸惑いながらも組み手争いを
仕掛けたが直ぐに足技で倒された。
他の者も同様に暫く柔を見た後に組み手争いを仕掛けたが、直ぐに足技で倒された。
温子だけは直ぐに仕掛けず隙を見つける為に周囲を回ったが、柔が正対してきた為、
仕方なく組み手争いを仕掛けて同じ様に倒された。
全員が終わると柔は陽子達を座らせ今対峙した時にどう感じたか一人一人に聞いた後
組み手争いを仕掛ける際の注意点を身振り手振りで説明した。
皆は真剣に聞き入っていて納得したのか頷いていた。
最後に柔が皆に理解しているかを確認して次の乱取りを始めた。
乱取りの相手も最初は陽子だった。
陽子は頻繁に技を仕掛けたが全て柔に封じられるか空かされてしまった。
陽子の打つ手が無くなった時点で終了して恵美に代わった。
恵美も陽子と同様で直ぐに打つ手が無くなり終了になった。
他の者も同じ様にして直ぐに打つ手が無くなり終了になって全員が終わると
柔は皆を座らせ、どう感じたか順番に聞いていった後に、皆の発言に対して
どう思うかを聞いて何故封じられたり空かされたのかを身振り手振りで各々
に対して個別に詳しく説明した。
説明が終わると、説明した内容が理解出来たかを各人に確認した後に質問を
受けて、それに対しても丁寧に答えていった。
その時点で事前の打ち合わせ通りに鴨田は先に出て滋悟朗を迎えに行った。
柔と陽子達は向き合うと一礼をしてここでの練習は終了した。
柔が耕作に声を掛けてきた。
柔「じゃあ、荷物を取って来るから表て待ってて。」
耕作「分かった、車の所で待ってるよ。」
耕作は柔達が更衣室に向かうのを確認した後に外に出て車の所へ行き助手席と
後部座席のドアを開けて車に乗って待つ事にした。
暫く待つと柔達が一礼した後に道場から出て来て戸締りを済ませて耕作の元に
皆で駆け寄って来た。
柔「お待たせ~。」
陽子達「お待たせしました。」
耕作「じゃあ、皆、乗ってね。」
柔「は~い。」
陽子達「分かりました。」
耕作は柔と陽子達が乗ってドアを閉めたのを確認して西海大へ向けて出発した。