柔と耕作(松田)の新婚日記 8日目 (午後編第1部)
文書量(文字数)が膨大になった為、9分割で表記します。
柔と耕作は台所に寄ってポットとカップを置くと居間へ向かった。
居間に入ると先程に比べると遥かに多い人数になっていた。
滋悟朗「お~、本日の主賓のご登場ぢゃのう~。」
ナンダ「柔ちゃ~ん、来たよ~。」
マリリン「柔ちゃ~ん、結婚おめでとう~。」
四品川「柔ちゃん、おめでとう~。」
キョンキョン「柔さん、松田さん、結婚おめでとうございます。」
柔「皆、ありがとう~。」
耕作「皆、ありがとうね。」
銀次郎「二人ともおめでとう~、お~、指輪ちゃんと嵌めてるね~。」
柔、耕作「あ、どうも、ありがとうございます。」
他の人達からも祝いの言葉を言われ続けた。
玉緒「さあ、さあ、記念撮影をしますから、その位にして下さいね、
後で幾らでも言って構いませんから。」
玉緒「幸作さん、また撮影の方をお願いします。」
幸作「はいよ、任せて下さいな。」
幸作「先程と同じ感じで並んで、後から来た方は適当に座るなり立って下さいな。」
幸作「前後2列でお願いしますよ。」
幸作「そこの四人のお嬢ちゃん達は前に座って下さいな。」
ナンダ「は~い、分かりました~。」
幸作「それで良いと思うので、今から撮りますから暫くそのままで動かない様に。」
幸作「それじゃ、また、3枚撮りますから。」
幸作「始めますよ。」
幸作は撮影を開始した。
幸作「はい、お疲れ様、終わりましたから。」
全員「ありがとうございます。」
玉緒「それでは、これより披露宴を始めたいと思いますので、主賓以外の方達は
適当な場所に座って構いませんので。」
柔「おかあさん?良いの?」
玉緒「良いの、良いの、披露宴って言っても形だけなんだから、堅苦しいのは
おとうさんが嫌いだしね。」
柔「そうなんだ、凄く自由過ぎるな~。」
柔「そうだ、あなた?」
耕作「何だい?柔。」
柔「今のうちに鴨田さんの件、編集長さんに言っておいた方が良くない?」
耕作「あ、そうだね、じゃあ、ちょっと話してくる。」
柔は主賓席に取り残される形になった。
柔は耕作と編集長を見ていた。
柔「(上手く了解を貰えるかな?)」
柔「(あ、編集長さん、驚いた顔をしてるけど微笑んでるから大丈夫かな?)」
柔「(鴨田さんも驚いた顔をしてる。)」
柔「(編集長さん、耕作さんの肩を叩いて喜んでる。)」
柔「(どうやら了承されたっぽいな。)」
柔「(あ、社長、おじいちゃんと何か話してるな~。)」
柔「(そう言えば、挨拶しないとって言ってたっけ。)」
耕作が戻って来た。
柔「どうだったの?あなた、ここから見てると了承されてたみたいだけど。」
耕作「君の言う通り了承して貰ったよ、明日の取材もOKだって。」
柔「明日の取材って?」
耕作「試合のだよ?」
柔「あ~、そうだったね、明日も来るんだね鴨田さん。」
耕作「そう言う事だね。」
玉緒「それでは只今より披露宴を開催したいと思います。」
玉緒「初めに乾杯から入りたいと思いますので、各人グラスにビールをお注ぎ下さい。」
玉緒は皆の様子を見ていた。
玉緒「それでは準備が出来たみたいなので、乾杯の音頭は鶴亀トラベルの社長さんに
お願いしたいと思いますがよろしいでしょうか?」
社長「私で構わないのですか?」
滋悟朗「お主しかおらんぢゃろう?柔をここまでしてくれたんぢゃ、当然ぢゃと思うぞ。」
社長「滋悟朗先生からそう言われると恐縮してしまいます。」
社長「それでは僭越では有りますが、私が乾杯の音頭を執らせて頂きます。」
社長「柔さん、松田さんのこれからの幸せと両家の繁栄を祈って乾杯したいと思います。」
