柔と耕作(松田)の新婚日記 16日目 (午前編第4部)
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佐藤「柔さん、教えて頂いてありがとうございます。」
柔「いえいえ、皆が着替えて無かったから、少し早めに言ったんですよ。」
佐藤「そうでしたか、助かりました。」
柔「佐藤さん?舞さんがお化粧してきたら褒めてあげて下さいね。」
耕作「それと今朝言った様に服装も褒める様にしないとな。」
佐藤「服装はお前に言われたから分かるけど、化粧も褒めるんですか?」
耕作「さっき、柔に言われたじゃないか。」
佐藤「あ~、細やかな配慮って言う事なんですね。」
柔「そうです、ただし、舞さんだけに小声で言って下さいね。」
佐藤「それはどうしてですか?」
耕作「お前、他の2人にも細やかな配慮しないといけないだろう。」
佐藤「あ、そうか、1人だけ褒めてるのを聞かれたら不味いですね。」
柔「そう言う事なんです、今後も注意して下さいね。」
柔「それと今の事を先生にもお話してあげて下さい。」
佐藤「分かりました、必ず伝えますから。」
キョンキョン「すみません、お待たせしました。」
キョンキョン達が小綺麗な服装に替え薄化粧で面立ちを整えて部屋から戻って来た。
美咲「お待たせして、すみませんでした。」
舞「佐藤さん、お待たせしました~。」
柔「皆、きれいで可愛いよ~。」
キョンキョン「うふふ、ありがとう、柔さん。」
美咲「ふふふ、柔さん、ありがとう。」
舞「えへへ、柔さん、ありがとう~。」
佐藤「それじゃ、出掛けましょうか。」
キョンキョン、舞、美咲「はい。」
キョンキョン「柔さん、それではまた後で~。」
美咲「柔さん、また後でお会いしましょう。」
舞「柔さん、空港で~。」
佐藤達は玄関を出て駐車場に向かった。
柔と耕作も玄関先まで出て見送る事にした。
駐車場に着くと佐藤は後部座席のドアを開けてキョンキョンと美咲を乗せてドアを閉めた。
その後助手席のドアを開ける際に佐藤が舞に話し掛けると舞は驚いた様な顔をした後笑顔で
乗り込み佐藤はドアを閉めた。
柔「うふふ、舞さんに話し掛けてるよ、早速実行してるのね。」
耕作「そうだな、中々上手い話し掛け方したね、真面目な奴だよ。」
佐藤が車を駐車場から出して柔達の前に停まると開いた車の窓から
キョンキョン達が声を掛けてきた。
キョンキョン「それじゃ、行ってきます。」
美咲「柔さん、行ってきます。」
舞「行ってきますね~。」
柔「気を付けて楽しんできてね~。」
耕作「佐藤、皆を頼んだぞ。」
佐藤「任せてくれ、退屈させない様にするから。」
佐藤はそう言うと学校へ向けて車を出した。
柔と耕作は車が見えなくなるまで見送ると玄関から中に入った。
柔と耕作は中に入ると食堂へ行って食卓の上の物を厨房に持って行き、柔がそれを片付けて
ポットとカップを持って部屋へ戻って行った。
部屋に戻ると耕作は座布団を用意して、その間に柔は布団を来た時と同じ様に畳んだ。
耕作が座布団に座る間に柔はコーヒーを淹れて耕作に渡すと寄り添って座った。
柔「皆のデートが上手くいく様に祈ったコーヒーだよ~。」
耕作「ふふ、ありがとね。」
耕作「キョンキョンは大変だろうけど。」
柔「大丈夫じゃないかな?」
耕作「舞さんと美咲さんがキョンキョンに気を遣うから?」
柔「うん、絶対一人にはしないと思うよ。」
耕作「この後は風呂の掃除以外に何かする事って有った?」
柔「う~ん、今はお洗濯を取り込む事以外には思い付かないかな?」
柔「あ、そうだ、ね~、昨日教えてくれるって言ってたのって何だったの?」
耕作「何か有ったっけ?」
柔「確か、佐竹さんについて教えてくれるとか言ってなかった?」
