柔と耕作(松田)の新婚日記 24日目 (午前編第2部

            文書量(文字数)が膨大な為、一日分割で表記しています。




道中のタクシーの中で。

運転手「柔さんですよね?」

柔「はい、そうです。」

運転手「お隣はご主人ですか?」

柔「はい、その通りですよ。」

運転手「お二人でご出勤か何かですか?」

柔「まあ、そんな感じです。」

耕作「運転手さん、柔だけ別な場所で降りますから。」

運転手「はい、分かりました。」

柔「すみません、よろしくお願いします。」

運転手「停める所に来たら声を掛けて下さい。」

耕作「はい、そうします。」

耕作「君を降ろしたら、そのまま自分の会社に行くよ。」

柔「早く来てね、待ってるから。」

耕作「勿論さ、出来る限り早く行くつもりだよ。」

耕作「ただ、俺が行く事は全員に話しておいてよ。」

柔「分かってま~す、必ず全員に伝えておくよ~。」

耕作「それと、さっき言ってた事は確認しておいた方が良いから。」

柔「え~っと~、移動手段の事だったよね?」

耕作「そうそう、それはハッキリさせておかないと今後の事も有るし。」

柔「だよね、他の部員の事も有るもんね。」

耕作「うん、君だけの問題じゃないんだ。」

柔「ところで、あたしの仕事っぷりを取材って言ってたけど。」

柔「具体的にはどんな事を取材するつもりなの?」

耕作「君が会社での日常業務をどんな風にやってるかって事かな。」

柔「あ~、そうだったね。」

柔「でも、今日は他の人に教えてる所しか見る事が出来ないと思うよ。」

耕作「それはそれで良いよ。」

耕作「君が柔道以外の事も教えてるって分かるから。」

柔「そうなんだ、じゃあ、あたしは何時も通りにやれば良いんだね。」

耕作「そうしてくれた方が良いよ。」

耕作「有りの侭の君の姿を皆に紹介出来るし。」

柔「何か恥ずかしい気もするけど。」

柔「あなたの書きたい様にして良いよ。」

耕作「任せて、ちゃんと書くから。」

柔「あっ、ここで良いよ、真正面は避けた方が良さそうだし。」

耕作「分かった、すみません、ここで止めて下さい。」

運転手「分かりました。」

タクシーが柔の会社の手前で停車すると柔はそこで降りた。

柔「それじゃ、先に行って待ってるから。」

耕作「気を付けて、直ぐに行けると思うから。」

柔は小走りに会社へ向かっていった。

耕作「すみません、それでじゃ、次、お願いします。」

運転手「了解しました。」

タクシーは耕作の会社へ向けて再び走り出した。



タクシーは暫く走って耕作の会社の前で停まると耕作はそこで降りビルに入って行った。
ビルに入った耕作は編集部を目指して上に上がって行き、編集部に入って編集長の席へ向かった。

