柔と耕作(松田)の新婚日記 6日目 (午後編第2部)
文書量(文字数)が膨大な為、一日を8分割で表記しています。
柔「いつも鴨田さんに中まで来て貰ってたから今日は外で待とうと思ったの。」
耕作「なるほど、それで少し早めに下りたんだね。」
柔「うん、そうなの。」
鴨田の車がこちらにやってくるのが見えた。
耕作達の前で止まると鴨田が窓を開けて話しかけてきた。
鴨田「あれ?今日は待っててくれたんすか?」
耕作「柔がいつも中まで入ってくるのが気の毒って思ってこうして待ってたんだ。」
鴨田「柔さん、すみません、気を使って貰って。」
柔「いえいえ、いつも送り迎えして貰ってますからこの位はしないとと思ったので。」
鴨田「それじゃ、乗って下さい、西海大まで送るっす。」
耕作「鴨田、いつもすまんな。」
鴨田「もう~、松田さんまで、早く乗って下さい。」
耕作「うん、じゃあ、頼むな。」
二人が乗ると同時に鴨田は車を出して西海大を目指した。
暫く走った後、西海大の駐車場に着いて三人は車を降り柔道場へ歩いて行った。
富士子「柔さ~ん、待ってたよ~。」
富士子が表へ出て待っていた。
柔「富士子さ~ん、お待たせ~。」
その声を聞きつけたのか祐天寺が表へ出てきた。
柔「祐天寺監督、今日もよろしくお願いします。」
祐天寺「こちらこそ、よろしくお願いします。」
柔「それでは、着替えてトレーニングをします、終わったら、また、
声をかけますので、その時に。」
祐天寺「はい、分かりました。」
そう言うと祐天寺は部員達の元へ戻っていった。
耕作「鴨田、今日も頼むな、全体の流れが分かる様に撮ってくれ。」
耕作「それと柔のトレーニングするところも頼む。」
鴨田「松田さん、了解っす。」
富士子「柔さん、今日はどういう風にするつもりなの?」
柔「昨日と同じにしようと思うけど、昨日は短めだったから追加で何か考えるね。」
富士子「さすがよね~、柔さんは即興でそれが出来るんだから。」
柔「そんな事は無いよ?あ、着替えてくるね。」
富士子「うん、いってらっしゃ~い。」
耕作「うん、待ってるから。」
柔は更衣室に向かい暫くすると柔道着に着替えて戻ってきた。
柔「あなた、富士子さん、トレーニングしてきます。」
富士子「頑張ってね~。」
耕作「柔、頑張れよ。」
柔「うん!!」
柔はそう返事をするとトレーニングを開始した。
富士子「相変わらずの早さですね、柔さん。」
耕作「そうだね、ペース配分が分かってきて要領が良くなってるから
じゃないかと思うんだ。」
富士子「そうなんですね、だからあんなに早くなってるのか~。」
富士子「ところで、松田さん、明後日は10時からですけど少し早めに
行っても構いませんか?」
耕作「あ、そうだね、フクちゃんも居るから早めの方が良いね。」
富士子「じゃあ、そうする様に花園さんにも話しておきます。」
耕作「ミルクとかおむつの替えとかも持ってきて良いからね。」
富士子「良いんですか?」
耕作「うん、フクちゃんを寝かせる部屋に置いておけば良いから。」
富士子「じゃあ、その事も花園さんに言っておきます。」
耕作「うん、そうしてね。」
耕作「そうそう、あ、これは柔から言って貰った方が良いか。」
富士子「何の事ですか?」
耕作「あ、いや、今日、午前中に柔と二人で喫茶店でデートして来たんだ。」
富士子「へ~、良いですね~、あ、そうか~、今までそう言うのして
無かったですもんね、二人では。」
耕作「うん、紛いの事はしてたけど二人ともお互いに告白とか一切して無かったし。」
耕作「取材ではいつも一緒に居たんだけど、ユーゴ以外は。」
富士子「そうでしたね~、試合だけじゃなくて他の時も常に一緒に
居る感じでしたよね、ユーゴは大変だったけど、柔さん。」
耕作「あくまで新聞記者と柔道選手って言う立場で会ってたって感じだったし、
初めて出会ってからついこの前までは。」
富士子「柔さんがアメリカに行ってから大きく進展したんですよね。」
耕作「うん、そうなんだ、その事については柔に感謝しないとって常々思ってるんだ。」
富士子「私も松田さんと柔さんがこうやって結婚する事になって