耕作「あ~、それって佐竹さんって言うから変に聞こえるんだよ。」
柔「どうして?人のお名前なんでしょう?」
耕作「まあ、人の名前には違いないんだけど。」
耕作「正確には佐竹氏(し)って言うんだよね。」
柔「どうして『さん』じゃだめなの?」
耕作「佐竹氏(し)って言うのは江戸時代にこの辺りを治めてた武将の名前なんだ。」
柔「お侍さんなの?」
耕作「そうそう、それの元締めと言うかボスみたいなもんなんだ。」
柔「徳川みたいな人なの?」
耕作「それは知ってるんだね。」
柔「時代劇に出てたから知ってるよ。」
耕作「なるほど、君の知識は時代劇が元なんだ。」
柔「だって、歴史に興味無いって言ったじゃない?」
耕作「そう言ってたね。」
耕作「そうだ、時代劇で侍が他の侍の名前を呼ぶ時は○○氏(うじ)って言ってたでしょう?」
柔「そう呼んでたね。」
耕作「氏(うじ)って訓読みなんだよね、それの音読みが『し』なんだ。」
柔「あ~、だから佐竹氏(し)になるのね。」
耕作「そう言う事だね。」
柔「という事は昔は佐竹氏(うじ)って呼んでたのね。」
耕作「そうそう、昔はそう呼んでたはずだよ。」
柔「その人がキョンキョン達が行くお城に昔住んでたお侍さんの大将だったんだね。」
耕作「そう言う認識で良いと思うよ。」
柔「あなた、教えてくれてありがとう~。」
耕作「良かったよ、君が時代劇を覚えてくれたから、教え易かった。」
柔「えへへ、おじいちゃんが見てたのを一緒に見てただけなんだけどね。」
耕作「それを今でも覚えてる事が凄いと思うよ。」
柔「あ~、何か、あたしの事を馬鹿にしてない~?」
耕作「いやいや、感心してるんだよ、良く覚えてるって。」
柔「そうなのね、なら、良っか~。」
柔「そう言えば、さっきお洗濯した時に男湯の方も見たんだけど、あなたのしかなかったよ?」
柔「佐藤さん達のはどうしたのかな?」
耕作「そうなの?確か一緒に男湯の籠に入れてた気がしたけど。」
柔「皆が部屋に帰った後に取りに行ったのかな?」
耕作「そうかも知れないね、無いって事は。」
柔「そのままにしてくれてたら一緒に洗ったのに~。」
耕作「まだ、女性に見られるのが恥ずかしいんだと思うよ。」
柔「確かに、あなたも最初は恥ずかしがってたもんね。」
柔「それが、今では他の女性に見られても恥ずかしくないんだね~。」
耕作「いや、丸っきり恥ずかしくない訳じゃ無いよ?」
柔「そう?確か、昨日『俺は平気だけど』とか言ってなかった?」
耕作「また、良く覚えてるな~、そう言ったのは建前だから。」
柔「何でそんな事言ったの?」
柔「あ、分かった。」
耕作「どう分かったの?」
柔「キョンキョン達が恥ずかしがるのを見ようと思ってたのね?」
耕作「だ・か・ら~、俺が興味有るのは君だけだって何度も言ってるじゃない?」
柔「そう言ってたね、ごめんね~、変な事言っちゃって。」
耕作「もしかして、妬いてくれてたの?」
柔「どうなんだろう?」
柔「確かに、昨日はあなたのを触らせなかったけど、見て欲しくもなかったのかも。」
柔「皆に見られちゃったけど。」
耕作「なるほど、俺の下着を見られた事に嫉妬しちゃったんだね。」
柔「そうなのかな~?」
耕作「そうだと思うよ、だけど、可愛い嫉妬だとも思うよ。」
柔「どうしてそう思うの?」
耕作「物に対してだからね、俺自身に対してじゃ無いから可愛いって思ったんだ。」
柔「あたしがそう言う思いをする事って嫌じゃないの?」
耕作「それだけ俺の事を愛してくれてるのに、嫌な訳無いよ。」
耕作「ただ、君にそう言う思いを抱かせる様な事をした俺自身が不甲斐無いとは思うけど。」
柔「あなたは悪くないよ?」
耕作「そうだね、どちらもだったね。」
柔「そっか、どっちもなんだね。」