耕作「編集長、おはようございます。」

編集長「おはよう、今日は一人なんだな。」

耕作「柔は今日から出勤ですよ。」

編集長「ああ、そうだったな。」

耕作「これが昨日の分の原稿です。」

編集長「一応、確認するぞ。」

耕作「はい、どうぞ。」

編集長は耕作の原稿に目を通した。

編集長「なるほど、アメリカから色々と練習方法が変わってるんだな。」

耕作「そうです、相手の習熟度に合わせて変えてたみたいで。」

編集長「さすがは、柔さんだな、そういう風に変える事が出来るとは。」

編集長「そう言えば、あちらの社長から連絡があってな。」

耕作「あちらとは鶴亀トラベルですか?」

編集長「お前に話すのに他の会社は無いだろう?」

耕作「確かに、それで俺にも関係してるんでしょうか?」

編集長「お前と柔さん、まあ、正確には柔道部に関係してる訳なんだが。」

耕作「柔道部?柔の会社のですか?」

編集長「どこの柔道部と思ってるんだ?」

耕作「そうですよね、柔の会社の柔道部しかないですね。」

耕作「どう言った事なんですか?」

編集長「確か西海大と合同練習をするんだったよな?」

耕作「そうですけど、それと関係が有るんですか?」

編集長「そうなんだ、移動手段をどうするか検討した結果、リースカーを手配したみたいなんだ。」

耕作「それは良い方法ですね。」

編集長「そうだな、だが、運転する人材が居ないそうなんだよ。」

耕作「まさか、俺にそれをやれって事ですか?」

編集長「察しが良いな、これは飽く迄相談なんで無理強いするつもりは無いぞ。」

編集長「先方もそう言う風に言ってきてたから、どうするかはお前次第だな。」

耕作「でも、それを受ければ取材し易くなるし、俺が向こうに居る理由にはなりますね。」

編集長「そう言う事だな、それで、どうする?」

耕作「え?今返事しないといけないんですか?」

編集長「出来るなら今日からお願いしたいと言ってたんでな。」

耕作「う~ん、一寸待って貰って良いですか?」

編集長「誰かと相談するのか?」

耕作「一応、柔に話しておくだけです。」

耕作「申し出自体は受けるつもりですので。」

編集長「それじゃあ、先方に話しておいても良いか?」

耕作「分かりました、構いません。」

編集長「分かった、今日はこれから直ぐに柔さんが居る支店に行って構わんから。」

耕作「それに付いての打ち合わせでも有るんですか?」

編集長「打ち合わせと言う程では無いが、どういう風にするかの話し合い位だと思うぞ。」

耕作「そういう事ですか、じゃあ、柔には行った時に話す事にします。」

編集長「その方が良いだろうな、と言うか、既に聞いているかもしれんが。」

耕作「その可能性は有りますね。」

耕作「じゃあ、出掛けてきます、鴨田を13時に柔道場に寄こして下さい。」

編集長「それは伝えておく、運転はくれぐれも慎重にな。」

編集長「何しろ他の会社の社員を乗せる訳だから。」

耕作「はい、そこは十分に心得ておきます。」

編集長「気を付けて行ってこい。」

耕作「はい、行ってきます。」

耕作は編集部を後にすると大急ぎでビルの外へ出てタクシーを拾って柔の所へ向かった。



暫く走って柔の会社の前でタクシーを降りると支店に入って行った。

柔「いらっしゃいませ~、あっ、あなた?待ってたよ。」

耕作「あれ?何で君が?」

柔「うふふ、編集長さんからこちらに連絡が有ったの。」

耕作「そうなんだ、柔は話は聞いてるんだろう?」

柔「うん、羽衣課長から聞いたよ。」

耕作「しかし、驚いたよ、まさか、こういう事になるなんて。」

柔「あたしも聞いた時は、ほんとなのかって疑心暗鬼になったよ。」

耕作「この話は後でしようか、まずは羽衣さんに会わないと。」

柔「そうだね、こっちに来て?」

耕作「分かった。」

柔は耕作を連れて羽衣の所へ向かった。
途中、他の社員達から声を掛けられる度に耕作は会釈して応じた。

柔「ここで待ってるよ、入りましょう。」

柔は応接室に耕作と一緒に入った。

羽衣「お待ちしてましたよ、松田さん。」

耕作「お久しぶりです、よろしくお願いします。」

羽衣「まあ、そこに座って下さい。」

耕作「失礼します。」

柔と耕作は羽衣の前に並んで座った。

羽衣「編集長さんからお聞きとは思いますけど。」

耕作「はい、ここに来る前に聞きました。」

耕作「それで俺でよろしいんでしょうか?」

羽衣「松田さんがよろしければ是非お願いしたいんですが。」

耕作「分かりました、柔の取材も有るので俺としても凄く助かります。」

羽衣「それが有ったから最初に松田さんにお願いすると社長が決めてたみたいなんです。」

耕作「そうでしたか、ありがたい事です。」

耕作「それで車はこちらに有るんですか?」

羽衣「はい、うちの駐車場に既に止めてあります。」

耕作「俺が運転しても問題無いんですか?」

羽衣「それは大丈夫です。」

羽衣「リース会社には、うちの社員以外でも運転出来る様に取り計らって貰ってますので。」

耕作「そうですか、それなら安心です。」

