柔と耕作(松田)の新婚日記 7日目 (午前編第1部)
文書量(文字数)が膨大になった為、8分割で表記します。
帰国七日目。 (柔と耕作の長い長い一日(七日目) (結婚式まで後一日)
耕作は言い知れぬ不安に駆られ目を覚ました。
耕作「(う~ん・・、何を不安に感じたんだ。)」
耕作「(明日の事じゃ無いよな、明日は流れに身を任せるだけなんだから。)」
耕作「(今日の事でも無さそうだけど。)」
耕作「(まさか、柔の身に何かが・・。)」
耕作は居ても立ってもいられなくなって起き上がると
そのまま階下へ下りて行った。
柔「あ、あなた、どうしたの?」
突然、柔に声を掛けられて耕作はその方向を見た。
耕作「あ、柔、何とも無かった?」
柔「え?何とも無かったよ?どうしたの?」
耕作「うん、言い知れぬ不安になって君の事が気になったんだ。」
柔「そうだったのね、あたしは大丈夫だよ?いつも通りに練習も終わったから
今から上に行こうとしてたよ。」
耕作「じゃあ、上に行こうか。」
柔「うん、あなたこそ大丈夫なの?」
耕作「うん、俺は何ともないから。」
二人はそう話しながら2階の柔の部屋に入った。
柔「あなた、座ってて、今コーヒーを入れるから。」
耕作「うん、お願いね。」
耕作は不安の事を考えながらベッドに座った。
柔はコーヒーを2杯入れると渡しながら耕作にキスをして寄り添って座った。
耕作「目覚めのキスもありがとうね。」
柔「あなた、ほんとに大丈夫?」
耕作「うん、何であんなに不安になったのか分からないけど、俺は大丈夫だよ。」
柔「ね~、あなた?」
耕作「何だい?柔。」
柔「あなたってお仕事好きなのね、それ程不安になる位に。」
耕作「え?言ってる意味が良く分からないんだけど。」
柔「うふふ、あなたの不安、多分、原稿を書いて無いからじゃないの?」
耕作「あ~、そうだった~、昨日は話に夢中になって何もしなかった~。」
柔「ね?そうだと思ったんだ、今話を聞いて。」
耕作「柔は良くそれが分かったね~。」
柔「それはね~、昨日から書いて無いの知ってたし、いつ書くのか気になってたからかな?」
耕作「柔にはやっぱり助けられるね、こうやって。」
柔「さっき、あたしの事を気に掛けてくれて嬉しかったよ。」
柔「だから、お互い様じゃないかな?」
耕作「そうかな?」
柔「そうだよ、あなたはあたしを気に掛けてくれた、あたしはあなたが原稿を
書くのを気に掛けてた。」
耕作「あ~、そう言う事なんだね。」
柔「うふふ、そう言う事なの。」
柔「前から言ってる、どちら、も、だよ?」
耕作「そうだね、君の言う通りだね。」
柔「それで不安の元の原稿はどうするの?あなた。」
耕作「朝御飯が終わって書いても良いかい?」
柔「うん、それで良いよ、今からだと起き抜けで頭も回り難いでしょうから。」
耕作「そう思うよ、今からは直ぐは無理。」
柔「うん、分かった~。」
柔「今日のお昼前から慌しくなるね。」
耕作「そうだよね~、全員揃ったらどうなる事か。」
柔「以前からも言ってた、成る様に成るんじゃない?」
耕作「でも、君は忙しくなりそうだよね。」
柔「あなた、サポート、よろしくお願いしますね。」
耕作「うん、出来る限りサポートするから。」
柔「うふふ、こう言わなくても、あなたはするの分かってるんだけどね~。」
耕作「勿論だよ、お袋にも昨夜釘刺されたし。」
柔「あなた?今日は会社、何時位に行くの?」
耕作「君にも富士子さんにも慌しい思いはさせたく無いから、早めに行こうって思ってるよ。」
柔「9時前の到着位?」
耕作「そうだね、それ位が良いと思う。」
柔「うん、分かった~。」
柔「空港から、ここまではタクシーになるけど、二人の時以外は分乗になるよね?」
