柔と耕作(松田)の新婚日記 13日目(午後編第3部)
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一部修正
柔と佐藤、三浦が耕作の元にやって来た。
柔「先生、もう少し速さを身に付けた方が良いと思いますよ。」
三浦「いや~、柔さん、仰る通りです。」
三浦 「それにしても、どこからあんなパワーが出て来るのか分かりません。」
柔「簡 単に言いますと、スピードを速くする事でパワーに変えてるんです。」
三浦「具体的にはどう言う事なんですか?」
柔「具体的にですか~、どう説明したら良いかな?」
柔「あっ、そうだ。」
柔「例えば、出足払いをする時、仕掛ける足のスピードがゆっくりと速くでは
相手の倒れ方に違いが出てくるのは分かりますか?」
三浦「そうですね~、ゆっくりだと下手したら倒せませんね。」
柔「ですよね?同じ技でも速く掛けるのと遅くでは技の切れが全然違ってくるんです。」
柔「つまり、仕掛ける時の動作を速くする事で技の破壊力が増す事になるんです。」
三浦「あ~、そう言う事なんですか。」
三浦「だから、スピードを速くする事がパワーを増す事になるんですね。」
柔「お分り頂けて良かったです。」
柔「あなた?今の先生との試合どう思って見てたの?」
耕作「俺に振るのか?そうだな予想通りの展開?だったかな?」
柔「ほんとに~?」
耕作「すまん、わざと片袖と奥襟を掴ませた事は予想外だったけど。」
柔「あ~、あれね~、あれは先生が疲れそうだったので、ああいう風にしたの。」
三浦「え~?、あれってわざとだったんですか~。」
柔「だって、申し訳ないですけど、先生のスピードが遅くて中々捕まえてくれそうに
無かったから仕方無かったんですよ。」
三浦「確かに、俺のスピードは遅いですけど、それ以上に柔さんのスピードが
半端無かったですから。」
耕作「三浦?」
三浦「どうしたんだ?」
耕作「柔はあれで半分も力出して無かったよ。」
柔「あ~、それ言っちゃ駄目だってば~。」
耕作「え?言ったらいけなかったの?」
柔「先生?元気出して下さい、皆への説明とかちゃんとしてましたし。」
柔「ほら~、先生、元気無くなっちゃったじゃ無いの~。」
耕作「三浦、すまん、そう言うつもりじゃ無かったんだ。」
三浦「いや、それは大凡見当は付いてたけどさ。」
三浦「実際に言われると結構へこむよ?」
耕作「ほんと、申し訳ない。」
柔「もう~、あなたってば、配慮が足りないよ?」
耕作「柔もすまん、そこまで考えて無かった。」
佐藤「なるほど、道理で時間が掛かってた訳だ。」
耕作「へこんでるとこ悪いけど、三浦?投げられた時どう感じたんだ?」
三浦「もう大丈夫、あれが俺の今の実力な訳だし。」
三浦「投げられた瞬間は、あ、宙を舞ってるって感じだったかな?」
耕作「いや、それは見てる方にも分かる事なんだけど。」
耕作「例えば一方向に強く引っ張られたとかの感覚が有ったかどうかなんだ。」
三浦「あ~、そう言う事か、いや、全然そんな感覚は無かった。」
三浦「どっちかと言えば俺が勝手に宙を飛んでたって感じだったかな?」
三浦「強いて挙げるなら、腕を持たれてる感覚は有ったよ。」
佐藤「それって、柔さんは殆ど力を使って無いって事になるんじゃ?」
三浦「そう言う事になるよな~。」
三浦「松田の説明通りだったって事か~。」
耕作「何でそうなったかは分かってる?」
三浦「体勢が崩れてたのは分かってた、そして後ろに押されたので、押し止め様として
力を入れた瞬間宙を舞ってた。」
耕作「今、お前が言った事が柔の柔道の神髄なんだよ。」
耕作「相手の力を最大限に生かして投げてるんだ。」
何時の間にか部員達が周りに来て柔達の話を聞いていた。