羽衣「そう言う訳で、今後もこちらに午前中に来て頂いて待機して貰う事になりますけど、
    構いませんか?」

耕作「待機と言われてもどこで待機すればよろしいんですか?」

羽衣「それに付いては支店長と色々相談したのですが。」

羽衣「どうせなら柔さんの近くに居て貰った方が良いだろうと言う事になりまして。」

耕作「いや、さすがにそれは他の社員さんに示しが付かないでしょう?」

羽衣「それがですね、今朝、柔さんが来た時に他の社員が旦那さんは何故一緒じゃないのかって
    質問攻めにあってたんです。」

耕作「ほんとなの?」

柔「ほんとだよ、今日は一緒に来るんじゃなかったの?とか来ないの?とか
  色々あなたの事も聞かれたんだよ。」

羽衣「そう言う事なので、うちの社員から色々聞かれるかもしれませんけど、よろしくお願いします。」

耕作「分かりました、皆さんがそう言う事でしたらお邪魔させて頂きます。」

耕作「但し、皆さんの業務の支障にならない様に気を付けますから。」

羽衣「そうして頂けると、こちらとしても大変助かります。」

羽衣「それでは今現在の私の部署へ行きましょうか。」

耕作「例のプロジェクトチームですか?」

羽衣「それは別の者に任せております。」

羽衣「今日からは柔道部員の皆を預かる立場になったものですから。」

耕作「あ~、そう言う事になってたんですね。」

羽衣「とは言っても、部員達の面倒は柔さんに見て貰う事になっているんですけどね。」

柔「課長、お任せ下さい、出来る限りの事はしますので。」

羽衣「頼んでおくよ。」

羽衣「それでは参りましょう。」

耕作「分かりました。」

柔「あたしが案内しますので。」

羽衣「よろしく頼むよ。」

柔達3人は席を立つと応接室から出て柔が先導して羽衣の管轄する部署へ向かった。
途中、他の社員達からまた話し掛けられたので耕作は会釈して応じながら部屋へ向かった。

柔「ここになります。」

耕作「ほう、完全に別部屋になってるんだ。」

柔「そうだね、他の部署からは見えない様になってるよ。」

羽衣「ここは午後から誰も居なくなるので、こういう造りにして貰ってるんですよ。」

耕作「なるほど、誰も居ないのが分からない様にしてるんですね。」

羽衣「そう言う事です、他の社員への影響を考慮した結果です。」

羽衣「それではどうぞ入って下さい。」

柔「あなた?入るけど心の準備は良い?」

耕作「何時でも構わないよ。」

柔がドアを開けて先に入ると耕作と羽衣を中に導きいれた。

女子部員一同「お待ちしていました、これからよろしくお願いします。」

耕作「あっ、こちらこそ、社外の者ですがよろしくお願いします。」

羽衣「私は自分の席に行くから、柔さん、後は、よろしく頼んでおくよ。」

柔「はい、課長、お任せ下さい。」

羽衣は自分の部屋に入って行った。

柔「それでは、皆に改めて紹介します。」

女子部員一同「はい、お願いします。」

柔「こちらは、日刊エブリーの記者で松田 耕作さんです。」

柔「さっきもお話しましたけど、あたしの主人です。」

柔「ただ、ここに居る間は記者の松田で構いませんので。」

女子部員一同「はい、分かりました。」

柔「それでは、一人ずつ自己紹介して下さい。」

??「分かりました、それでは、私から自己紹介を始めたいと思います。」

??「自分は滋悟朗先生より部長を拝命しました、渡辺 陽子と申します。」

陽子「柔さんに憧れて柔道を始めたので、柔さんに指導して貰える事に感激しています。」

陽子「入社2年目の若輩者ですが今後ともよろしくお願いします。」

陽子「一つお聞きしても構いませんか?」

柔「あ~、えっと、質問は後でも良いかな?」

柔「先に全員の自己紹介を済ませたいので。」

陽子「分かりました、では、次、自己紹介をお願いします。」

??「私も陽子と同じく入社2年目です。」

??「野上 雅と申します、今後ともよろしくご指導下さい。」

雅「柔道を始めた動機も陽子と同じで柔さんに憧れたからです。」

雅「私も聞きたい事が有りますけど、後にします、次、どうぞ。」

??「私は中村 恵美と申します、先の2人と同じで入社2年目です。」

恵美「私も柔道を始めた切っ掛けは柔さんの活躍を見たからです。」

恵美「そんな柔さんから指導を受けられる事に感謝しています。」

恵美「今後ともよろしくお願いします。」

陽子「ここからは今年入社した子になります、美香?あなたから自己紹介を始めてね。」

美香「私は山本 美香と申します、入社1年目で漸く仕事にも慣れてきました。」

美香「今後ともご指導の程よろしくお願いします。」

??「私は坂上 真紀と申します、同じく1年目です。」

真紀「柔さんから指導を受けられると聞いて楽しみにしています。」

真紀「よろしくお願いします。」

??「自分は杉田 温子と申します。」

温子「入社1年目ですが年齢は1番上になります、と言っても1つ違いですが。」

温子「他の会社に入っていましたが、そこには柔道部が無く、柔さんが在籍されてるこの会社に
    柔道部が出来たと聞いて、居ても立っても居られなくて移ってきました。」

