柔と耕作(松田)の新婚日記 8日目 (午前編第4部)
文書量(文字数)が膨大になった為、9分割で表記します。
道場の入り口前に着いた三人は暫くそこで待機した。
玉緒「それじゃ、私は先に入りますけど、進行係の方が呼びに来たら入って来てね。」
耕作、柔「はい。」
玉緒は道場の中に入って行った。
柔「いよいよか~。」
耕作「緊張してるの?」
柔「あなたは?」
耕作「少し緊張してるかも。」
柔「あたしもそうだよ。」
柔「でも、前から言ってる様に、成る様に成れっていう気持ちでいるから。」
耕作「そうだね、そう思ってたら少し緊張してても大丈夫だよ。」
柔「うん、あたしもそう思うよ。」
誰かが入口まで来た、進行係の人だった。
進行係「お二人とも、どうぞ中へ。」
耕作、柔「はい。」
二人は中に入ると皆が座った椅子の間に出来た通路を静かに並んで歩いて
神主の前まで行った。
神主の前に二人が並んで立つと、二人に対して神主がお祓いを始めた。
お祓いが終わると神主は正面を向き祝詞は唱えた。
その後三三九度になった。
二人はお互いを見ながら畏まって三三九度をし終えた。
次に指輪の交換になりお互いの指に結婚指輪を嵌めた。
進行係が二人に誓詞を書いた紙を渡した。
進行係は小声で。
進行係「これを読んで下さい、名前の所はお二人の名前でお願いします。」
耕作、柔「はい。」
二人は誓詞を読み上げ始めた。
耕作、柔「今日の良き日に、私達は結婚式を挙げます。」
耕作、柔「今後は相和し、相敬い、苦楽を共にし、明るく温かい生活を営み、
子孫繁栄の為に勤め、二人は終生変わらぬ事をお誓い致します。」
耕作、柔「何卒、幾久しく御守護下さいます様お願い申し上げます。」
耕作「松田 耕作。」
柔「妻 柔。」
読み終わると拍手が沸き起こった。
進行係が二人に歩み寄り誓詞の紙を受け取った。
その後、親族杯の儀が執り行われた。
最後に神主が斎主の挨拶を述べた。
神主「略式では有りましたが、お二人の末永い結婚生活は変わらぬ物と信じております。」
神主「今後、お二人に幸せが訪れる事を祈りつつ結婚の儀を終えたいと思います。」
皆から盛大な拍手が送られた。
神主から順番に退場した。
その様子はマスコミ各社によって始まりから終わりまで、ずっと撮り続けられたいた。
玉緒「皆様、本日はありがとうございました。」
玉緒「皆様は居間の方へ移動して暫くそこでお待ち下さい。」
玉緒が神主を含めた全員を居間へ案内した。
耕作と柔は道場前でマスコミの応対をする事になった。
耕作「長い間お待たせして申し訳ありません。」
柔「それではご質問の有る方、順番にお願い致します。」
TTV「TTVです、お二人に質問です。」
耕作、柔「はい、どうぞ。」
TTV「結婚式を終えられた感想を一言ずつお願いします。」
耕作「式が終わり、改めて二人で支え合っていきたいと思っています。」
柔「式が終わって、ここからが新たな出発点と思い二人で精進していきたいと思います。」
TTV「ありがとうございました、改めて、おめでとうございます。」
耕作、柔「ありがとうございます。」
MTV「MTVです、柔さんにお聞きします。」
柔「はい、どうぞ。」
MTV「これからの予定で決まっている事とか有りましたら是非お願いします。」
柔「誠に急で申し訳ないのですが、明日、西海大であたしを含めた五人で試合をする
予定になっています、取材は自由で構いませんので、是非お越し下さい。」
柔「他の四人は皆様もご存知の方達で、只今の結婚式にも出席して頂いた方達です。」
マスコミ達「何だって~、本当ですか?それは勿論、是非伺わさせて頂きます。」
柔「西海大には、お話を通していますが、他の方達の迷惑にならない様にお願いします。」
マスコミ達「はい、承知しました。」
耕作「他に有りませんか?」
ATV「ATVです、それに関してですが、開始時間は何時からになるのでしょうか?