耕作「うん、そうなるね、その時は俺と柔で別々に乗らないといけないかも。」
柔「え~、離れ離れになるの~?」
耕作「もう~、分かってて、そう言う事言うんだね。」
柔「えへ、ちょっと言ってみたかっただけだよ~。」
耕作「ふふふ、甘えん坊だね~。」
柔「うふ、甘えん坊は嫌い?」
耕作「ううん、君の言い方が凄く可愛いから好きだよ。」
柔「皆が来たら、こういう事も出来ないから、今のうちにやっておこうって思ってしたの~。」
耕作「柔は色んな事を考えてるよね~。」
柔「そうでもないよ?」
耕作「そうなの?」
柔「うん、あなたも言ってたじゃない?閃きって。」
耕作「あ~、そう言えば言ったね、でも今のは思ってしたって言ってたじゃない?」
柔「うん、今のはね、でも大半が思い付きかな?」
耕作「それも凄いと思うけど。」
柔「あ、そろそろ朝御飯の用意しないと。」
耕作「おっと、もうそんな時間か。」
柔「あなた、下に下りよう?」
耕作「ちょっと、待ってね、着替えるから。」
柔「そのままでも良いんじゃない?」
耕作「いやいや、寝間着のままじゃまずいでしょう。」
柔「裸じゃないんだし良いと思うけど。」
耕作「裸で家をウロウロしてる人なんて居ないと思うけど。」
柔「まあ、そうだよね、普通は。」
耕作「取敢えず、上だけでもシャツに着替えるから。」
柔「うん、お着替えあそばせ。」
耕作は上だけ着替えた。
耕作「それじゃあ、顔を洗ってくるね。」
柔「うん、お台所に居るから。」
二人はポットとカップを持って階下へ下りて行くと
それぞれの場所へ向かった。
柔「今日は何を作ろうかな~。」
玉緒「おはよう~、いつも早いわね。」
柔「おかあさん、おはよう~。」
玉緒「柔、今日は私が作るわよ、あなたはお味噌汁だけで良いから。」
柔「あたしが作っても良いのに~。」
玉緒「今日は晩御飯を手伝って貰うから、良いわよ。」
柔「あ、そうか、うん、お味噌汁だけ作るね。」
玉緒「うん、そうしてね。」
二人は朝御飯の仕度に取り掛かった。
そこへ洗面上から耕作がやって来た。
耕作「玉緒さん、おはよう~。」
玉緒「おはよう~。」
柔「あなた、そこに座ってて?」
耕作「うん、そうするね。」
耕作がテーブルの椅子に座ると柔がお茶を出した。
柔「これ飲んで寛いでてね。」
耕作「ありがとうね。」
玉緒と柔はそれぞれに朝御飯を作った。
耕作「(この光景も見慣れてきたな~。)」
耕作「(それにしても、二人とも仲が良いな。)」
耕作「(ずっとこんな感じでやってきてたからかな?)」
虎滋朗「皆、おはよう~。」
柔「あ、おとうさん、おはよう~。」
玉緒「虎滋朗さん、おはよう~。」
耕作「虎滋朗さん、おはよう~。」
滋悟朗「おはよさん。」
柔「おじいちゃん、おはよう~。」
玉緒「おとうさん、おはようございます。」
虎滋朗「おはようございます。」
耕作「滋悟朗さん、おはよう~。」
滋悟朗「今日も皆元気で良いのう~。」
柔「もう直ぐ出来るから、居間に行ってて良いよ。」
滋悟朗「そうするかのう~。」
虎滋朗「そうしますか。」
二人は居間へと向かった。
玉緒「さて、出来上がったから持って行きましょうか?」
柔「うん、そうするね。」
耕作「はい、分かりました。」
三人は居間に朝御飯を持って行くと座卓へ並べて行ってそれぞれの場所に座った。
玉緒「それじゃあ、いただきましょうか。」
五人「いただきます。」
虎滋朗「耕作君、今日はどういう予定なんだ?」
耕作「今日は俺の会社に行った後に富士子さん宅を訪ねてきます。」
耕作「その後に空港にマルソーさんとテレシコワさんを迎えに行ってきます。」