温子「これからご指導をよろしくお願いします。」

??「私は柴田 由紀と申します。」

由紀「私も柔さんに憧れてここに入社しました。」

由紀「今日からご指導いただけると聞いて凄く嬉しく思っています。」

由紀「今後ともよろしくお願いします。」

陽子「以上で全員の自己紹介は終わりました。」

柔「ありがとう、それじゃ、質問の有る人は質問して構いませんよ。」

陽子「あの~、プライベートな事でも構わないですか?」

柔「余り突っ込んだ内容じゃない限りは構いませんよ。」

柔「但し、時間は余り掛けられないので手短にお願いします。」

陽子「分かりました、それでは、私からお聞きします。」

陽子「柔さんの旦那様のここでの呼び方なんですけど、どうお呼びすればよろしいんですか?」

柔「道場とここでは呼び方は変えて構いません、同じでも結構です。」

柔「あなたはどう呼ばれた方が違和感無いと思う?」

耕作「俺としては松田と呼ばれた方が良いと思うよ。」

陽子「じゃあ、松田さんとお呼びすればよろしいんですね?」

耕作「その方が他の部署に万一聞かれても可笑しく無いと思うよ。」

陽子「分かりました、では、ここでは松田さんと呼ばせて頂きます。」

柔「道場でも同じ呼び方で良いの?」

耕作「道場は他の社員の人も居ないので好きな様に呼んで貰って構わないよ。」

陽子「今日初めてお会いしたので、暫くは松田さんとお呼びする事にします。」

耕作「ああ、それで全然構わないよ。」

雅「私も質問よろしいですか?」

柔「どうぞ~。」

雅「素朴な疑問なんですが、どうして柔さんのご主人がここにいらっしゃるんですか?」

柔「あたしから説明した方が良いかな?」

耕作「俺からの方が分かり易いんじゃない?」

柔「そうだね、じゃあ、お願い。」

雅「仲がよろしいんですね。」

柔「まあね、それに付いては別な日にでも。」

耕作「説明するけど、良いかな?」

雅「はい、よろしくお願いします。」

耕作「どうして俺がここに居るかだったね?」

雅「そうです、違う会社なので余計にそう思ったもので。」

耕作「これは婚約会見を見て貰ってれば分かると思うんだけど、見た人居るかな?」

温子「私は見ました。」

由紀「私も見ました。」

真紀「私も同じく見てました。」

美香「私も見てました。」

温子「見てたんですけど、どうしてここに一緒に居るのかは分かって無いかな?」

耕作「なるほど、確かに、あの会見だけだと、ここに居る理由付けにはならないか。」

耕作「じゃあ、詳しく説明するけど、時間は大丈夫?」

柔「大丈夫、課長にはそれだけの時間が掛かるのは了承して貰ってるから。」

耕作「分かった、じゃあ、説明するよ。」

女子部員一同「はい、よろしくお願いします。」

耕作「婚約会見の前になるけど、号外をうちの新聞で出した時に柔に関してはうちの社のみでしか
    取材が出来ない趣旨の事を告知してたのは知ってる?」

陽子「あっ、それは見ましたけど、そこまでは確認して無かったかも。」

耕作「まあ、普通はそうだろうね、マスコミ以外には関係ない事だし。」

耕作「そう言う事なので、柔の取材は俺だけが出来る事になったんだ。」

恵美「夫婦だからですか?」

耕作「それは余り関係は無いかな?」

雅「どういう理由で松田さんが柔さんの取材をする事になったんですか?」

耕作「理由って事で言うなら、俺がアメリカに居た時、柔が来たんだけど。」

美香「松田さんに柔さんが会いに行ったんですか?」

柔「そうだよ、あたしが主人に会いに行ったの。」