耕作「だからもう気にしなくて良いから。」
柔「うん、そうするね。」
耕作は柔の両頬に手を添えて自分の方にゆっくりと向かせると柔は顔を上げて目瞑った。
耕作はそれに応える様に優しく長めのキスをした。
柔「うふ、あなたからそうすると思って無かったからちょっと驚いちゃった。」
柔「その割には素敵な表情だったよ。」
柔「うふふ、ありがとう~。」
柔が耕作の肩に頭を預けると耕作は柔の肩に手を置いて柔を抱き寄せた。
柔「久しぶりにこうしてる気がするね。」
耕作「そうだね、さっきまで慌しくて、こうする暇も無かったからね。」
柔「ね~、あなた?」
耕作「何だい?」
柔「あなたが聞きたくて我慢してるのは分かってるよ。」
耕作「何の事?」
柔「もう~、恍けなくても良いよ?」
耕作「あの事なの?」
柔「うん、昨日は来なかったから可能性が0から1以上になったね。」
耕作「でも、ズレたりするとか言ってなかった?」
柔「言ったけど、あれは一般論なの、あたしの事じゃ無いよ?」
耕作「君は今迄そう言った事が無かったって事?」
柔「そうだよ、きっちり同じ周期だったから。」
耕作「そうなんだね、って事は君が言った様に可能性が出たって事なんだ。」
柔「そう言う事になるね。」
耕作「玉緒さんには言うつもりなの?」
柔「うん、今日帰ったら言う様にしてる。」
柔「おかあさんには知ってて貰いたいからね。」
耕作「玉緒さん、喜びそうだね。」
柔「そうだと良いな~。」
耕作「喜ぶでしょう?」
柔「おじいちゃんの手前も有るからね、手放しでは喜ばないと思うよ。」
耕作「そうか~、滋悟朗さんが居たんだったな~。」
耕作「後4週間か~、結構長いな~。」
柔「あたしが渡米して今日までどの位経ってるかな?」
耕作「あ、そうか、4週間は過ぎてるね。」
柔「あなたが以前言ったじゃない?」
耕作「そうだったね、4週間位直ぐ経つね。」
柔「一応、再来週は検査薬使ってみるから。」
耕作「その時に覚えてたらで良いよ。」
柔「でも、あなたも知りたいでしょう?どうなのかって。」
耕作「そうだけど、確定じゃ無いって君も言ってたから、無理に知ろうとしなくても良いよ?」
耕作「第一、検査薬買う時恥ずかしくない?」
柔「え?あなたが買ってくれるんじゃないの?」
耕作「え~、俺が買いに行くの?」
柔「うそ、うそ、あたしが買いに行くよ、恥ずかしいとは思わないから。」
耕作「それって、やっぱり、母親になる自覚の表れなのかな?」
柔「どうなのかな?ただ子供が欲しいのは本当の気持ちだから。」
柔「その気持ちが有るから恥ずかしくないって思うのかも知れないね。」
柔「勿論、一応念の為に、町内の薬局へは行かないよ。」
柔「他所に買いに行く時も変装はするつもり。」
耕作「そこまで考えてるのか、じゃあ、君に任せるよ。」
耕作「でも、一緒に付いては行くからね。」
柔「うふ、そうしてくれると嬉しいな。」
柔「そうだ、久しぶりに膝枕しようか?」
耕作「良いの?君も疲れてるんじゃない?」
柔「前も同じ事を聞かれたね、その時、あたしは何て答えた?」
耕作「分かった、じゃあ、お願いしようかな?」
耕作は抱擁を解くと立ち上がってカップを机の上に置きに行く間に柔は女の子座りにした。
柔「あなた~、ここにどうぞ~。」
柔は自分の太腿をポンポンと叩いた
耕作は柔の方を向いて横になると頭を太腿の上に載せた。
柔「うふふ、またこっち向いてるし。」
耕作「ふふふ、君を見ながらの方が良いからね。」
柔は耕作の頭を優しく撫でた。
柔「ね~、あなた?」
耕作「何だい?」
柔「膝って足の関節の部分の事だよね。」
耕作「そうだね。」
柔「で、あなたが頭を載せてるのって太腿だよね?」
耕作「うん、温かくて柔かいよ。」