柔さんお願いします。」
柔「10時からを予定しています、ただし、終了時間は今のところ未定です。」
ATV「ありがとうございます。」
XTV「XTVです、また、柔さんにお聞きしたいのですが。」
柔「はい、どうぞ。」
XTV「終了時間が未定なのは何故ですか?」
柔「正式な試合では有りませんが、対戦形式があたし対四人になる為、途中休憩を挟む事に
なるので、一試合にどれだけ時間が掛かるか分からない為に未定としています。」
それを聞いたマスコミ達は騒めいた。
XTV「ありがとうございます。」
HNK「HNKです、大凡の終了予定とかはお分かりになりませんでしょうか?」
柔「少しお待ち下さい。」
HNK「はい、分かりました。」
柔は耕作に耳打ちした。
柔「大凡の終了っていつ位になると思う?」
耕作「俺から言おうか?」
柔「ごめんね~、お願い~。」
耕作「お待たせしました、それについては私の方からお話します。」
耕作「皆さんもご存知の通り柔道は時間制で行われますので、休憩時間を挟んだとして
13時過ぎ位が終了予定と思って頂いて構いません。」
HNK「分かりました、これで予定が組み易くなります、ありがとうございました。」
耕作「試合に関しては以上ですが、他にご質問の有る方はいらっしゃいますか?」
CBB「CBBです、どちらでも、構い、ませんが、よろしい、ですか?」
耕作、柔「はい、どうぞ。」
CBB「試合、以外で、決まって、いる事が、有ったら、お願いします。」
柔「そうですね、新婚旅行は国内に決めています、その出発は試合が終わった翌日、
つまり明後日からにする様にしています。」
CBB「ありがとうございます、無事を、お祈り、しています。」
耕作、柔「ありがとうございます。」
週刊金曜「金曜です、柔さんに質問です。」
柔「はい、どうぞ。」
週刊金曜「失礼かと思う質問ですが、それでも構いませんか?」
柔「はい、構いません。」
週刊金曜「万一、ご懐妊された場合はその後の試合は欠場されるのでしょうか?」
柔「少々、お待ち下さい。」
週刊金曜「はい、分かりました。」
柔は耕作に耳打ちした。
柔「どうしよう、ここで言って良い事なのかな?」
耕作「そうだね、本来なら連盟に話を通してからになると思うけど、聞かれた以上は
正直に君が思っている事を話しても良いと思うよ。」
柔「うん、分かった~、正直にお話するね。」
柔「お待たせしました。」
柔「懐妊するかどうかは授かり事なので分かりませんが。」
柔「万一そうなった場合は折角授かった大切な命の為ですので、已むを得ませんが
出産して暫く経つまでは欠場する事になると思います。」
週刊金曜「すみません、立ち入った事を聞いてしまったみたいで恐縮です。」
柔「どうぞ、お気になさらないで下さい、あたしの正直な気持ちを申しましたので。」
柔「他にどなたかご質問はお有りでしょうか?」
週刊春分「春分です、柔さんよろしいですか?」
柔「はい、どうぞ。」
週刊春分「この後行われる披露宴はどの様な感じで行われるのでしょうか?」
柔「身内と知り合いだけで行いますが、以前試合後に行われたのと同じ感じになると思います。」
柔「あれにご出席された方はお分かりになると思います。」
週刊春分「ありがとうございました。」
柔「他に無ければこれで終わりたいと思いますが、有りませんでしょうか?」
放置新聞「すみません。」
柔「はい、もしかして終了の儀式の事でしょうか?」
放置新聞「あ、お分かりになりましたか、お願い出来ますか?」
柔「少しお待ち下さい。」
マスコミ達「はい、分かりました。」
柔「あなた、やっぱり言われたね、どうする?」