社長「柔さん、松田さん、ご両人のご結婚を祝すとともに猪熊家、松田家の
繁栄を祈ってかんぱ~い。」
全員「かんぱ~い。」
盛大な拍手が沸き起こった。
全員「結婚おめでとう~。」
玉緒「社長さん、どうもありがとうございました。」
玉緒「続きまして、日刊エブリーの編集長さんから一言お願いします。」
編集長「いきなり、私ですか?」
玉緒「柔の会社の社長さんに乾杯の音頭をお願いしましたので、耕作さんの上司である
編集長さんにお願いしたいと思いました。」
編集長「そう言う事でしたら、お受けします。」
編集長「手短にお話します、二人の事は取材での単なる知り合いと最初は思っていたのですが
或る時期から二人の関係が親密なんだと感じておりました。」
編集長「そう感じたのは柔さんがユーゴの試合に行った時で有りました。」
編集長「その時、松田君は別な用件で帰省していたのですが、いつの間にかユーゴに行って
いたのに驚くとともに、単なる取材対象にそこまでするのかと疑問に思いました。」
編集長「その後二人の事を良く見ているとお互いに魅かれている事が分かり、将来は
一緒になるのではないかと思い始めていました。」
編集長「そして柔さんのオリンピックでの二階級制覇、国民栄誉賞受賞、その後松田君の
渡米と色々有りましたが、二人の絆は強くなっていると確信していました。」
編集長「そんな中で松田君が帰国すると柔さんを伴って来て婚約発表となり、
私としましても思っていた通りになって大変安堵しております。」
編集長「お二人ともご結婚おめでとうございます、末永くお幸せに。」
編集長「以上で、私の話は終わります。」
また、盛大な拍手が沸き起こった。
玉緒「編集長さん、二人の進展具合が良く分かるお話で興味深く思いました、
貴重なお話ありがとうございます。」
玉緒「それでは次に友人代表としまして、花園 富士子さんにお願いしたいと思います。」
富士子「え~~、私ですか~?無理です~。」
玉緒「富士子さん、あなたは柔の事を良く見て良く世話をして下さってたから
その事をお話して下さって構いませんよ。」
柔「富士子さん、あなたなら出来るよ、あたしの事を後押ししてくれたんだから。」
富士子「柔さん、うん、分かりました。」
富士子「それでは出来るだけ簡潔にお話します。」
富士子「私が柔さんに出会ったのは三葉女子短期大学でした。」
富士子「初めは世間知らずのお嬢さん、柔さん、ごめんね~、だと思っていました。」
柔「良いのよ、富士子さん続けてね。」
富士子「暫くして柔道をしてるのが分かって、凄い人なんだと思いました。」
富士子「そんな時にソウルの世界選手権に柔さんが選ばれたのですが本人は行きたくない
様子だったので、私の過去の経験を話し、何とか行って貰える事になりました。」
富士子「その後、ソウルから戻ってくると柔さんは柔道を止めると言い出したので、私に何か
出来る事は無いかと考えて柔道部を作れば柔さんも戻ってくるかと思いました。」
富士子「結果的に柔さんは柔道に戻って来て、その後は一緒に柔道をする事になり
色んな場所に柔道で行く事が出来る様になりました。」
富士子「私が妊娠、結婚と言事になった時も柔さんには大変助けて頂きました。」
富士子「柔さんがおとうさんの事で柔道を止めていた間も戻ってくると信じて、
私は柔道を続けました。」
富士子「柔さんが柔道に戻って来てからの流れは編集長さんがお話して
下さったので割愛します。」
富士子「松田さんがアメリカに行って暫くして柔さんにアメリカへ行く様に勧めて
送り出した後、帰ってきて結婚すると聞かされて大変驚きました。」