虎滋朗「そうか、済まないな、よろしく頼むぞ。」
柔「おとうさん、任せてね、ちゃんとお連れするから。」
柔「あ、おかあさん、あたし達のお昼は良いからね。」
玉緒「そうなの?」
柔「うん、ここに来る途中で皆で食べてくるから。」
玉緒「そうね、時間的にもその方が良いわね。」
柔「後、ここに着いて二人とも挨拶が済んだら、あたしの部屋に居て貰うね。」
玉緒「ここに居て貰っても良いのよ?」
柔「あたし、二人とお話ししたいの。」
玉緒「そう言う事なのね、それなら、そうして良いわよ。」
柔「あ、おとうさんはマルソーさんと何かお話とか有る?」
虎滋朗「あ~、それは挨拶の時にでも話すから気にしなくて良いぞ。」
柔「うん、分かった。」
滋悟朗「昼からここも賑やかになるの~。」
柔「そうだね~、あ、お替りは?」
滋悟朗「頼もうかの~。」
虎滋朗「頼む。」
耕作「お願いね。」
柔「うん、分かった~。」
柔は三人から茶碗を受け取って御飯をよそうとそれぞれに渡していった。
滋悟朗「済まんの~。」
虎滋朗「済まんな。」
耕作「ありがとうね。」
柔「おじいちゃん、おとうさん、二人には試合の件はお昼食べる時に話しておくね。」
滋悟朗「そうぢゃの~、その方が良いの~。」
虎滋朗「柔、そうしてくれると助かるな。」
玉緒「それも大事だけど、ちゃんと耕作さんも紹介なさいね。」
柔「勿論そうするよ、おかあさん。」
耕作「マルソーさんとは面識は無いけど、テレシコワさんとは何度か直接会ってますので。」
耕作「向こうが覚えてるかは分かりませんけど。」
柔「何度も顔を合わせてるから、名前は知らなくても覚えてるんじゃない?」
柔「それにソウルの時は、あなた、コーチの様に声を掛けてたでしょう?」
耕作「あ、そう言えばそうだったね。」
柔「ここに戻ってきて少ししたらジョディー達も来そうね。」
耕作「そうなるだろうね、急かすみたいになるけど、その時に試合の件を話して
カナダの協会に許可を貰う様にしないといけないかな?」
虎滋朗「そうだな、早い方が良いだろうな、明日はそんな事してる暇はないし。」
滋悟朗「恐らくぢゃが、ジョディーの事ぢゃ、許可を既に貰ろうておるやもしれんぞ。」
滋悟朗「ぢゃから、クリスティーも連れてきておるんぢゃあるまいか?」
柔「試合する前提で二人で来てるって事なの?」
滋悟朗「そうぢゃ、クリスティーもお前に敗れておろう?」
柔「うん、でもあれは公式な試合じゃ無かったけど。」
滋悟朗「公式、非公式関係なく武道家としては負けたままというのは心に残るからのう~、
そうであろう?虎滋朗。」
虎滋朗「その通りです、私も山下君に敗れたのはいまだに忘れられませんから。」
柔「おとうさん、山下さんと試合してたんだ。」
虎滋朗「うむ、全国優勝を果たした後に私的な試合をやってな、そこで偶然とはいえ
見事に敗れたんだ。」
虎滋朗「その後、自分には何が足りなかったのか考えていた所に、柔、お前に巴投げで
投げられてようやく悟ったんだよ。」
虎滋朗「自分に足りない物は、お前が持っている天性の才能だという事が。」
滋悟朗「ぢゃが、虎滋朗よ、その時点でお主はそれを見極める力は
持っておったという事ぢゃぞ?」
滋悟朗「並の武道家であるなら、柔の才能を見極める事など出来んという事なんぢゃ。」
滋悟朗「ぢゃからして、虎滋朗、その事はお主が並外れた武道家で有るという証なんぢゃ。」
虎滋朗「おとうさん、その様に言われると少しは気が楽になります。」
滋悟朗「そのお主が修行の旅に出た事は儂としては十分理解しておった、ぢゃから
何も言わずにお主をそのまま行かせたんぢゃよ。」
玉緒「おとうさんはお分かりになっていたんですね。」
