お断り:文書量(文字数)が多くなりましたので1日を今回は4分割してお届けします。
耕作は飛行機の窓から外を見た、既に外は夕方の様相を呈していた。
耕作 「(もう直ぐ夜になるな、あと少しか、焦っても仕方ないのは
先程の柔さんの言葉通りだから。)」
耕作 「(もう直ぐ夕食かな?今度は起こさないといけないか。)」
耕作は今までの事、告白前、告白後の柔の渡米と色々と考えていた。
耕作 「(この前、思ってた様に今までの事が必然とすると、この帰国も
必然なんだろうか。)」
耕作 「(そうすると俺が今日、猪熊家に行って滋悟朗さんに話をするのも
必然って事になるのかな。)」
耕作 「(ここまでお膳立てをして貰って、後に引くなんて出来ないな。)」
耕作 「(例え、滋悟朗さんが許可してくれないとしても、もう立ち止まる事なんて
出来る訳が無い、柔さんの気持ちに報いる為にも。)」
柔の左手が強く握りしめてきた。
耕作は柔を見たが穏やかな顔をして寝ていた。
耕作 「(柔さん、まるで俺の決意を後押しする様に握ってくれたみたいに
思える、君の望み叶える為にも俺は負けないよ。)」
柔 「耕作・さん・・くぅ~・・。」
耕作 「(ふふ、可愛い寝言に可愛い寝顔、愛おしく思える。)」
耕作は思わず左手で柔の頭を撫でていた。
柔 「うふふ・・くぅ~・・・。」
耕作 「(撫でられたのが分かったのかな?可愛い笑顔だ。)」
耕作 「(君の仕草全てが可愛く思ってしまう。)」
柔が突然起きた。
耕作 「どうしたの?柔さん。」
柔 「耕作さんの晩御飯を・・あれ?」
耕作 「おはよう~、柔さん。」
柔 「あ、耕作さん、おはよう~。」
柔 「あ、そうか飛行機の中だったんだ。」
耕作 「君の体内時計は正確なんだね?」
柔 「あれ?う~ん、そうなの?」
耕作 「時間を見たらいつも晩御飯を作ってる時間だったよ?」
柔 「あは、そうだったんだ、晩御飯を作らないとって思って起きちゃった。」
耕作 「もう直ぐ機内の夕食だと思うよ。」
柔 「そうなんだ、丁度良かったのかな?」
耕作 「うん、今度は起こそうって思ってたから、起きてくれて良かった。」
柔 「うふ、そうだったんだね。」
耕作 「もうすぐ外は夜になる、そうすればもう日本も近い、直ぐだよ。」
柔 「いよいよなんだね、って何がいよいよなんだろう?」
耕作 「まだ寝てるんじゃないの?」
柔 「ううん、起きてるよ?あ、そうか、分かった。」
耕作 「さっきから言ってる事が変だけど、大丈夫かい?」
柔 「時差ボケかな?」
耕作 「寝てたから、それは無いと思うけど。」
柔 「そうだよね~、あたしがボケてるだけかな?」
耕作 「大丈夫、いつもの柔さんだから。」
柔 「え~、それは酷いんじゃないの~?」
耕作 「今までの事を良~く考えてごらん?」
柔 「え~っと~、そう言われてみれば、そんな気がしてきた。」
耕作 「うん、それでこそ柔さんだよ?」
柔 「う~ん、何か違う様な気も。」
耕作 「柔さん?余り深く考えなくて良いから。」
柔 「うん、耕作さんがそう言うなら、そうする~。」
耕作 「良い子だね、柔さんは。」
柔 「うふ、褒められちゃった~。」
耕作 「久しぶりに、それ聞いた気がする。」
柔 「そうだった?」
耕作 「うん、そんな気がする。」
CAが夕食を運んできた。
メニューはポークソテーとハンバーグ、野菜をボイルした物、スープ、
御飯とパンを選べたので二人は御飯にした。
耕作、柔 「サンキュー。」
CAが微笑み返してくれた。
耕作 「ご飯が少ない気もするな~。」
柔 「耕作さん、おにぎりあるよ?」
