柔と耕作(松田)の新婚日記 17日目 (午前編第3部)
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部屋に入ると耕作はベッドに座り、柔はコーヒーを淹れてお茶を注ぐとコーヒーを耕作に
渡しながら寄り添って座った。
柔「可能性ありの記念?のコーヒーだよ~。」
耕作「ありがとね、お医者さんの言葉だから重みが違うよね。」
柔「そうだね~、桜お姉ちゃんの言葉なのもかな~。」
耕作「ふふふ、君にとってはそうなんだね。」
耕作「診察室に入った時に君は何て言ったの?」
柔「えっと、『失礼します』だったと思うよ。」
耕作「まあ、そうだよね、その後に桜さんには何て言ったの?」
柔「あたしも最初誰この人って思ってたの。」
耕作「そうだね、久しぶりに会うからそう言う反応になるよね。」
柔「そしたら桜お姉ちゃんの方から、『柔ちゃん久しぶりね~』って声を掛けられちゃった。」
耕作「あ~、桜さんから声を掛けてきたんだ、君は何て返したの?」
柔「あたしは暫く唖然としてたら、『覚えて無いの?』って言われたちゃったの~。」
柔「それで、あたしは『ごめんなさい、忘れてました』って言ったんだけど。」
耕作「そうしたら、桜さんは何て言ったの?」
柔「桜お姉ちゃんはね、『そうだよね~、2年間しか一緒に登校しなかったんだもんね』って。」
柔「そう言われて、桜お姉ちゃんの顔をじっと見てたら記憶が蘇って登校してる時に
どんな事が有ったとかお話したの。」
耕作「そうだったんだ、良かったじゃない、思い出して。」
柔「うん、そのお話した時、桜お姉ちゃん凄く喜んでくれてた。」
耕作「なるほどね~、だから俺が入った時にあんなにニコニコしてたんだ。」
柔「そう言えば笑顔だったね。」
柔「あ、それでね、問診票を見た時は『松田 柔』って書いて有ったから、あたしだって
分からなかったって言ってた。」
柔「あたしが入って行って顔を見たら直ぐ分かったって言ってたよ。」
耕作「君をテレビで見た事が有ったんじゃないかな。」
柔「そうみたい、オリンピックの時に見たって言ってたよ。」
耕作「なるほど、だから分かったんだね。」
柔「それで名字が違うから『そう言えば結婚してたんだったね~』って言ってくれた後に
『おめでとう』って言われちゃった。」
耕作「って事は結婚に関する会見は見てないんだ。」
柔「そうだと思うよ。」
柔「ほんとに桜お姉ちゃんが先生で良かったよ~。」
耕作「君の知り合いで良かったね、普通は病院って行くのって嫌じゃない?」
柔「うん、そうだよね~。」
耕作「でも、あそこなら逆に行きたいって思うでしょう?」
柔「勿論だよ~、毎日でも行きたい位だよ。」
耕作「いや、さすがに病院に毎日はちょっとどうかとは思うけど。」
柔「あ、そうだった、あそこって病院だったね。」
耕作「次は再来週か、忘れない様にしないと。」
柔「大丈夫~、あたしが忘れないから~。」
耕作「それもそうか、行くのは君なんだしね。」
柔「え?あなたは行かないの?」
耕作「勿論、俺も一緒に行くよ?」
柔「あ~、良かった~、あたしだけで行かないといけないかと思っちゃった。」
耕作「君を一人で行かせる訳無いじゃない?」
柔「うふふ、そうだよね~。」
耕作「それにしても、桜さんって結構呆気らかんってしてるね。」
柔「そうだったね。」
耕作「おまけに『やる事やってるなら』って言ってたし。」
耕作「それに俺達が愛し合う事にも言及してたからね。」
柔「あれは、ごめんね~、どうしても聞きたかったから。」
耕作「謝らなくて良いよ、専門家の意見を聞くのは大事だと思う。」
耕作「でも、恥ずかしく無かったな~、いきなり聞かれたのも有るけど。」
柔「桜お姉ちゃんが先生だから良いの?」
耕作「『やる事やってる』って言った事が?」
柔「うん、あなたはあたしがそう言う事を外で言ったら駄目って言ってたじゃない?」
耕作「あ~、確かに君にはそう言ったね。」
耕作「まあ、桜さんが先生なのも有るし、病院の中だったから良いんだけどね。」