嬉しかったですから。」
耕作「ありがとう、そう言って貰えると俺も嬉しくなるな。」
耕作「あ、そうそう、さっきの続きだけど、その時にある人達と会ったんだ、
それは柔から君に聞かせた方が良いかなって思ったんだよ。」
富士子「ある人達って誰ですか?」
耕作「まあ、君も聞けば直ぐに分かるはずだから。」
富士子「じゃあ、楽しみにしてます。」
柔「な~にを話してるのかな~?二人で~。」
耕作「うお、びっくりした~。」
富士子「わっ、柔さん、もう全部終わったの?」
柔「うん、全部終わったよ?」
耕作「ほんとに?昨日よりかなり早く終わってるね。」
柔「ほんとだよ?終わってこっち見たら二人が話し込んでたから、こっそり来たの。」
耕作「そうなんだ、あ、そうそう、今日のデートの時の事、
富士子さんに話してあげて。」
柔「あなたが言っても良かったのに。」
耕作「いやいや、あの時の事は君が言った方が良いと思ったから。」
柔「確かに、あたしの方が良いかも。」
富士子「柔さん、誰と会ったの?」
柔「うふふ、富士子さん、あの四人と偶然会ったんだよ。」
富士子「??あの四人って?」
柔「もう~、富士子さんは~、短大の時の四人の事だよ。」
富士子「え~~、あの四人と会ったんだ~、元気そうだった?」
柔「うん、四人とも余り変わって無かったよ、あ、四品川さんは少し痩せてたけど。」
富士子「そうだったんだ~、会いたかったな~。」
耕作「明後日会えるから。」
富士子「あ、呼んでるんですね~、楽しみだな~。」
柔「うふふ、明後日の楽しみが増えたね。」
富士子「うん、皆に会うのが楽しみ。」
祐天寺「柔さん、もう終わったんですか?早くないです?」
柔「あ、祐天寺監督、はい、全部終わりました。」
祐天寺「他の部員達が驚いていましたよ、凄過ぎるって。」
柔「あ、そうなんですか?普通にやってたつもりだったんだけど。」
富士子「柔さんの普通と、他の人の普通が違うんじゃない?」
耕作「そうかもしれないね、柔の普通は普通じゃないから。」
柔「あなた?あたしの事を人扱いしてないんじゃない?」
耕作「そうだね、超人扱いになるのかな?」
柔「それ褒めてるのかな?」
耕作「勿論、褒めてるんだよ?普通の人の能力を遥かに凌駕した
存在が超人なんだから。」
柔「ふ~ん、まあ、良いけどね~。」
祐天寺「あ、柔さん、今日はどうしますか?」
柔「あ、祐天寺監督、すみません。」
柔「今日はどういった方達を考えておいでですか?」
祐天寺「そうですね、或る程度は出来る能力の子達になりますけど、
それでも構いませんか?」
柔「分かりました、それでは、まず乱取りをして貰って、その様子を見て、
どういった内容にするか決めますから。」
祐天寺「それでは、その様に話してきます。」
柔「はい、お待ちしています。」
耕作「相変わらず、柔は切り替えが早いね。」
柔「うふ、褒めてくれてありがとう。」
富士子「柔さん、いつも今みたいな感じで二人で話してるの?」
柔「うん、いつも今みたいに話してるよ。」
富士子「凄く打ち解けてる様に思った、後、話してる間あなた達二人だけの
空間を感じたわ。」
柔「あ、そうなの?あなた?いつも今みたいな感じだよね?」
耕作「うん、そうだね、今みたいに砕けた話し方してるよね。」
富士子「羨ましいって思った~、私も花園さんと今みたいに話せる様になるのかな~。」
耕作「あ~、富士子さん?」
富士子「はい、何でしょうか?松田さん。」
耕作「これは、俺と柔だから出来る話し方だって思うんだよね。」
耕作「だから富士子さん達が無理して真似しなくても良いと思うよ。」
柔「うん、あたしもそう思うよ。」
柔「富士子さんには富士子さんのやり方が有る訳なんだし、
それが富士子さんの良さだと思うよ。」
富士子「そうなのかな~、でも二人が言うからそうなんだね。」
柔「うん、そう思うよ。」
祐天寺「あ、柔さん、今から始めますけど構いませんか?」
柔「あ、すみません、では始めましょうか。」
柔「富士子さんはあたしの横に居てね。」
富士子「うん、分かったわ。」
柔「それじゃ、あなた、行ってきます。」
耕作「頑張れよ、柔。」
柔「うん!!」
