柔と耕作(松田)の新婚日記 9日目 (午前編第3部)
文書量(文字数)が膨大になった為、13分割で表記します。
*2017/1/28 加筆、修正
暫く走った後に西海大の駐車場付近で3台は停まった。
全員が降りて耕作が清算している間に鴨田は駐車場に車を止めると耕作達の元に来た。
柔「あたし達って凄い人数で来てるね。」
耕作「そうだね、祐天寺監督がびっくりするんじゃないかな?」
柔「うふふ、それはそれで面白いかも。」
柔「それじゃ、柔道場に行きましょうか。」
柔達は柔道場へ向かった。
道場に近づくと入り口付近が報道陣でごった返しているのが見えた。
柔「わ~、報道関係の人も結構いるのね~。」
鴨田「駐車場、車が今まで以上に停まってたっす。」
柔「そうだったんですね。」
耕作「祐天寺監督と富士子さん、出て来て報道陣の対応してくれてるね。」
柔「申し訳ないな~。」
玉緒「まあ、凄い人数です事。」
滋悟朗「こりゃ、また、仰山来とるのう~。」
虎滋朗「かなりの数だな、それだけ注目しているという事か。」
報道陣「おぉ~、柔さん達が来たぞ~、猪熊家総出でお越しとは。」
耕作「申し訳有りませんが試合前なので会見は試合が全て終わってからお願いします。」
報道陣「了解しました、試合後には是非お願いします。」
柔「はい、勿論そのつもりですので、ご安心下さい。」
耕作「海外の方は個別のインタビューでお願いします、通訳が居ませんので。」
報道陣「分かりました。」
富士子「待ってたわよ、柔さん。」
祐天寺「お待ちしていました、柔さん、それにしても大勢でいらっしゃいましたね。」
柔「お待たせしました、大勢で押しかけてすみません。」
柔「それと報道の方達の対応、ありがとうございます。」
祐天寺「いえいえ、試合場の方は既にセッティング済みですので。」
柔「ありがとうございます、お手数をお掛けします。」
祐天寺「滋悟朗先生、ようこそおいで下さいました、虎滋朗さんと玉緒さんまで
おいで下さるとは。」
滋悟朗「祐天寺、昨日はすまんかったのう~。」
祐天寺「あ、いえいえ、大丈夫でしたから。」
祐天寺「ところで先生と虎滋朗さんは何故来られたのですか?」
滋悟朗「勿論、審判を務める為に来たんぢゃ。」
祐天寺「あ~、そう言う訳でしたか。」
祐天寺「それで主審は先生が?」
滋悟朗「勿論、そうぢゃ、副審はお主と虎滋朗にやって貰おうと思うておるぞ。」
祐天寺「え?私が副審ですか?」
滋悟朗「他に誰がおるんじゃ?」
祐天寺「うちの部員にやらせようかと思っていたのですが。」
虎滋朗「いや、それはかなり荷が重いと思いますぞ、祐天寺監督。」
祐天寺「やはり、そうですよね、でも、お二人に審判をして頂くので助かります。」
柔「おかあさん、耕作さんの傍に居てね。」
玉緒「はい、分かりましたよ。」
富士子「皆さん、着替えに行きましょうか。」
柔「そうだね、行きましょう。」
ジョディー「分かっただわ。」
テレシコワ「分かった、行こう。」
マルソー「はい、分かりました。」
クリスティー「OK~。」
柔「あなた、着替えてくるね。」
耕作「いってらっしゃい。」
耕作「鴨田、頼りにしてるぞ、全試合の決定的瞬間を多めに頼む。」
鴨田「任せて下さい、松田さん、バッチリ撮りますよ。」
マスコミ達もそれぞれに撮影のポジション取りを始めた。
祐天寺「滋悟朗先生、試合順は決まっているのですか?」
滋悟朗「ああ、もう決めておる、その事は皆には既に話しておるから、心配せんでええぞ。」
祐天寺「さすがは先生、そつが無いです。」
祐天寺「こういう試合では本来は選手別に個室なんでしょうが、ここはそう言う設備が無いので
