柔と耕作(松田)の新婚日記 8日目 (午前編第3部)
文書量(文字数)が膨大になった為、9分割で表記します。
下に下りた二人は玄関を出ると前に立って来訪者を待つ事にした。
柔「誰が最初に来るかな?」
耕作「最初に来るのはマスコミ関係かも知れないね。」
柔「あ、そうか、道場内にカメラを設置しないといけないんだよね。」
耕作「うん、場所決めもしないといけないしね。」
耕作「これは早い者順になるから、我先に来そうだけどね。」
柔「ここで撮影しても良いかって聞かれたらどうするの?」
耕作「そうだね、ここで撮影が始まると来る人とごっちゃになって混雑するから
結婚式後に時間を取ってしますからって断ろうか?」
柔「それが良いね、確かに入り難くなるとここが混雑するね。」
誰かが木戸を潜って来た。
耕作母「あんれま~、二人ともよう似合うとるな~、お似合いだで。」
柔「お父様、お母様、おはようございます。」
耕作「親父、お袋、おはよう~。」
耕作父「二人ともおはよう~。」
耕作母「あ、おはよう~。」
柔「中へどうぞ、皆、居間に居ますから。」
耕作母「すまんな~、そんじゃ、失礼して中で待っとくとするか。」
柔「はい、どうぞ、後程、伺いますので。」
耕作の両親は玄関を入ると居間に向かった。
柔「あなたのご両親が最初だったね。」
耕作「そうだね、距離的に見れば妥当かな?」
柔「うん、一番近くだもんね、泊ってる場所は。」
柔「あっ、あなた?原稿は?」
耕作「ここに入れてるよ。」
耕作は袖を振ってみせた。
柔「なるほど、そこに入れてたのね。」
柔「着物って便利よね~。」
耕作「うん、そう思うよ、色んな場所に物が仕舞える。」
柔「入れ過ぎると大変だけど。」
耕作「確かに、でも、そんなに入れる物なんか無いから。」
柔「そう言えばそうね。」
柔「さて、次はどなたが来るかな~?」
耕作「富士子さん達じゃないかな?」
柔「あ~、あたしもそう言おうとしてたのに~。」
耕作「いやいや、別に当てっこしてる訳じゃ無いんだから。」
柔「まあ、そうなんだけどね?ちょっと悔しかったから。」
耕作「そう言えば、柔って負けず嫌いなのかな?」
柔「どうなんだろう?あたし自身はそう思った事無いんだけど。」
耕作「今はそうでもないけど、以前の君って勝気だった様な気がするけど。」
柔「う~ん、あ~、そう言えば短大まではそうだったかも。」
耕作「だから、あれなんだ。」
柔「あれって?」
耕作「滋悟朗さんの策略にまんまと嵌まってた。」
柔「あ~、そう言えばそうだった。」
柔「くそ~、おじいちゃんめ~。」
耕作「これこれ、着物着た乙女の言う言葉じゃ無いよ?」
柔「もう、乙女じゃ無いも~ん。」
耕作「あ~、開き直ったな~。」
柔「うふふ、あなたのお陰だね?」
耕作「お陰になるのかな?」
柔「あなたのせいって以前言って怒られたから、こう言った方が良いかなって。」
耕作「でも、あれは怒った訳じゃ無いよ?」
柔「うふ、分かってるよ~。」
耕作「あ~、ま~た、揶揄ってるね?君は。」
柔「揶揄ってなんかいないもん。」
富士子「あ~、あ~、相変わらず、仲が良いわね~。」
柔「あ、富士子さん、おはよう~、いらっしゃ~い。」
耕作「見られてしまったか~、いらっしゃい、おはよう~。」
花園「本当に別な空間に感じる、富士子さんが言ってた通りだ。」
柔「あ~、富士子さん、この前の事言ったのね?」
富士子「うん、あなた達を見習おうと思って、あの時の状況をそのまま話したのよ?」
柔「そう言えば、協力して貰うって言ってたね。」
富士子「そうなの、だから、最初から話さないと分からないと思って。」
耕作「それなら仕方ないね、普通に説明しても分からないだろうから。」
富士子「うん、あの状況は全部話して初めて理解出来ると思うわ。」
花園「そう、俺も初めから事情を聴いてやっと理解出来た。」
柔「そうだったんだ、じゃあ、仕方ないか。」
柔「あ、皆は居間で待機してるから、富士子さん達もそこへ行ってね。」
耕作「その時に玉緒さんからフクちゃんを寝かせる場所を教えて貰ったら良いと思うよ。」
富士子「あ、そうね~、花園さん行きましょうか。」
花園「そうだな、柔さん、松田さん、また、後程。」
柔「は~い、またね~。」
耕作「後でね。」
花園と富士子は玄関に入ると居間へ向かった。
柔「あ~、びっくりした~。」
耕作「ふふふ、話に夢中になり過ぎて周りを見て無かったね。」
柔「富士子さん、多分、外で話声を聞いて、そっと入って来たんだと思うよ。」
