柔と耕作(松田)の新婚日記 2日目 (午前編第3部)
文書量(文字数)が膨大な為、一日を6分割で表記しています。
会社の前で降りた二人は中へ入った。
柔「ただいま、戻りました。」
社員一同「お帰りなさい、ご婚約おめでとうございます。」
柔「どうも、ありがとうございます。」
耕作も無言で会釈した。
支店長「松田さんも良くおいで下さいました。」
耕作「お邪魔します。」
支店長「お二人は取り合えず社長がお見えになるまで応接室で待っていてくれないだろうか?」
柔「あの、羽衣課長代理はいらっしゃいますか?」
支店長「羽衣君ならいつもの席に居るが、どうかしたのか?」
柔「あたしの直属の上司なのでご挨拶をと思いまして。」
支店長「そうか、それじゃ、挨拶が済んだら応接室に来てくれたまえ。」
柔「はい、そう致します、では、少しお時間を頂きます。」
支店長「出来るだけ早く戻って来てくれ。」
柔「はい。」
二人は羽衣課長代理の席へ向かった。
羽衣課長代理はいつもの様に新聞を読んでいた。
柔「羽衣課長代理、おはようございます。」
羽衣「おぉ~、猪熊君、松田さん、お帰り、よく来たね、それでどうしたんだ?」
耕作「羽衣さん、その節は柔が大変お世話になりました。」
羽衣「何、当然の事をしたまでじゃないか。」
柔「でも、あの時・・。」
羽衣「猪熊君、あれで良かったんだよ、全て上手く行ったんだから、
もう気にする事は無いんだ。」
耕作「こうして二人でここに来たのは羽衣さんに是非、改めて婚約の報告を
と思ってきました。」
柔「晴れて、松田さんと婚約出来ました。」
柔「これも全て羽衣課長代理のお陰です、ほんとにありがとうございました。」
耕作「こうして二人でご挨拶に伺える事を喜びに思います。」
羽衣「そうか、わざわざ、挨拶に来てくれたのか、君たち二人が手を携えれば
何も怖い物なんか無いよ。」
羽衣「本当~に、心からおめでとうと言わせて貰うよ。」
羽衣「これからも猪熊君、いや、もう柔さんだね?」
柔「はい、そう呼んで頂いて構いません。」
羽衣「松田さん、柔さんを末永く傍に居て見守ってやってくれないか?」
耕作「はい、その覚悟でプロポーズしましたから、必ず幸せにします。」
羽衣「今後も、松田さんの書く記事には期待しているから。」
耕作「二人で力を合わせて頑張って書いていく覚悟ですので期待して下さい。」
柔「あの、お話があるんですが。」
羽衣「どんな話かな?」
柔「あたし達の結婚記念ツアーとか企画して頂けないでしょうか?」
羽衣「そんな事しても大丈夫なのか?」
柔「はい、これは耕作さんと二人で話して決めた事なんです。」
柔「国内は、耕作さんの実家の民宿を使ったミニ・ツアーで、海外はあたしが
試合をした場所の観光ツアーなんかどうかと思いました。」
羽衣「おぉ~、それは良いな、後で支店長に話してみるよ。」
耕作「それでは、これで失礼します。」
柔「一旦、応接室に行ってきます、また後程。」
羽衣「そうだったな、社長が来る事になっていたんだった。」
羽衣「二人とも、頑張ってくれよ。」
耕作、柔「はい、それでは。」
二人は応接室に向かい中に入った。
柔「支店長、お待たせしました。」
支店長「おぉ~、戻ったか、社長がお見えになるまで、ここで寛いでいてくれたまえ。」
支店長「私も後で社長と一緒に来るから。」
柔「はい、お待ちしてます。」
耕作と柔は二人で応接室に座らされた。
柔「耕作さん、もう少し近くに。」
耕作「そうだね、しかし、羽衣さん、喜んでくれて良かったね。」
柔「うん、あんなに喜んでくれて、嬉しかった。」
耕作「後は、代理が外れれば万々歳だね。」
柔「うん、そうだよね、そうなって初めて恩返し出来た気がするから。」
