柔と耕作(松田)の新婚日記 12日目(午後編第3部)

            文書量(文字数)が膨大な為、一日を分割で表記しています。





      耕作は実家へと車を走らせた。
      柔達は何時もの如く雑談していた。

      柔「皆?どうだった?」

      ジョディー「柔の教え方、勉強、なるだわ。」

      テレシコワ「そうだな、分かり易い。」

      マルソー「勉強に、なりました。」

      クリスティー「勉強、なった。」

      柔「そうなのね、良かった~。」

      柔「帰っても思い出してやってみてね。」

      テレシコワ「勿論、そうする。」

      ジョディー「私も、そうするだわ。」

      耕作「そろそろ着くよ。」

      全員「は~い。」

      耕作は実家の駐車場に車を停めた。

      耕作「さあ、着いたよ、忘れ物無い様に降りて。」

      全員「分かった~。」

      柔達は荷物を持つと車から降りた。

      耕作「昨日と同じで晩御飯までは自由にして良いから。」

      柔「それと昨日と同じ様にお風呂に入る時に洗濯物を籠に入れておいてね。」

      全員「は~い、分かった~。」

      玄関を入るとジョディー達は自分達の部屋に戻って行った。

      柔「あなた?この匂い。」

      耕作「ああ、お袋が作ってるのかな?」

      柔「厨房を覗いてみようか?」

      耕作「そうするか。」

      二人は厨房へ行き中を覗いた。

      耕作母「二人ともお帰り、今帰ったんか?」

      柔「はい、たった今戻りました、お母様。」

      耕作「今戻ったよ。」

      柔「カレー、お母様が作ったんですね。」

      耕作母「そんだ、煮込まんと美味しくならんからの。」

      柔「そうなんですよね、だから、ひょっとしてお母様が作るかもって思ってたら、
        その通りでした。」

      耕作母「後は煮込むだけだで。」

      柔「分かりました、配膳の時はお手伝いしますので。」

      耕作母「その時は声掛けるからの、それまではゆっくりしとけ。」

      柔「はい、それでは失礼します。」

      耕作「お袋、また後でな。」

      柔はポットとカップを持つと耕作と一緒に厨房を後にして部屋へ向かった。



      部屋に入ると耕作は座布団に座り、柔はコーヒーを入れると耕作に渡した。

      耕作「コーヒー、ありがとね。」

      柔「それじゃ、シャワー浴びてくるね。」

      耕作「ゆっくりで良いよ。」

      柔「シャワーでゆっくりも無いけどね?」

      耕作「ふふ、確かに。」

      柔「行ってきます。」

      耕作「浴びてらっしゃい。」

      柔は着替えと洗濯物を持つと風呂場へ向かった。

      耕作「(今日も充実した練習が出来てたみたいだな。)」

      耕作「(明日からは柔一人でする事になるのか。)」

      耕作「(それとも三浦に手伝わせるつもりかな?)」

      耕作「(三浦は今日一日で全部を理解出来たかな?)」

      耕作「(理解出来てれば柔の手伝いは出来そうだが。)」

      耕作「(柔が戻ってきたら、その辺りを確認してみるか。)」

      耕作「(明日、三浦と佐藤に柔の強さの秘密を話さないといけないんだった。)」

      耕作「(柔の強さの秘密か~、説明しても分かって貰えないかも知れないな。)」

      耕作「(三浦は対戦とか言ってたが、瞬殺だよな~。)」

      耕作「(三浦の実力がどんなものか分からないが、柔とのやり取りを
           聞いてた限りでは余り強くなさそうだし。)」

      耕作「(柔は三浦の実力をどう思ってるのかな?)」

      耕作「(それも聞いてみるか。)」

      足音が近づいて来た。

      耕作「(柔かな?)」

      ドアが開いて柔が中に入ってきた。

      耕作「お帰り、サッパリした?」