耕作「そうだろうね、木戸が開く音が聞こえなかったから。」
柔「次はあなたの会社の方かな?」
耕作「うん、そうだと思う、電話で直ぐ出るって言ってたから。」
柔「編集長さんには色々とお世話になったよね。」
耕作「そうだね、帰国してから、ずっと頼りっぱなしだったし、報道に関しては。」
柔「でも、さすがは、あなたの上司ね、全て滞りなく済ませて頂いたもの。」
耕作「まあ、渡米前までは俺が無茶ばかりしてて、かなり迷惑掛けてたから。」
耕作「編集長は何も言わないけど、俺がユーゴに行った事を黙認してくれてたし。」
柔「そうだったんだ、あなた、あれって黙って来てたの?」
耕作「うん、あの時俺は実家に帰っててユーゴに行く事にはなって無かったんだよ。」
柔「そんな事になってたのね、あたし全然知らなかった。」
耕作「君がユーゴに行った後だったからね。」
耕作「親父が倒れたって電話が有って、慌てて実家に戻ってたんだ。」
柔「え?お父様、倒れたの?今は大丈夫なの?」
耕作「ああ、今は以前ほどでは無いけど大丈夫だよ。」
柔「あ~、良かった、無理してこっちに来てたなら悪いな~って思っちゃった。」
耕作「ありがとうね、親父の心配してくれて。」
柔「だって、あたしにとってもお父様なんだから、当然だよ?」
耕作「柔のそういうとこ、大好きだよ。」
柔「えへ、ありがとう~。」
柔「あたしもあなたの事、大好きだよ。」
柔「でも、何で、わざわざユーゴまで来たの?看病とかしなくて良かったの?」
耕作「それはね、お袋がお前のやりたい事をしなさいって、
わざわざ旅費まで出してくれたんだ。」
柔「そうだったのね、お母様には感謝しないといけないね。」
柔「あなたが来てくれなかったら、あたしは確実に負けてたんだから。」
耕作「確実かどうかは分からないけど、俺が行った事で、あの一本背負いが出来たなら
苦労して行った甲斐が有った訳なんだね。」
柔「前も言ったけど、あなたの存在が有っからこそ、あの一本背負いが出来たと思ってるよ。」
耕作「そう言って貰うと、行って良かったって思えるよ。」
柔「あたしも良かったって思ってるよ。」
柔「あたしに取ってのあなたの存在の意味を確認出来た訳だから。」
柔「あの時、あたしが一歩踏み出していれば良かったのよね。」
耕作「ううん、あの時点では、あれで良かったと思うよ、まだ君にはオリンピックって言う
目標が有った訳だからね。」
柔「確かにそうなんだけど、ハッキリさせるのが怖かったのは、あたしもだったのかも。」
柔「あの時点で、あたし達の関係を失う事は、あたしに取って柔道を続ける事が出来なくなる
かもしれないって言う思いが有ったのかも、だから言えなかったんだと思うの。」
耕作「柔もそう思ってたんだね、その時から俺の事は必要だと思ってくれてただけでも、
ありがたい事だと思うよ。」
柔「うふ・・、残念。」
耕作「その残念は分かるよ。」
柔「えへ、分かっちゃった?」
耕作「うん、俺もそうしたいと思ってるから。」
柔「うふふ、あなたもそう思ってくれてたのね。」
柔「あ、車が前で停まった。」
耕作「今度はちゃんと聞こえたんだね。」
柔「うん、話の途中じゃ無かったから聞こえたよ。」
木戸が開いて編集長と鴨田、加賀が入って来た。
柔「編集長さん、おはようございます。」
耕作「編集長、おはようございます。」
編集長「おはよう~、おぉ~、二人とも良く似合ってるな~。」
柔「鴨田さん、邦子さん、おはよう~。」
耕作「鴨田、加賀君、おはよう~。」
鴨田「おはようございます、二人とも良く似合ってるっす。」
邦子「おはよう~、きゃ~、二人とも~、素敵~。」
邦子「柔ちゃん、ようやくここまで漕ぎ着けたのね~。」
柔「邦子さん、ありがとう~。」
柔「あ、皆、居間で待って貰ってますので、そちらの方へどうぞ~。」
柔「玄関を入って左手の方になりますから。」
編集長「お~、そうか、それじゃ、早速行かせて貰うよ。」
耕作「あ、編集長、これを。」
耕作は原稿を袖から出して編集長に渡した。
編集長「あ~、忘れる所だった、すまんな、披露宴が終わったら
FAXしておくから安心してくれ。」
柔「よろしくお願いします。」
三人は玄関に入り居間へと向かった。
柔「あなた?」
耕作「うん?どうしたの?」
柔「今日は忘れなかったのね。」
耕作「あ~、原稿の事だね、さすがに今日は覚えていたよ。」
耕作「さっき、柔が聞いてくれてたからね。」
柔「そうなのね、聞いといて良かった~。」
耕作「う~。」