柔「や~ん、感想は言わなくて良いよ~。」
耕作「ふふ、それがどうかしたの?」
柔「それなのに何で膝枕って言うんだろう?」
耕作「えっとね、膝の意味がもう一つ有るんだよ。」
柔「もう一つ?どう言う意味なの?」
耕作「座った時の太腿の上の部分って言う意味が有るんだ。」
柔「へ~、そう言う意味も有ったんだね。」
柔「あ~、だから膝枕って言うのね~。」
耕作「そうそう、だから間違いじゃないんだよ。」
柔「日本語って面白いね~。」
耕作「そうだね、知れば知るほど興味深いと思うよ。」
柔「そうだよね~、あたしももっと良く知らないといけないな~。」
耕作「君は勉強熱心だから直ぐ覚えるよ。」
柔「あなたに教えて貰うから尚更なのかもね。」
耕作「向こうに居た時に言ったしね、分からない事は俺に聞いて良いよって。」
柔「そうだったね、これからもよろしくね?」
耕作「うん、何時でも聞いて良いから。」
柔「分かった~、分からない事が有ったら直ぐに聞くから。」
耕作「そうしてね。」
耕作「そう言えば、帰ってから今迄、ゆっくり出来たのって数日しか無かったね。」
柔「仕方ないよ、誰か彼か来てたからね。」
柔「それに結婚の為に色々してたし。」
耕作「結婚の為のはそうしないと仕方なかったから。」
耕作「誰か彼か来てたのは君の人徳のなせる業かもね。」
柔「あたしにそんなものが有るとは思えないんだけど。」
耕作「じゃあ、言い換えるね、君の面倒見の良さのお陰かもね。」
柔「あ~、それならある程度は納得出来るかな?」
耕作「君はこうなるって考えて行動して無いから、結果として今みたいになってるんだよね。」
柔「それに似た様な事を言ってたね。」
耕作「そうだったね。」
柔「帰ったら少しは落ち着くんじゃない?」
耕作「帰って数日してからかな?落ち着くのは。」
柔「あ、そうか、帰ったら色々しないといけないね。」
耕作「キョンキョン達にも会うからね。」
柔「でも、キョンキョンがわざわざここまで会いに来てくれるって思って無かったよ。」
耕作「あの子達に頼まれたのかも知れないよ?」
柔「それだけじゃなくて、彼との事も相談したかったからじゃないかな。」
柔「それだけ彼との事を真剣に考えてるって事だもん。」
耕作「そうだね、電話しても良いか聞いた時の彼女は真剣な表情してたから。」
耕作「やっぱり、結婚式に呼んだ事も関係してそうだね。」
柔「う~ん、どうなのかな~?」
耕作「これは俺の考えなんだけど、君が結婚するから自分の事と重ね合わせて、
彼との事を聞くのは君しか居ないって思ったのかも。」
柔「それは有りそうな気はするよ。」
耕作「でも、何で、結婚式の時に彼の事を言わなかったんだろう?」
柔「キョンキョンも遠慮深いからね、周囲に人も居たから言えなかったんだと思うよ。」
柔「そう思っている所に保育園の休みと舞さん達が居た事で決断して来たのかもね。」
耕作「まあ、どちらにしても上手くいきそうだから心配しなくて良さそうだけど。」
柔「そうだね、あなたも太鼓判押してたしね。」
耕作「前も言ったけど電話の話し振りからすると彼も真剣だから大丈夫だよ。」
柔「舞さんと美咲さんの事も今後は気に掛けないといけないかな~。」
耕作「そこは俺に任せて貰って良いから、相手は俺の同級生なんだし。」
柔「そっか、そうだったね、じゃあ、あなたにお願いするね。」
耕作「これから先、君は生まれて来る子供と柔道の事だけを考える様にして欲しいんだ。」
耕作「他の事は全部俺に任せてくれて良いよ。」
柔「あなた・・、ありがとう、全てあなたにお任せします。」
耕作「勿論、子供が無事生まれたら、その後は柔道だけに専念してくれれば良いから。」
柔「そうしたいのは山々だけど、子供の面倒は必ず見るよ。」