柔「あら?皆もう着替えてたんだ。」
三浦「どうした?帰らなくて良いのか?」
鈴木「いえ、今のお話を伺っていると凄く為になります。」
女子部員「私もそう思って思わず聞き入ってました。」
柔「鈴木君?折角、その体格が有るんだから、相手の力を最大限に活かすやり方が
上手く出来る様になれば、今よりずっと強くなれるよ。」
柔「後は組んだ時、棒立ちになる事が有るから、そこだけは注意してね。」
鈴木「はい、分かりました、柔さんの教え方は的確で分かり易いです。」
柔「あたしの教え方は先生にも受け継いで貰うから、皆も先生の指摘を
的確に守れる様にしていけば、もっと強くなれるよ。」
部員達「分かりました、そうなれる様に努力します。」
柔「それと、何時も言ってるけど、無理は駄目だからね?」
女子部員「はい、良く分かってます、マイペースですね?」
柔「うふ、そう、それは絶対に守る事。」
鈴木「あの~、柔さんは筋力トレーニングとかはされて無いんですか?」
柔「一応やってるよ。」
女子部員「どんな事をされてるんです?」
柔「色々だけど、あ、そうか、皆が来た時は終わってるから見た事無かったね。」
女子部員「そうなんです、だから、どんな事をやってるか知りたくて。」
柔「じゃあ、明日、皆が来てそれをするから、少しの間だけ見てて。」
男子部員「是非、お願いします。」
柔「ただ、言っておくけど、かなりハードなので、驚かないでね。」
鈴木「そんなにハードなんですか?」
柔「まあ、見れば分かるよ。」
柔「明日、楽しみにしててね。」
部員達「はい、分かりました。」
女子部員「柔さん、ちょっと伺っても良ろしいですか?」
柔「はい、どう言った事を聞きたいの?」
女子部員「柔さんはご結婚されたんですよね?」
柔「そうだよ、ついこの間だけど。」
女子部員「それなのに、結婚指輪はされて無いですよね?」
柔「それは当然だよ?」
柔「柔道をするのにアクセとか指輪を身に付けてると怪我の元になるから、
皆もアクセとか付けたら絶対に駄目だからね?」
部員達「はい、分かりました、気を付けます。」
女子部員「ところで、ここにはどういったご用事でいらっしゃったんですか?」
柔「あ~、ここには新婚旅行で来てるの。」
女子部員「新婚旅行でここに?他にもっと良い場所が有ったんじゃないです?」
柔「あ~、ここって、あたしの旦那様の故郷なの、だからここにしたの。」
女子部員「そうなんですか~、でも旦那様の故郷に新婚旅行って珍しいですよね?」
柔「そうだね~、普通は別な場所にするよね。」
女子部員「もしよろしければ、旦那様をご紹介して頂けませんか?」
柔「ちょっと待っててね。」
女子部員「はい、お待ちします。」
柔は耕作を見た、耕作は首を縦に振った。
柔「待たせて、ごめんね、この人があたしの旦那様だよ。」
柔は耕作の手を引いて紹介した。
耕作「柔の夫の松田 耕作です、よろしく。」
部員達「こちらこそ、初めまして。」
柔「うふふ、この前から顔は見て知ってるよね?」
女子部員「そうですね、初めましては可笑しいですね。」
女子部員「失礼ですけど、松田さんはここの卒業生なんですか?」
耕作「そうだよ、佐藤と三浦先生とは同級生なんだ。」
女子部員「へ~、先生の同級生なんですか。」
女児部員「それじゃ、松田さんが柔さんをここに連れて来てくれたんですか?」
耕作「うん、柔が柔道の練習をしたいって言ったから、ここを紹介したんだ。」
女子部員「そうだったんですね、柔さんを連れて来て頂いてありがとうございます。」
耕作「柔も君達と一緒に練習出来て喜んでるから。」
女子部員「柔さん、後2日ですけど、よろしくお願いします。」
柔「こちらこそ、皆、よろしくね。」
部員達「はい。」