耕作「後、桜さんは君に気を許してたのも有ると思うよ。」
柔「そうなんだね、何だか嬉しくなってきちゃった。」
柔「あれ?でも、あなたも居たよね?」
耕作「俺は君が選んだ男性だから君と同じ様に考えたんだと思うよ。」
柔「あたし、あなたを選んだりしてないよ?あなたしか居ないって思ってたから。」
耕作「ごめん、今の言い方だと語弊が有るね。」
耕作「正確には君と一緒になったからだね。」
柔「うん、そうだね、あなたと一緒になれて幸せだもん。」
耕作「俺もそれは君と同じだよ。」
耕作「ところで会社は連絡入れなくて良いけど、富士子さんの所は連絡入れないと
いけないんだったよね?」
柔「うん、行く前に連絡して頂戴って言われたよ。」
耕作「君の会社から連絡入れた方が良いよね?」
柔「そうだね、近くに公衆電話は無かった気がする。」
耕作「お土産も有るからタクシーを呼んでから行こうか?」
柔「その方がお土産をずっと持たなくて良いから、そうしましょう。」
耕作「分かった、出る時に呼ぶ事にしよう。」
耕作「それはそうと今日に限って手を握ったりしたのは何でなの?」
柔「そうだった?」
耕作「道場に行く時もそうだったし、ここから下へ行く時もだったよ?」
柔「えっとね~、あなたと手を繋ぐととても安心出来たの。」
耕作「そうなんだね。」
耕作「後、病院は町内は行かないって言ってたのに何で行く事にしたの?」
柔「あ~、それはね~、町内でも問題無さそうかなって思い直したからだよ。」
耕作「そう言う事だったんだね。」
耕作「それじゃ、そろそろ出掛けようか。」
柔「うん、そうだね、帰るのが遅くなるといけないしね。」
耕作「会社だから何か羽織った方が良くない?」
柔「分かった~、カーディガンを羽織るね。」
柔は薄手のカーディガンを出してきて羽織った。
柔「後はお土産か。」
柔「ポットとかは帰ってきてからで良いよね?」
耕作「うん、それで良いよ。」
耕作「じゃあ、行こうか。」
柔「は~い。」
柔は耕作と手を繋いで土産を持つと下へ下りて行った。
玄関へ行くと耕作はタクシー会社に電話した。
耕作「直ぐ来るそうだから、表て待とうか。」
柔「うん、そうだね。」
柔と耕作は玄関を出て木戸を潜り表に出てタクシーが来るのを待った。
柔「直ぐ来るって、そんなに早く来るのかな?」
耕作「どうかな?少し待つ位じゃない?」
柔「それなら良いか。」
少し待つとタクシーがやって来た。
柔と耕作はタクシーに乗って柔の会社へ向かった。
タクシーで暫く走り柔の会社前に到着して柔と耕作はタクシーを降りた。
柔「あ~、久しぶりで何だかドキドキして来た。」
耕作「まずは支店長かな?」
柔「そうだね、じゃあ、入ろうか。」
柔と耕作は支店の中に入って行った。
入って直ぐのお客様受付カウンターの女性社員に柔が声を掛けた。
柔「失礼します、柔です。」
柔「長い間、ご迷惑をお掛けしています。」
柔「今日は新婚旅行から帰ったのでご挨拶に伺いました。」
女性社員「柔さん、お久しぶりね、元気そうで安心しました。」
柔「お久しぶりです、ごめんなさい、長い事休んでて。」
女性社員「気にしないで良いですよ、あなたのお陰でここも活気が出てるから。」
柔「あたしのお陰ですか?」
女性社員「そうなのよ?」
女性社員「例のツアーの海外分で結構な予約が入ってて既に何組かは現地に行ってますよ。」
柔「そうなんですか、良かったです。」
柔「ところで支店長はいらっしゃいますか?」
女性社員「今は本社に行ってますよ。」
柔「そうでしたか、それじゃ、羽衣課長はいらっしゃいます?」
女性社員「羽衣課長ならプロジェクトの件で頑張ってて今居ますよ。」
柔「そうなんですね、羽衣課長にご挨拶してきます。」
女性社員「分かりました、いってらっしゃい。」
柔と耕作は周りの社員達に声を掛けられる度に会釈して羽衣課長の席へ向かった。
柔「羽衣課長、昨日帰ってきました。」
羽衣「おお、帰って来たんだね、それでどうだった?」
柔「はい、十分に楽しんできました。」
羽衣「そうか、それは良かった。」
柔「羽衣課長、これ、支店長の分と羽衣課長の分と後はここの皆の分です。」