      柔「お待たせ~、うん、サッパリしたよ。」

      そう言いながら持ってきた洗濯物をバッグに畳んで入れた後、耕作に寄り添って座った。

      耕作「石鹸の香りがするね。」

      柔「うふ、良い匂いでしょう?」

      耕作「ふふ、そうだね。」

      耕作「後、洗い髪の姿がセクシーだよ?」

      柔「ほんとに~?嬉しいな~そう言って貰うと。」

      耕作「髪が半乾きだから風邪引かない様にね。」

      柔「うふ、心配してくれてありがとう~、でも大丈夫、直ぐに乾くから。」

      耕作「それなら心配いらないか。」

      耕作「それで、昨日より少し遅かったけど、ゆっくり入ってたの?」

      柔「もう~、洗濯物を皆に届けてたからだよ?」

      耕作「あ、そう言ってたね。」

      柔「鴨田さんのは明日の午前中に渡しておくつもり。」

      耕作「それで良いと思うよ。」

      耕作「ところで明日から一人でしょう?どうするつもりなの?」

      柔「そうね~、どうしようかな~。」

      耕作「三浦に手伝わせるつもりなの?」

      柔「う~ん、まだ無理かな~。」

      耕作「そうなのか、何で無理だって思うの?」

      柔「えっとね、部員の何が足りないのか、どこが悪いのかの細かい所までの
        見分け方が、まだ良く分からないみたいなの。」

      耕作「そうか、それじゃ無理だね。」

      柔「だから、明日はその見分け方を教えながらやろうかと思ってる。」

      耕作「君も大変だね、教える側を育てながら教えるんだから。」

      柔「まあ、そうなんだけど、あたしの為にもなるから平気だよ。」

      耕作「君の為になるって?」

      柔「もう~、富士子さんを教える時に役立つかなって。」

      耕作「あ、そうか、予行演習みたいなもんか。」

      柔「そうだよ、先生に上手く教えられなかったら富士子さんにも
        教えられないって事になるんだから。」

      耕作「ほんとに先を見据えて行動してるんだね。」

      柔「そうなるのかな?何でも自分の為になるって思いながらやってるから。」

      耕作「何でもって、部員達に教えてるのもそうなの?」

      柔「うん、そうだよ、あたし自身だとどうなのかなって自問自答しながらやってるから。」

      耕作「やっぱり、君って凄いと思うよ。」

      耕作「そこまで考えながらやってるんだから。」

      耕作「あ、そうそう、三浦に付いて君はどう思ってる?」

      柔「先生の事をどう思ってるかって?」

      耕作「柔道の実力をどう思ってるかって事なんだけど。」

      柔「あ~、そっちね~。」

      柔「あたしはてっきり先生に好意を持ってるかって聞かれたかと思って一瞬驚いたよ?」

      耕作「ちょっと~、何を言い出すかと思ったら~、君にそんな事聞く訳無いじゃない?」

      耕作「お互いに一途だって知ってるんだから。」

      柔「だよね~、だから驚いたんだけどね?」

      耕作「まあ、良いか、で、どうなの?三浦の実力は。」

      柔「そうね~・・、あなたの同級生だけど、少し辛口で言うと・・。」

      耕作「やっぱり辛口で言わざるを得ないのか。」

      柔「あ、もしかして、あなたの思ってる事と同じかも。」

      耕作「そうだよな~、君との会話を聞いてるとね?」

      柔「うん、そういうことなの、だからね?」

      耕作「分かった、君もそう思ってるのが分かって良かったよ。」

      柔「聞きたかった事はそれだけで良いの?」

      耕作「そうだね、今ので俺が思ってた事は概ね分かったから。」

      柔「それじゃ、あたしから聞きたい事が有るんだけど。」

      耕作「何を話してたかでしょう?」

      柔「うふふ、良くお分かりで、で、どんなお話してたの?」

      耕作「君の大学時代がどうだったかとか、何で今みたいな強さになったのかって事を