富士子「でも、二人を見てるとそうなるのは自然な流れなんだと今では思っています。」
富士子「柔さん、松田さん、結婚おめでとうございます、末永くお幸せに。」
富士子「私のお話は以上です、取り留めも無くて失礼しました。」
また、盛大な拍手が沸き起こった。
玉緒「富士子さん、あなたには大変感謝しています。」
玉緒「柔を柔道に居させ続けてくれたんですから、富士子さんが居なかったら、
恐らく柔は柔道を止めたままになっていたでしょう。」
玉緒「そんな富士子さんの秘話を沢山ありがとうございました。」
玉緒「それでは、ここで祝電の紹介、と言っても代表数名の名前だけの紹介ですが
披露いたします、尚、敬称は省略させて頂きます。」
玉緒「IOCタマランチ会長、ニヤザワ元総理、本阿弥さやか、他20通を頂いております。」
柔と耕作は小声で話した。
柔「さやかさん、電報を送ってくれてたのね。」
耕作「そうみたいだね、内容は見たくないけど。」
柔「うふふ、あたしもそう思った。」
玉緒「それでは最後になりますが、本日の主賓、松田 柔さん、よろしくお願いします。」
柔「え?もう、あたしがお話するの?」
玉緒「簡素がモットーですからね、この披露宴は。」
柔「あ~、どうしよう~、何も考えて無いよ~。」
耕作「君が思い付いた事を話せば良いと思うよ。」
柔「仕方がないか~。」
玉緒「柔さん?早くお願いします。」
柔「おかあさん、何か他人行儀な呼び方な気がするんだけど~。」
玉緒「私は今は司会ですからね、そうせざるを得ないのよ?」
柔「分かりました~。」
ジョディー「柔、頑張れ~。」
キョンキョン「柔さん、頑張って下さい。」
柔「それでは、私からは両親とおじいちゃんへの思いのお話をします。」
柔「おかあさん、今迄ほんとに長い間、あたしの事を育ててくれてありがとうございます。」
柔「おかあさんが居なかったら、今のあたしは無かったと思います、精神的な支えに
なってくれてほんとにありがとう。」
柔「おとうさん、いつもあたしとおかあさんを見守ってくれててありがとうございます。」
柔「お父さんが居なかった事を恨んだりした事も有りました、対戦相手のコーチになって
あたしを倒そうとしてた事も何故なのかと言う思いも有りました。」
柔「でも、ずっとあたしの事を見てたからこそ、そうしていたんだと理解出来て、
今まで見守ってくれてた事に感謝しています、ありがとうございました。」
柔「おじいちゃん、最初、柔道をやらされていると言う感覚が有った時は正直恨んだりした
事も有りました。」
柔「でも、柔道をやってたからこそ、耕作さんと言う最良の伴侶に巡り合えて、おじいちゃん
には感謝しています、ほんとに長い間、今迄ありがとうございました。」
柔「後、ここにいらっしゃる皆さん、皆さんのお陰で、あたしは今こうしている事が
出来ているんだと実感しています、これからもよろしくお願いします。」
柔「以上で、あたしのお話を終わらせて頂きます。」
柔「今日はいらっしゃってくれて、ほんとに感謝しています、ありがとうございます。」
今までで一番盛大な拍手が沸き起こった。
玉緒「柔、本当に立派になって、私も嬉しく思っています、これからは耕作さんの
良き伴侶となってお互いに支え合っていってね、おめでとう。」
玉緒「それでは、これからはご自由になさって構いませんので。」
滋悟朗「柔~、泣けたぞ~、今のお前の話、しっかり覚えておくからの~。」
虎滋朗「柔、お前の思い、改めて心に染みたぞ、これからも頑張れよ。」
耕作父「耕作、柔さんを大事にせんと、いかんぞ~。」
耕作母「耕作、柔さんをしっかり支えんとな。」
耕作「うん、十分、分かってるよ、安心して良いから。」