耕作「君から言い出したけどね?」
柔「えへ、ごめんね~、だって、あそこ、この前もそう言い出した所だし、直ぐに分かったから、
あたしの方から言っただけなんだけど。」
耕作「君は先読みが得意だからね、まあ、仕方ないからするかい?」
柔「あなたが良いなら、あたしは構わないよ?」
耕作「俺も君が良いなら構わないけど。」
柔「うん、分かった~、キスマーク付くかもしれないけど、するって事で良いよね?」
耕作「それが有ったか、まあ、良いかな?君に任せるよ。」
柔「分かった~、それじゃ、言うね。」
耕作「うん。」
柔「大変お待たせしました、今から行いますので。」
マスコミ達「おぉ~、お願いします。」
柔と耕作は向い合せになると柔が耕作を見上げて目を瞑った。
耕作は柔の両頬を両手で優しく包むと長めにキスをした。
その瞬間フラッシュとともに撮影が始まった。
二人は暫くその姿勢でいたがシャッター音が止むと元の姿勢に戻った。
柔「皆様、長い時間ありがとうございました、明日もよろしくお願い致します。」
マスコミ達「いつも、ありがとうございます、明日も必ず伺わせて頂きます。」
耕作は口を拭った後マスコミに話した。
耕作「皆様、お忙しい中、おいで下さいまして、誠にありがとうございます。」
耕作「気を付けてお帰り下さい、尚、披露宴の様子はエブリーの方から映像等を
お渡しすると思いますのでよろしくお願いします。」
マスコミ達「お二人とも長い時間ありがとうございます、映像は心より
お待ちしていますので是非お願いします。」
耕作、柔「皆様、お疲れ様でした。」
マスコミ達は慌しく撤収を始めると我先にと外へ出て行った。
柔「ふ~、やっと、終わったね~。」
耕作「そうだね、でも、また明日も会見有るかもよ?」
柔「え?明日も会見が有るの?」
耕作「他の人達は無いかもしれないけど、君は必ず有ると思うよ?」
柔「え~、何であたしだけなの~?」
耕作「他の人達は各協会が了解してればインタビューには答えるかもしれないけど
会見と言う形は取らないと思うよ?」
柔「それってずるくない?」
耕作「仕方ないよ、だって通訳が居ないよ?会見は無理だって。」
柔「それならインタビューも同じなんじゃ無いの?」
耕作「基本的には同じだけど、会見はマスコミが一斉にするけど、インタビューは個別が
多いからやり易いんだよ?」
柔「そうなのね、仕方ないか、あたしが告知したから、その責任は有るのね。」
耕作「良く分かってるじゃない?その通りだから。」
耕作「それじゃ、皆が待ってる居間に行こうか?」
柔「うん、そうだね、行きましょう。」
二人は寄り添って居間へと向かった。
居間に入った瞬間、盛大な拍手で二人は迎えられた。
玉緒「二人ともお疲れ様でした。」
滋悟朗「お疲れぢゃったの~。」
虎滋朗「二人とも良く出来てたぞ。」
社長「お二人とも見事でしたぞ。」
編集長「二人とも良く頑張ったな。」
他の人達も口々に二人を慰労したり褒めたりしていた。
玉緒「その辺りでよろしいんじゃないでしょうか?」
玉緒「では記念撮影をここで行いたいと思います。」
玉緒「幸作さん、写真をお願い出来ますでしょうか。」
幸作「はい、分かりました。」
幸作「それでは庭を背にして前列から真ん中に新郎新婦、両側にご両親と滋悟朗さん
後は後ろの方にグループ別にお並び下さい、前の方は座って下さい。」
幸作「前列が少ない様なので社長と編集長は前の方にお願いします。」
幸作「あ、ジョディーさんは後ろの列の真ん中に座って頂けませんか?」
ジョディー「分かっただわ。」