柔と富士子は祐天寺と一緒に道場中央に向かった。
すると選抜された四人が柔達の元にやってきて一礼をすると乱取りを開始した。
柔はその様子をじっと見ていた。
暫く見ていた柔だが乱取りを止めさせて自分の傍に四人を呼んで
何かを話している様だった。
暫く話し込んでいたが、柔と富士子が相手となり乱取りを開始した。
今迄と同じ様に技封じを暫くやって、技の隙が少なくなったのか、柔と富士子が
投げられて終了となり、次の二人に替わって同じ事を繰り返していた。
その組も柔達が投げられて終了した。
その後、柔を囲んで車座に皆が座ると柔は皆に何か話していた。
話し終わると、四人が乱取りを始めた。
乱取りの最中に柔が止めて話す事が何度となくあったが、話が終わって乱取りを
再開すると明らかに悪い点が改善されているのが耕作にも分かった。
暫くして、また、柔を囲んで車座になり皆に何かを聞いている様だった、
柔が納得しなかった時はその人に対して何か話をしている感じがした。
そうやって暫く話した後、柔と富士子、四人が対峙して一礼をした時点で終了となった。
柔と富士子が耕作の元に戻ってきた。
柔「あなた、今日はどうだった?」
耕作「うん、全体としては今迄やってた事の複合の感じがしたんだけど、
さすがに話の内容は分からなかった。」
耕作「技の精度を上げる事には成功してた気がするよ。」
柔「やっぱり、あなたね~、分かってるんだね~。」
耕作「話の内容は以前やってた、あれと同じなの?」
柔「うん、そうだよ、ちょっと違うとすれば自分達でそれを意識して
やらせてた事かな?」
耕作「技の精度の上げ方を自分達で考えさせてたって事?」
柔「うん、その方が上手く出来そうって思ったから。」
耕作「相変わらず、見ただけで、相手の力量に合わせた練習方法を
考え付くもんだね~。」
柔「それが出来る人達って分かったから、そうやったんだけどね。」
富士子「柔さんって、やっぱり凄いわ~、そんな事出来るんだから。」
祐天寺「柔さん、お疲れ様でした。」
柔「祐天寺監督、お疲れ様でした。」
祐天寺「柔さん、相変わらず、教え方が上手ですね。」
祐天寺「さっきの四人も感心していました、こういうやり方が有るんだって。」
柔「そう言って貰えるとお教えした甲斐が有ります。」
柔「後は自分達で今日の事を物にして他の人達を教えてくれれば嬉しいです。」
祐天寺「今日もありがとうございました。」
柔「いえ、あたしもここを使わせて頂いてますので。」
耕作「柔?」
柔「あ、祐天寺監督、お話が有るんですが。」
祐天寺「どういった事でしょう。」
柔「えっとですね、ジョディー、テレシコワ、マルソー、クリスティーはご存知ですよね?」
祐天寺「勿論、知ってますよ、前回のオリンピックでも活躍した方達ですよね、
柔さんと対戦した人も居ますし。」
柔「その方達が、あたしの結婚式に出る為に明日到着するんですけど。」
祐天寺「おぉ~、そうでしたか、私も会えるという事なんですね。」
柔「あ、はい、そうなんです、それでですね、その四人とあたしが対戦する事になる
かもしれないんです。」
祐天寺「え?柔さんとその四人がですか?」
柔「はい、もし対戦する事になった時はこちらを結婚式の翌日にお借り出来ないかと
思ってご相談したいのですが。」
祐天寺「おぉ~、そう言う事でしたら、私から理事の方に話を通しておきますので
遠慮なくお使い下さい。」
柔「あ、後もう一つ、マスコミの取材も有ると思うんですけどそれも
ご許可頂ける様願えないでしょうか?」
祐天寺「それはオリンピックで勇名を馳せた方達が試合をするとなれば
当然の事と思います。」
祐天寺「それに西海大学の名前も出る事ですし、その事を理事に話しても
二つ返事だと思いますから、ご安心を。」
柔「ありがとうございます、その旨をみんなに明日伝えます。」
祐天寺「もし差し支えなければなんですけど、部員達にもその試合を
見せる事が出来ますでしょうか?」
柔「はい、それは勿論、構いませんから、見るだけでも何かを掴める
可能性も有りますので。」
柔「後、あたしが四人と対戦するので、ほぼ半日以上ここをお借りする形に