ご容赦願えないでしょうか。」
滋悟朗「心配あるまい、対戦相手は柔一人なんぢゃから。」
祐天寺「あ、そうでした、それなら良かった。」
全員が更衣室から出てきた。
柔と富士子以外は出てくると直ぐに準備運動を始めた。
柔「ただいま~。」
富士子「お待たせしました。」
耕作「準備運動はするの?」
柔「体を解す程度だけど、するよ。」
柔「富士子さん、その後少しだけ乱取りをお願いするね。」
富士子「分かったわ、任せなさ~い。」
柔「あ、祐天寺監督、ジョディー達の乱取りの相手を部員さん達にお願いしても
構いませんか?」
祐天寺「そう言う事なら、喜んで相手をすると思います。」
祐天寺「その事を部員達に話してきます。」
祐天寺は部員達の元に行くと乱取りの件を話していた。
柔「じゃあ、少しだけ体を動かしてくるね、あなた。」
耕作「分かった。」
柔は準備運動を始めたが、今迄より軽めに柔軟運動主体でやっていた。
富士子「松田さん?」
耕作「うん?富士子さん、どうしたの?」
富士子「気のせいじゃ無かったら、あれなんですけど、柔さん、何だか凄く
リラックスしてる様に見えるんですけど。」
耕作「富士子さんにもそう見えるんだね。」
耕作「柔が普段通りにするって言ってたから、それでじゃないかな?」
富士子「なるほど、そう言う事なんですね。」
ナンダ「富士子さん、昨日ぶり~。」
キョンキョン「富士子さん、こんにちは。」
富士子「こんにちは、二人とも来てくれたのね。」
キョンキョン「松田さん、遅くなりました。」
キョンキョン「柔さんのお母様、昨日はお世話になりました。」
玉緒「いえいえ、お二人とも今日はようこそ来て下さいました。」
ナンダ「昨日は大変お世話様でした。」
ナンダ「あ~、良かった、まだ始まって無かった。」
耕作「良く来てくれたね、二人とも。」
ナンダ「柔ちゃんの試合を生で見るのは久しぶりだから、必ず来ようと思ったので。」
キョンキョン「私は柔さんが柔道をする姿を見ると元気を貰えるので来ました。」
耕作「良く見ておくと良いよ、今の柔の状態がどうなのかを。」
キョンキョン「状態ですか?」
耕作「うん、世界の強豪を相手にどれだけの柔道を出来るかをね。」
柔「二人とも来てくれてありがとう~。」
キョンキョン「柔さん、頑張って下さい。」
ナンダ「柔ちゃん、しっかりと見ておくよ、今の姿を。」
柔「うん、頑張るよ。」
耕作「どこも異常は無いみたいだね。」
柔「分かってたんだ、状態をチェックしてたの。」
耕作「昨日と似た様な感じでしてたから、そうじゃないかと思ってた。」
柔「さすが、あなたね。」
玉緒「耕作さんは柔のコーチみたいだわね。」
耕作「いえいえ、そこまでの事はしてませんから。」
富士子「私もお母様と同じ意見ですよ、選手の状態に気を配るのも
コーチの役目なんですから。」
耕作「ははは、富士子さんまでそう言うんだね。」
柔「うふ、コーチ、乱取りしてきま~す。」
耕作「おいおい、柔まで悪乗りするなよ~。」
柔「うふふ、行ってくるね、あなた。」
柔「富士子さん、行こう?」
富士子「お相手仕る、行ってきます。」
二人は乱取りをする為に中央の方へ行った。
耕作「富士子さんも時代劇見てたのかな?」
耕作「(ジョディー達も西海大の部員相手に乱取りを始めたか。)」
耕作「(西海大の部員達からすれば滅多に無い機会だろうから真剣にやってるけど、
ジョディー達には物足りなく感じてるだろうな。)」
耕作「(柔達も真剣にやってるな、富士子さん本気出してるし。)」
耕作「(富士子さんも柔と最初に対戦した時より伸びている。)」