          話してたんだ。」

      柔「そんな事を話してたんだ。」

      柔「あ~、あたしが真面目に柔道して無かったとか言ったんでしょう?」

      耕作「いや、そうは言わなかったから安心して?」

      柔「そうは?って事は、それに近い事を言ったんだ~。」

      耕作「相変わらず、言葉に反応するね~。」

      柔「ね~、どうなの~、言ったの~?」

      耕作「正直に話すね。」

      柔「うん、お願~い。」

      耕作「真剣に柔道に取り組んで無かったとは言った。」

      柔「それは事実だから言われても仕方ないか~。」

      耕作「その後、俺と真剣に向き合う事で柔道も同じ様になったって話したよ。」

      柔「それも事実だね、あなたの期待に応えないとって思ってたから。」

      耕作「俺の期待って、何かそう言う事言った?」

      柔「もう~、あなたったら~、忘れちゃったの~?」

      耕作「う~ん、何だったかな?」

      柔「あ~、もう~、信じらんな~い。」

      柔「選考試合で『勝ってくれ~、俺の夢を消さないでくれ~』って叫んだのは
        どこのどなたでしたっけ?」

      耕作「あっ、俺でした、確かに君に向かって、そう叫んでた。」

      柔「前も選考試合の話したのに覚えて無いなんて~、酷いよ~。」

      耕作「ごめん、ほんとに覚えて無くて悪かったよ。」

      耕作は柔を抱き締めた、柔も思わず抱き返した。

      耕作「ほんとにごめんな、俺の為に頑張ってたのに忘れてしまうなんて。」

      柔「ほんとだよ~、あれから、あたしは真剣にやらないとって思ったんだよ?」

      耕作「そうだよな~、でも、それ以降も俺が態度をハッキリしなかったから
          君は揺れ動いてたんだよね?」

      柔「ううん、揺れ動いてはいなかったけど、あなたの気持ちを測りかねてて、
        あたし自身もハッキリさせるのが怖かったの。」

      耕作「そうだったんだね、お互い臆病になってたって事か。」

      柔「そうだよね、あたしはまだオリンピックの試合が残ってたのも有ったし。」

      柔「そこで二人の関係をハッキリさせようとして万が一別れる事になったらって思うと、
        あたしの方から切り出す事が出来なかったのよね。」

      耕作「俺も君の試合が残ってるのを知ってたから態度をハッキリさせて、
          君と会えなくなる事を恐れてたんだよ。」

      柔「そう言う思いが燻ったままでの、あの空港のお別れの時、このままじゃいけない
        って思ってたけど、結局、あたしからは言い出せなかった。」

      耕作「それは俺も同じ思いだったけど、今迄みたいな関係を続けてたら駄目だって言う
          思いが強くなって、思い切って告白しちゃったんだ。」

      柔「うふふ、また、このお話になっちゃったね。」

      耕作「ふふふ、そうだね。」

      耕作「でも、今が有るのはあの時が有ったからだから、何度でも話す事で
          お互いに確認出来るから良いんじゃないかな?」

      柔「そうだね~、あれが無かったら、今この時点でこうしてる事は無かったって思うと、
        あの時に両思いが確認出来て良かったよね~。」

      耕作「ほんとに良かったって今更ながらに思うよ。」

      耕作「まあ、その後、君がアメリカに来てくれた事で早まった気はする。」

      柔「うふふ、それも何度もお話したよ?」

      耕作「そうだったかな?」

      耕作「何にしてもお互いに勇気を出した結果だね、今こうしてるのは。」

      柔「うん、あたしもそう思ってる。」

      柔「あ、ちょっと待ってね。」

      耕作「どうしたの?」

      柔「布団直さないと。」

      耕作「あ、そうだね、俺も手伝うよ。」

      柔「じゃあ、お願い~。」