なるんですけど構いませんか?」
祐天寺「それはもう、部員達にも見せる事が出来るんですから大いに
使って下さって結構ですので。」
柔「ありがとうございます、明日皆が来たら、その事を伝えます。」
祐天寺「今日もありがとうございました。」
柔「いえ、あたしの方こそ、ここが使えるので助かってますから。」
柔「それでは、明日まで来ますのでよろしくお願いします。」
耕作「柔?」
柔「あ、そうだった。」
柔「祐天寺監督、明日なんですけど、ひょっとすると今話した四人もここに
来るかもしれないんですけど、構いませんか?」
祐天寺「おぉ~、そうなんですか、是非こちらからお願いしたい位ですので、
構いませんよ。」
柔「重ね重ね、ありがとうございます。」
柔「それでは今日はこれで失礼します。」
祐天寺「お疲れ様でした、また明日お待ちしています。」
そう言うと祐天寺は部員達の元に行き柔が話した内容を伝えているみたいで、
時折歓声が上がっていた。
富士子「松田さん?」
耕作「何?富士子さん。」
富士子「さっき、2回程、柔さんに呼び掛けてましたけど、柔さん、
良くあれで分かりましたね。」
耕作「あ~、さっきのね。」
耕作「あれは今日午前中に話し合ってた事を柔が忘れそうになってたから、
声をかけて促しただけなんだ。」
柔「うん、危うくそのまま帰りそうになってたから助かったよ。」
富士子「でも、柔さんも松田さんが言ったあの一言だけで分かるのって
凄くないですか?」
柔「富士子さん、この前お宅にお邪魔した時もそうだったじゃない?」
富士子「あ、そう言えば、でも、今日のは名前だけしか言ってないのに
良く言う内容が分かったな~って感心してるの。」
耕作「それは、午前中に話した時に話す内容を相談して決めてたからなんだ、
だから声を掛けただけで柔にも分かったんだ。」
富士子「私もそう言う風になれるのかな?」
柔「それ、ジョディーにも同じ事言われたけど、富士子さんも花園君の考え方とか
行動とか理解すれば出来る様になると思うよ。」
耕作「その為には何でも二人で話す事が大事なんだけどね。」
柔「そして、相手に対する愛情とお互いの思いやりかな?」
耕作「それさえ出来れば富士子さんにも同じ事が出来る様になるから。」
富士子「今の二人の話を聞いてると、お互いが何を話して自分が次に
何を話すかって事が自然に出来てるのね。」
柔「それは、さっき言った事をやってたらお互いが同じ事を考え思う様になるから、
富士子さんにも出来るって。」
富士子「二人でそう言うなら努力してみるわ、花園さんにも話して協力して貰う。」
柔「うん、そうしてね、ところで。」
耕作「明日の午前中なんだけど、富士子さんはまだ家に居るよね?」
柔「もし居たら遊びに行きたいって思ってるんだけどどうかな?」
富士子「凄いわ~、二人なのに一人が話してる感じになるのね~。」
富士子「あ、明日居るから来て貰っても良いですよ。」
柔「良かった~、明日を逃すと次に富士子さん宅に行けるのは
10日後位になりそうだったから。」
富士子「あ、そうね、新婚旅行に行っちゃうんだよね。」
耕作「そうなんだ、まあ、行先は俺の実家の民宿なんだけど。」
富士子「まあ、そうだったのね~。」
柔「詳しくは、また明日お話しようか。」
富士子「そうよね、じゃあ、今日はこれで、また明日ね~。」
柔「うん、また明日ね~。」
耕作「鴨田、待たせたな、すまんが、また送ってくれ。」
鴨田「いえ~、三人の話を聞いてると面白かったっす。」
鴨田「それじゃあ、送りますから。」
三人は富士子に手を振りながら駐車場へ向かい車に乗り込むと柔の実家へと向かった。
鴨田は車を実家の前に停めて2人を降ろした。
耕作「鴨田、写真頼んどくな。」
鴨田「了解っす、いつもの様にしとくっす。」
柔「鴨田さん、いつもすみません。」
鴨田「これ位どうって事ないっす。」
耕作「気を付けて帰れよ。」
柔「また、明日お願いします。」
鴨田「はい、気を付けて帰るっす。」
鴨田は編集部へ戻って行った。
柔「あなた、中に入りましょうか。」
耕作「そうだね。」
二人は木戸を潜り玄関に入った。