羽衣「わざわざ良かったのに、すまないね。」
柔「それで羽衣課長にお話が有るんですけど。」
羽衣「どう言った事なんだ?」
柔「えっと、あたしの取材に関する事なんですけど。」
羽衣「あ~、松田さんがここに来てっていう、あれの事だね?」
柔「はい、実はその件で羽衣課長から支店長経由で社長に伝えて欲しい事が有るんですけど。」
羽衣「どんな内容なんだい?」
柔「当初は主人が毎日ここに居ると予定だったんですけど。」
柔「それを何か有る度に変更したいんです、構いませんか?」
羽衣「そうだね、俺もその方が良いと思うよ。」
羽衣「松田さんに半日とはいえ、ここにずっと居て貰うのは辛いだろうと思ってたんだ。」
柔「そうでしたか、それではお願い出来ますか?」
羽衣「分かったよ、今、君が言った内容で支店長には話をしておくから。」
柔「それとあたしが復帰直後は2、3日連続で主人がここに来る予定にしてますので。」
柔「併せて、そちらの方もよろしくお願いします。」
羽衣「分かった、それも上には伝えておくから。」
耕作「羽衣さん、ご無沙汰してます、今の件よろしくお願いします。」
羽衣「こちらこそ、柔さんには感謝してもし切れないよ。」
耕作「ツアーの件で両親がお礼を申していましたので。」
耕作「ほんとにありがとうございます。」
羽衣「実は松田さんの実家に昨日の夕方に電話したんだが。」
耕作「え?俺の実家にですか?」
羽衣「ああ、そうしたら日蔭さんが出て来てね。」
耕作「キョンキョン、あ、すみません、日蔭さんが電話にですか?」
羽衣「そうなんだよ。」
羽衣「何でも君の母上から料理を習ってるとかで、郷土料理が習えるのをツアー内容に
入れてみたら面白いかも知れませんって言われてね~。」
羽衣「君の母上ともご相談して入れてみたんだ。」
耕作「そうでしたか、母もその方が喜ぶかもしれません。」
羽衣「そうか、それなら大丈夫そうだね。」
羽衣「今日、さっき一組4人の申し込みがその内容であったばかりなんだ。」
耕作「それは良かったです。」
耕作「海外分も好評だそうですね。」
羽衣「そうなんだ、海外分は団体客が多くて助かってるよ。」
柔「羽衣課長、お電話をお借りしても構いませんか?」
羽衣「ああ、構わないよ、そこのを使ってくれたまえ。」
柔は富士子の家に電話を掛けた。
耕作「順調そうで何よりです。」
羽衣「君達のお陰だよ、礼を言うよ。」
耕作「お役に立てて良かったです。」
柔は電話を掛け終わった。
柔「羽衣課長、お電話、ありがとうございます。」
羽衣「いや、その位良いから。」
柔「それで、あたしの復帰後の事なんですけど。」
羽衣「ああ、社長から聞いているよ。」
羽衣「午後から君が居なくなるのは寂しい気もするが、我社の為だから仕方が無いね。」
柔「まだ、皆は異動はしてきて無いんですよね?」
羽衣「そうだな、君の復帰に合わせて異動してくる事になってる。」
羽衣「実は、俺もその時に初めて顔合わせになるんだ。」
柔「そうでしたか。」
柔「それで異動してきた皆へのここの業務内容の方は、あたしが教えればよろしいんですよね?」
羽衣「それをお願い出来ると俺も助かるよ、まだ例のプロジェクトが続きそうなんでな。」
柔「分かりました、それでは、あたしがここの業務内容を教える事にします。」
柔「あたしもその方が午後からの柔道の練習の事も有るので助かります。」
羽衣「よろしく頼むよ。」
柔「今日はお忙しい中時間を頂いてありがとうございました。」
羽衣「いやいや、君が復帰してからの事だから重要な事だよ。」
柔「それではこれで失礼します。」
柔「7日後には出社しますので。」
羽衣「そうだな、その時はよろしく頼む。」
羽衣「気を付けて帰るんだよ。」
柔「はい、ありがとうございます。」
耕作「じゃあ、俺もこれで失礼します。」
羽衣「松田さん、これからも柔さんをよろしく頼むよ。」
耕作「勿論、そうするつもりです。」
柔と耕作は羽衣に会釈をするとその場を離れ途中社員達にも会釈をしながら会社の外へ出た。
柔「ふ~、何とか終わった~。」