耕作「(ここで教えてた事を自分も習得しようとしてたから、それが良い影響になってる。)」
耕作「(マスコミ連中も大変そうだ、これだけの強豪が居るから、誰を重点的にとか
絞り込む事が出来ないだろう。)」
キョンキョン「松田さん?」
耕作「どうしたの?」
キョンキョン「柔さん、オリンピックで見た時より技のスピードが速くなってません?」
耕作「そうだよ、アメリカ滞在中に今みたいになったんだ。」
キョンキョン「柔さんって、どこまで速くなるんでしょう?」
耕作「もっと速くなる要素は持ってる、柔次第だけど。」
キョンキョン「そうなんですね、松田さんと一緒になったのも有るんでしょうか?」
耕作「全然関係無いって事は無いと思う、向こうで色々話してお互いを理解し信頼する事が
出来た精神的な影響も有るかもしれないね。」
ナンダ「それと愛の力とか?」
耕作「ははは、それも有るかもしれないよ?」
柔達は乱取りを終えると耕作達の元に戻って来た。
柔「あなた、終わったよ~。」
耕作「お疲れさんでした。」
キョンキョン「柔さん、お疲れ様でした。」
ナンダ「柔ちゃん、お疲れ~。」
柔「皆、ありがとう~。」
柔「富士子さん、乱取りしてくれてありがとう~。」
富士子「柔さん、お疲れ様~、少しは役に立てたかな?」
柔「少しどころか、かなり役に立ったよ。」
富士子「お世辞でもそう言われると嬉しいわ~。」
柔「ううん、お世辞じゃなくて、富士子さんも以前に比べるとかなり速くなってるよ。」
富士子「本当~?本当なら嬉しいけど。」
耕作「富士子さん、柔の言ってる事は正しいよ。」
富士子「松田さんもそう言うなら本当なんだ、でも、まだまだ頑張らないと。」
柔「そうだね、頑張れば今よりもっと速くなるよ。」
耕作「さて、そろそろ第一試合が始まるけど、柔は大丈夫そうだね。」
柔「うん、大丈夫だよ、安心してね。」
耕作「滋悟朗さん達が中央に集まったね。」
富士子「いよいよなのね。」
キョンキョン「何だか、私の方が緊張してきました。」
ナンダ「もう~、キョンキョンが緊張してどうするの~。」
柔「あはは、そんなに緊張しなくても良いから~。」
虎滋朗「第一試合、柔対マルソー、両名中央へ。」
柔「じゃあ、行ってくるね、あなた。」
耕作「おぅ、頑張れよ、柔。」
柔「はい!」
柔とマルソーが滋悟朗達の元へ集まった。
祐天寺「今日の試合は全て国際ルールに則った形式で行われます。」
祐天寺「しかし、公式な試合では無いので戦績は記録されません。」
滋悟朗「それでは試合を始める、両名とも開始線に立つんぢゃ。」
柔とマルソーは開始線に立ってお互いを見た。
滋悟朗「礼。」
柔とマルソーは一礼した。
滋悟朗「始め!」
柔は自然体に構えた、マルソーも構えると相手の出方を見る様に徐々に近づいて行った。
マルソーが柔の腕を取りにいったが跳ね除けられた。
マルソーは左に動いたが柔はそれに合わせて正対する様に左の方に体を少し回転させた。
マルソーがどの様に動いても柔は常に正対する様に動いていた。
マルソーは攻めあぐねている様だった。
マルソーはこの状態を何とかしようと奥襟を取る為に更に近づいた。
柔は真剣な眼差しで自然体に構えたままじっとして動かない。
マルソーが奥襟を取る為に手を伸ばすと柔はその腕を掴んだ瞬間一本背負いの体勢に入った。
マルソーは慌てて重心を落とし柔の腕を取ろうとしたが一瞬早く体勢を入れ替えた柔が
小内刈りを仕掛けた。
マルソーは辛うじてそれを空かしたが、次の瞬間、柔は小外刈りを仕掛けた、それを
空かそうとしたマルソーが体勢を崩した。
それに直ぐ反応した柔は大外刈りを仕掛けマルソーは背中から真面に畳の上に倒れた。