皆は口々に柔と耕作を褒め称えながら飲んで食べ始めた。
滋悟朗「こりゃ~、花園~、飲んどるか~。」
花園「はい、頂いております。」
柔「おじいちゃん、既に酔っぱらってる。」
耕作「そうだね、皆も楽しんでるみたいだし。」
玉緒「二人はこっそり抜け出しても良いわよ。」
柔「おかあさん、良いの?そうしても。」
玉緒「もうお披露目は終わったから大丈夫よ、後は、皆、各々で楽しむでしょうから。」
耕作「では、遠慮せずにそうさせて貰います。」
耕作「柔、外に出ようか。」
柔「うん、そうだね。」
二人は立ち上がると廊下に出た。
柔「あなた、お疲れ様でした。」
耕作「君の方が疲れたでしょう?」
柔「ううん、あたしは平気だよ?」
滋悟朗「お~い、柔~、どこ行ったんぢゃ~。」
柔「うふふ、おじいちゃんが呼んでる。」
耕作「酔っぱらってるから、分からないんじゃないかな?」
柔「そうだね、でも、ここでこうしてると以前の事を思い出すね。」
耕作「あの時もこんな感じだった気がする。」
柔「でも、今のあたし達は夫婦なんだよね~。」
耕作「うん、その通りだね。」
柔「後は・・。」
耕作「俺達の子供・・、かな?」
柔「うん、早く欲しいな~。」
耕作「まあ、君も会見で授かり事って言ってたから焦っても仕方ないよ。」
柔「そうだね~、でも、直ぐに分かると思うよ。」
耕作「来週だったっけ?」
柔「そうだよ、それで分かるかな?来なかった時に妊娠検査薬を使えば分かると思うよ。」
耕作「え?そう言うのが有るの?」
柔「有るらしいよ、薬局でも売ってるみたいだけど。」
耕作「へ~、柔は恋愛関係には疎いのに、そう言うのは詳しいんだね。」
柔「だって、富士子さんの時に勉強したんだもん。」
耕作「あ~、それで詳しいんだね。」
柔「より正確に分かる為には病院に行かないといけないけど。」
耕作「病院は女医さんが居る所が良いかもね。」
柔「何で?」
耕作「だって、見られるでしょう?俺は他の男の人には見せたくないから。」
柔「えへへ、今はエコー検査って言うのが有るのを知らないな~。」
耕作「何?それ。」
柔「お腹の部分にエコーを当てて見る事が出来る装置なんだって。」
柔「エコーって言うのは超音波の事なんだよ。」
耕作「ほ~、それなら、大事な部分は見せなくても済むんだ。」
柔「うん、そうだよ、お腹を晒すだけで済むんだよ。」
耕作「ほんとによく勉強したんだね。」
柔「うん、富士子さんに元気な赤ちゃんを産んで欲しかったからね。」
柔「だから、あたしの時も来ない、検査薬、産婦人科って言う流れになるかな?」
耕作「そうなるんだ、そこは柔に任せとこうかな。」
柔「うん、あたしで出来る事はするつもりだから。」
柔「でも、産婦人科に行く時は一緒に行ってね?」
耕作「それは勿論だよ、結果がハッキリするなら一緒に聞きたいから。」
耕作「こういう話をしてるだけでも前の時と違うんだって分かるよね。」
柔「そうだね~、前の時はお互いに告白すらして無かったし。」
柔「台所に行かない?」
耕作「行こうか、ここだと邪魔が入りそうだし。」
二人は台所に行った。
柔「今入れるね。」
耕作「お願いね。」
柔はコーヒーを2杯入れて片方を耕作に渡した。
二人は並んでテーブルに着いた。
柔「披露宴も無事終わった記念のコーヒーだよ。」
耕作「正確にはまだ終わって無いけどね。」
柔「あ、そうだった、でも、披露の部分は終わってるから良いんじゃない?」
耕作「それもそうか。」
柔「ジョディー達、余り飲まないと良いけど。」
耕作「大丈夫じゃ無いかな?明日の事も有るから、余り飲まないと思うよ。」