耕作 「そうだった、もし少なかったらお願いね。」
柔 「うん、分かった~。」
耕作、柔 「いただきま~す。」
耕作 「機内食だから仕方ないけど、柔さんの料理には遥かに及ばないよね?」
柔 「し~~~、当たり前の事を聞かないの。」
耕作 「おっと、失言、失言。」
柔 「これ、出来合いを温めてるだけだから。」
耕作 「なるほど、それでなんだ、全部同じに見える。」
柔 「機械で作ってるから仕方ないよ。」
耕作 「柔さん、以外に詳しいんだね?」
柔 「耕作さん?あたし、どこで働いてた?」
耕作 「あ、そうだったね、ごめん、ごめん。」
柔 「全部がそうじゃないんだけどね。」
耕作 「御飯無くなっちゃった。」
柔 「耕作さん、これ。」
柔はおにぎりのラップ巻きを渡した。
耕作 「お、今度は3個入ってる。」
柔 「中には何も入れてないから、おかずと一緒に食べてね。」
耕作 「そこまで気を遣ってたんだね。」
柔 「うふふ、そうだよ~、機内食のご飯が少ないのは知ってたから。」
耕作 「御見逸れしました。」
柔 「後3時間位かな?」
耕作 「そうだね、もう直ぐだよ。」
柔 「ワクワクしてきた~。」
耕作 「俺はドキドキだけどね?」
柔 「大丈夫だよ?耕作さんは一人じゃないんだから。」
耕作 「そうだった、俺一人じゃなかったんだね。」
耕作 「あ、しまった。」
柔 「どうしたの?」
耕作 「この便、定刻より1時間早く着くの知らせる事が出来なかった。」
柔 「良いんじゃない?」
耕作 「良いの?鴨田来てないかもよ?」
柔 「焦っても仕方ないんだし。」
耕作 「柔さん、結構肝が据わってるんだね。」
柔 「うふふ、考えてもどうしようもない事は考えない事にしてるの。」
耕作 「なるほど、それも 以下略。」
柔 「うん、今のは分かった。」
耕作 「美味しさは・・。」
柔 「し~~~、ダメだよ?」
耕作 「おっと、危ないとこだった。」
耕作、柔 「ごちそうさま~。」
耕作 「おにぎり美味しかった。」
柔 「これこれ、それを言ったら同じだから。」
耕作 「いつもと逆だね?」
柔 「うふふ、そうだね。」
柔 「あ、言い忘れてた。」
耕作 「何を?」
柔 「お粗末様でした。」
耕作 「おにぎりだけだから良いんじゃない?」
柔 「それも、あたしが作った物だから。」
耕作 「まあ、確かにそうなんだけどね。」
耕作 「あ~、しまった。」
柔 「今度は何?」
耕作 「背広持ってきてなかった。」
柔 「あれ?耕作さん背広持ってた?」
耕作 「良く考えたら、持ってなかった。」
柔 「でしょう?で何で背広なの?」
耕作 「正式な申し込みでこの格好は可笑しいかなって。」
柔 「仕方ないよ?持って無い物は無いんだから。」
耕作 「まあ、そうなんだけどね。」
柔 「それに、あたし達って普通じゃないんだから。」
耕作 「え~、俺も・・。」
柔 「それ前に言ったよ?」
耕作 「く、先に言われてしまった。」
柔 「うふふ、お返し~。」
耕作 「それを言うなら仕返しじゃないの?」
柔 「うん、そうとも言うね。」
耕作 「あ~、誤魔化してるし~。」
柔 「細かい事は言わないの、男でしょう?」
耕作 「これに男は関係無い様な。」
柔 「男が余りしつこく言うと嫌われるよ?」
耕作 「誰に?」
柔 「あたし以外の皆かな?」
耕作 「柔さんは除外なんだね?」
柔 「あたしは耕作さんの味方だから。」
耕作 「ありがとうね、味方になってくれて。」
柔 「うふふ、耕作さんはあたしの 以下略。」
耕作 「それ、分かったけど、全部言って欲しかったな~。」