滋悟朗「一本!それまでぢゃ。」
周囲のマスコミや西海大の柔道部員達から歓声と拍手が沸き起こった。
マルソーは呆気に取られた顔で柔を見ていた。
柔はそのマルソーに手を出して起こした。
マルソーは起き上がって尚も柔をじっと見詰めていた。
虎滋朗「二人とも開始線に立つ様に。」
柔とマルソーは開始線に立った。
滋悟朗「礼。」
二人は一礼をした。
マルソーが柔に歩み寄ると握手を求め、柔はそれに応じ二人は固く握手をした。
マルソー「柔、凄い、速過ぎる。」
そう言うマルソーに対して柔は微笑んでいた。
柔「マルソーさん、ありがとう、良い試合だったよ。」
マルソー「柔、ありがとう、私も、そう思う。」
虎滋朗「次の試合は30分後の開始になります。」
祐天寺「それまでは休憩時間にします。」
報道陣の面々は口々に今の試合の事を話しながら外に出て行った。
柔とマルソーは一緒に耕作の元に来た。
柔「あなた?どうだった?」
耕作「凄く良かったよ、スピードも技の切れも申し分ない出来だった。」
柔「良かった~、あなたにそう言って貰って安心した、自分では良く分からないからね。」
マルソー「柔、今日、闘えて、私、幸せ、あなたが、休んだ後、1年後楽しみ。」
柔「あ~、マルソーさん、し~~~、それ、他の人に知られると大変な事になるから。」
マルソー「あ、そうでした、ごめんなさい、柔。」
柔「謝らなくて良いよ、マルソーさん、あたしも別に口止めした訳じゃ無かったから。」
マルソー「数か月、合わない間、柔、凄く、強くなってる。」
柔「マルソーさんもそう思ってるのね。」
耕作「柔?」
柔「な~に~?あなた。」
耕作「これでも実感出来ない?自分の強さを。」
柔「う~ん、まだ分からないかな?」
マルソー「私、柔の、スピード、付いて、いけなかった。」
耕作「ほら、マルソーさんもジョディーと同じ事を言ってるんだよ?」
柔「そうなのかな?でも、マルソーさんが嘘を付いてる訳無いから、ほんとの事なんだね。」
富士子「柔さんが繰り出す技の速さに圧倒されてた感じだったわよ。」
柔「富士子さんもそう言うなら、あたしは皆が言う様になってるのかな?」
耕作「柔は一度攻めだすと止まらないから、相手が倒れるまで手を休めない。」
富士子「私もそう思いました。」
キョンキョン「柔さん、凄過ぎます、勝敗があっと言う間に感じました。」
ナンダ「キョンキョンの言う通りだよ、攻めだしてからのスピードが半端無いよ。」
柔「二人も同じ事を言ってる、やっぱり、そうなってるんだね、あたしの柔道。」
耕作「そう言う事なんだ、誰もが直ぐに分かるほどの変化なんだよ。」
耕作「それが証拠にテレシコワさん達を見てごらん。」
柔はテレシコワ達を見た。
テレシコワは目を見開いて柔を凝視していた。
クリスティーも同じ様に柔を見ていた。
耕作「二人とも信じられないって言う顔をしてるだろう?」
柔「うん、驚いている様に見えるね。」
耕作「つまりそう言う事なんだ。」
マルソー「柔?聞いて、良い?」
柔「何?どうしたの?マルソーさん。」
マルソー「あなた、私、どう動くか、予測してた?」
柔「ううん、何も考えて無かったよ?」
マルソー「本当?」
柔「うん、ほんとに何も考えないで柔道してただけだよ。」
マルソー「予測、しないで、あそこまで、速く、動ける事、凄い。」
マルソー「どうすれば、ああいう事、出来る?」
柔「あ~、それは、あたしには説明出来ないかな~、あなた、お願い。」
耕作「分かった、マルソーさん、柔は君が次にどう動くかを頭じゃなくて体全体の感覚で感じて