耕作「それに、虎滋朗さんと滋悟朗さんも一緒にいるから。」
柔「おじいちゃんは危ないけど、おとうさんが居るから大丈夫か。」
玉緒「あら、ここに居たのね。」
柔「あ、おかあさん、どうしたの?」
玉緒「タクシーを手配しようと思ってたから。」
柔「もう誰か帰るの?」
玉緒「あなたの会社の社長さん、用事が有るからって。」
柔「そうなんだ、あたしが呼んでおくから、おかあさんは戻ってて良いよ。」
玉緒「それじゃ、お願いしても良いかしら。」
柔「うん、直ぐに呼ぶから心配しないで。」
玉緒「じゃあ、お願いするわね。」
柔「うん、呼んでおくね。」
玉緒は居間に戻って行った。
柔「あなた、電話掛けてくるから待っててね。」
耕作「うん、待ってるよ。」
柔はタクシーを手配する為に電話を掛けに行った。
暫くして柔が戻って来た。
耕作「お帰り。」
柔「ただいま~。」
柔「社長が帰る時はお見送りしようか。」
耕作「うん、それが良いと思う、乾杯の音頭もとって貰ったし。」
柔「こうやって少しずつ帰って行くのかな?」
耕作「用事がある人から帰って行くんだと思うよ。」
柔「編集長も長く席を空けておけないよね?」
耕作「そうだね、居ないと業務に支障が出るから。」
柔「祐天寺監督もそうかな?」
耕作「今日練習が休みなら帰らなくても良いけど、有るなら大学に
行かないといけないだろうね。」
柔「あ、タクシーが着たみたい、おかあさんに伝えてくるね。」
耕作「うん、いってらっしゃい。」
柔は居間へ向かった。
暫くすると柔は社長と一緒に戻って来た。
柔「お見送りしますから。」
社長「主賓を長く連れ回すのは良くないから玄関までで良いですぞ。」
柔「はい、分かりました。」
柔「あなた、行きましょうか。」
耕作「そうだね。」
三人は玄関まで一緒に行った。
柔「社長、今日はお忙しい中、わざわざ、お越し下さってありがとうございます。」
耕作「すみません、色々と無理を言いまして。」
社長「いやいや、気にしなくて良いから、それより残りの自由行動時間を満喫して下さいよ。」
柔「はい、そうさせて頂きます。」
耕作「お疲れ様でした、ありがとうございます。」
柔「お疲れ様でした、ありがとうございました。」
社長「また、君が出社したら顔を出すから、その時まで元気で。」
社長は玄関を出て行った。
柔「あなた、台所に戻りましょう。」
耕作「そうしようか。」
台所に戻った二人は並んで座った。
柔「編集長さん、あたし達の事を感付いてたのね。」
耕作「そうだったね、まあ、あれだけ俺が露骨に君に対して密着取材的な事を
してれば分かると思うけどね。」
柔「だから、あたしが会社に電話した時も優しそうにお話してくれたんだ。」
耕作「え?いつ電話したの?」
柔「あたしが柔道を離れてた時かな?電話に出た瞬間に、あたしが怒鳴ったから最初は
面喰ってたけど、あたしと分かった途端優しそうに話してくれたの。」
耕作「あ~、俺が君を柔道に戻そうと躍起になってた時の事なんだね。」
柔「そうなの、あの時のあたしは迷惑だとしか思って無かったから。」
耕作「それはそうだと思うよ、止めたいと思ってる人に対して戻って欲しいって言う
俺の我儘みたいな事を押し付けてた訳だから、そう思うのは当然だよ。」
柔「何度も言ってるけど、あの時はほんとにごめんなさい、あたしの勝手な思い込みで
あなたを振り回す事になっちゃって。」
耕作「やっぱり、その事はまだ気にしてるんだね、大丈夫だよ、俺は気にして無いから。」
耕作「いい加減に吹っ切って貰わないと、いつまでも過去を引きずってちゃダメだよ。」
柔「そうよね、その為に何でもお話するって決めたんだもんね。」