耕作「ところで、社内は言った通りだったね。」
柔「うん、勤務中だしね、外から中を伺ってる人は居るけど。」
耕作「君も気が付いてたか、さすがだ。」
柔「あたしだったら、そうするしね、超が付く有名人が二人揃って来てる訳なんだし。」
耕作「ほぉ~、君からその言葉が出るって事は少しは自覚してるんだ。」
柔「耕作さん、少し酷くない?今の。」
耕作「いや、国民栄誉賞すら、興味が無いから、そう思うのは当然じゃないのかな?」
柔「だから、少しって言ったのよ?」
耕作「なるほど、君は言葉の使い方が上手いからね。」
柔「外が騒がしくなってない?」
耕作「そう言えば、さっきよりざわついてるね。」
急にドアが開いた。
支店長「すまない、猪熊君と松田さん、顧客が君たちがここに来ているのを
知って押し掛けたんだ。」
支店長「誠に申し訳ないが、顔を見せて挨拶をして貰えないだろうか?」
柔「挨拶だけで構いませんか?」
支店長「顔を見て挨拶を聞けば引き取ってくれると思う。」
柔「分かりました。」
二人は応接室を出て正面入り口に向かった。
そこには20人程の顧客が居た。
顧客達「おぉ~、ご両人の登場だ~。」
顧客達「昨日のTV、拝見しましたよ。」
顧客達「ご婚約おめでとう~。」
柔「皆様、お忙しい中、わざわざ、あたし達の為に来て下さいまして大変ありがたく思います。」
耕作「皆様、ご多忙の中、お越し下さいまして、大変恐縮です。」
二人は顧客達に深々と一礼した。
顧客達は満足したのか、口々に祝辞を述べながら帰って行った。
支店長「お二人とも、ありがとう、また応接室で待って貰えないだろうか?」
柔「はい、そうさせて頂きます。」
二人はまた応接室に入ると寄り添って座った。
柔「ふぃ~、また来るかな?」
耕作「来るだろうね、20人じゃ少ないから。」
柔「そうだよね、早く社長来ないかな?」
耕作「だよね、業務をさせないで待たせるからには、何か特別な事でも有るんじゃないかな?」
柔「ほぉ~、耕作君もそう思うか。」
耕作「当然の事だよ、柔君。」
柔「うふふ、ここでこんな事してて良いのかな?」
耕作「ふふふ、手持無沙汰だし良いんじゃない?」
柔「外で聞き耳を立てて聞いてる人が居るね。」
耕作「そうだね、まあ、俺達は普通じゃないから良いんじゃない?」
柔「うふふ、耕作さん、さっきからそればっかりだね。」
耕作「まあ、なるようにしかならないしね。」
耕作「これは君の言葉だけどね?」
柔「うん、そう言ったね、あたし。」
耕作「時間的にそろそろかな?」
柔「そうだね、来そうだね。」
外で話声が聞こえてドアが開いた。
社長「猪熊さん、それに松田さん、婚約おめでとう~。」
二人は立ち上がり社長に一礼した。
柔、耕作「ありがとうございます。」
社長と支店長が並んで座った、柔と耕作も寄り添って座った。
柔「社長自ら興しになるという事は何か特別な事でも、お有りなんでしょうか?」
社長「まあ、そう急かさんでくれ。」
社長「支店長、例の物をここに。」
支店長「はい、畏まりました。」
支店長は目録の様な物を社長に渡した。
社長「猪熊さん、ここに君の今後の社内での活動を記した辞令が入っている、
読ませて貰うよ。」
柔「はい、お願いします。」
社長「鶴亀トラベル・神保町支店、猪熊 柔 殿、貴殿は婚約という大変に
輝かしい社外活動をされた。」
社長「それを祝して、ここに今後の貴殿の活動を記す。」
社長「猪熊 柔 殿に於いては今後は鶴亀トラベルの柔道部顧問に就任して
後進の育成をお願いする。」
社長「尚、現肩書はそのままとする。」
社長「以上なんだが、どうかな?」
柔「柔道部の顧問はお受けします、でも、現肩書はそのままでと言う事は
どういう事なんでしょう?」
社長「支店長、説明したまえ。」