自然に体が反応してるから、あれだけ速く技を仕掛けられるんだ。」
耕作「こればかりは他の人には絶対に真似出来ない事なんだ。」
マルソー「柔、不思議な力、持ってる?」
耕作「そうだね、そう考えて貰って良いかもしれないよ。」
マルソー「柔、出来る限り、あなたに、追い付ける、様に、私、頑張る。」
柔「うん、マルソーさん、そうしてね、また、対戦しようね。」
マルソー「柔と、闘う、楽しみ、増えた。」
マルソーは柔に抱き付いた。
柔は戸惑いながらもマルソーを抱き締めた。
マルソー「柔、ありがとう、本当に、今日、闘えて、良かった。」
柔「あたしもマルソーさんと闘えて良かったって思ってるよ。」
マルソー「私、着替えて、きます。」
柔「いってらっしゃい。」
マルソーは更衣室に向かった。
柔「そう言えば、ジョディーは見て無かったのかな?」
耕作「ジョディーは君と一度対戦してるから見なくても良いと思ってるのと、試合を見ると
邪念が出てくるから見ないで自分の事だけを考える様にしてるんじゃないかな?」
柔「あ~、それ以前からやってた事だね。」
耕作「そうだね、そうする事で君が自然に出来てる無の境地に近づこうとしてるんじゃないかな?」
柔「あたし、そう言う事が出来てるの?」
耕作「さっき、柔は何も考えて無いって言ってたでしょう?」
柔「あ、そう言えば、言ったね。」
耕作「それが無の境地って言う事なんだ。」
柔「なるほど、そう言う事だったのね。」
富士子「柔さんが技を仕掛けだして決めるまでの動きが踊りを踊ってる様にしなやかな動き
に見えたわ、動きに無駄が無かったからかな?」
耕作「富士子さんもバレリーナをやってたから分かると思うけど、踊りを舞う動作って無駄な
動きが一切ないんだよね、もし有ったら踊りその物が優雅に見えなくなる。」
富士子「あ~、それは分かります、バレーも無駄な動きが少しでも入るときれいに見えない。」
耕作「さっきの試合の柔の動作は正にそう言う動作その物だったと言っても
過言じゃ無いと思うよ。」
耕作「ある意味、究極の動きと言っても良いかも。」
柔「ね~、あなた?」
耕作「どうしたの?」
柔「それっておじいちゃん達があたしに求めてた物とは違うのかな?」
耕作「一つの要素かも知れないね、他にも何か有るかもしれないけど。」
柔「そうなんだね、他に何かか~、何だろう?」
耕作「それは滋悟朗さん達にしか分からないと思うよ。」
柔「それなら考えても仕方ないか、まあ、何か分からないけど、あたしは今の状態に
磨きを掛けて精進するだけだね。」
耕作「それで良いよ、変に余計な事を考えるよりもね。」
柔「次までまだ時間が有るけど、どうするかな?」
柔「富士子さん、ここって休憩する場所とか無いの?」
富士子「そうね~、有ったかな?更衣室と教務室位しか知らないわ。」
柔「どこか座れる場所とかは?」
富士子「外にベンチなら有るけど、そこでも良い?」
柔「そこで良いよ、皆、そこに行って座りましょう?」
耕作「そうしようか。」
柔達は外に出て柔道場の外壁に並べてあるベンチに座った。
柔「少しは落ち着けるね。」
玉緒「お茶なら有るけど飲みますか?」
柔「おかあさん、さすが、用意周到だね。」
全員「お願いします。」
玉緒がお茶を紙コップに入れると富士子と柔で皆に渡していった。
柔「あ~、美味しい~、これ富士子さんの所のお茶だよね?」
玉緒「良く分かるわね、柔は。」
柔「うん、向こうに居る時も同じ物を飲んでたから。」
富士子「私どものお茶を愛飲して頂いてありがとうございます。」
ナンダ「富士子さん、相変わらず、このお茶美味しいよ。」
富士子「ありがとう~、ナンダさん。」