耕作「その通りだよ、だからもう謝罪の言葉は言わなくて良いんだから。」
柔「うん、分かった、これからはそのお話が出ても謝る事はしないね、心では思ってても。」
耕作「そうしてくれた方が俺も安心出来るから。」
耕作「それにしても俺と君の関係で皆に話せる事は皆が知ってる事だけだね。」
耕作「俺達しか知らない事は話して無いから。」
柔「そうね、最初に泊まったのもそうだし、あなたにバイクで色々と連れ回して
貰った事も誰にも言って無いよね。」
耕作「二人だけの秘密は有った方が良いから、今後も話さないでおこうね。」
柔「うふふ、あたしもそう思ってた、二人だけの内緒のお話が有るのは素敵だと思うよ。」
耕作「アメリカに居た時の事も全部は話して無いから。」
柔「あれはね~、あたしのせいで話せる内容じゃ無いと思うし。」
耕作「あの時の事は言えないから、まあ、玉緒さんに水着エプロンの事は話しちゃったけど。」
柔「後、あたしが下着姿をあなたに見せてた事もだけどね。」
耕作「あれは、俺は最初ドキッとしたよ、君がいきなり言うもんだから。」
柔「あれって、おかあさんの誘導尋問みたいなものだったのかな?」
耕作「そうか、その前に俺が君の下着姿を見ても動じて無いとか言ってたね。」
耕作「それに対して君がああいう風に話したんだった。」
柔「おかあさんって言えば、今日の進行での司会、本職なのって言う位上手かったと思うよ。」
耕作「それは、俺も思ってた、以前、そういう仕事でもしてたんじゃないかと思う位に
凄く場慣れしてる感じがしたから。」
耕作「知り合いばかりだと言う事を差し引いても、あの度胸は凄いって思った。」
耕作「あ~、それで、君も最初から人見知りしない性格だったのか。」
柔「おかあさんを見て育ったからなのかな?」
耕作「それは絶対に有ると思うよ、親を真似るのは子供として当然だから。」
耕作「後、滋悟朗さんもそう言う所が有るしね、無鉄砲さの方だけど。」
柔「やだ~、そう言う所まで似てるの?あたしって。」
耕作「よ~く思い出してごらん?思い当たる事が結構有るんじゃないの?」
柔「・・・、うん、結構そう言う時が有った気がする。」
耕作「でしょう?やっぱり二人に似てるんだよ、君は。」
柔「おかあさんは良いとして、おじいちゃんはやだな~。」
耕作「諦めるしかないと思うよ、小さい頃から一緒に暮らしてた訳だから。」
玉緒「あなた達まだお話してたの?良く続くわね~。」
柔「あ、おかあさん、またタクシー呼ぶの?」
玉緒「そうなの、今度は編集長さんが会社に戻るからって。」
耕作「一人でですか?」
玉緒「邦子さんと鴨田さんは居残って良いんだって。」
柔「そうなんだ、職務に忠実な方なのね。」
耕作「まあ、編集長だからね、いい加減だったら会社が潰れるから。」
柔「それもそうね、でも、さすがよね~。」
玉緒「今度は私が電話をしてくるから、ここに居て良いわよ。」
玉緒「また、さっきみたいにタクシーが来たら呼びに来て頂戴。」
柔「うん、そうするね、いってらっしゃい。」
玉緒はタクシーを呼ぶ為に電話を掛けに行った。
柔「あなたはそう言う方の部下なのよね~。」
耕作「さっきの続きなんだ。」
柔「うん、だからあなたも職務に忠実なんだな~って思ったの。」
耕作「君を追い回してたから?」
柔「うん、しつこい位にあたしを付け狙ってたじゃない?」
耕作「事実だから否定出来ないな~。」
柔「でも、途中からは職務があなたの想いに変ってたのよね?」
耕作「それも否定出来ない事実なんだよな~。」
柔「そして、あたしはあなたの奥さんになった訳なんだね。」
耕作「そうだね、厳然たる事実だね、その事も。」