女子部員「柔さん、あの、ちょっと。」
柔「はい、何かしら?」
女子部員が柔に耳打ちした、その返事を柔はその女子部員に耳打ちした。
女子部員「柔さん、よろしくお願いします。」
柔「分かったわ、明日、皆に現物見せるから。」
女子部員「はい、楽しみにしています。」
部員達「それでは、お先に失礼します。」
柔「気を付けて帰ってね~。」
三浦「お疲れ様、気を付けるんだぞ。」
部員達「はい、また明日お願いします。」
部員達は柔達に手を振りながら帰宅していった。
耕作「時間配分とかは大丈夫なの?」
柔「トレーニングだけなら、そんなに時間は掛からないと思うよ。」
佐藤「そう言えば、トレーニングは早く終わってましたね。」
三浦「全体の時間もそこまで長く無かったし。」
柔「皆が柔軟と受け身してる時間で打ち込みは終わると思うから。」
耕作「恐れ入ったよ、そこまで考えてたんだ。」
柔「あなた~?付き合いが長いのに、分かって無かったの~?」
耕作「長いって言っても、殆どは君が試合やってた時間を見てただけだしな~。」
耕作「それに、君の練習を最初から最後まで見てたのは、ここ4週間位だよ?」
柔「あ、それもそうか、じゃあ、許してあげる。」
耕作「許してくれて、ありがとね。」
耕作「そうだ、佐藤も三浦もこれから少し時間有る?」
三浦「俺はこれで終わりだから有るよ。」
佐藤「俺も勤務時間は有って無い様なもんだから大丈夫だよ。」
耕作「俺も記者してるからそれは分かってるさ。」
耕作「柔?着替えて来て?途中喫茶店にでも寄ろう?」
柔「あたしは構わないけど、晩御飯の仕度はどうするの?」
耕作「それは俺からお袋に電話で事情を説明しておくから安心して良いよ。」
柔「それなら大丈夫だね、じゃあ、着替えてくる~。」
柔は更衣室に向かった。
佐藤「何か話でも有るのか?」
耕作「いや、柔に色々聞きたいんじゃないかと思ったんだけど。」
佐藤「なるほど、確かに聞きたい事が山ほどあるよ。」
耕作「三浦?着替えなくて良いのか?」
三浦「そうだな、着替えてくる。」
耕作「あ、電話借りられるかな?」
三浦「じゃあ、一緒に行こうか。」
耕作「佐藤、柔をここで待っててくれないか?」
佐藤「ああ、構わないよ。」
耕作「じゃあ、ちょっと行ってくる。」
耕作と三浦は校舎の方へ向かった。
入れ違いに柔が更衣室から出て来て道場に一礼すると佐藤の所へやって来た。
柔「あれ?2人は?」
佐藤「あ、三浦は着替えに行って、松田は電話を掛けに行ってますよ。」
柔「そうなんですね、ここで待ってれば良いのかな?」
佐藤「それで良いと思います、直ぐ戻ると言ってたので。」
佐藤「それにしても、さっきの試合直後は呼吸も乱れて無かったですね。」
柔「あ~、あれ位なら全然平気ですから。」
佐藤「そう言えば、幾つ位から柔道をやってるんですか?」
柔「あたしの記憶に残ってるのは5歳かな?」
柔「でも、祖父が言うには3歳からやってたって事でした。」
佐藤「え~、そんな年齢から既に柔道をやってたんですか。」
柔「まあ、自分から進んでじゃ無かったですけど。」
耕作が校舎から戻ってきた。
耕作「お待たせ~。」
柔「お帰り~。」
佐藤「本当に早かったな。」
耕作「電話掛けただけだから。」
柔「それでお母様は何て?」
耕作「ゆっくりしてきて良いんだって。」
耕作「俺達が帰ったら直ぐ食べられる様にするから心配するなって言われたよ。」
柔「お母様がそう仰るなら良いか。」
耕作「佐藤は足は車か?」
佐藤「いや、会社からはタクシーでここまで来たよ。」
耕作「じゃあ、一緒に行こうか。」
佐藤「三浦は近くに住んでるから徒歩か自転車かな?」
耕作「それは三浦に確認してみるか。」
柔「ところで何のお話するの?」