耕作「分かった、じゃあ、そうしても良いけど比重は柔道に置いてね。」
柔「うん、そうする、あなたに柔道の事で心配は掛けたく無いから。」
耕作「まあ、今迄も君の柔道に関して心配はした事無いけどね。」
柔「あれ~?そうだった?あたし、あなたに色々迷惑掛けた気がするんだけど。」
耕作「確かに、手は掛かったけど迷惑とは思って無かったよ?」
耕作「それにその事は君が柔道をする為に起きた事だったし。」
耕作「だから、君が柔道をしてた時は心配はして無かったと思うけど?」
柔「あたしの記憶する限り、あなたには試合中に3回助けられた気がするのよね~。」
耕作「3回も有ったっけ?」
柔「あ~、忘れちゃったの~?」
耕作「え~っと、1回目はワールドカップでのテレシコワの時でしょう?」
耕作「2回目は~、選考試合でのさやかさんの時で、2回じゃない?」
柔「え~、一番大事な試合を忘れるなんて信じらんな~い。」
耕作「もう1試合か・・・、あ~、ユーゴの時か~。」
柔「そうだよ~、あの時にあたしの中のあなたへの想いに気が付いたんだから。」
耕作「そうだったね、ごめんよ、一番忘れたらいけない試合だったね。」
柔「あたしにとっては一番印象に残ってる試合なんだから。」
耕作「何で一番なの?」
柔「あそこがあなたとあたしの転換点でも有ったからなの~。」
耕作「転換点って、どう言う事なの?」
柔「もう~、知らない~。」
耕作「そんなに怒らなくても良いだろう?」
柔「だって、あたしはあなたの事を単に知人だって思ってたのが恋人に変った時だったんだから。」
柔「それなのに、そんな事言うんだもん。」
耕作「ちょっと待って?」
耕作「君の俺に対する思いは以前から聞いてたけど。」
耕作「君が俺の事をそう言う風に思ってたってのは今初めて聞いたよ。」
柔「あれ?そうだった?」
耕作「そうだよ?君が俺の事を好きだと確信した時って言うのは聞いてたよ。」
耕作「でも、君が俺の事を恋人だと思ってるってのはたった今聞いたんだけど。」
柔「あれ~?言ってなかったっけ?」
耕作「うん、間違い無くたった今聞いたよ。」
柔「あたしがそう思ってただけなのか・・。」
耕作「だって告白もして無いのに恋人は可笑しくない?」
柔「そう言われればそうだよね。」
耕作「君の思い込みじゃ無かったの?」
柔「そうかも~・・、ごめんなさ~い。」
耕作「そうか、だから君は何か有る度に俺に八つ当たり的な事してたんだ。」
柔「それもそうとしか言えないね、あたしが素直じゃ無かったのも有るけど。」
耕作「素直じゃ無かったのは俺も同じだから、それは良いよ、前も言ったと思うけど。」
耕作「でも、そんな大事な試合を俺が忘れてたのも悪いんだからお相子かな?」
柔「あなたはそれで良いの?」
耕作「以前も言ったじゃない?過去の事は反省の材料にするって。」
柔「そう言ったのは、あたしだったね。」
耕作「そうそう、だからお相子で良いと思うよ。」
柔「うん、分かった、あたしもそう思う事にする。」
耕作「しかし、君が俺の事を恋人と思ってたって聞いて嬉しくなったよ。」
柔「あ~、もう言わないで~、恥ずかしくなるから~。」
耕作「あれ?でも君ってそう言う素振りは全然見せた事無かったよね?」
柔「そうだったね。」
柔「その時って恋人と思ってても、やっぱり単なる取材対象なのかって言う思いが
有ったのも事実なのよね。」
柔「だから、あたしもどうして良いのか分からなかったんだと思う。」
柔「それでも恋人らしい事を1回だけした事が有ったじゃない?」
耕作「え~っと、それって俺を見舞いに来てくれた時の事かな?」
柔「うん、そうだよ。」
耕作「やっぱり、そうだったんだね。」
柔「お見舞いは口実だったのよね、あなたに恋人らしい事をしてみたいな~って、
