柔と耕作(松田)の新婚日記 17日目 (午前編第1部)

            文書量(文字数)が膨大な為、一日を分割で表記しています




      帰国十七日目。 柔と耕作の長い長い一日(十七日目) 


      耕作は柔に擽られて目を覚ました。

      柔「ほら~、あなた~、起きて~、早く~。」

      耕作「柔~、止めなさ~い。」

      柔は擽るのを止めた。

      柔「あ、起きた、おはよう~。」

      耕作「おはよう、もう少しましな起こし方無かったの?」

      柔「あれ?これって、この前膝枕した時に聞いた起こし方だよ?」

      耕作「あ~、確かに、そう言ってたな~。」

      柔「間違って無いよね?」

      耕作「確かに、間違ってはいないけど、あれって膝枕で寝た時の起こし方じゃ無かったの?」

      柔「でも、あなたは膝枕で寝た時って一言も言わなかったけど?」

      耕作「しまった、君の言う通り、言ってないね。」

      耕作「俺が悪かった、ちゃんと言わなかったからね。」

      柔「それで練習付き合ってくれるの?」

      柔「もし、まだ寝足りないなら寝てても良いよ?」

      耕作「行くよ、完全に目が覚めたからね。」

      耕作が起き上がると柔がキスをしてきた。

      耕作「目覚めのキス、ありがとね。」

      耕作「もう着替えてるんだね。」

      柔「着替えさせたかった?」

      耕作「いや、昨日着せてあげたから、今日は良いかな?」

      柔「あたしの裸も見てるしね~。」

      耕作「これこれ、その事は昨日話したでしょう?」

      柔「うふ、そうだったね。」

      耕作「ところで何で柔道着じゃないの?」

      柔「今日は昨日と同じ感じにしようかと。」

      耕作「昨晩の風呂での事が有ったから?」

      柔「うん、あなたに心配は掛けたくないしね。」

      耕作「なるほど、どれ、俺も着替え・・。」

      柔「そのままで良いんじゃない?」

      耕作「それもそうか、じゃあ、このままで行くよ。」

      耕作が起き上がると柔が手を繋いできた。

      耕作「手を繋いだまま行くの?」

      柔「えへ、良いでしょう?」

      耕作「まあ、構わないけど。」

      柔は着替え用のショーツだけ持つと耕作と手を繋いで下へ下りて柔道場へ向かった。

      柔道場へ向かう途中、風呂場の脱衣所に入ってショーツを置くと道場へ行った。



      柔道場に着くと柔は耕作の手を離した。
      中に入る前に柔は一礼して奥へ進んで柔軟から始めた。
      耕作は昨日と同じ様に入り口からそれを眺めていた。