耕作「復帰したらまた始まるけどね。」
柔「うふふ、そうだね~。」
耕作「それで富士子さんは何て?」
柔「それがね~、『待ってるよ~』だって。」
耕作「ふふふ、富士子さんも君に早く会いたいみたいだね。」
柔「じゃあ、行きましょうか。」
耕作「そうだね。」
柔達はタクシーを停めてそれに乗ると富士子宅を目指した。
柔達は富士子宅の近くでタクシーを降りて富士子宅へ向かった。
富士子宅へ着くと呼び鈴を鳴らした。
富士子「はい、どちら様ですか?」
柔「あたしだよ~。」
ドアが勢いよく開けられた。
富士子「柔さ~ん、久しぶりね~、良く来てくれたわね~。」
柔「富士子さん、ほんとに久しぶりね、元気そうで安心したよ。」
富士子「松田さんもお久しぶりです。」
耕作「久しぶりだね、富士子さん。」
富士子「取敢えず、直ぐに上がって頂戴?」
柔「分かった~。」
耕作「お邪魔するよ。」
富士子は柔達をリビングに案内してそこに座らせるとお茶を出した。
柔「フクちゃんは?」
富士子「さっき、やっと寝たばかりなの。」
柔「大変そうね、あ、これお土産ね。」
富士子「そんな、気を遣わなくても良いのに。」
柔「そんな訳には行かないよ~、恩人なんだからね。」
富士子「恩人だなんて、そんな事は無いですよ?」
柔「それでね、富士子さんにだけは先に知らせておこうと思って来たの。」
富士子「もしかして、おめでたの事?」
柔「うん、そうだよ。」
柔「あ、まだ可能性の段階だけどね、一応、お医者さんのお墨付きは貰ったから。」
富士子「そうなのね~、早く確認出来ると良いね。」
柔「4週間後には確認出来るそうなの。」
富士子「そうなんだね~、待ち遠しいよね。」
柔「うん、まあ、焦っても仕方ないから気長に待つよ。」
富士子「確かに、そうだね、でも楽しみだね~。」
柔「そうなのよね~。」
柔「それで富士子さんに聞きたい事が有るんだけど、良いかな?」
富士子「私に答えられる事なら何でもOKよ?」
柔「富士子さん、赤ちゃんが出来たって聞いた時は不安だった?」
富士子「不安なのと嬉しいのが入り混じってたかな?」
富士子「不安なのは柔道が続けられなくなるって事と私の両親の事ね。」
富士子「嬉しいのは花園さんとの子供が出来たって言う事だったわ。」
柔「そうだったんだね。」
柔「後、お腹が大きくなってから生まれるまではどうだった?」
富士子「それも同じかな?不安半分嬉しさ半分って感じだった。」
柔「それって無事に生まれるかが不安だったの?」
富士子「その通りよ、嬉しさは漸く赤ちゃんに会えるんだって言う事かな?」
柔「やっぱり、そう思うよね~。」
柔「ありがとう~、凄く参考になったよ。」
富士子「そう?それなら良かったわ~。」
柔「後、これは柔道に関してなんだけど。」
富士子「今日の練習の事なの?」
柔「正確には今日以降の練習に関してかな?」
富士子「どう言う事なの?」
柔「今日から富士子さんに一人で皆の指導をやって欲しいんだけど、どうかな?」
富士子「え~、いきなり今日からって無理、無理。」
柔「うふふ、やっぱりそう言うと思ってた。」
柔「富士子さん、あたし、さっき可能性って言ったよね?」
富士子「あ、もしかして、それが有るからって事なの?」
柔「うん、そうなの、激しい運動は控えようかと思ってるの。」
富士子「そうか~、それなら仕方ないよね。」
富士子「分かったわ、出来るかどうか分からないけどやってみます。」
柔「間違ってたら、あたしも指摘し直すから、気にせずにやってみてね。」
富士子「うん、出来る限りの事はやるわ。」
柔「後ね、富士子さんに技を幾つか覚えて貰おうかと思ってるの。」
富士子「あ~、以前、もう少し技をって言ってたあれね?」
柔「そうなの、技に幅が出来ればそれだけ対処し易くなるから、覚えて欲しいかな。」
富士子「その事も出来る限り覚える様にするわ。」
富士子「それにしても自分の事も大変なのに私の心配までしてくれるなんて。」
柔「気にしないでね、あたしは富士子さんに感謝してもし足りない位の恩を受けてるから。」
柔「これ位で返し切ったとは思って無いの。」