支店長「はい、社長、分かりました。」
支店長「現肩書、つまり羽衣課長の部下としてここで勤務して午前中は通常業務で、
午後から柔道部顧問として活動して貰うという事なんだが、どうかな?」
柔「え?羽衣課長代理じゃないんですか?」
社長「猪熊さん、彼には課長に昇進して貰い、君が指導する柔道部員を彼の部下に
するという事なんだ、どうかな、良い考えだと思うが。」
柔「それじゃ、羽衣課長になるんですね?」
社長「そうだ、部下が多いのに課長代理では示しが付かんからな。」
柔「社長、ありがとうございます、あたしからもお礼を言わせて頂きます。」
柔「そういう事でしたら、あたしは喜んでお引受け致します。」
社長「そうか、受けてくれるか、期待しているよ。」
柔「でも、それだけで社長自ら興しになった訳じゃ無いですよね?」
社長「猪熊さんは柔道の技と同じで鋭いな~。」
社長「結婚式の日取りとか、諸々を決める人、特に超が付くほど全世界での有名人を
粗略に扱うと我が社の力量が疑われる。」
社長「猪熊さんにはこれから三週間の自由行動を許可しようと決めたんだ。」
社長「これなら諸々の決め事がスムーズに進められるんじゃないかな?」
社長「勿論、これには新婚旅行の日程も含まれている。」
柔「社長、言葉も無い位に感謝しています、謹んでお受けします。」
社長「そうか、それでは今日からという事で構わないか?」
柔「え?今日からなんですか?」
社長「こういう事は早い方が良いだろう。」
社長「余裕が無いといけないのは我が社の旅行日程と同じだと思っている。」
柔「ありがとうございます。」
柔「あたしから羽衣課長にご提案している事があります、それを実行に移して頂けたら、
社長へのご恩返しになると思います。」
社長「詳細は良いから、どういう内容なんだ。」
柔「あたし達の婚約もしくは結婚の記念ツアーみたいな企画を国内と海外で実施して
頂けたらと提案させて頂きました。」
社長「本当か?その話、良いのかね?君達の名前を使っても。」
柔「これは柔道とは関係ない事なので、あくまであたし達の事ですから大丈夫です。」
柔「ただ、柔道家と言う表現は使えませんが。」
社長「いや、その表現が無くても、君達はTVで全世界に名前を知られているから、
こちらとしても願っても無い事だ。」
柔「詳細は羽衣課長に伝えていますので、よろしくお願いします。」
社長「支店長、直ぐに羽衣君を中心にプロジェクトチームを組み給え、今直ぐにだぞ、
優秀なスタッフも人選して配置する様に。」
社長「わが社の総力を挙げてでも成功させるんだぞ、期間はご両人の新婚旅行が
終わるまでが一番良いはずだ。」
社長「つまり、3週間が勝負だと思うんだ、良いな。」
支店長「分かりました、直ぐに手配いたします。」
支店長は慌てて応接室を出て行った。
社長「松田さん、猪熊さん入社の節はご無礼な事をしてしまった、本当に申し訳なく思っている。」
社長「今後は猪熊さん、いや、柔さんをよろしく頼みます。」
耕作「いえ、私こそご無礼の数々、誠に申し訳なく思っています。」
耕作「柔がここまで成長出来たのも社長と鶴亀トラベルが有ったればこそだと感謝します。」
耕作「ところで、社長だけにお知らせしますので、内密にお願います。」
社長「どういう事なんだ?」
耕作「結婚式は七日後の大安で決定していますので、申し訳無いのですが、
お一人でお越し願えないでしょうか?」
社長「おぉ~、結婚式の日取りは決まっていたのか。」
社長「勿論、儂一人で伺わせて貰うよ、滋悟朗先生にも挨拶しないといけないからな。」
柔「社長、お越しの際は何も気を遣わないで下さい。」
柔「本来は身内と知人だけで執り行う予定でしたが、今までのお言葉を聞く限り