      柔は柔軟が終わると直ぐにトレーニングを開始した。

      耕作「(おや?トレーニングのメニューが違うな。)」

      耕作「(上下動の激しいのは省いたのか。)」

      耕作「(自分の体に気を遣い始めたのかな?)」

      耕作「(こうして見る限りでは、昨日の影響は無さそうだな。)」

      耕作「(おっ、もう終わったのか、相変わらず、早いな。)」

      柔が耕作の元へやって来た。

      柔「終わったよ~。」

      耕作「今日のは早かったね。」

      柔「一部カットしたからね。」

      耕作「どうしてなの?」

      柔「それは上に行ってからお話しましょうか。」

      耕作「分かった、それで良いよ。」

      道場出る際に柔は一礼すると耕作の手を取って一緒に風呂場へ向かった。



      風呂場に着くと柔は耕作の手を離した。

      柔「じゃあ、体洗ってくるね。」

      耕作「俺はここで待ってれば良いの?」

      柔「何なら、中に入って洗ってくれても良いよ?」

      耕作「これこれ、朝から誘う様な事は言わないの。」

      柔「以前も洗いっこしたんだから平気でしょう?」

      耕作「いや、さすがに朝からは・・。」

      柔「うふふ、冗談だってば~。」

      柔「でも、少しはほんとに入ってくるか試したのも有るから、ごめんね~。」

      耕作「安心したよ。」

      柔「どうして?」

      耕作「今までと同じ様にする君を見たからね。」

      柔「心配してくれてたんだね、さっきもずっとそんな顔してたし、ありがとう~。」

      耕作「君が入ってる間に俺も顔を洗っておくよ。」

      柔「うん、分かった~、直ぐ出るからね~。」

      柔は風呂場へ入って行った。

      耕作は暫くして柔に声を掛けた。

      耕作「もう風呂の中に入ってる?」

      柔「うん、今体を洗ってるよ~。」

      耕作「じゃあ、脱衣所で顔を洗うよ。」

      柔「分かった~。」

      耕作は脱衣所に入って洗面台で顔を洗い歯を磨き終えて脱衣所の外に出た。

      耕作「(明るく無い中で俺の気持ちを読み取ってたのか。)」

      耕作「(俺の方を見てるのは知ってたけど、しっかりと俺の表情を見てたんだな。)」

      耕作「(今後は余り心配顔は見せない様にしないと、逆に柔が不安になりそうだ。)」

      耕作「(これは柔が妊娠した時も同じ様にしないといけないか。)」

      耕作「(もしかして、その時の予行演習の為に・・。)」

      耕作「(いやいや、そこまで都合良く事は起こらないだろう。)」

      耕作「(でも、実際に予行にはなった気がするな。)」

      柔が風呂場から元気良く出て来た。

      柔「あなた~、お待たせ~。」

      耕作「あれ?着替えなかったの?」

      柔「あたしが着替え持って来なかったの知ってるじゃない?」

      耕作「あ、そう言えばショーツだけしか持ってなかったね。」

      柔「今日は出掛けるまで、これで良いかな~って。」

      耕作「あ~、それでショーツだけ持って来たんだ。」

      柔「うん、そうだよ~。」

      耕作「じゃあ、朝御飯の用意まで上に居ようか?」

      柔「そうだね~。」

      柔は耕作の手を取ると2階へ向かったが、途中台所に寄って柔はカップ2つ持って
      耕作にポットを持たせ手を繋いだまま2階へ上がって行った。



      2階の部屋に入ると柔は耕作の手を放した。

      耕作はポットを机の上に置くとベッドに座り、柔はコーヒーを淹れて耕作に
      渡しながら寄り添って座った。

      柔「あなたの優しさと思い遣りが入ったコーヒーだよ~。」

      耕作「ふふ、君の笑顔も入ってるよ、ありがとね。」

      柔「うふ、昨日はほんとにありがとう~。」

      耕作「夫婦だから、それ位当然だよ。」

      柔「当然の事をしても感謝の心を忘れない様に~って言ったのは、あなただよ?」

      耕作「そうだったね。」