富士子「そうなのね、私も柔さんには救われた事が結構有ったから。」
柔「あたしに比べたら富士子さんの方がもっとだよ。」
富士子「お互いに助け合ってここまで来たんですものね。」
柔「そうだよね。」
柔「そうそう、キョンキョンがね、新婚旅行先に来てくれたんだよ。」
富士子「キョンキョンが?あの子そこまでする様な行動力無かったのに?」
柔「そうだよね、キョンキョンが一番変わったって思ったよ。」
富士子「そうよね~、最初は居るか居ないか分からない子だったのにね。」
柔「それが試合に出て『私、勝ちたいんです』って言うまでになってたもんね。」
富士子「それで何故わざわざ新婚旅行先まで来てたの?」
柔「富士子さんになら言ってもキョンキョンは許してくれそうだから言うね。」
富士子「やっぱり、何か理由が有ったのね?」
柔「そうなの、彼氏と上手くいってなかったみたいで、その事を相談しに来てたの。」
富士子「相談しにわざわざ行ったんだ、あのキョンキョンが。」
柔「うん、結果から言うと主人が彼氏に電話してキョンキョンと彼氏が今日の午後に
会って良く話し合う事になったの。」
富士子「そうなのね~。」
富士子「え?主人?柔さん?松田さんの事、耕作さんって呼んでなかった?」
柔「あ、新婚旅行に行ってる時にその呼び方に変ってたの。」
富士子「また、急にどうして変えちゃったの?」
柔「主人の同級生の方とお話してる時に思わずそう呼んでたのがそのまま続いてるの。」
富士子「そうだったんだ、松田さんはそれで良いんですか?」
耕作「そうだね、柔がしたい様にして構わないって言ったから、俺は気にして無いよ。」
富士子「松田さん、人間が大きいですね~。」
耕作「そうでも無いよ?柔に関してだけかもね。」
富士子「あ、そうだった、それでキョンキョンはどうしたいのかしら?」
柔「今は彼もそう思ってるみたいだけど、キョンキョンも一緒になりたいんだって。」
柔「だから、お話し合いは上手くいくと思ってるよ。」
富士子「それなら良かったわ~、柔道部の仲間が上手くいってくれるのは嬉しい。」
柔「それでね、明日の10時なんだけど、キョンキョンと会う事にしてるの。」
富士子「え?どこで会うの?」
柔「主人の会社の近くの喫茶店で会う様にしてるよ。」
富士子「私も一緒に行きたいな~。」
柔「フクちゃんはどうするの?」
富士子「あ、そうだった。」
柔「えっとね、言い忘れてたけど、明日、キョンキョンがお友達2人と一緒に西海大に見学に
来たいって言ってたけど良いかな?」
富士子「見学だけなら許可もいらないと思うけど祐天寺監督には今日話しておくわ。」
柔「良かった、そうしてくれると助かるよ。」
柔「だから、富士子さんが喫茶店に来なくても良いよ。」
富士子「そうね、西海大に来るならその時に聞けば良いわね。」
柔「それでね、キョンキョンのお友達2人にも富士子さんの事はお話してるから。」
富士子「え~、何を話しちゃったの~?」
柔「短大時代の事しかお話して無いから心配しなくても良いよ。」
富士子「あ~、良かった~、それなら心配しなくても良いわね。」
柔「今日はいつもの様に15時頃に行けば良いのかな?」
富士子「それで良いわよ、監督にもその時間に来るって話してるから。」
柔「分かった、じゃあ、その時間で行く様にするね。」
柔「それで練習方法なんだけど、今迄の様にするか、皆の苦手な技を改善するか、
どちらが良いか監督に富士子さんから聞いてて貰えないかな?」
富士子「私が聞いても良いの?」
柔「だって、今日から富士子さんがメインで指導するんだよ?」
富士子「あ~、そうだった~、どうしよう~。」
柔「富士子さん?そう言う事も含めてのメインなんだから。」
富士子「そうだけど~、私はやり方をまだ余り知らないのよね~。」
柔「完全に一人でじゃ無いから心配しなくても良いよ。」
富士子「あ、そうだったわね、柔さん、よろしくね。」
柔「あたしとしては富士子さんにも技を覚えて欲しいから、出来れば苦手な技の改善の方が
良いとは思ってるよ。」