      耕作と柔は抱擁を解くと二人で窓に干してある布団を室内に畳んでいった。

      柔「あなた、お疲れ様。」

      耕作「君もお疲れ様。」

      柔「コーヒーは?」

      耕作「あ、お願いね。」

      耕作は座布団に座ってカップを柔に渡した。
      カップを受け取った柔はコーヒーを入れて再び耕作に渡すと寄り添って座った。

      柔「明日は空港には何時に行くつもり?」

      耕作「そうだね、慌しくしたく無いから10時過ぎにここを出ようか?」

      柔「それが良いね。」

      耕作「空港の中で時間も潰せるだろうしさ。」

      耕作「その際は君が案内してくれないかな?」

      柔「あなたは?どうするの?」

      耕作「その間にレンタカーを借り換え直してくるよ。」

      柔「何で?」

      耕作「だって、人数が多くないのに、あのままだと不経済だから。」

      柔「あ、そっか、あたしとあなたしか乗らなくなるんだったね。」

      柔「分かった、車はあなたに任せる、あたしは皆を連れて回ってるよ。」

      耕作「終わったら、インフォメーションの前で待ってるから。」

      柔「うん、あそこなら上からでも見えるから、あなたが来たら一旦戻るね。」

      柔「合流したら一緒に回ろう?」

      耕作「分かった、そうしよう。」

      柔「そうだ、今のうちに記事書いた方が良いんじゃない?」

      耕作「あ、忘れないうちに書いておくか。」

      耕作は立ち上がると机の椅子に座りカップを置いて記事を書き始めた。
      柔は耕作の首に後ろから両手を回し抱き付いてそれを見ていた。

      柔「今日はどんな風に書くの?」

      耕作「君が三浦に説明してた事を主体で書こうかって思ってる。」

      柔「そうなのね、練習内容もそれに沿ってやってたけど、それもなの?」

      耕作「勿論、そのつもりだよ。」

      柔「なるほど、あたしが先生に言ってる感じじゃなくて読者に語り掛けてる感じに
        アレンジしてるんだね。」

      耕作「この方が柔道を知ってる人には受けるかなと思ったんだ。」

      柔「さすがね~、そこまで考えて書くなんて。」

      柔「前も言ったと思うけど、あなたは常に読み手の事を考えてるのね。」

      耕作「その点は君と同じで受け手の事を第一に考える様にしてる。」

      柔「あたしってそうなのかな?」

      耕作「君は教える人が怪我をしない様に常に考えてるじゃない?」

      柔「あ~、その事と同じだって事なんだ。」

      耕作「そうだよ、考えてる内容は違うけど相手に対する気持ちは同じでしょう?」

      柔「そっか、確かにそうやってるね。」

      柔「あれ?今書いてるのって三葉の時の練習だよね?」

      耕作「そうだね、あの時にやってた方法だね。」

      柔「あれは、あなたのアドバイスから生まれた練習方法だよ。」

      耕作「そうだったね、俺の意見を取り入れてくれて嬉しかったよ。」

      耕作「でも、それを自分の物にアレンジしてやってた君も素晴らしかった。」

      柔「あれはね~、ただ単にあたしが投げられるんじゃ練習とは言えないし。」

      柔「だからタイミングの取り方を覚えて貰おうって。」

      柔「そう言えば、あの時に富士子さんの能力に気が付いたんだった。」

      耕作「俺はその時には分からなかったけど、滋悟朗さんは分かってたみたい。」

      柔「富士子さん自身も分かって無かったぽいけどね。」

      柔「今でも富士子さんは自分にどれだけの能力が有るか分かって無いみたいよ。」

      柔「だから、指導要領を教える時に、自分にどんな能力が有るかを気付かせようって
        企んでるんだ~。」

      耕作「ふふふ、君はやっぱり策士だよ、複合でそこまで考えてるんだから。」

      柔「えへへ、でもね?自分の能力に気付いて貰えないと、指導の仕方に影響が出るから、