      耕作「まあ、俺の今の返事も君の感謝へのお返しみたいなもんだよ。」

      柔「そうなんだね、あたしも良くするけど、お返し。」

      耕作「ところで君が飲んでるのは何だい?」

      柔「あ~、これ?お白湯だよ~。」

      耕作「なるほど、水分は摂らないといけないしね。」

      耕作「さっきの話の続きだけど。」

      柔「練習量とメニューを変えてた事?」

      耕作「うん、そうだけど、どうして変えたの?」

      柔「昨晩の今朝だったのも有ったけど、万が一を考えてね、少しずつ減らそうかと。」

      耕作「やっぱり、そうだったんだ。」

      柔「うふ、あなたには分かってたみたいだね。」

      柔「後、別なメニューも考えてるの。」

      耕作「どう言うのを考えてるの?」

      柔「スクワットをゆっくりするのとか~。」

      柔「ともかく動作はゆっくりだけど負荷を掛け易い運動かな?」

      耕作「なるほど、速さは今の所変って無いから、筋力の衰えをどれだけ減らすかって事だね。」

      柔「あなたの言う通りだよ、如何に衰えを減らすか、そこに重点を置こうかなって。」

      耕作「体力は?」

      柔「体力はとにかく歩く?しかないかな?もっと先の事だけど。」

      柔「今はまだ走れるからね。」

      耕作「その辺りは君に任せるけど、何か有ったら相談してね。」

      柔「まあ、何か有る前にあなたには必ず相談するけどね。」

      耕作「今日は病院に行って君の会社に行って富士子さんの所だね。」

      柔「そうだね、会社は直ぐ終わると思う、問題は病院かな~。」

      耕作「どうして?」

      柔「患者さんがどの位居るかで決まるからね~時間が掛かるかは。」

      耕作「あ、そうか、君だけじゃないんだった。」

      柔「当たり前だよ~。」

      柔「あたしだけしか患者が居ないってそれってどんな病院なの?」

      耕作「病院に失礼になるね、こう言う事言ってると。」

      柔「そうだよ~。」

      耕作「そうだ、病院に行く前に電話で会社に今日は午後から持って行く事だけ伝えるよ。」

      柔「あ、そうだったね、良いよ、それで。」

      耕作「病院に行って一回ここに帰って来るんだよね?」

      柔「そうしないと病院にお土産持って行かないといけなくなるよ?」

      柔「そんな事したら病院の人が驚くと思うけど。」

      耕作「それもそうだ。」

      耕作「余り遠くないと良いけど。」

      柔「町内だったら、そこまで遠い場所には無いんじゃないかな?」

      耕作「だよね、まあ、玉緒さんが知ってる位なら近場なんだろうけど。」

      耕作「って事は、その病院で君が生まれた事になるの?」

      柔「そこまでは、おかあさんに聞かないと分からないけど。」

      柔「多分、そうじゃないかと思うよ。」

      耕作「女医さんなら良いけどな~。」

      柔「以前、そんな事を言ってたね。」

      柔「どっちにしても今日は問診程度で終わるんじゃないかな?」

      耕作「それなら男の先生でも構わないか。」

      耕作「あ、そうそう、さっきの練習だけど、上下動の激しい運動は省いてたけど。」

      耕作「それってどうやって判断したの?」

      柔「知りたい~?」

      耕作「見た目の動きだけでの判断じゃなさそうだから知りたいかな?」

      柔「あなたが以前、あたしが歩いてる時に見てた事を思い出して、それで判断したんだよ。」

      耕作「俺が君の歩いてる姿を見てた?」

      柔「思い出さない?」

      耕作「・・・、あ~、胸が揺れるかどうか見てた時の事?」

      柔「そうだよ~。」

      耕作「胸の揺れを判断基準にしたって事なの?」

      柔「良いと思わない?」

      耕作「確かに、十分な判断材料にはなるね。」

      耕作「もしかして昨日スポブラしなかったのはその為だったの?」

      柔「そうなの、どの位揺れるか確認してたの。」