富士子「そうね、分かったわ、監督がそっちを選ぶような話し方をしてみるから。」
柔「お願いね~、それも指導する時の役に立つと思うよ。」
耕作「富士子さん?」
富士子「はい、松田さん、何でしょうか?」
耕作「君は俺と柔の事を話す時、柔の事を良く理解してるよね?」
富士子「どうでしょう?そう言う風に聞こえました?」
耕作「うん、柔の事を良く見てると思ってるよ。」
耕作「その見識が有れば十分に指導する事が出来るはずだから。」
耕作「何も不安がる事は無いと思うよ。」
富士子「松田さんもそう言われるなら頑張ってみます。」
柔「富士子さん?頑張るのは良いけど、頑張り過ぎない様にしてね?」
富士子「分かったわ、もしそうなってそうなら、柔さん、声を掛けてね?」
柔「あたしから一つ忠告だけど聞いてくれる?」
富士子「うん、お願いします。」
柔「指導する相手も富士子さんと同じ柔道部員だって言うのを忘れないでね?」
富士子「確かに、私と同じ柔道部員だけど、どうしてそんな事を言うの?」
柔「あたしは教える時は同じ柔道をやってる人って言う認識で指導してるのね。」
富士子「そうね、実際柔道をしてるんだから。」
柔「あたしの場合は一応肩書が有るから、厳しい事を言っても皆納得してくれてるけど。」
富士子「そうよね、世界一位ですからね、2階級で。」
柔「でもね?厳しい事を言ってるけど、それは何故かって言うのを理解して貰わないと
相手の方も付いて来てくれないと思うの。」
富士子「確かに、理解しないままだと上達は望めないわね。」
柔「そう言う事なのよ。」
柔「だから、富士子さんにも相手に理解させる様な説明の仕方を覚えて欲しいの。」
富士子「あ~、だから同じ柔道部員だって言うのを忘れない様にって事なのね。」
柔「うん、同じ目線で指導して欲しいって言う事なの。」
富士子「分かったわ、柔さんの今言った事は肝に銘じて指導する様にするね。」
柔「そうしてね、それが出来れば何も心配しなくて良くなるから。」
耕作「俺からも一つ良いかな?」
富士子「はい、お願いします。」
耕作「柔道には投げ技と寝技が有るのは知ってるよね?」
富士子「はい、知ってます。」
耕作「その内の投げ技に関してだけど、投げ方は違うけど基本は同じって分かるよね?」
富士子「形は違うけど基本は同じですか?」
柔「相手の力を如何に利用するかって言うのはどれも同じだよ。」
富士子「あ、そうでした。」
耕作「柔、ありがとう。」
柔「ごめんね、口を挟んじゃって。」
耕作「いや、君の方が良く分かってるから構わないよ。」
耕作「俺が言いたい事は、そうする為には如何すれば良いかを教えれば良いと思うよ。」
富士子「如何すれば良いかですか?」
柔「自分の投げたい技の力と同じ方向に相手が力を加える様にするには如何すれば良いかを
考える事だから。」
柔「もしくは、その方向に相手のバランスを崩すにはどうするかかな?」
富士子「なるほど、理屈では分かってるけど具体的にどうするかって事ね。」
柔「そうね、富士子さんの必殺技も相手の動く方向に掛けてるよね?」
富士子「うん、後ろに下がりかけの時に掛けてるかな。」
富士子「そう言う事なのね、分かったわ。」
柔「あなた?補足ありがとう~。」
耕作「君が一つって言ったから、俺が言った事も教えるのには必要かなって思ったんだ。」
富士子「柔さん達は本当に二人三脚でやってるのが良く分かったわ。」
富士子「今まで話してくれた事を良く考えながら今日はやってみるわ。」
柔「その心意気よ、あたしも足りない部分は補足するから。」
富士子「そろそろ帰らないといけなんじゃない?」
柔「そうね、名残惜しいけど、また西海大で会えるしね。」
柔「それじゃ、これで帰るね、花園君によろしく言っておいてね。」
富士子「分かったわ、伝えるから。」
耕作「長々と話してごめんよ、また練習の時に。」
柔と耕作は玄関の所まで行き富士子もそこで見送る事にした。
富士子「柔さん、松田さん、大学で待ってます。」
柔「またね~。」
耕作「大学で~。」
柔と耕作は富士子宅を後にするとタクシーを拾って柔の実家へ戻って行った。