幸作「ジョディーさんを挟む形で両側に外国の方、お願いできますか?」
テレシコワ「分かった。」
マルソー「分かりました。」
クリスティー「イエス。」
幸作「他の方達はその両側に並んで下さい。」
幸作「はい、それでOKです。」
幸作「それでは3枚撮りますので、暫く動かないで下さい。」
幸作は撮影を始めた。
幸作「はい、撮影終了です、お疲れ様でした。」
全員「ありがとうございました。」
玉緒「幸作さん、披露宴に集まった人達も一緒に、もう一度お願い出来ますか?」
幸作「勿論です、構いませんから。」
玉緒「皆さんも寛いで下さい。」
全員「はい、分かりました。」
玉緒「柔と耕作さんは上に行って着替えてきて構わないわよ。」
柔「え?もう着替えて良いの?」
耕作「構わないのですか?」
玉緒「構いませんよ、寝間着姿以外ならね?」
柔「やだ~、おかあさん、いくら何でも寝間着には着替えないよ~。」
耕作「玉緒さんも冗談を言うんですね?」
玉緒「あら、失礼ね~、私も冗談位言いますよ?」
虎滋朗「玉緒、幸ちゃんと台所で話してきても構わないか?」
玉緒「はい、是非そうして下さいな、久しぶりなんですから。」
虎滋朗「すまんな、幸ちゃん行こうか。」
幸作「ほい、玉緒さん、旦那さんお借りしますよ。」
玉緒「幸作さん、虎滋朗さんの事お願いします。」
幸作「お任せ下さい。」
虎滋朗と幸作は台所へ行った。
玉緒「柔達は上にいってらっしゃい。」
滋悟朗「早う行かんか~、下りてくるのはゆっくりで構わんからの~。」
柔「もう~、おじいちゃんったら、分かってますよ~だ。」
富士子「甘えてらっしゃ~い。」
ジョディー「柔?甘えて、らっしゃ~い。」
テレシコワ「甘えて、来ると良い。」
マルソー「そうだよ~。」
邦子「柔ちゃん?耕作に甘えてらっしゃいね~。」
他の人達も柔を揶揄っている様だった。
柔「もう~、皆は~、分かりましたよ~だ。」
耕作「柔?行こうか?」
柔「は~い、あなた~、行こうね~。」
邦子「早速、甘えてるし~。」
全員「そうだ、そうだ~、あはは。」
柔「もう~、知らな~い、行ってくる~。」
耕作と柔は寄り添う様にして上に上がった。
上に上がり部屋に入ると二人は寄り添ってベッドに座った。
柔「あなた、お疲れ様でした。」
耕作「柔こそ、お疲れさん。」
柔「式は結構短めだったね。」
耕作「神主さんも略式って言ってたね。」
柔「あ、そう仰ってたね。」
柔「と言う事は、本格的だとかなり長いのかな?」
耕作「そうなんじゃないかな?滋悟朗さんも余り長い行事は嫌いみたいだし、
話し合いで、ああいう風に決まったんじゃないかな?」
柔「おじいちゃんに感謝しないといけないか。」
耕作「かもね、短くて済んだ訳だし。」
柔「あなた?着替えない?」
耕作「そうだね、堅苦しくていけないから着替えよう。」
柔「うふふ・・。」
耕作「急にどうしたの?」
柔「え~、あなたに脱がせて貰おうと思ったのに~。」
耕作「分かってるよ、でも着物の脱がし方とか知らないよ?俺は。」
柔「もう~、あなたって、最近意地悪くない?」
耕作「君の拗ねた顔が可愛いから見たかったんだよ。」
柔「やだ~、もう~、意地悪~。」
耕作「うん、可愛いよ~、その顔と言い方。」
柔「もう~、知らない。」
耕作「さあ、機嫌を直してね?お姫様?」
柔「えへ、そう言われると嬉しいな~。」
耕作「機嫌が直ったとこで、脱がせたいけど、ほんとに脱がし方知らないんだけど?」
柔「えっと、帯留めを解いて、帯を外したら、簡単に脱がせられるよ?」
耕作「そうなんだ、それじゃ、柔は立ってみて?」
柔は立ち上がると耕作の前に立った。