      耕作「なるほど、それで上下運動は数回しかしなかったのか。」

      柔「うん、その時に確認してたよ。」

      耕作「うん?という事は、昨日の練習から今迄、君はブラして無いって事だよね?」

      柔「そうで~す。」

      柔「そうは言っても、お風呂から出る時はあなたが着けなかったんだけどね?」

      耕作「あれは仕方ないでしょう?第一ブラは無かったよ?」

      柔「あは、そうだったね~、寝るだけだから良いかな~って思ったから。」

      耕作「まあ、楽って言ってたから別に良いけど、外に行く時は着けてね?」

      柔「どうしようかな~?」

      耕作「どうしようかな~って、着けないで外に出るつもりなの?」

      柔「だって、楽なんだも~ん。」

      耕作「楽なのは分かるけど、大丈夫かな?」

      柔「目立たない様にするから良いでしょう~?」

      耕作「分かった、しょうがないけど君のしたい様にして良いって言ったからね。」

      耕作「ただし、首回りが開いてる服は駄目だからね?」

      柔「何で駄目なの?」

      耕作「分かってて聞くんだね?屈んだ時に見えるからなんだけど。」

      柔「何でその事を知ってるの?」

      耕作「アメリカに居る時に、君が俺にタンクトップ姿見せたじゃない?」

      柔「あ~、そう言えば、そんな事も有ったね~。」

      耕作「そう言う事だから、ちゃんとした服装にしてね。」

      柔「は~い、分かりました~。」

      耕作「ほんとに真面目なんだか不真面目なんだか。」

      柔「あ~、そう言う言い方は酷いんじゃな~い?」

      柔「あたしは何時だって真面目だよ?」

      耕作「分かってるよ?君は何時も真面目で一生懸命だってね。」

      柔「うふ、ちゃんと分かってくれてるんだね。」

      耕作「そうだ、午後からの練習はどうするつもりなの?」

      柔「どうするつもりって?」

      耕作「今日から控えるんでしょう?激しい動きは。」

      柔「何だ、その事ね~、心配しなくても大丈夫~。」

      耕作「『大丈夫~』って言われても、どうするか分からないと安心出来ないんだけど?」

      柔「どうしようかな~。」

      耕作「え?何も考えて無いとかは無いよね?」

      柔「あなたならどうする?」

      耕作「俺ならって、やっぱり何も考えて無いの?」

      柔「あなたがどうするか次第でやり方を変えようかな~って。」

      耕作「そう言う事か、って事は一応は考えてるんだ。」

      柔「ね~、あなたの意見を聞かせて~。」

      耕作「そうだな~、俺なら殆どを富士子さんに任せるかな?」

      柔「うふふ。」

      耕作「何か可笑しな事言った?」

      柔「ううん、あたしと丸っきり同じ考えだったから、思わずね~。」

      耕作「そうだったんだ、それでその通りにするつもり?」

      柔「あなたとあたしの考えが同じだから、そのまま富士子さんに伝えてお願いするよ。」

      耕作「今日家に行った時に話すつもりなの?」

      柔「その方が良いでしょう?西海大に行ってからだと尻込みしそうだし。」

      耕作「確かに、富士子さんは現場で言われると『無理、無理』って言いそうだよね。」

      柔「富士子さんの家でお話して断られてもきちんと説明すれば分かって貰えるはずだから。」

      耕作「なるほど、今から直ぐやらないといけない状況とそうじゃない場合とでは
          富士子さんの気持ち的にも余裕が有るね。」

      柔「そう言う事なの、だから受け入れて貰い易いかな~って考えたの。」

      耕作「相変わらずの策士だね、君は。」

      柔「うふふ、勿論、この事は富士子さん自身の為でも有るんだけどね。」

      耕作「あ~、例の最終判断の為の準備になる訳なんだ。」

      柔「うん、少しでも早く自立して欲しいからね。」

      耕作「君って良く一つの事に対して複数の目標を持つよね?」

      柔「そうなのかな?」

      耕作「最近の事で言えば俺の母校の柔道部の事とかさ。」