ご招待しない訳には参りません、是非お越し下さい。」
社長「こちらこそ、呼んでくれるだけで、十分だよ。」
社長「しかし、その阿吽の呼吸での会話を聞くと、君達は既に夫婦だね。」
耕作、柔「当然、披露宴もご参加下さい。」
社長「喜んで伺わせて貰うよ、猪熊さんに入社して貰って本当に感謝している、
じゃあ、儂は本社に戻るから。」
耕作、柔「今日はわざわざのお輿、痛み入ります、七日後にお待ち申し上げております。」
柔達は深々と会釈をして社長を見送った。
社長は本社へと帰って行った。
耕作「やっぱり、しっかりと話さないといけないと痛感した。」
柔「そうだね、あれだけの事を決めるって中々出来る事じゃ無いと思う、感謝しないとだね。」
耕作「羽衣さんの件もそうだしね。」
柔「良かった~、羽衣課長になって。」
耕作「羽衣さんには後でと言ったけど、チームを組んでの仕事が既に始まってるから、
行かない方が良いかな?」
柔「そうだね、今、行っても邪魔になるだけだから。」
耕作「羽衣さんも分かってくれると思う。」
柔「昇進の祝辞はどうする?」
耕作「あ、それが有ったか、でも今日じゃなくても良いんじゃない?」
柔「う~ん、機を逃すとね?」
耕作「そうだね、機を見るに敏か、行こうか?」
柔「そうだね、早い方が良いから。」
二人は応接室を出て羽衣課長の席へ行った。
しかし、羽衣課長の姿は無かった。
柔「あれ?居ないね?」
耕作「そうだね、どこに行ったんだろう?」
二人が立ち尽していると女性社員が声を掛けてきた。
女性社員「猪熊さん、羽衣課長なら会議室ですよ?」
女性社員「あ、ご婚約おめでとうございます。」
柔「すみません、ありがとうございます。」
耕作「ご丁寧に、ありがとうございます。」
柔「会議室か、入り辛いな・・。」
耕作「そうなの?」
柔「取り合えず、行くだけ行ってみよう?」
耕作「そうだね。」
二人は会議室に向かった。
中で何やら話声が聞こえた。
柔はドアをノックした。
羽衣「はい、どなたですか?」
柔「会議中すみません、猪熊です。」
羽衣「あ、そこで待ってて。」
柔「中に入らなくて正解だったみたいね。」
耕作「うん、君の判断は正しかったね。」
ドアが開いて羽衣課長が姿を見せた。
柔「すみません、お呼び立てしたみたいで。」
羽衣「いや、このプロジェクトの立役者の君が遠慮する事は無いから。」
柔「羽衣課長、ご昇進おめでとうございます。」
耕作「お祝いが言いたかっただけなんですよ、すみません。」
羽衣「いやいや、これも柔さんのお陰なんだから。」
耕作「俺からもおめでとうと言わせて下さい。」
耕作「ご昇進、おめでとうございます。」
羽衣「ありがとう、これからが正念場だと思って頑張るよ。」
耕作、柔「プロジェクト、頑張って下さい。」
耕作、柔「それでは失礼します。」
羽衣「結婚式、上手く行く様に祈ってるから、じゃあ、まただね。」
羽衣課長は会議室に入って行った。
耕作「この後どうする?」
柔「そうだね、一旦帰ろうか?」
耕作「うん、帰ってから考えようか。」
耕作、柔「皆様、お忙しい中、お騒がせして済みません。」
耕作、柔「それでは失礼します。」
社員一同「結婚式、上手く行く様に祈ってます、お幸せに。」
二人は一礼して支店を後にした。
外に出ると群衆が待っていた。
群衆「きゃ~、おめでとう~。」
群衆「ご婚約おめでとう~。」
口々に祝辞を言っていた、中には写真を撮る人も居た。
耕作「ありがとうございます。」
柔「ありがとうございます、すみません、通して下さい。」
群衆は道を開けてくれた。
二人は群衆に頭を下げながら、表通りに出てタクシーを拾うと
柔の実家に向かった。
車中、声を掛けられる度に二人は手を振ってそれに応えた。
運転手「ご婚約おめでとうございます。」