耕作「帯留めって、この紐みたいので良いの?」
柔「うん、そうだよ。」
耕作は帯留めを解いてきれいに纏めるとベッドの上に置いた。
耕作「この後は?」
柔「帯を後ろから解いて外すの。」
そう言うと柔は耕作に背を向けた。
耕作「あ、ここを解くのか。」
耕作は帯を解いて外そうとして引っ張った。
柔「あれ~、お殿様、お止め下さ~い。」
そう言いながら柔はくるくると回った。
耕作「あの~、柔?」
柔「な~に~?お殿様。」
耕作「お殿様じゃ無いの。」
柔「あなた、怒ってるの?」
耕作「いや、怒ってはいないけど、今の会話が下に聞こえたらどうするのかなって。」
柔「あ、そうだった、大勢来てるの忘れてた。」
耕作「もう~、ほんとに~、この子は~。」
柔「ごめんなさ~い、でも、こうした方があなたが動かなくて済むかと思ったから。」
耕作「まあ、それは有り難いけど、声は出さなくても良いからね?」
柔「テレビで見たのを一度やってみたかったの~。」
耕作「滋悟朗さんだね?」
柔「あなた、良く分かったね?」
耕作「時代劇でこう言うのが有るのは知ってたから、時代劇と言えば滋悟朗さんだし。」
柔「あら、あなたも知ってたんだ。」
耕作「まあ、これ位は知ってたよ?」
柔「あなた?」
耕作「今度は何だい?」
柔「顔が綻んでるよ?」
耕作「まあ、嬉しかったからね?こういうのするの。」
柔「あなたも喜んでたのね。」
耕作「否定はしないよ、実際に喜んでたから。」
柔「じゃあ・・。」
耕作「さっきも言ったじゃない?」
柔「あ、そうだった。」
耕作「普通にゆっくり回ってくれるだけで良いから。」
柔「何だかつまんないな~。」
耕作「皆が居なかったらやっても良いけど、今日はね?」
柔「ほんと~?じゃあ、皆居ない時にして貰おう~っと。」
耕作「その為だけに着物を着るつもりなの?」
柔「浴衣でやって貰おうかな~って。」
耕作「さては・・。」
柔「あ、ばれちゃった?」
耕作「実家に行った時にしようと思ったんでしょう?」
柔「えへ、そうなの~。」
耕作「残念だね~。」
柔「え?ご実家の民宿って浴衣じゃ無いの?」
耕作「民宿だからね?旅館なら置いてるけど民宿はそう言うの置いて無いんだよ?」
柔「な~んだ~、残念。」
柔「あ、そうだ・・。」
耕作「その為だけに浴衣を持って行かなくて良いから。」
柔「え~、楽しみにしてたのに~。」
耕作「もうね~、君って子は~。」
柔「あなたはそう言うの嫌いじゃないでしょう?」
耕作「うん、嫌いじゃないよ、それに俺を喜ばせたくて、そうしようとしてるのも分かってる。」
柔「じゃあ、良いじゃない~。」
耕作「前も言ったけど、君が居るだけで十分喜ばしい事なんだから、わざわざそんな事を
しなくて良いんだからね?」
柔「うふ、そうだったね、分かった~、普通にしてるね。」
耕作「うん、そうしてくれると俺も嬉しいから。」
柔「あなたが嬉しいなら、あたしも嬉しいから、もう変な事はしないね。」
耕作「そうしてね。」
柔はゆっくり回り始めて耕作は帯を緩めに巻いていった。
耕作は帯を巻き終えるときれいに纏めてベッドの上に置いた。
柔の着物は前の方が半分開けた状態になっていた。
耕作「帯を取るとそうなるんだね、着物って。」
柔「だって、ボタンが付いてる訳じゃ無いし、ただ巻いてるだけって感じ?」
耕作「そう言えばそうか、紐が付いてそれを結んでるだけなんだね。」
柔「うん、これが無かったら完全に開けてるよ?」
耕作「なるほどね~、良く出来てるよね着物って。」
柔「でしょう?それで昔は下着は着けて無かった訳なんだし。」
耕作「あ~、その先は言わなくても分かるから。」