滋悟朗「玉緒さん、済まんかったの~、虎滋朗のやりたい様にさせたかたんぢゃ、
武道家としては当然の行動ぢゃと思うたからな。」
玉緒「おとうさん、謝らなくても良いですから、そう言う事を含めて承知の上で、
私は虎滋朗さんと一緒になる事を決めたんですから。」
虎滋朗「済まなかったな、玉緒、お前に苦労を掛ける結果になってしまって。」
玉緒「いやですわよ、今お話しした通り全て承知して虎滋朗さんと一緒になったんですから。」
柔「皆がそれぞれに相手を思って行動してたんだね~。」
耕作「そう言う事だね、だから、柔?君のご家族はバラバラじゃなかったって事なんだよ。」
柔「うん、今のお話を聞いて、あたしもそう思った。」
柔「やっぱり、お話しする事は大事なんだって改めて思ったよ。」
玉緒「朝から濃ゆいお話になりましたけど、お食事はもうよろしいですわね?」
虎滋朗「済まんかったの~、もう良かろう。」
五人「ごちそうさまでした。」
柔「あなた?」
耕作「そうだね。」
玉緒「お願いするわね、私はお洗濯をしてきますから。」
滋悟朗「二人とも、いつも済まんの~。」
虎滋朗「済まないな、玉緒に柔。」
玉緒「虎滋朗さんもおとうさんも、そう言う事は言わなくても良いですわよ、
私達は当然の事をしてるだけですから。」
柔「おとうさん、おじいちゃん、おかあさんの言う通りだよ?」
柔「という事で片付けして来るね~。」
柔と耕作は食器を台所に持って行った。
柔「あなた?そこに座って寛いでてね。」
耕作「うん、いつも済まないね。」
柔「うふ、感謝の言葉だったね、それ。」
耕作「そうだね、向こうでそう言ったからね。」
柔「はい、今日はお茶じゃなくてコーヒーにしたから。」
耕作「ありがとうね、これには何が入ってるんだい?」
柔「うふ、ここに居る全員の思いかな?」
耕作「ふふふ、そうだね、皆の思いが聞けて良かったね。」
柔「うん、初めて聞いた事ばかりだったから驚いたけどね。」
柔「それじゃ、片付け済ますね。」
柔は鼻歌交じりで片付けを始めた。
耕作「さっき、柔が言った様に話す事はほんとに重要だって改めて思った。」
耕作「思いは相手に話して初めて伝わるんだって言う事もね。」
柔「向こうでお話してた、あたし達の事も含めてだね?」
耕作「うん、その通りだよ。」
柔「でも、おじいちゃんも話の振り方が上手だって思った。」
耕作「そうだね、あそこで虎滋朗さんに話を振る事で虎滋朗さんの
思いも聞けた訳だからね。」
柔「更に言えば、おかあさんとおとうさんの仲も取り持ったって事になったからね~。」
耕作「そうだね、改めてって事になるんだろうけど。」
柔「終わったよ~、上に行こう?」
耕作「お疲れさん、じゃあ、原稿を書こうかな?」
柔「うん、忘れないうちにそうした方が良いね。」
二人はポットとカップを持って上に上がった。
柔「直ぐに書く?それとも?」
耕作「コーヒーを1杯飲んでから書こうかな?」
柔「うん、直ぐに入れるね。」
柔はコーヒーを2杯入れて片方を耕作に渡した。
耕作はそれを受け取るとベッドに座った、直ぐに柔は寄り添って座った。
柔「まさか、ジョディー達のお話から、あんなお話が聞けると思わなかった。」
耕作「うん、その通りだね。」
耕作「でも、滋悟朗さんの言ってる事は当たってるかもね。」
柔「ジョディー達が試合をする前提で来るって事?」
耕作「うん、そうじゃないと君と対戦したクルスティーを連れてくる理由が
思い当たらないから。」
柔「それは言えてるね、あたしとクリスティーさんの接点って対戦した事だけだし。」
柔「まあ、ジョディーの知り合いって言う点も有るけど。」
耕作「どちらにしても来た時に聞けば分かる事だね。」