柔「それに関してはあたしもあなたを愛しちゃったからなんだけど。」
耕作「俺も君を愛してたからね~、相思相愛だったのは後から知った事実だったけど。」
玉緒「まあ、まあ、こんな所で二人で愛を語ってるのね~。」
柔「あ~、おかあさんに聞かれちゃった~。」
玉緒「もう分ってる事なんだから、恥ずかしがる事なんて有りませんよ?」
柔「あ、そうだ、おかあさん?」
玉緒「何かしら?」
柔「披露宴前に邦子さんにあたし達を呼びに越させたのって何でなの?」
玉緒「あなたの恋のライバルだったんでしょう?邦子さんは。」
柔「え?何でその事を知ってるの?」
玉緒「あなた、邦子さんと耕作さんがバイクで一緒に乗ってたって焼餅焼いてたじゃない?」
柔「あ~、やっぱりあたしが嫉妬してたって分かってたんだ~。」
玉緒「あなた自身は気が付いて無かったでしょうけど、あんな話し方を聞いたら
誰でもそう思いますよ?」
柔「そうだよね~、あの時はあたし自身の気持ちに全然気が付いて無かったから
そんな風には思って無かったのよね~。」
玉緒「あなたは本当に恋愛に関しては超が付くほどの奥手だったから仕方ないわよ。」
柔「それは否定出来ないな~、ほんとに恋愛に関しては関心が薄かったから。」
玉緒「その割には恋愛したいと思ってたみたいだけど、実際にしてるにも拘らずね?」
柔「ほんと、おかあさんって、あたしの事を良く見てたんだね。」
玉緒「四六時中一緒に居たら、私も気が付かなかったでしょうけど、たまに会う感じ
だったから、あなたの変化には直ぐに気が付きましたよ?」
柔「やっぱり、おかあさんには敵わないな~。」
玉緒「人生経験が違いますからね?あなた達もこれから経験する事だけど。」
耕作「お見逸れしました。」
柔「あ、タクシー着たみたい。」
玉緒「それじゃ、編集長さんに伝えてきますね。」
玉緒「あなた達でお見送りしてね、お願いしますよ。」
耕作「はい、分かりました。」
柔「うん、お見送りするから。」
玉緒は編集長を呼びに居間へ向かった。
暫くすると編集長がやって来た。
二人は立ち上がった。
編集長「お~、こんなところに居たのか、姿が見えなくてどこに行ったのかと思ってた。」
柔「今日はご出席して頂いた上、あの様なお言葉を頂いて感謝しています。」
編集長「そう言われると気恥ずかしい限りですな、私の知ってる範囲でお話しただけですから。」
柔「それではお見送りさせて下さい。」
編集長「主賓自ら出迎えと見送り、大変ありがたく思っています、是非お願いします。」
三人は玄関を出て木戸を潜るとタクシーが待っている所まで一緒に向かった。
編集長「それでは、これで失礼します、楽しい一時をありがとう。」
柔「こちらこそ、お礼を言いたいです、今日はおいで下さいまして、
ほんとにありがとうございます。」
編集長「松田君、柔さんの事、大切にしろよ、後、鴨田と加賀君は
最後まで居させてやってくれ、慰労の意味も込めてな。」
耕作「はい、勿論、全力で支えていく覚悟です、鴨田と加賀君の事はお任せ下さい。」
耕作「今日はほんとにありがとうございました。」
編集長「明日の記事も期待しておくぞ、それじゃ、また、明日な。」
編集長はタクシーに乗ると会社へ戻ていった。
二人はタクシーが見えなくなるまで頭を下げて見送った。
耕作「記事の事、釘を刺されてしまった。」
柔「うふふ、さすが、お仕事熱心な方ね。」
耕作「取敢えず、中に戻ろうか。」
柔「そうだね、また誰か見送る事になるでしょうけど。」
二人は木戸を潜って玄関に入ると台所へと向かった。
柔「飲む?」
耕作「色々と言い方を変えるんだね。」
柔「生活と同じで変化が有った方が良いでしょう?」