        そっちの方が重要なの。」

      耕作「どう影響が出るのかな?」

      柔「だって、指導する人って自分の能力が分かって無いと無理だと思うよ?」

      耕作「言ってる意味が良く分からないんだけど?」

      柔「例えば、あたしが自分にどう言う能力が有るか分かって無かったらどうなる?」

      耕作「あ、そう言う事か、つまり、自分の能力が分かって無いと相手にも
          それを求めてしまうって事になりかねないんだね。」

      柔「さすがね~、あたしの例えだけでそれが分かるなんて。」

      耕作「君の能力は特別だから直ぐに分かったんだ。」

      耕作「指導する人が持ってる能力が相手に無いのに、それを求めると下手すると、
          その人を潰しかねないって事になるのか。」

      柔「そう言う事なの。」

      柔「指導を受ける人を悩ませる指導をしたら逆効果になってしまうのよね。」

      耕作「それって、三浦にも当て嵌まるんだよね?」

      柔「そうだね、だから、あたしは先生には自分の柔道の能力がどれ位なのか
        分かって貰う様に説明するつもり。」

      柔「当然だけど、先生には酷な言い方にならない様に注意するけど。」

      耕作「優しく説明してて分かってくれるのかな?」

      柔「その時は乱取りしながらででも説明するしか無いかもね。」

      耕作「それは致し方ないか。」

      柔「しかし、あなたは凄いよ、あたしの説明を聞いただけで理解してるし。」

      耕作「数週間、君の柔道をずっと見てきたからね、それで理解出来る様になった。」

      柔「それも凄いと思うよ?見てただけで理解出来るなんて。」

      耕作「君を見てる時は少しの変化も見逃そうとして無かったから。」

      柔「そうだったのね、単にあたしを見てるだけじゃ無かったんだ。」

      耕作「まあ、君を目の当りに見てる事自体が嬉しいって言うのも有ったけど。」

      柔「うふふ、あたしもあなたに見られてるのが分かってたから嬉しかったよ?」

      耕作「ふふふ、そう言う所もどちらもだったのか。」

      柔「そうだね~。」

      耕作「ところで部員達の中で気になる子って居ないの?」

      柔「あなたは気になる子が居たの?」

      耕作「俺は良く見て無かったから分からないけど、一人力業でやってる子が
          居たのは気が付いてるよ。」

      柔「あ~、あの一番体の大きい子か~、」

      耕作「そうそう、その子の事だよ。」

      柔「教えた時は理解してる様にしてるんだけどね~。」

      柔「あたしが話した我流に陥ってるのよね、明日はぎゃふんと言わせてやるか。」

      耕作「手荒な事はよすんだよ?」

      柔「手荒な事って?」

      耕作「君が相手するとかは無しって事なんだけど。」

      柔「それはしないよ、ああいう子はあたしが相手しても強いから負けるに
        決まってるって開き直るから。」

      耕作「なるほど、我も強い訳か。」

      柔「女子で一番か弱そうな子とやらせてみるよ。」

      耕作「ふふふ、何か企んでるね?」

      柔「うふふ、ちょっと弱点を教えて、そこを突く様にさせるだけだから。」

      耕作「もう弱点を見付けてるのか、さすがだよ。」

      柔「もう2日もやってるんだよ?全員の能力位把握してるから。」

      耕作「え?もう全員の能力を把握してるって、ほんとに?」

      柔「たった18人じゃない?その位2日も有れば十分だよ。」

      耕作「柔・・、君は何て恐ろしい子なんだ?」

      柔「え~、あたし恐ろしい子なの~?」

      耕作「君が怖いって訳じゃ無いよ?」

      柔「うふふ、分かってるよ~、それ位。」

      耕作「もう~、この子は~、分かってて今の返しをしたのか~。」

      柔「えへへ、ごめんね~。」