柔「そうだね。」
耕作「さて、そろそろ原稿を書くね。」
柔「うん、また、見てても良いかな?」
耕作「良いというか、見ててくれた方が捗るからお願いしたいかな?」
柔「うふ、分かった~。」
耕作は机に向かうと原稿を書き始めた。
柔はその様子を後ろから見ていた。
柔「ふむふむ、表題が松田 柔の指導者としての新たなる挑戦ってなってるのね。」
耕作「うん、一方的な指導から選手自身に考えさせてする指導に変ってたからね。」
柔「まあ、選手の技量に寄るんだけどね?あのやり方は。」
耕作「その技量を見極める目が君にも備わってるって事も含めてなんだよ。」
柔「あ、そう言う事なんだね。」
柔「だから、その事もちゃんと書いて有るのね。」
耕作「うん、具体的にどうしたかを書かないと読者には分かり難いだろうから。」
柔「読み手の事も考えて書くのは難しそうだね。」
耕作「そうだね、自分は知識が有るから、それを忘れないと難しいと思う。」
柔「あなたって、やっぱり優秀な記者だと思うな~。」
耕作「褒めても何も出ないよ?」
柔「うふふ、後でご褒美が有るかもだから。」
耕作「ははは、そう言う事なんだね。」
耕作「良し、出来た~。」
柔「あなた、お疲れ様です。」
柔はそう言うと腰を屈めて耕作の顔の傍に自分の顔を持っていき、そっと目を瞑った。
耕作はそれに応じて柔の頬に片手を添えると長めのキスをした。
耕作「俺がご褒美を貰った気がするけど?」
柔「うふふ、良いじゃない?どちら・も、なんだから。」
耕作「あ、そう言う事なんだね。」
柔「完成を祝ってコーヒなど如何でしょうか?」
耕作「祝うって言うほど大袈裟なもんでもないと思うけど、頂こうかな?」
耕作はベッドに座った。
柔はコーヒーを2杯入れると片方を渡しながら寄り添って座った。
柔「もう少ししたら出掛けるんでしょう?」
耕作「そうだね、9時前には会社に届けて、その足で富士子さんの所に行きたいし。」
柔「後ろの時間が決まってるから早めの方が良いもんね。」
耕作「うん、時間に追われるのは君が常々言ってる余裕を持つって事にならないからね。」
柔「そうだね~、余裕を持つと、この前あたしがやった様にあたふたしなくて済むしね。」
耕作「そう言う事だね、そろそろ出かける準備をしようか?」
柔「うふ・・。」
耕作「あ~、はいはい、着ていく服を持ってきたら着せてあげるから。」
柔「うふふ、お願いね~。」
柔は着ていく服を選ぶ為に洋服ダンスへ行き選んで持ってきた。
耕作「あの~、柔?」
柔「な~に~?あなた。」
耕作「全部持ってきてるんだけど、全部着替えるの?」
柔「お気に召しませんか?」
耕作「あ~、お気に召さない訳じゃ無いけど、朝から誘惑されるとね?」
柔「しょうがないな~、じゃあ、下着は勘弁してあげる~。」
耕作「ほんとに、この子は~。」
柔「怒ってる?」
耕作「いやいや、怒ってはいないから、相変わらず、俺の予想の上を行くな~って。」
柔「うふ、あなた?どう予想してたの?」
耕作「ブラだけかと思てたんだ。」
柔「じゃあ、ショーツだけ勘弁の方が良いの?」
耕作「いやいや、何でそうなるのかな?」
柔「あなたがブラだけかと思ったって言ったからだよ?」
耕作「まあ、確かにそう言ったけど、言葉通りに受け取らなくて良いからね?」
柔「な~んだ、残念。」
耕作「ま~た誘惑失敗って言うんじゃないよね?」
柔「あら、良くお分かりです事。」
耕作「何遍同じ事を言われたか分からないからね?」
柔「あ~、そう言えばそうだったね~。」
耕作「まあ、俺を楽しませようとしてるのは分かってるけどね?」
柔「うふふ、良くお分かりですわね~。」
耕作「今までもそうだったからね。」