      柔「部員達と先生をきちんと教えてたって?」

      耕作「そうそう、本来は部員達だけのはずが三浦もってなってたでしょう?」

      柔「そう言われると、あなたの言う事は当たってるって事になるね。」

      耕作「今の例だけじゃなくて、他にも色んな事が有ったしね。」

      柔「最初は考えて無いけど途中でこれもしないとってなるのよね~。」

      耕作「普通はそうすると全部が中途半端になり易いけど、君は全部やり切るから凄いよ。」

      柔「そうなのかな?良く分からないけど。」

      耕作「ここまでって目標とかは決めてやってるよね?」

      柔「一応は決めてるかな?でも、無理そうなら変えてるけどね。」

      耕作「なるほど、その柔軟さが有るからやり切ってるのか。」

      柔「あたし、褒められてるの?」

      耕作「そうだよ、普通に出来ない事をしてるんだから。」

      柔「ほんと~?嬉しいな~。」

      耕作「朝御飯の用意はまだ良いのかな?」

      柔「時間的にはもう少し有るかな?」

      耕作「それまで何するかな~。」

      柔「淹れようか?」

      耕作「あ、そうだね、お願いね。」

      柔は立ち上がると耕作からカップを受け取りコーヒーを淹れて渡しながら寄り添って座った。

      柔「はい、どうぞ~。」

      耕作「ありがとね、君はまた白湯なの?」

      柔「うん、そうだよ。」

      耕作「急須を一つここに持ってきてたら?」

      柔「あ、そうだね、今度持ってくるよ。」

      耕作「白湯よりはお茶の方が良いと思うし。」

      柔「うふふ、ありがとう~、心配してくれて。」

      耕作「愛する大事なパートナーだからね。」

      柔「あたしもそう思ってるよ~。」

      耕作「アメリカに居る時から今迄ずっとの君の事を見てきて思ったんだけど。」

      柔「どう思ったの?」

      耕作「君の雰囲気ってどこかで似た様なのを感じた事が有ったな~って。」

      柔「あたしの雰囲気が?」

      耕作「うん、大人しくしてる時はユーゴの時の雰囲気に似てるんだよね。」

      柔「あたし、大人しくしてる時って有った?」

      耕作「昨日倒れそうになってここに寝てた時とかがそうかな?」

      耕作「後、普通にしてる時は俺が怪我して訪ねて来てくれた時に似てるかも。」

      柔「まあ、あたしは今も以前と変わってないと思ってるけどね~。」

      耕作「それと俺を諭す様に話してる時は高校、大学の時の君を思い出すよ。」

      柔「あ~、それは思い出さなくて良いよ~。」

      耕作「ふふ、でも、向こうで制服とか着てたからね~、どうしても思い出してしまうよ。」

      柔「また見たい?」

      耕作「何を?」

      柔「あたしの制服姿。」

      耕作「う~ん、さすがに良いかな?」

      柔「見たくなったら何時でも言ってね?」

      耕作「分かった、君がそう言うならその気になった時にでもね。」

      耕作「あ、そろそろ下りた方が良いんじゃない?」

      柔「そうだね、降りようか。」

      耕作「俺の実家で使ってたエプロンを持って下りなくて良いの?」

      柔「あ、それが有ったね、分かった~。」

      柔はバッグから耕作の実家で使ったエプロンを出すとポットを持って耕作と一緒に
      台所へ行く為に下に下りた。



      柔と耕作は台所へ着いた。

      柔「まだ、おかあさん来てないね。」

      耕作「ちょっと早かったかな?」

      柔「取敢えず、出来る事だけしておくね。」

      耕作「俺は何か手伝える事有る?」

      柔「後で食器だけ出してくれれば良いよ。」

      柔「それまではそこに座っててゆっくりしててね。」

      耕作「分かった、そうするよ。」

      柔は持ってきたポットを流しの横に置いてエプロン着けると残りのエプロンは
      他のエプロンが置いてある所に戻した。
      その後に耕作にお茶を注いで渡した。