柔「うふふ、あなたも分かったみたいね。」
耕作「うん、良く分かったよ、実物が目の前に有るんだから。」
柔「そんな~、あたしを物扱いだなんて~。」
耕作「いやいや、君を実物って言ったんじゃないから、着物を実物って言ったんだよ?」
柔「あ、そうなんだね。」
耕作「俺が君を物扱いする訳が無いじゃない?」
耕作「こんなに可愛くて愛らしい奥さんを出来る訳無いでしょう?」
柔「えへ、嬉しいな~、そう言われると。」
耕作「着物は自分で脱ぐ?」
柔「ここまでやったら、最後までして欲しいな~。」
耕作「柔?」
柔「な~に~?あなた。」
耕作「その最後って着物を脱がす事だけだよね?」
柔「あは、先に言われちゃった~。」
耕作「ダメだよ?この後練習も有るし、第一明日試合なんだから。」
柔「分かってるよ~、冗談だよ?」
耕作「君の本心は分かってるから、向こうに行くまでは我慢してね?」
柔「ばれてたか・・。」
耕作「それはね~、向こうでも何度も経験してるからね?」
柔「それ聞いて、何だか、アメリカに居た時のやり取りを思い出しちゃった。」
耕作「そうだね、似た様な事が何度も有ったね。」
耕作「で、着物はどうするのかな?」
柔「お願~い。」
耕作「じゃあ、こっちに来てね、脱がすから。」
柔は耕作の前に立った。
耕作は柔の着物を脱がせるときれいに畳んでベッドの上に置いた。
耕作「今着てるのは何て言うの?」
柔「あ、これは長襦袢って言うんだよ。」
耕作「そうなんだ、いきなり着物を着る訳じゃ無いんだね。」
柔「着物を肌に直接当てると擦れて痛いからじゃ無いのかな?」
耕作「確かに、着物自体はそこまで柔らかくは無いから、そうなるんだね。」
耕作「柔、その格好、凄くセクシーだよ。」
柔「ほんと~?このまま居ようかな?」
耕作「さすがにそれだけで下に下りていったら不味くない?」
柔「だよね~、じゃあ、これもお願~い。」
耕作は柔の長襦袢を脱がせた。
耕作「相変わらず、きれいだよ。」
柔「うふ、ありがとう~、あなた。」
柔「じゃあ、着る服を取ってくるね。」
柔は下着姿のまま着替えを取りに行くと耕作に渡した。
耕作「これで良いんだね?」
柔「うん、それで良いよ。」
耕作は柔に服を着せた。
耕作「もしかして、これって。」
柔「分かったみたいね、そうなの以前試合後の宴会で着てた服だよ。」
耕作「向こうに居る時も着た事有ったよね?」
柔「うん、道場に行くのに着たよ、こっちでも一回着たけど。」
耕作「スカートじゃ無いから安心出来るな~。」
柔「ありがとう~、あなた、心配してたのね。」
耕作「他の人に柔のあられもない姿を見せるなんて絶対に出来ないからね。」
柔「うふ、そうなのね、嬉しいな~。」
耕作「足袋は自分で脱ぐよね?」
柔「これ位は自分でするから。」
柔「あなたは着替えないの?」
耕作「そうだね、このままでも良いけど、汚すと大変だから着替えるよ。」
柔「あたしがやろうか?」
耕作「じゃあ、上だけお願い。」
耕作は羽織袴を脱ぐとズボンを穿いてシャツを柔に渡した。
柔は耕作にシャツを着せてボタンを留めていった。
柔「はい、終わりだよ~。」
耕作と柔は羽織袴を丁寧に畳んだ。
柔「入れようか?」
耕作「うん、頂こうかな。」
柔がコーヒーを2杯入れている間に耕作はベッドに座った
柔はコーヒーの片方を渡しながら寄り添って座った。
柔「結婚式が無事に終わった記念のコーヒーだよ~。」
耕作「思い出しながら飲むね。」
柔「しかし、式で事前打ち合わせ無くて、ぶっつけ本番で臨んだのって、
あたし達位じゃないのかな?」
耕作「そうかもしれないね。」