      柔「でも、あたしを良く知ってるはずのあなたでも分かって無かったのね。」

      柔「てっきり、向こうの道場でやってる時に気付いてたと思ってたんだけどな~。」

      耕作「あっ、そうか、あそこはかなりの人数が居たんだった。」

      耕作「そう言えば、選抜された人に対して指導を始める時間が早い上に
          的確だったのは既に把握してたからなんだね?」

      柔「左様でございます、旦那様。」

      耕作「ふふ、またそんな言い回しして。」

      耕作「しかし、あの時は俺もそこまで気が回って無かったからな~。」

      耕作「君の事で手一杯の状態だったし。」

      柔「あたし、そんなにあなたの手を煩わせてた?」

      耕作「あ~、いや、実際に手が掛かった訳じゃ無くて、精神的な物だよ。」

      柔「あ、そっちの事ね、確かに、あなたを悩ませる事ばかりしてたね。」

      耕作「そうだったよな~、どう対処して良いか悩んでた。」

      耕作「でも、それを楽しんでた自分が居たのも事実なんだけどね。」

      柔「そうだったの?」

      柔「それなら良かった、あなたを苦しめてただけじゃ無かったんだ。」

      柔「あれ?あなた?原稿終わってるよ?」

      耕作「そうだね、かなり前に書き終わってたよ。」

      柔「それなのに何でそのまま椅子に座ってるの?」

      耕作「いや~、この状態を楽しんでたから。」

      柔「この状態?・・、あ~、そう言う事なんだ~。」

      耕作「ついね、風呂での事を思い出して楽しんでた。」

      柔「やだ~、もう~、あなたったら~。」

      耕作「お約束、ありがとね。」

      柔「うふ、言ってくれれば何時でもやったのに~。」

      耕作「まあ、明日から誰に気兼ねする事無く出来るから、その時まで我慢するよ。」

      柔「そうね~、明日からだよね~、楽しみだね~。」

      耕作「君はほんとに楽しそうにしてるね。」

      柔「だって~、出来るのにしないのと、したいけど出来ないじゃ全然違うよ?」

      耕作「あ~、確かに、それは言えるね。」

      耕作「それにしても、いやに積極的な発言だね?」

      柔「え?あっ、ち、違うよ?そ、そう、一般的な事を言っただけだから。」

      耕作「ふふふ、そんなに焦らなくても、君の気持ちは分かってるから。」

      柔「べ、別に、焦ってなんかいないよ?ほんとだよ?」

      耕作「そうだね、君の言う通りだよ。」

      耕作「あっ、分かってると思うけど学校じゃ駄目だからね?」

      柔「やだな~、あなたったら~、そんなの決まってるじゃな~い。」

      柔「腕組んだりもしないから安心してね。」

      耕作「これこれ、そんなに体を揺すらないの。」

      柔「え~、良いじゃな~い?何か困る事でも有るの?」

      耕作「ひょっとして、わざとやってない?」

      柔「えへへ、バレちゃった?」

      耕作「いや、俺は嬉しいんだけど、君が感じたりしたらって。」

      柔「やだ~、そんな事無いよ~。」

      耕作「それもそうか、そう言う気持ちになって無いと感じたりしないよね?」

      柔「そうだよ~、いちいち感じてたら身が持たないから。」

      耕作「それで、また君はノーブラなんだ。」

      柔「え~、だって~、あなたが良いって言ったじゃない?」

      耕作「あ~、そう言ったね、そう言えば。」

      柔「あ、誰か来た。」

      足音が近づいて来た。

      柔は抱擁を解くと耕作から離れた。
      ドアが開くと耕作の父がそこに居た。

      柔「あ、そろそろ配膳ですか?」

      耕作父「すまんな、手伝ってもろうて良いかな?」

      柔「勿論です、直ぐ行きます。」

      柔「あなたも行こう?」

      耕作「そうだね。」

      耕作は立ち上がって柔と供に耕作の父付いて厨房へ向かった。