耕作、柔「どうも、ありがとうございます。」
運転手「これからが大変そうですね、挨拶攻めで。」
柔「そうですね、でも覚悟は出来ていましたから。」
運転手「少し料金が嵩みますけど、裏通りを通りましょうか?」
耕作「出来ればそう願います。」
運転手「がってんでい、お任せあれ~。」
運転手は裏道を選んで実家へと送ってくれた。
柔「気を使って頂いて申し訳ありません。」
運転手「いや、あっしも、柔さんのファンなんですぜ、これ位お安い御用です、
それじゃ、お幸せに。」
耕作「どうもすみませんでした。」
二人は周囲を伺うと木戸を潜って玄関先に来た。
柔「あの人江戸っ子なのかな?」
耕作「そうみたいだったね、でも親切な方だった。」
柔「うん、わざわざ、裏道を選んで走ってくれたよね。」
玉緒「あなた達、何を玄関先で話してるの?早く入りなさい。」
柔「は~い、2階に行ってるね~。」
玉緒「そうなさい、挨拶攻めで疲れてるでしょうから。」
耕作「済みません、少し休みます。」
二人は2階に上がった。
耕作はベッドの端に座った。
柔「じゃあ、着替えるね。」
耕作「そのままでも良いんじゃない?」
柔「そうかな?」
耕作「出て行かないといけなくなった時にイチイチ着替えるの大変でしょう?」
柔「それもそうだね、じゃあ、このままで居るね。」
柔「コーヒーは?」
耕作「お願いね。」
柔はコーヒーを入れると耕作に渡して寄り添って座った。
柔「何だか、全てが上手く行ってて怖い位だね?」
耕作「うん、俺達が願ってた事が全て上手く行ってる感じさえあるね。」
柔「もしかして・・。」
耕作「どうしたの?」
柔「この後、子供が出来て、産む時に、あたしが死んじゃうとか。」
耕作「バカな事を言うんじゃないよ、そうなったらどうするの?」
柔「耕作さん、ごめんなさい、怒らないで?」
耕作「そういう設定は物語とかの中だけで良いから、二度と言っちゃダメだよ?」
柔「うん、もう絶対に言わないから、ごめんね。」
耕作「それに、俺が悲しくなるから、そういう事言うと。」
柔「ほんとに、ごめんね、耕作さんを悲しませるなんて絶対に嫌だから、許してね?」
耕作「うん、これで良いかな?」
耕作は柔の頬に両手を添えて上を向かせると柔はそっと
目を瞑ってそれに応じた、二人は長めのキスをした。
柔「許してくれて、ありがとう。」
耕作「ううん、俺があんな事を言わなければ良かったんだ。」
柔「でも、あたしが先に言ったんだよ?」
耕作「そうだけど、それに重ねる様に言った俺がいけなんだ。」
柔「ううん、耕作さんは全然悪くないから。」
耕作「うん、分かったよ、君の悲しい顔を見たくないからね。」
柔「ありがとう、あたしも耕作さんの悲しい顔なんて絶対に見たくないから。」
耕作「うん、少し横になろうか?」
柔「うん、そうする。」
二人は寄り添う様に横になった。
二人はお互いを見つめていた。
柔「ね~?耕作さん。」
耕作「何だい?柔さん。」
柔「あたし、自由行動許可を貰ったけど、どうしたら良いんだろう。」
耕作「そうだよね~、いきなりだったから、何も考えてなかったしね。」
柔「取り合えず、未定な事を決めていく?」
耕作「そうは言っても、未定って何が残ってた?」
柔「良く考えたら、何も残ってない?」
耕作「結婚式、披露宴、新婚旅行は一連の流れだから、結婚式が決まった時点で
決まったも同然だしね。」
柔「結納も決まってるでしょう?」
耕作「うん、明後日には届くはず。」
柔「招待状と通知のリストは急ぐ分は終わってるし。」
耕作「お祝い返しは急がない・・事は無いか。」
柔「そうだね、披露宴の分は用意しないといけないのか。」
耕作「柔さんの方は何人になるの?」
柔「招待分だから、12人?」