耕作「他の人達は事前に説明は受けてるだろうけど、俺達はその説明も無かったしね。」
柔「そうだね、誓詞の読み上げも、その時に聞いたしね。」
耕作「でも、君も言ってたけど何とかなったから良いんじゃない?」
柔「あたしもそう思うよ。」
柔「後は披露宴だけか~。」
耕作「そうだね、でも、後半は宴会になるんじゃないかな?」
耕作「披露宴らしいのは最初だけかもしれないね。」
柔「うふふ、また途中で抜け出す?」
耕作「そうしようか、君も俺も飲まないんだから、それで良いと思う。」
柔「飲む方はおじいちゃんに任せておけば大丈夫だからね~。」
耕作「うん、滋悟朗さんが盛り上げてくれるだろうね。」
柔「まだなのかな?」
耕作「もうそろそろのはずだけど、遅いね。」
柔「まあ、おかあさんが呼びに来てくれるだろうから心配はして無いけど。」
耕作「玉緒さん、大変だろうね。」
柔「そうだよね~、富士子さんや他の方も手伝ってくれてるだろうけど、
おかあさんが全体の流れを取り仕切ってる感じだもんね。」
耕作「旅行から戻ったら、また孝行しないとだね。」
柔「うん、そうしないといけないと思うよ。」
柔「そう言えば、明日試合が終わってから昼食になるよね?」
耕作「時間的にはそうなるだろうね。」
柔「また、外食する?」
耕作「そうしようか、この前の所ならここに近いから良いと思う。」
柔「その分、おかあさんの負担も減らせるから良いよね?」
耕作「そっちの効果も有ったね、それなら尚更、外食にした方が良いね。」
柔「明日出掛ける前に話しておくね。」
耕作「うん、そうしてね。」
柔「ちょっと待っててね。」
耕作「急にどうしたの?」
柔「お化粧落としとこうかと思ったの。」
耕作「別に今落とさなくても良いんじゃない?披露宴が終わってでも良いと思うけど。」
柔「じゃあ、口紅だけ落としておくから。」
耕作「なるほど、そう言う事か。」
柔「あ、また、分かっちゃったの?」
耕作「結婚式が始まる前に君がそう言ってたから。」
柔「そうだったね、取敢えず落とすね。」
耕作「うん、良いよ。」
柔はティッシュで口紅を拭いて落とした。
耕作「へ~、そうやって落とすんだね。」
柔「洗面所で落とす場合も有るけど、急ぐ時はこうするかな?」
耕作「なるほどね~、君と居ると色々な事が分かって楽しいよ。」
柔「お役に立てて光栄至極に存じます。」
耕作「あはは、いつもの言い方だね。」
柔「うん、そうだよ~。」
柔は口紅を落とし終わると簪を抜いて髪を解かした。
柔「さてと、準備OK~。」
耕作「何の準備なのかな?」
柔「今から始まる二人だけの儀式だよ?」
耕作「やっぱり、そうだったんだね。」
柔は耕作に寄り添って座り、耕作を見上げると目を瞑った。
耕作もそれに応えて柔の肩に手を掛けて優しく長いキスをした。
柔「うふ、素敵なキス、ありがとう~。」
耕作「柔も相変わらず素敵な表情をありがとうね。」
耕作は柔を抱き寄せると頭を撫で続けた。
柔も耕作に抱き付いて撫でられるのを楽しんでいた。
柔「あなたもこうしたかったって言ってたね。」
耕作「うん、君の髪の毛って撫でてると気持ち良いから、こうするのは好きだよ。」
柔「そうだったのね、もっと撫でて良いよ?」
耕作「では、遠慮しないでそうさせて貰うね。」
耕作は柔の頭を更に撫で続けた。
柔は耕作の肩に頭を預けて撫でられるのを気持ち良さそうにしていた。
柔「気持ち良過ぎて寝てしまいそう。」
耕作「そんなに気持ち良いんだ。」
柔「あたしが寝る時、あなたに撫でられてると直ぐに寝てたでしょう?」
耕作「そう言えば、そうだったね。」
柔「気持ち良くなってうっとりしてるうちに寝てたの。」