そう思って訪ねたの。」
耕作「俺も単に怪我の見舞いなのか、もしかしたら俺に好意を寄せてくれてるのかって
色々考えてたんだ。」
耕作「ただ、それまでの君に対する俺の態度を考えると有り得ないなとも思ってた。」
耕作「そう思ってたのに君が『ずっと前みたいに泊っていっちゃおうかな』って言ったのを聞いて
舞い上がって俺も思わず君に『ほんとに泊ってくか』って言ってしまったんだよね。」
柔「あたしも思わず本音を呟いてしまってハッとして冗談って言ったけど、あなたから
『ほんとに泊ってくか』って言われて本音で答えなきゃって思ってた。」
柔「あ~、あの時に邦子さんさえ来なければ~。」
柔「と今更言っても仕方ないんだけどね。」
耕作「ふふふ、そうだね。」
柔「うふふ、あなたの気持ち聞かせてくれてありがとう。」
耕作「ふふ、それは俺も同じだよ、君が俺をどう思っていたか聞かせてくれてありがとう。」
柔「あなた?上を向いて?」
耕作「うん、分かったよ。」
耕作が上を向くと柔は覆い被さる様にして長めのキスをした。
耕作「ふふ、しかし、君の思い込みが激しい性格は変わって無いよね。」
柔「そうなの?」
耕作「だって、俺の話を良く聞く前に君の中では結論出してた事結構有ったじゃない?」
柔「そうだったかな~?」
耕作「じゃあ、聞くけど君は渡米する時、何て決意してたのかな?」
柔「あ~、そうだった、思い込みで勝手にあなたに全てを~って決めてたんだったね。」
耕作「でしょう?だから変わって無いって言ったの。」
柔「やっぱり、あなたが居ないとあたしは駄目だな~。」
柔「あたしよりもあたしの事を分かってる人ってあなたしか居ないと思うよ。」
耕作「何年ず~っと君の事を見て来たと思ってるのかな?」
柔「約7年間で~す。」
耕作「そうなんだけど、前も言った様に答えなくても良いから。」
柔「うふふ、そう言われたね~。」
耕作「話は変わるけど、休みって何時までだっけ?」
柔「3週間で21日だから、今日までで15日経ってるので残り6日間かな?」
耕作「1週間無いのか。」
柔「でも、今日って日曜日でしょう?」
耕作「そうだね、それがどうかしたの?」
耕作「あ、そうか7日目が日曜になるのか。」
柔「そう言う事なのです。」
耕作「君って日曜は休みなの?」
柔「そうだね、あたしだけじゃ無いとは思うけど。」
耕作「旅行代理店だから年中無休だよね?」
柔「基本的にはそうかな?支店単位で全員休みの日も有るけど。」
柔「大体は交代でのお休みだったと思う。」
耕作「という事は後7日か。」
耕作「その内2日は用事で潰れるから、残り5日は何しようか?」
柔「あなたは何かしたい事って有るの?」
耕作「特に何かしたいって事は無いよ。」
耕作「でも、午後は君の練習が有るから午前中だけだよね、自由になるのって。」
柔「あ~、そうだったね。」
柔「柔道の練習を5日間にして貰って残り2日間で何かする?」
耕作「いや、それは駄目でしょう?」
柔「だよね~、ただ日曜は練習は午前中のはずなんだよね。」
耕作「そうなんだ、それでどうするつもりなの?」
柔「良し、決めた。」
耕作「何を?」
柔「日曜は行かない事にする~。」
耕作「いやいや、駄目だって。」
柔「金曜日に富士子さんだけに指導をして貰って、その結果で決めても良い?」
耕作「それって俺が見て判定を下すのかな?」
柔「そうじゃないと、あなたは納得しないでしょう?」
耕作「まあ、そうだよね、君が決めても俺は納得しないと思う。」
柔「今回の先生と同じ感じで良いと思うけど、どうかな?」
耕作「そうだね、それで良いと思うよ。」
耕作「それで金曜でOKだった時はどうするの?」
柔「その時は土曜までにして貰うよ。」
耕作「土曜はどうするの?」