耕作「俺の方は・・、3人?」
柔「少ないね?」
柔「おじいちゃんが何人招待するか次第?」
耕作「30人分確保しておけば足りるんじゃないかな?」
柔「1名追加。」
耕作「ジョディーの分?」
柔「うん、耕作さんの方に入って無かったよね?」
耕作「うん、入れてないよ?君の方に入れるべき人だから。」
柔「さっき、お返しの数は耕作さんが言ってた様にすれば大丈夫かな?」
耕作「多分、大丈夫と思うよ。」
柔「あ、結婚指輪があったね。」
耕作「今日にでも見に行くかい?」
柔「そうだね、早い方が良いしね。」
耕作「婚姻届けって結婚式よりも前でも良いのかな?」
柔「良いんじゃない?」
耕作「何でそう思うの?」
柔「いえ、結婚式を挙げられない人も居るかなって思ったから。」
耕作「そう言えば、絶対に居ないって事は無いね。」
柔「明日にでも出しに行く?」
耕作「必要な物って分かってるの?」
柔「分かんな~い。」
耕作「だろうと思った。」
柔「あ~、耕作さん、酷い~。」
耕作「でも、実際に知らないんだよね?」
柔「うん、全然。」
耕作「だったら酷くは無いんじゃない?」
柔「そうだね、あたしが悪かったのね。」
耕作「いやいや、君だけが悪いんじゃないから。」
柔「そうなの?」
耕作「君が言ったんだよ?どちらがじゃなくてどちらもだって。」
柔「そう言えば、言ったね、あたし。」
耕作「必要な物は婚姻届け、戸籍抄本、二人の印鑑、身分証明書、
20歳以上の証人二人の署名と捺印かな?」
柔「何か、面倒だね?」
耕作「仕方ないよ、ここは日本なんだから。」
柔「そうなんだけどね?」
耕作「良し、明日は必要書類と他のも入手しないといけないね。」
耕作「この中で貰いに行かないといけない物は、婚姻届け、戸籍抄本かな?」
耕作「印鑑と身分証明書は二人とも持ってるしね。」
柔「え?あたし身分証明書とか持って無いよ?」
耕作「パスポートでも良いんだって。」
柔「あ、それなら持ってる。」
耕作「うん、俺も持ってるけど俺は免許証で良いかな?」
柔「良いな~、免許持ってて。」
耕作「柔さんは免許持って無かったんだね。」
柔「うん、あたしが持ってるのは柔道の段位位かな?」
耕作「それは俺は持って無いけどね?」
耕作「いかん、話が脱線しかかった。」
耕作「後は証人2名、これは君のご両親でも良いけど印鑑が2つ必要なんだ。」
柔「同じ印鑑じゃダメなの?」
耕作「そうみたい。」
耕作「これは俺の会社か柔さんの会社の人に頼もうか?」
柔「耕作さんの会社で良いよ?」
耕作「分かった、編集長と鴨田で良いか。」
柔「全部1通ずつで良いのかな?」
耕作「いや、婚姻届けは書き損じたら使えなくなるから2~3通貰った方が良いかな?」
耕作「他は1通ずつで良いみたい。」
柔「って事は耕作さんとあたしの戸籍抄本を貰って婚姻届けを貰うって言う感じで良いのかな?」
耕作「そうだね、俺のを取って、・・。」
耕作「あ~、転出、転入届をして無かった・・。」
柔「行った時にすれば良いんじゃない?」
耕作「あ、そうか、それを終わらせて、俺のと柔さんのを取ったら、婚姻届けは一緒に取れるしね。」
柔「2か所で済むんだね?」
耕作「そういう事になるね。」
柔「半日見てた方が良いのかな?」
耕作「その方が無難だと思う。」
柔「じゃあ、明日の午前中はそうしようか?」
耕作「うん、それで予定しとこうね。」
柔「ところで、あそこにリスト置いたままになってるよ?」
耕作「あ~、会社に行くの、余りにも慌てていたから渡すの忘れてた~。」
柔「ごめんね~、あたしがもたもたしてたから。」
耕作「柔さん?」
柔「あ、ごめんね、さっき言われたばかりだったね。」
耕作「二人で渡しに行こうか?」
柔「そうだね、行こう~。」