耕作「そんな風に感じてたんだ。」
柔「うん、そうなの。」
柔「勿論、あなたの撫で方が上手なのも有ると思うよ。」
耕作「俺、柔しか撫でた事が無いのに上手なの?」
柔「うん、あたしはそう思ってるよ。」
耕作「向こうに居る時から撫でてたからかな?」
柔「そうかも、でも、向こうで撫でられてる時も今みたいに気持ち良かったんだから。」
耕作「へ~、そう言えば向こうでも癒されるって言ってたね。」
柔「うん、凄く癒されてた。」
階段から足音が聞こえてきた。
柔「おかあさんかな?」
耕作「富士子さんも来た事が有ったね。」
柔「そうだったね。」
邦子「柔ちゃ~ん、耕作~、入っても良い?」
柔「邦子さんだ、どうぞ、入って良いよ~。」
柔と耕作は慌てて抱擁を解いた。
邦子「柔ちゃんのおかあさんが呼んできてって。」
耕作「何で加賀君を寄越したんだろう?」
邦子「さあ?何でか分からないけど、呼んできてって。」
柔「邦子さん、あなたのお陰でここまで来る事が出来て感謝してます。」
邦子「柔ちゃん、改まって言われると照れちゃうよ。」
柔「ううん、邦子さんのあの時のあの言葉が無かったら、こうなってたかどうか
分からなかったもの。」
柔「それに、授賞式の時も教えてくれたじゃない?耕作さんの渡米の事。」
邦子「私は耕作の気持ちを大事にしたかったの、あなたの事を想ってるのに
私がそれを邪魔する訳にはいかないって思ったから。」
邦子「だから、あなたにハッキリして貰いたくて、あの時、あんな風に言ったの。」
邦子「あなたの想いを耕作にハッキリと伝えて欲しかったから。」
邦子「でも、今こうなってくれて、あの時の私の行動は間違っていなかったって
確信出来て本当に良かったって思ってる。」
邦子「二人とも幸せになってよ、私の為にもそうなってね。」
柔「やっぱり、そうだったのね、邦子さん、あなたの思い受け取りました。」
柔「あなたの為にも、あたし達は幸せにならないといけないって、改めて思いました。」
柔「邦子さん、ほんとにありがとう。」
邦子「柔ちゃんで本当に良かったって思ってるよ、耕作のお嫁さんが。」
耕作「まさか、玉緒さん、ここまで知ってて加賀君を寄越したんじゃないだろうな。」
柔「あっ。」
耕作「柔?何か思い当たる事でも有るの?」
柔「うん、あなたと邦子さんが短大にバイクで来た事有ったでしょう?」
邦子「あ~、そう言えば何度も行った事有った。」
柔「多分、最初に来た時の事だと思うんだけど、あたしがその事を
おかあさんに話した事が有ったの。」
柔「その時に嫉妬してる感じで話したから覚えていたのかも。」
耕作「なるほど、それなら納得出来るな。」
柔「おかあさんの感って当たるのね。」
耕作「そうだね。」
邦子「私が来て良かったって事なのかな?」
柔「うん、来てくれて今のお話が出来てほんとに良かったって思ってる。」
邦子「それなら良かった~。」
耕作「加賀君は先に下りてて良いよ、俺達も直ぐに下りて行くって玉緒さんに伝えてね。」
邦子「うん、分かったわ、必ず伝えるから。」
邦子は下に下りて行った。
柔「また、おかあさんに感謝しないといけない事が出来たね。」
耕作「そう言う事だね、しかし、玉緒さん恐るべしだよな~。」
柔「あたし達って、おかあさんの掌の中でウロウロしてただけなのかも?」
耕作「そうかもしれないけど、俺達にとってはそれで良かった事になるんじゃない?」
柔「そうだね、今こうしていられるんだから、それで良かったんだよね。」
耕作「それじゃ、下りようか。」
柔「うん、そうしましょう。」
二人はポットとカップを持って下に下りて行った。