柔「うふふ、頭を撫でたいと思ったんでしょう?」
耕作「あはは、分かってたんだね。」
柔「あたしも撫でて貰いたいって思ったからね~。」
耕作「着替えの時が大変な事になりそうだ。」
柔「え?変な事をしたくなったの?」
耕作「ちが~う、変な事じゃなくて大変な事って言ったよ?」
柔「あ~、大変ね、びっくりした~。」
耕作「いやいや、俺の方がびっくりしたよ?」
柔「あたしって勘違いも多いよね。」
耕作「柔は結構早とちりだね、向こうに居る時からだったけど。」
柔「ね~、早とちりって勘違いとは違うの?」
耕作「似た様な事だけど、早とちりって言うのは早合点して間違う事で、勘違いは
間違って思い込む事なんだよ。」
柔「早合点ってどういう意味なの?」
耕作「早合点って言うのは良く聞いたり確かめたりしないうちに分かったつもりになる事だよ。」
柔「なるほど、そう言えば、あたし、あなたに確かめたりして無かったね。」
柔「あなたって、さすがは新聞記者してるだけは有るのね~。」
耕作「ありがとうね。」
耕作「だから、柔のは早とちりして勘違いしてるって事になるのかな?」
柔「う~ん、良く分かんな~い。」
耕作「えっとね、良く聞いたり確かめないうちに分かったつもりになって間違って、
それを思い込む事になるのかな?」
柔「あ、そう言う事なんだね、それって悪い事なの?」
耕作「う~ん、一般的に見れば悪い事なんだけど、柔の場合は可愛いから良い事かな?」
柔「えへ、そうなんだね、良かった~。」
柔「あ、車がいっぱい停まったよ?」
耕作「マスコミ連中が来たのかも。」
木戸が開いてカメラを手にしたマスコミ達が大勢雪崩れ込んで来た。
マスコミ達「お~、おはようございます。」
柔「おはようございます。」
耕作「本日はお忙しい中、良くおいで下さいました。」
マスコミ達「それでは道場の方に失礼させて貰います。」
マスコミ達は足早に道場へ向かった。
柔「そんなに慌てなくても、まだ時間は有るのに。」
耕作「さっき、言ったけど、場所取りで慌てているんだと思うよ。」
柔「あ、そう言ってたね。」
柔「でも、カメラクルーだけだった様な気がするけど。」
耕作「別れて来るんだろうね、記者連中は式が終わってからの出番になるから、
式の最中に来るつもりなんじゃないかな?」
柔「なるほど、式は撮影班が映すから、あたし達の会見だけに来る感じになるんだね。」
耕作「うん、そうだね。」
柔「ところで、社長、遅いね。」
耕作「あ、そう言えば、まだお見えになって無いね。」
柔「後、富士子さんのご両親もまだ来ない。」
耕作「富士子さんの両親の実家は遠いからね。」
耕作「社長は真っ直ぐここには来れないでしょう?」
柔「うん、一回出社してから来る事になると思うよ。」
柔「まあ、まだ時間は有るから大丈夫だけど。」
耕作「そうだね、まだ時間に結構余裕有るね。」
家の前に車が停まる音がした。
柔「誰かな?」
耕作「誰だろうね。」
木戸を潜って富士子の両親が入って来た。
耕作、柔「おはようございます、お待ちしていました。」
富士子母「おはようございます、まあ~、良く似合ってますわ~。」
富士子父「おはようございます、わざわざのお出迎えありがとうございます。」
柔「さあ、中へどうぞ、富士子さん達も、もう来て待ってますから。」
富士子母「まあ、そうでしたのね、あなた、行きますわよ。」
富士子父「分かったよ、それでは、また、後程。」
柔「はい、後程、お伺いしますので。」
耕作「どうぞ、お入り下さい。」
富士子の両親も玄関に入ると居間へ向かった。
柔「後は、社長だけか~。」
耕作「祐天寺監督は?」
柔「あ~、忘れてた~。」
耕作「今、一番お世話になってる人を忘れちゃいけないよ?」
柔「うん、そうだよね~、あたしったらダメね~。」
耕作「まあ、そう言うとこも、君の可愛さでも有るけどね。」
柔「え~、そうなの~?」
耕作「うん、完璧じゃ無いのがね、可愛いと思うんだ。」
柔「何か釈然としないけど、可愛いって言われてるなら良いかな?」
耕作「釈然って言葉知ってるんだ。」
柔「あ~、あなた、あたしの事馬鹿にしてるでしょう?」
耕作「いや、馬鹿にはして無いよ?良くその言葉を知ってたな~って感心してるんだよ?」
柔「それ位知ってるよ?」
耕作「意味は知ってるの?」
柔「もう~、あなたは~、信用して無いのね?」
耕作「ううん、一応確認したかっただけだよ?君の事は信用してるから。」
柔「えっとね~、意味は疑いや迷いが解けてすっきりする事かな?