温子「それって、結婚する前ですよね?」

柔「その通り、結婚前に行ったの。」

由紀「結婚する為にですか?」

柔「そう言う気持ちは有ったけど、行く時は会いたい一心だったかな?」

真紀「そこで婚約したんですか?」

柔「そうなるかな?あたしはそこまで考えて無かったんだけどね。」

耕作「今の柔の説明で納得いったかな?」

陽子「はい、ある程度は分かりました。」

耕作「じゃあ、話を続けるけど良い?」

美香「続けて下さい。」

耕作「柔は向こうつまりアメリカでも普通の道場で教えててマスコミに取り上げられたんだ。」

耕作「それで俺にも取材の命令が下ったので、その時から柔を取材してたんだ。」

雅「なるほど、その流れで今でも取材を続けてる訳なんですね。」

耕作「そう言う事になるね、だから、今でも俺だけが柔を取材してる訳なんだよ。」

耕作「これで分かったかな?」

女子部員一同「はい、分かりました。」

柔「他に何か聞きたい事とか有る?」

温子「聞きたい事は有りますけど、お二人のプライベートに関してなのでここでは控えます。」

真紀「私も温子さんと同じかな~。」

柔「もしかして、他の人もあたし達の事に関して聞きたい事が有るって事?」

陽子「どうも、そうみたいです。」

柔「分かった、でも、温子さんが言った様にここでは止めた方が良いかもね。」

柔「何か機会が有ったら、そういう場を設けようと思うので、その時にでも良いよね?」

女子部員一同「はい、それで結構です。」

柔「じゃあ、自己紹介と質問はこれで終わるから、皆はさっき教えたお仕事を再開してね。」

女子部員一同「はい、分かりました。」

女子部員達は自分の席に着くと仕事を始めた。

耕作「柔?俺の席ってどこになるの?」

柔「あたしの席が皆を見渡せるあそこなんで、その後ろの席かな、皆には背を向けるけど良いよね?」

耕作「あそこか、分かった、俺も色々書いたりするから皆に背中を向けてた方が良いよ。」

柔「じゃあ、座りましょうか。」

耕作「分かった。」

耕作「あっ、時々は君の仕事ぶりを見るけど構わないよね?」

柔「構うも何も、それがお仕事で来てるんだから見てくれて構わないに決まってるじゃない。」

耕作「分かった、じゃ、座っておくよ。」

柔「あたしもお仕事しないといけないから座るね。」

柔と耕作はそれぞれの席に着くと柔は皆の仕事も見ながら自分の仕事を始めた。

耕作「(女性ばかりの職場か・・、こりゃ慣れるまで時間が掛かりそうだ。)」

耕作「(いっそ、俺も羽衣さんの部屋に居た方が良い気がしてきた。)」

耕作「(一応、あそこでもガラスで仕切られてるだけだから、こっちを見る事は出来るし。)」

耕作「(さっき、羽衣さんがあの部屋に入る時に微笑んでたのはこういう訳だったのか。)」

耕作「(俺としては柔の傍に居るだけで十分だからな。)」

耕作「(他の部員の事は余り気にならないし。)」

耕作「(しかし、皆、黙々と仕事をするんだ、うちではまず考えられない光景だ。)」

耕作「(柔は皆にきちんと仕事の内容を教えたみたいで安心した。)」

耕作「(柔道でも思ってたが、柔って教えるのが上手いんだろうな。)」

耕作「(自分の経験を基に話す事も有るから参考にし易いのかも。)」

真紀「柔さん、ここ教えて貰えませんか?」

柔「良いよ、そっちに行くね。」

柔は席を立つと真紀の傍に行って話を聞きながら教えていた。

耕作「(さすが、先輩だけ有るな、丁寧に教えてるし。)」

柔が教え終わって席に戻ろうとした時に由紀が柔に声を掛けた。