耕作「そうだね、それじゃ、お願いしようかな。」
柔「あなたは座ってて、直ぐに入れるから。」
耕作はテーブルに着いた。
柔はコーヒーを2杯入れて片方を渡しながら隣に座った。
柔「皆さんの色々な思いが詰まったコーヒーだよ~。」
耕作「ありがとうね、その思いを感じながら頂くね。」
柔「今日は或る意味、皆に対して恩返し出来たのかな?」
耕作「そうだね、楽しんで貰えたなら、そう言えるかもしれないね。」
柔「それに関しては、また、おかあさんに感謝だよね。」
耕作「その通りだと思うよ、玉緒さんの配慮が有ってこそだと。」
柔「あたしも見習わないといけないね。」
耕作「ううん、柔は既にそれは出来てると思うよ。」
柔「そうなの?」
耕作「皆に対して感謝の言葉を言ってたじゃない?それも配慮だと思うから。」
柔「そうなんだ、やっぱりあなたを訪ねて向こうに行った事が良かったんだよね?」
耕作「うん、君が向こうに来て二人で色々と話して、その事で君自身が成長したと
思うから来て貰って良かったと思ってるよ。」
耕作「勿論、君自身の事もそうだけど、何より柔道がかなり進化したから、
その事が一番に良かった事になるかな?皆にとっては。」
柔「そうなのね、あたし自身は柔道に関しては余り感じて無いんだけどね。」
耕作「まあ、事実だから、ジョディーとの試合がそれを証明してるから。」
耕作「ジョディーは表面上は何も変わってない様に見えるけど、君に対して
新たな闘志を燃やしてると思うよ。」
柔「うん、それは、あたしも感じてる事だよ、あのまま終わるはずは無いから。」
耕作「良いライバル関係だよね、ジョディーもそうだけど他の皆ともね。」
耕作「君は知ってるかな?」
柔「何をなの?」
耕作「テレシコワさんが指導者に転向する事を。」
柔「え?そうなの?」
耕作「君は言葉に関しては敏感だと思ってったけど、君の練習の事を熱心に見てたし
君にその事を聞いてよね?それってテレシコワさんだけだって気が付いてた?」
柔「あっ、そう言われてみれば、そうだった。」
耕作「俺はその事が有ったからテレシコワさんは指導者になると思ったんだ。」
柔「なるほど、あなたの説明で納得出来た。」
柔「でも、選手も続けて欲しいって思うのは、あたしの我儘になるのかな?」
耕作「そうは思わないよ?良きライバルを失うのは辛い事だから。」
耕作「それに指導者のみだけで行くかどうかは今の所分からないしね。」
耕作「君が望めば選手としても続けて貰えるかもしれないよ?」
柔「そうだね、まだ滞在してるから、それとなく聞いてみるよ。」
耕作「うん、そうした方が良いと思う。」
柔「もう帰る人は居ないのかな?」
耕作「そう言えば、玉緒さんも来なくなったね。」
柔「あ、ご近所さん達は玄関から入って無いから、ここは通らないんだった。」
耕作「そうか、庭先から入ってたんだね。」
柔「うん、だから誰も見なかったのね。」
柔「後の方達は、祐天寺監督を除けば晩御飯まで居そうだよね?」
耕作「富士子さん達も帰るんじゃない?」
柔「そう言われればそうかも、でも、おかあさんが残る様に言ったら残りそうだけど。」
耕作「それも有り得るか。」
玉緒「あなた達、そろそろ居間へ戻らない?」
柔「あ、おかあさん、もうお開きになるの?」
玉緒「そうなの、だから最後は居て貰いたいと思ったから。」
耕作「ご近所の方達もまだいらっしゃるんですか?」
玉緒「ご近所さん達は既に引き上げてますよ。」
柔「やっぱり、そうだったのね。」
玉緒「それじゃ、居間に行きましょうか。」
耕作「はい、そうします。」
柔「うん、分かった、行くよ。」
三人は居間に戻って行った。