それの否定形ね、釈然としないって。」
耕作「ほぉ~、さすがは、俺の奥さんだ、良く知ってるね。」
柔「ね~、その言い方だと、なんだか馬鹿にされてる気がするんだけど~。」
耕作「ごめん、ごめん、感心してるんだよ?」
柔「ほんとかな~?」
耕作「ほんとだって、前も難しい言葉の意味を知ってたじゃない?」
柔「あ、そう言えば、向こうに居た時に聞かれた事が有ったね。」
耕作「そうそう、その時も感心してたんだから、今もそうなんだよ?」
柔「それなら良いかな?」
耕作「後、感心してる事は分からない言葉は必ず俺に聞いてくれてる事だから。」
柔「そうだね、分からない言葉は知りたいから、あなたに聞けば分かると思ってる。」
耕作「俺を頼りにしてくれて、ありがとうね。」
柔「うふ、あなたは頼りになるもんね~。」
また、門の前に車が停まる音がした。
柔「今度は誰かな?」
耕作「どっちかなんだろうけど、誰だろう?」
木戸を潜って大きな体の祐天寺が入って来た。
耕作、柔「おはようございます、祐天寺監督。」
祐天寺「おはようございます、お二人でお出迎えですか、ありがとうございます。」
柔「ようこそ、おいで下さいました。」
耕作「皆、居間の方で待っていますので、どうぞ、お入り下さい。」
祐天寺「お~、そうですか~、では、早速行かせて貰います。」
柔「後程、伺いますので。」
祐天寺は勝手を知っているので庭先へ行き居間へ入って行った。
柔「さて、後は社長だけか。」
耕作「そうだね、社長が来たら居間へ行って道場には皆で一緒に行く事になるのかな?」
柔「あたし達は後から入る事になると思うよ。」
耕作「あ、そう言えば式場でも新郎新婦は後からの入場だったね。」
柔「うん、多分、同じやり方だと思うから。」
柔「あ、車。」
耕作「来たかな?」
柔「かも?」
木戸が開いて社長が入って来た。
耕作、柔「おはようございます、ようこそおいで下さいました。」
社長「おはよう~、お~、お二人とも、大変、似合っておりますぞ~。」
耕作、柔「ありがとうございます。」
社長「柔さん、出掛けに聞いたんだが、ツアーの申し込みをしたんだね?」
柔「あ、報告が行ったんでしょうか?」
社長「うむ、それでだな・・。」
柔「あ、費用の件はあたしから是非にとお願いしたので、そのままでお願いします。」
社長「私が言おうとした事が良く分かったね。」
柔「はい、多分、そうかと思いましたので。」
柔「それで、あたしだけが余りにも優遇されると皆さんに余り良い影響が出ないと
思いましたので、そうさせて頂いた次第なんです。」
社長「そこまで考えてくれていたのか。」
社長「うむ、分かった、君が言う通り、そのままにしておくとするか。」
柔「ご配慮、ありがとうございます。」
耕作「それでは、ご一緒に中へ参りましょう、皆、もう揃っていますので。」
社長「お~、そうか、皆を待たせて申し訳ない、早速行くとしようか。」
柔「どうぞ、お入り下さい。」
柔と耕作は社長を連れて玄関に入り、居間へ案内しながら一緒に向かった。
柔「大変、お待たせしました、社長もお見えになったので、道場へ向かいましょうか。」
社長「皆さん、お待たせして誠に申し訳ない。」
滋悟朗「それは気にせんでええぞ、それより、よう~来てくれたの~。」
玉緒「ようこそ、おいで下さいました。」
玉緒「柔と耕作さんはここで待ってて下さいな。」
柔「あ、やっぱり後から入るのね。」
玉緒「そうね、新郎新婦は後からの入場になるから。」
滋悟朗「大人しく待っとれよ。」
柔「うん、ちゃんと待ってるから、心配しないで、おじいちゃん。」
全員「先に行ってます。」
柔「後から参りますので。」
皆は道場に向かった。
耕作と柔は居間に座って待つ事にした。
柔「凄く大勢になってたね。」