柔 「ここ機内だよ?ばれたらどうするつもりなの?」
耕作 「あ、すっかり忘れてた。」
柔 「もう~、ダメなんだから~。」
耕作 「CAの人達が俺達を見て笑ってる様な・・。」
柔 「日本語が分かるのかな?」
耕作 「日本人が多いから分かる人が乗ってる可能性は高いと思う。」
柔 「CAの人が来たよ?」
CA 「どうかされましたか?」
耕作 「あ、いえ、何でもないです。」
柔 「さっき、何で笑ってたんですか?」
CA 「漫才見てるみたいで面白くて。」
耕作 「漫才知ってるんだ。」
CA 「日本語の勉強で見てましたから。」
柔 「凄いですね、確かにあれは日本語の勉強には打って付けかも?」
CA 「あなた達のやり取りと同じ感じですから。」
耕作 「そうなんだ、俺達って漫才師なんだ。」
CA 「あはは、そうかもしれないですね。」
柔 「あ、ところで後どの位で到着しますか?」
CA 「あと2時間弱だと思います。」
耕作 「どうもご丁寧にありがとうございます。」
CA 「残りの時間も楽しませて下さい、それでは。」
耕作、柔 「はい、楽しませて貰います。」
CAは元の位置に戻って行った。
耕作「ほら~、漫才だって言われたよ?」
柔 「仕方ないよ?いつものあたし達なんだから。」
耕作 「まあ、そうなんだけどね。」
柔「まだ見てるね。」
耕作 「もう気にしないでおこう?」
柔 「そうだね、他の人を気にしてたら話せないしね。」
耕作 「うん、大事な事は話せないけどね?」
柔 「まあ、そうだけど、普通の会話なら良いんじゃ無い?」
耕作 「俺達、普通に会話してた様な気も。」
柔 「じゃあ、そのままで良いかな?」
耕作 「ところであと2時間だって言ってたね。」
柔 「うん、もう直ぐだよ~。」
耕作 「う~、緊張してきた。」
柔 「え~、ここで緊張してどうするの?」
耕作 「そんな事言っても。」
柔 「もっとどっしりと構えないと。」
耕作 「そうなんだけどね、言うのは俺なんだよね。」
柔 「あたしが言っても良いけど、それって可笑しいよね?」
耕作 「確かに、そうだね、俺じゃないと意味ないもんね。」
柔 「相手の目を見据えて、誠心誠意を尽くせば大丈夫だって。」
耕作 「良くそう言う言葉知ってるね?」
柔 「おじいちゃんが 以下略。」
耕作 「え?時代劇にそういう場面出るの?」
柔 「ううん、恋愛ドラマだったかな?」
耕作 「じゃあ、滋悟朗さん、関係ないんじゃ?」
柔 「うん、そうだよ?」
耕作 「あれ?さっきそう言わなかった?」
柔 「細かい事は 以下略。」
耕作 「あ~、また誤魔化してる~。」
CA 「あはは。」
柔 「大声で笑われちゃったね?」
耕作 「やっぱり漫才に見えるんだね。」
柔 「そうなのかな?」
耕作 「だって夕食前からマシンガン・トークしてた気が。」
柔 「まあ、いつもそうだったけどね?」
耕作 「そう言えば、いつでも会話が始まると終わりが
見えなかったのは確かなんだけど。」
柔 「楽しかったし面白かったから良いんじゃない?」
耕作 「そうだね、今もそうだけど。」
柔 「後1時間位かな?」
耕作 「あ~、時間を告知するの止めない?」
柔 「どうして~?」
耕作 「緊張感が高まってくる~。」
柔 「もう、しょうがないんだから~。」
耕作 「まあ、そうなんだけどね。」
柔 「もう腹をくくったんでしょう?」
耕作 「そうなんだけどね、さすがにそろそろって思うと。」
柔 「もう~、しっかりして?」
耕作 「分かった、気持ちを強く持つよ。」
柔 「そう、その意気だよ?」
耕作 「ふ~、気持ちを落ち着けて。」