耕作「いや、2人が君に聞きたい事が有るんじゃないかと思ったんだ。」
柔「あ~、それならさっきも佐藤さんに聞かれたから、あたしは構わないよ。」
耕作「佐藤?何を聞いたんだ?」
柔「あなた~、妬いてるんじゃないよね?」
耕作「いや、単純に何を聞いたか知りたかっただけなんだけど。」
柔「ほんとに~?」
耕作「ほんとだよ?」
柔「あたしが幾つから柔道を始めてたかって聞かれただけだよ。」
耕作「なるほど、そう言う事か。」
佐藤「あ~、良かった~、俺のせいで喧嘩になるかと思ってビビったよ。」
耕作「あのさ~、俺が柔と喧嘩して勝負になると思うか?」
佐藤「あ、それもそうか。」
柔「ちょっと~、あなた~?」
柔「あたしを化け物みたいに言わないでくれるかな~?」
耕作「あ、いや、そう言うつもりで言ったんじゃないから。」
柔「ほんとかな~。」
耕作「ほんとだってば。」
三浦が校舎から戻ってきた。
三浦「すまん、遅くなった。」
佐藤「お帰り。」
耕作「お帰り、待ってたぞ。」
三浦「うん?どうしたんだ?」
耕作「あ、いや、何でも無いよ、ところで三浦は徒歩なの?」
三浦「ここに来るのにって事?」
耕作「そうそう。」
三浦「徒歩だよ、それがどうかした?」
耕作「いや、喫茶店に行くのに俺の車で一緒に行こうかなと。」
三浦「それは構わないよ。」
三浦「でも、さっきから柔さんがお前を睨んでるのが気になるんだけど。」
耕作「あっ、柔、機嫌直して?」
柔「分かりました~。」
柔「それじゃ、どこへなりと連れて行って貰おうかな~。」
耕作「柔~、ほんとさっきは悪かったから、そう言う言い方は止めないかな?」
柔「何か甘い物が食べたいな~。」
耕作「分かったから、そう言うの頼んでも良いよ。」
柔「ほんとに?良いの?」
耕作「勿論だよ。」
柔「うふふ、それじゃ、さっさと行きましょうか。」
耕作「佐藤も三浦も行こうか?」
耕作「何で2人とも笑ってるんだ?」
佐藤「いや、気にするな。」
三浦「柔さんも行こうって言ってるんだから、さっさと行かないとな。」
耕作「まあ、良いか、じゃあ、行こうか。」
柔達4人は駐車場へ行くと車に乗り込んで喫茶店を目指して出発した。
移動の車中では4人で雑談していた。
耕作「なあ、さっきは何で笑ってたんだ?」
佐藤「言うと柔さんの機嫌が悪くなりそうだから言わない。」
柔「あたしは平気ですから言って良いですよ。」
佐藤「本当に良いんですね?」
柔「うん、構いませんよ。」
佐藤「分かりました。」
佐藤「2人のやり取り見てると漫才みたいだったから、思わず笑ってしまったんだ。」
柔「あ~、やっぱり、他の人から見るとそう見えるんだ。」
三浦「やっぱり、って言うと他にもどこかで?」
柔「以前、飛行機の中で2人でお話してたらCAの方に大声で笑われたんですよ。」
佐藤「そう言う事が有ったんですか。」
三浦「それって、ここに来る時ですか?」
柔「あっ、あなた?どうする?」
耕作「聞かれると思ったんだよな~。」
耕作「俺は構わないけど、君はどうなの?」
柔「まあ、結婚もした事だし、良いと思うんだけど。」
柔「それに、あなたの同級生だからお話しても問題無い無いんじゃない?」
耕作「じゃあ、話しても良いよ。」
柔「うん、そうするね。」
柔「さっきのは、あたしが主人に会いに渡米して、一緒に帰国してくる時の事なんですよ。」
佐藤「それは初耳です。」
耕作「おい、記事にはするなよ?」
佐藤「しない、しない、同級生の身内をネタになんか出来るか。」
耕作「あっ、あそこに喫茶店が有る、あそこで良いかな?」
佐藤、三浦「良いんじゃないか?」
柔「あたしは甘い物が有ればどこでも~。」
耕作「じゃあ、あそこにするから。」
耕作は喫茶店の駐車スペースに車を停めた。