      柔「はい、どうぞ~、お茶飲んで寛いでて。」

      耕作「ありがとね。」

      柔は炊飯器のスイッチを入れて味噌汁を作る為の用意を始めた。

      玉緒「おはよう、早いわね~。」

      柔「おかあさん、おはよう~。」

      耕作「玉緒さん、おはよう~。」

      柔「あたしも今来て始めたばかりだよ。」

      玉緒「そうなのね、じゃあ、私は他の物を作るわね。」

      柔「うん、お願い~。」

      柔と玉緒は銘々に作り始めた。

      柔「あ、おかあさん?この近くに産婦人科って有った?」

      玉緒「有りますよ?それがどうかしたの?」

      柔「ほら、あたしもこの先お世話になるから一度ご挨拶しておこうかと思ったんだけど。」

      玉緒「そうだわね、4週間後に行く事にはなるけど、その前にって事なの?」

      柔「うん、その方が良いかなって。」

      玉緒「分かったわ、後でメモして渡すわね。」

      柔「ありがとう~。」

      柔「ちなみにその病院であたしが生まれたの?」

      玉緒「そうですよ、今はその時の大先生は隠居して若先生に変ってたと思うけど。」

      柔「そうなんだ、どんな先生なのかな~。」

      玉緒「そうね~、あなたは覚えて無いかも知れないけど。」

      玉緒「同じ小学校に通ってらっしゃったかな?」

      柔「同窓生なの?」

      玉緒「いいえ、確か、あなたの4つ上だったと思うわよ。」

      玉緒「だから、一緒の時期は2年間だけかしら?」

      柔「じゃあ、あたしは知らないよね。」

      玉緒「やっぱり、覚えて無いのね。」

      柔「あたし、会った事有るの?」

      玉緒「一緒の時の2年間はあなたと一緒に登校してましたよ?」

      柔「え~、全然覚えて無い~。」

      玉緒「大先生はおとうさんともお知り合いでしたからね。」

      玉緒「それが縁で、あなたの事はご存知だったみたいよ。」

      柔「今の先生が?」

      玉緒「そうですよ。」

      玉緒「だから、あなたが小学校に通いだした時に迎えに来てましたから。」

      柔「わざわざ迎えに来てくれてたの?」

      玉緒「学校に行く途中でしたからね、ここは。」

      玉緒「それで一緒に行く様になったのよ?」

      柔「あ~、駄目だ~、全然思い出せない~。」

      滋悟朗「何ぢゃ~、朝っぱらから。」

      玉緒「おはようございます。」

      柔「あ、おじいちゃん、おはよう~。」

      耕作「滋悟朗さん、おはようございます。」

      滋悟朗「おはようさん、それで柔は何を騒いでおったんぢゃ?」

      玉緒「小林医院のお子さんの事を思い出せないって言ってたんです。」

      滋悟朗「おお、小林の子供の事か。」

      柔「おじいちゃんは知ってるの?」

      滋悟朗「何を言うとるんぢゃ?お前と一緒に学校に行っておったろうが?」

      玉緒「それを覚えて無いんですよ。」

      滋悟朗「姉妹の様に仲良う通っておったのに覚えておらんのか?」

      柔「え?女の人なの?」

      玉緒「それすら覚えて無いのね。」

      滋悟朗「お前も薄情なやっちゃな。」

      柔「あ~、どうしよう~。」

      柔「ご挨拶に行った時どういう顔をして会えば良いんだろう?」

      滋悟朗「何故挨拶に行くんぢゃ?」

      玉緒「おとうさん、それはお食事の時にでもお話しますから。」

      玉緒「今日はここの食卓で構いませんわね?」

      滋悟朗「それでええぞ。」

      滋悟朗は食卓の椅子に腰かけた。
      柔がお茶を入れて滋悟朗に渡した。

      滋悟朗「すまんの~。」

      玉緒「出来ましたよ。」

      滋悟朗「おお、出来たか、早速頂くとしようかの~。」

      柔と玉緒は料理を食卓の上に並べていくと銘々の場所に座った。

      4人「いただきます。」

      滋悟朗「玉緒さんや、さっきのはどう言う事なんぢゃ?」

      玉緒「柔がこれからお世話になるから先にご挨拶をしに行くそうなんです。」

      滋悟朗「まだ出来とるかどうかも分からんのにか?」

      玉緒「その確認をしに後々行かないといけませんから。」

      滋悟朗「ああ、そう言う事なんぢゃな。」