由紀「柔さん、すみません、ここをちょっと教えて欲しいんですけど。」

柔「うん、良いよ。」

柔は由紀の傍に行くと話を聞いた後に教え始めた。

耕作「(この分なら柔道も教え易そうだ。)」

耕作「(おっと、見てばかりじゃ不味いな、俺も自分の仕事をしないといけない。)」

耕作は柔との出会いから現在に至るまでの連載物の執筆に取り掛かった。

耕作「(最初に目撃した時の事はどう書くかな~。)」

耕作「(書くと俺が目撃してた事がバレるから書くのは止めておくか。)」

耕作「(そうすれば高校の時に部屋に連れて行った事も書かなくて済むからな。)」

耕作「(どこから書いたもんかな~。)」

耕作「(藤堂さんとの対戦から書くか、あれからなら無難に書けそうだ。)」

耕作は柔と藤堂が対戦した時の様子から書き始めた。

柔「何でそこからなの?」

耕作「わっ、ビックリした~。」

耕作「他の人の仕事は?それに自分のは?」

柔「あたしのは一段落着いたし、皆はちゃんとお仕事してるから。」

柔「どうしてそこから書き始めてるの?」

耕作は小声で柔に耳打ちした。

耕作「だって、まさか最初の目撃から書く訳にはいかないだろう?」

柔も耕作に耳打ちした。

柔「パンチラ目撃だからなの?」

2人は小声でやり取りし始めた。

耕作「そうだよ、それにその後の一連の騒動も書かなくて済むだろう?」

柔「一連の騒動?何だっけ?」

耕作「君を俺の部屋に連れて行った事とかだよ。」

柔「あ~、確かに高校生を泊めたとか書けないね。」

耕作「でしょう?だから、ここから書き始めたんだ。」

柔「なるほど、あなたの体面も有るしね。」

耕作「それも有るけど、君のスキャンダルにもなりかねない事だから。」

柔「どうしてあたしのスキャンダルになるの?」

耕作「それは、君が高校の頃から男の部屋に泊まってるとか大スキャンダルに決まってるじゃないか。」

柔「過去の事でもそうなるんだ。」

耕作「皆が知らない過去の事だから週刊誌とかは特に書きたがるんだよ。」

柔「へ~、そう言うもんなんだね、聞いて良かった~。」

柔「あなたが書いてる事以外は他では話さない方が良いって事になるのね。」

耕作「そう言う事だよ、気を付けてね。」

柔「は~い、気を付けま~す。」

陽子「柔さん?」

柔「あっ、はい、何かしら?」

陽子「休憩しても構いませんか?」

柔「あ~、もうそんな時間なのか、良いよ、皆、休憩してね。」

女子部員一同「はい、分かりました。」

陽子「ところで、今、何をお二人で話してたんですか?」

柔「あなた?言っても良い?」

耕作「構わないよ。」

柔「主人があたし達の出会いから今迄の事を書こうとしてるんだけど、その事で話してたの。」

陽子「そうだったんですか、それって何時読む事が出来ます?」

耕作「新聞の連載で出す予定だけど、最初は今週末か来週初めになると思うよ。」

陽子「そうなんですね、楽しみに待ってます。」

温子「そう言えば、お二人って必ずお互いに確認なさってるんですね。」

柔「そうだね~、何かするにも確認してする様にしてるからね。」

美香「それって素敵です、良くお話合いとかされてるんですね。」

柔「うん、色んな事を話し合ってるよ。」

美香「柔さんも松田さんもお互いを見る時の目が凄く優しいんですね。」

柔「そうなの?」

美香「はい、相手を慈しむ様な眼で見てらっしゃいますよ。」

柔「へ~、そんな風に見えてるのか~。」

雅「先程も言いましたけど、仲が良いのは愛し合ってらっしゃるからなんですね。」

柔「まあね~、じゃないと一緒になって無いし~。」