柔「じゃあ、着替えさせてね~。」
耕作「うん、分かったよ。」
耕作は柔の上下を脱がせた。
柔「や~ん、脱がされちゃった~。」
耕作「これこれ、他の人が聞いたら勘違いする様な事は言わないの。」
柔「あなた?何をどういう風に勘違いするの?」
耕作「柔?」
柔「な~に~?あなた。」
耕作「君、分かってやってるでしょう?」
柔「分かんな~い。」
耕作「嘘仰い、顔が笑ってるよ?」
柔「・・・、ばれてたか。」
耕作「もう~、君って子はほんとに~。」
柔「あなた?怒ったの?」
耕作「ううん、着替え一つでも俺を喜ばせようとしてるのは分かってるから
怒るわけ無いよ?」
柔「うふ、ごめんね~。」
そう言うと柔は耕作にキスをした。
耕作「ありがとうね、じゃあ、着せるから。」
柔「お願~い。」
耕作は柔にスカートとシャツを着せた。
柔「あなた、ありがとう~。」
耕作「着替えるだけでこれだけ時間が掛かるって。」
柔「あたし達は普通じゃないもんね~。」
耕作「まあ、そうだね~。」
柔「あなた?下そのままで行くの?」
耕作「あ、そうだった、ズボン穿くから。」
耕作はズボンに履き替えた。
柔「飲む?」
耕作「また唐突に、頂こうかな?」
柔「うふ、直ぐ入れるね。」
柔はコーヒーを2杯入れて片方を耕作に渡すと二人で寄り添ってベッドに座った。
柔「ごめんね~、いつも、あたしの戯れに付き合わせて。」
耕作「ううん、楽しいから良いよ。」
柔「楽しんでくれてたんだ、良かった~。」
耕作「向こうでも言ったけど、君が俺に対して取った行動の全てが楽しませる為に
やってるって分かってるからね。」
柔「あなた、ありがとう~、あたしの事を分かってくれてて。」
耕作「それもこれも柔が決断してアメリカに来てくれたお陰だよ。」
耕作「そして向こうで色々話した事もそうだったし。」
柔「そうだよね、でも、あなたがそれまで、あたしにしてくれてた事を考えると
まだまだ足りないって思ってる。」
耕作「そんな事を思ってたんだね、でも、前も言ったよね?」
柔「うん、分かってるよ、でも、あたしとしてはどうしてもお返しをしたいの。」
耕作「そうなんだね、うん、分かった、俺は君がしたい様にして構わないって言ったから、
君の気が済む様にして構わないから。」
柔「ありがとう~、これからもお返しするね。」
耕作「うん、楽しみにしてるから。」
柔は耕作を見上げるとそっと目を瞑った。
耕作はそれに応えて柔の頬を両手で優しく包むと長めのキスをした。
柔「素敵なキスをありがとう~。」
耕作「素敵な仕草可愛いよ。」
その言葉が終わらないうちに柔は耕作に抱き付いた。
耕作も柔を優しく抱きしめた。
柔「あなた、愛してるよ。」
耕作「愛してる、柔。」
二人は暫くそうして抱き合っていた。
耕作「そろそろ出掛けるかい?」
柔「そうだね、行こうか。」
柔「原稿はこのバッグに入れて持って行くから。」
耕作「うん、お願いね。」
二人はポットとカップを持って下に下りて行き台所へ向かった。
柔「少し待ててね。」
耕作「うん、待ってるから。」
柔はカップを洗うと拭き上げて食器棚になおした。
そこへ玉緒が現れた。
玉緒「あら、今日は早いわね。」
柔「うん、富士子さんの所も訪ねるから早めに行こうって話し合ってたから。」
玉緒「そうなのね、何でも話し合うのね、あなた達って。」
柔「うん、そうだよ、前も話したけど向こうで話し合ってそう決めたから。」
柔「それじゃ、耕作さんの会社に行ってくるね。」
耕作「出掛けてきます。」
玉緒「気を付けて行ってらっしゃい。」
二人は玄関を出ると木戸を潜って表へ出て表通りへ行き
タクシーを拾って耕作の会社へ向かった。