      柔「そうなの、だから今日ご挨拶に行こうと思ってるの。」

      滋悟朗「正直に言うしかあるまい?」

      柔「忘れてましたって?」

      滋悟朗「実際覚えておらんのぢゃろう?」

      柔「まあ、そうなんだけど・・。」

      玉緒「柔?おとうさんの言う様に正直にお話して謝るしかないわね。」

      柔「そうだね、分かった、そうするね。」

      滋悟朗「玉緒さんや、その嬢ちゃんの名前は覚えとるか?」

      玉緒「確か、桜さんだったと思いますけど。」

      滋悟朗「ああ、そうぢゃったな。」

      滋悟朗「柔と一緒で一字ぢゃったのだけは覚えておったが忘れておったわ。」

      玉緒「柔も今後お世話になるんだから、お名前は憶えておきなさいね。」

      柔「うん、そうする、もう憶えたから大丈夫だよ。」

      玉緒「おとうさんと耕作さんはお替りは如何ですか?」

      滋悟朗「頂こうかの。」

      耕作「お願いします。」

      玉緒「柔?耕作さんの分はお願いね。」

      柔「うん、分かった~。」

      柔と玉緒は耕作と滋悟朗の分のお替りをよそうとそれぞれに渡した。

      滋悟朗「すまんの~。」

      耕作「ありがとね。」

      滋悟朗「松ちゃん、今日はどこか行く予定は有るのか?」

      耕作「あ、はい、柔の会社と富士子さんの家に行こうと思ってます。」

      滋悟朗「何しに行くんぢゃ?」

      柔「お土産を持って行くのと会社に復帰してからの事をお話に行くの。」

      滋悟朗「そうか、そう言う所は儂に似て律儀ぢゃな。」

      柔「それはそうよ~、長くお休み頂いて他の方にご迷惑をお掛けしてるんだから。」

      滋悟朗「そうであったな、そうする事は大事な事ぢゃ。」

      玉緒「柔?あなたもそう言う事がきちんと出来る様になって、私も嬉しいですよ。」

      柔「主人のお陰なんだけどね。」

      滋悟朗「あ~?主人ぢゃと?柔、お主何時からそう呼ぶ様になったんぢゃ?」

      柔「あ、主人のご実家に居る時にそう呼び始めたの、やっぱり変かな?」

      滋悟朗「いや、松ちゃんの嫁としての自覚が出てきたんぢゃと思うての。」

      滋悟朗「呼び方は人それぞれぢゃが、お前が松ちゃんの事をそう呼んでも可笑しく無いから、
           そのままで構わんぞ。」

      柔「そうなんだね、良かった~。」

      玉緒「ご飯はそろそろよろしいですか?」

      滋悟朗「そうぢゃな、儂はもうええぞ。」

      柔「あなたは?」

      耕作「俺も良いかな?」

      4人「ごちそうさまでした。」

      柔「お粗末様でした。」

      滋悟朗「柔よ、小林ん所へ行って親父に会うたら儂がよろしく言うとったと伝えてくれ。」

      柔「うん、分かった、会ったら伝えるね。」

      滋悟朗「どれ、儂は居間に行っとくからの。」

      玉緒「どうぞごゆっくり。」

      滋悟朗は居間へ行ってしまった。

      柔「おかあさん、あたしはここを片付けるから、お洗濯してきて良いよ。」

      玉緒「そう?それじゃ、お願いするわね。」

      玉緒は洗濯をしに行った。

      柔「あなた?直ぐ終わるから待っててね。」

      耕作「慌てなくて良いから。」

      柔「は~い。」

      柔は片付けを始めた。

      耕作「しかし、今から行く所の先生が君の幼馴染とはね。」

      柔「あたしも驚いたよ?」

      柔「でも、全然覚えて無いのよね~。」

      耕作「会えば思い出すんじゃない?」

      柔「それなら良いんだけどね。」

      耕作「でも、通学だけ一緒だったら覚えて無いのも無理ないかも知れないよ。」

      柔「そうかもね~、外で一緒に遊んだって言う記憶は無いのよね~。」

      耕作「君は何してたの?家で遊んでたんじゃなさそうだけど。」

      柔「多分、柔道の練習でもしてたんじゃないかな?」

      耕作「あ~、その可能性は有るね。」

      柔「終わったよ~。」

      柔はエプロンを外すと他のエプロンが置いて有る所へ直した。

      耕作「病院に行くまで時間有るけど、どうする?」

      柔「上で休んでようか?」

      耕作「そうだね、そうするか。」

      柔はポットと茶葉を入れた急須を持つと耕作と上に上がって行った。