由紀「羨ましい限りですよ~。」

柔「皆は誰か好きな人とかいるの?」

女子部員一同「今は柔道が恋人です。」

柔「全員で声を揃えて言うほどの事でも無いと思うんだけど・・。」

真紀「そうなんですか?柔さんもそうだったんじゃないです?」

柔「あ~、あたしの場合は特殊過ぎて参考にならないと思うよ。」

温子「そうなんですか?」

柔「うちは柔道一家だったからね~、知らないうちに柔道をやらされてたって感じかな。」

陽子「そうだったんですか、それは知りませんでした。」

柔「あっ、そろそろ休憩終わりにしようか?課長がこっち見てるし。」

陽子「まあ、それは大変、皆お仕事を始めましょう。」

他の女子部員達は直ぐに席に座って仕事を始めた。

柔「じゃあ、あたしも残りのお仕事を片付けるかな。」

陽子「はい、私も頑張ります。」

柔と陽子も自分の席に着くと仕事を始めた。

耕作「(ふふ、柔の奴、羽衣さんがそこまで厳しく無いのを知っててわざと言ってるんだな。)」

耕作「(これからの事も有るから羽衣さんの権威付けをしてるんだ。)」

耕作「(どれ、俺も続きを書くかな。)」

耕作も先程の続きを書き始めた。

耕作も皆も自分のするべき事を続けていたが昼前になると羽衣課長が部屋から出て来て皆に声を掛けた。

羽衣「今日は初日でも有るし、これから練習も有るだろうから食事に行って構わないぞ。」

柔「分かりました、それではお食事に行ってきます。」

羽衣は部屋から出て行った。

柔「皆、お昼にして良いよ。」

陽子「分かりました。」

恵美「柔さん達は如何されるんですか?」

柔「あたしは主人と外に食べに行ってくるつもりだけど。」

柔「皆はどうするの?」

温子「私はお弁当を持って来てます。」

由紀「私も持って来てます。」

真紀「私もです。」

美香「私もお弁当です。」

雅「私もかな?陽子も恵美もそうだよね?」

陽子「そうね、今日は持ってきたかな。」

恵美「私も作ってきてます。」

柔「さすがね~、皆、手作り弁当持参か~。」

陽子「よろしければ、今度皆でお食事に行きませんか?」

柔「それ、良いわね~、ただ平日は時間がね~。」

雅「私達は柔さん達の時間の都合が良い時で構いませんよ。」

柔「分かったわ、懇親会的な事をしたいと思ってたので、今度、あたしの家でしましょうか?」

陽子「柔さんの家でですか?」

柔「そうだけど、何か問題でも有るの?」

陽子「いえ、問題なんて無いですよ。」

陽子「それどころか嬉し過ぎて、是非お願いします、ねえ?皆もだよね?」

他の全員「はい、是非伺いたいです。」

温子「滋悟朗先生とも会えますし。」

柔「あ~、それも有ったね、じゃあ、次の日曜でも良いかな?」

女子部員一同「はい、お伺いします。」

柔「あなた?良かったよね?」

耕作「特に予定は無いから良いと思うよ。」

雅「本当に何事でも確認されるんですね~。」

柔「そうなの、必ず確認する事にしてるからね。」

柔「じゃあ、あたし達は外に食べに行ってくるね。」

女子部員一同「行ってらっしゃい。」

柔「行ってきます、あなた?行こう?」

耕作「じゃあ、柔と出掛けてきますので。」

真紀「ごゆっくり~。」

柔「時間前には戻ってくるから。」

由紀「少し位遅れても良いですよ~。」

柔「いやいや、そんな訳にはいかないよ、課長に叱られちゃうからね。」

恵美「そうですよね、でも、ごゆっくりしてきて下さい。」

柔「じゃあ、また後でね~。」

美香「行ってらっしゃい。」

柔と耕作は一緒に部屋を出ると外に出て行った。