そこへ着替えたマルソーがやって来た。
柔「マルソーさんもこっちに来て座らない?」
マルソー「そうします。」
柔はマルソーが座るとお茶を渡した。
柔「これ富士子さんのご両親が作ってるお茶だよ。」
マルソー「ありがとう、富士子。」
富士子「私が作ってる訳じゃ無いけどね、どうぞ飲んで下さい。」
マルソー「はい、いただきます。」
マルソー「富士子、これ美味しい、どこで、買える?」
富士子「あ~、近くには無いけど、私の家に沢山有るから、今度、柔さんの実家の方に
持って行くので、その時に貰って下さい。」
マルソー「ありがとう、富士子。」
マルソー「柔、私、楽しみ、この後、試合で、他の人、どういう顔、するか。」
柔「それが楽しみなんだ。」
耕作「マルソーさんと同じ顔をすると思うよ、きっと。」
マルソー「ふふふ、それ、見たい。」
ナンダ「しかし、マルソーさんって可愛いよね~、お人形さんみたい。」
キョンキョン「マルソーさんって彼氏さん、いらっしゃるんですよね?」
マルソー「彼氏?」
柔「恋人の事だよ。」
マルソーは照れながら話し始めた。
マルソー「まだ、知り合って?長く、無い。」
マルソー「だから、良く、分かって、無い、かも、しれません。」
柔「お互いにって事?」
マルソー「お互い?」
柔「マルソーさんも彼氏もって事ね。」
マルソー「そうですか、お互い、好き、なのは、分かってる。」
柔「マルソーさんは彼氏を信頼してる?」
マルソー「信頼?」
柔「うん、彼氏の言う言葉とかを信じてるかって事なんだけど。」
マルソー「はい、信じて、います。」
柔「彼氏に自分の事は何でもお話してる?」
マルソー「それは、余り、話して、無いかも。」
柔「マルソーさん、それじゃ、ダメだよ?自分を曝け出さないと、相手もマルソーさんの事を
信頼してくれないと思うよ?これは、あたしの体験に基づいた事だから。」
マルソー「柔、松田に、自分、曝け出した?」
柔「うん、何でもお話したの、自分の考え、耕作さんをどう思っているかって事、今まで有った事、
色々全て耕作さんにお話したの、勿論、耕作さんもあたしに同じ事をしてくれたよ。」
マルソー「柔、それで、あれだけ、仲良く、出来てる?」
柔「そうだよ、それが無かったら、こうやって二人で一緒になっていなかったと思う。」
マルソー「柔、分かった、帰ったら、その通り、やってみる。」
柔「そうしてね、彼氏と上手くいく様に祈ってるから。」
マルソー「私、日本に、来て、良かった。」
マルソー「柔と、色々、お話、出来て、良かった。」
マルソー「一番は、柔と、試合、出来た事。」
柔「良かった~、そう言ってくれると、あたしも凄く嬉しい。」
耕作「柔はマルソーさんにも恋愛指南してるね。」
柔「指南ってほどじゃ無いよ、経験に基づいたお話をしてるだけだし。」
耕作「それが指南になるんだよ。」
柔「そうなんだ。」
キョンキョン「私も十分に参考にさせて貰います。」
ナンダ「私もそうする、今迄上辺だけだった気がするから。」
耕作「ほら~、皆、君の話を参考にする気だよ?」
柔「あ~、何だか、恥ずかしくなってきた~。」
耕作「君は俺とこうなった経緯を話す事が恥ずかしいの?」
柔「ううん、それは恥ずかしく無いよ、皆、聞いてた事が恥ずかしいんだよ。」
耕作「良いじゃない?昨日も皆居た人ばかりなんだし。」
柔「あ、それもそうか。」
虎滋朗が皆の所にやって来た。
虎滋朗「話している所、すまないが、そろそろ次の試合を始めるから中に入って。」
柔「あ、は~い。」
柔「じゃあ、皆、中に入ろうか?」
富士子「そうしましょう。」
柔達は柔道場の中へ戻って行った。