柔「最終チェック日にするつもり。」
耕作「富士子さんの?」
柔「うん、その時に改善点が有れば、それを教えて終わりにしようかなって。」
耕作「分かった、それで良いんじゃないかな。」
柔「あなた?この事は富士子さんには絶対に言っちゃ駄目だからね?」
耕作「分かってる、彼女がそう言う事に弱い事は知ってるから。」
柔「そうなのよね~、あのメンタルがもっと強くなってくれないと。」
耕作「そう言えば、君が俺が居ないと駄目な様に、富士子さんも君が居ないと駄目なんだよね。」
柔「そうなのよ~、試合中に固くなるのを何とかしないといけないんだけどな~。」
耕作「でも、結婚してからはそこまでは無いんじゃない?」
柔「オリンピックで試合見てないでしょう?あなたは。」
耕作「全部は見てないね。」
柔「富士子さんって・・。」
柔「あなた?」
耕作「どうしたの?」
柔「あたしの事をポジティブって言ってたけど、それの反対は何て言うの?」
耕作「あ~、えっと、ネガティブって言うね。」
柔「教えてくれてありがとう~。」
柔「富士子さんって結構ネガティブなのよね。」
耕作「なるほど、そこで使いたかったのか。」
耕作「確かに、試合に臨む前からそう言う所が有ったよね。」
柔「それが無くなったら、相当に良い所まで行けるんだけどな~。」
柔「ひょっとするとあたしも負けるかもよ?」
耕作「いや、今の君は負けないでしょう?」
柔「まあ、そうなんだけど。」
柔「富士子さんの速さが今以上になったら分からないよ?」
耕作「そうなの?」
柔「うん、あたしの反応する速さよりも、あの足の運びの速さが上回ったら負けるかもよ?」
耕作「あ~、確かに、でも、富士子さんにそれが出来るかな?」
柔「後数年は現役を続けられそうだから、その間にどうなるかは分からないと思うけど。」
耕作「でもね~、経験年数が物を言うからね、格闘技って。」
耕作「君はそれに加えて天性の才能も備わってるし。」
耕作「俺が見る限り富士子さんが君に追い付くのは難しいと思うよ。」
柔「やっぱり、駄目か~、あなたがそう言うなら間違いないね。」
柔「大学での練習を再開するに当たって、富士子さんを鍛え直すか。」
耕作「どうするつもりなんだい?」
柔「もう少し相手のバランスを崩す為の立ち技を覚えて貰うのと、寝技も覚えて貰おうかと。」
耕作「なるほど、そうしないとコーチは務まらないね。」
柔「うん、技の多さがコーチとしての絶対条件じゃ無いけど、必要だしね。」
耕作「そうなると練習での時間配分とかを考え直さないといけないんじゃない?」
柔「それは当然だよね、その分他の人達を見るのが減りそう。」
耕作「一緒にすれば良いんじゃない?教える人達と。」
柔「あ~、その手が有ったか~。」
耕作「って言うか、君なら出来るでしょう?富士子さんを教えながら他の人も教えるの。」
柔「出来るかな?」
耕作「ここでやってる時、俺達と話しながら部員達を見てたんだから出来るはずだよ?」
柔「あ、そうだったね、じゃあ、出来るか。」
柔「あなたの言う通りにしてみるよ。」
柔「そろそろお風呂掃除しに行かない?」
耕作「まだ時間は結構有るけど?」
柔「先にそれやって終わった後にまたこうした方がゆっくり出来るんじゃない?」
耕作「そうだね、時間ぎりぎりになってするよりはその方がましか。」
耕作「良し、じゃあ、早速取り掛かるとするか。」
耕作は起き上がると柔の手を引いて立たせた。
柔「うふ、ありがとう~。」
柔「ポットどうしよう?」
耕作「1杯しか飲んで無いからそのままで良いと思うよ。」
柔「そうだね、じゃあ、置いていくね。」
柔「また2人で一緒にしようね~。」
耕作「その方が早く終わるし、それで良いよ。」
柔と耕作は風呂場へ向かった。