耕作「そうだね、でも、披露宴は今以上になるからね?」
柔「そうだよね~、どうなる事か。」
耕作「玉緒さんが全て手配してくれてるから心配しなくて良いんじゃないかい?」
柔「うん、段取りとかの心配はして無いよ、大勢になって収拾がつかなくならないかを
心配してるだけだから。」
耕作「まあ、俺達の着替えが終わってからは、そうなりそうだけど。」
柔「だよね~、以前ここでやった時もそうなってたよね~。」
耕作「うん、その前に俺達は抜け出して話してたけど。」
柔「主賓そっちのけで飲み会になってたもんね。」
耕作「今回もそうなるんじゃないかな?」
柔「多分、そうなると思う、それでも、あたしは良いと思ってるけど。」
耕作「俺もそう思ってるかな?来てくれただけでも、有り難い事だと思うから。」
柔「うん、その通りだよね、あたしも有り難いと思うよ。」
柔「披露宴に来る方達も出迎えた方が良いのかな?」
耕作「そこまではしなくても良いんじゃないかな?」
柔「そうなの?」
耕作「式に出る人だけでも、あれだけ時間が掛かったんだよ?」
柔「あ、そうか、また、かなりな時間待たないといけないんだよね。」
耕作「うん、余り君を疲れさせたく無いって思ってるから。」
柔「ありがとう~、あなた、そこまで気を使ってくれて。」
庭先から呼び声が聞こえた。
幸作「すみませ~ん、撮影で伺いました~。」
庭先に写真館の幸作が立っていた。
柔は庭先に出て応対した。
柔「あ、すみません、もう式が始まるので、皆、道場に行ってますから。」
幸作「あ、そうでしたか、では、私も道場の方に行きますので。」
柔「はい、おとうさんも居ますので、お会いして下さい。」
幸作「あ、そうですか、では、そうさせて貰います。」
柔「はい、後で参ります、よろしくお願いします。」
幸作「お任せ下さい、ちゃんと撮影しますから。」
幸作「では、失礼します。」
柔「はい、失礼します。」
幸作は撮影機材を持って道場へ向かった。
柔は居間へ戻ると耕作に寄り添って座った。
柔「うっかり、忘れてた~。」
耕作「そうだったんだね。」
柔「あなた、呆れてない?」
耕作「ううん、さっきも言ったけど、それが柔の持ち味だから安心して良いよ。」
柔「う~ん、良いのかな~?」
耕作「それも君の可愛さの一つなんだから。」
柔「そうなんだ、あなたがそう言うなら、そう思う事にするね。」
耕作「俺はね?」
柔「うん、どうしたの?」
耕作「柔には柔道の事は完璧であって欲しいと思ってるけど、普段の生活まで完璧に
しなくても良いと思ってるんだよ?」
柔「何で、そう思ってるの?」
耕作「君を精神的には疲れさせたくないと思ってるから。」
耕作「つまり柔道で緊張してるだけじゃなくて、普段の生活まで緊張させたく
無いって言う事なんだ。」
耕作「両方で緊張しっぱなしだと、君が疲れ切ってしまう事になるじゃない?
そうさせたく無いんだ。」
柔「あなた、ありがとう~。」
柔は思わず耕作に抱き付くと耕作も柔を抱き締めた。
柔「う~。」
耕作「ふふふ、もう少しの我慢だから。」
柔「うん、我慢するね。」
耕作「俺も思わず君を撫でそうになってた。」
柔「うふふ、そうだったのね。」
玉緒「まあ、まあ、お熱い事だわね~。」
柔と耕作は慌てて抱擁を解いた。
柔「あ、おかあさん、驚かさないでよ~。」
玉緒「驚かすつもりじゃ無かったけど、いつ声を掛けようかと思ってたから。」
柔「そうだったのね、ごめんね~。」
耕作「そろそろですか?」
玉緒「そうだわね、そろそろ行かないと、と思って呼びに来たのよ。」
柔「なるほど、それじゃ、行こうか?あなた。」
耕作「そうだね。」
玉緒「それじゃ、二人とも行きましょうか。」
耕作、柔「はい。」
耕作と柔は玉緒の後を付いて道場へと向かった。