柔 「ラマーズ法?」
耕作 「それって違わない?」
CA 「あはは。」
柔 「ほら~、また大声で笑われたよ~?」
耕作 「君の言った事で笑ったんじゃない?」
柔 「そうなの?何か変だった?」
耕作 「いやいや、出産とは違うんだから。」
柔 「耕作さんが生むの?」
CA 「あはは。」
耕作 「やっぱり君が言ってる事で笑ってるみたいだよ?」
柔 「え~、何で~?」
耕作 「いやいや、絶対に可笑しいよ?今の会話は。」
柔 「そうなのかな?あたし可笑しな事言った覚えが無いんだけど?」
耕作 「え?ほんとに?」
柔 「え?あたし可笑しな事言ってた?」
CA 「あはは。」
耕作 「君がラマーズ法とか、俺が出産とか言ったからだと思うんだけど。」
柔 「あ~、それだったんだ~。」
柔 「うん、確かに、あたしが可笑しな事言ってるね。」
耕作 「納得してくれてありがとう~。」
柔 「最初に、耕作さんが緊張するって言うからだよ?」
耕作 「まあ、それは否定しない。」
機内アナウンスが流れた。
柔 「何だろう?」
CAが近づいてきた。
CA 「シートベルトの着用をお願いします。」
耕作 「あ、はい、分かりました。」
CA 「うくく・・。」
CAは笑いを殺しながら他の乗客の所へ行った。
耕作 「あの人、ずっと笑ってるね。」
柔 「耕作さんのせいじゃないの?」
耕作 「俺だけのせいなの?」
柔 「二人のせいって事にしようか?」
耕作 「まあ、漫才だから、そうなるのかな?」
柔 「あたし達って漫才してたの?」
耕作 「あの人にはそう見えたんじゃないのかな?」
柔 「そうなんだ、漫才してたのか、あたし達。」
耕作 「いやいや、普通に会話してたつもりなんだけど。」
柔 「そうだよね?普通に会話してたよね?」
耕作 「どうしてこういう話になったんだっけ?」
柔 「あの人が笑ってたからかな?」
耕作 「あ~、そうだったね、で何の話だった?」
柔 「耕作さんが緊張するって。」
耕作 「あ、そうだったね。」
柔 「もう直ぐだよ?しっかりしてね?」
耕作 「今、下に街の明かりが見えた。」
柔 「いよいよ日本なんだね。」
耕作 「うん、日本だね。」
柔 「そう言えば、さっきのCAの人、楽しませて下さいって言ってなかった?」
耕作 「普通はお楽しみ下さいだけど。」
柔 「あたし達が楽しませてるのかな?」
耕作 「楽しいって言うより笑わせてる様な。」
柔 「笑うのは楽しい事にならないの?」
耕作 「まあ、或る意味楽しい事なのかな?」
機内アナウンスがあった。
柔 「今度は何だろう?」
耕作 「そろそろ着陸なんじゃ?」
柔 「ようやく、日本に戻ってきたんだ。」
耕作 「君との会話でようやくって気がしない。」
柔 「楽しかったから?」
耕作 「うん、面白かった。」
柔 「楽しかったと面白かったじゃかなり違わない?」
耕作 「まあ、かなり違うよね?」
CA達が持ち場に付きシートベルトをした。
柔 「そろそろかな?」
耕作 「そうだね、降りる時は前から出られたら一番で出ようか?」
柔 「後ろからだったら?」
耕作 「当然、最後になるかな?」
柔 「そうだよね、逆はあり得ないから。」
耕作 「CAの人、声は出してないけど顔は凄く可笑しそうにしてるね。」
柔 「耕作さんのせいじゃないの?」
耕作 「これ繰り返すつもりなの?」
柔 「あ、さっきも言ったね、そう言えば。」
耕作 「成田だ。」
柔 「千葉ね?」
耕作 「いや、地理の勉強してる訳じゃ無いから。」
柔 「一応ね?どこにあるか確認したの。」
耕作 「確かに千葉だけど。」
柔 「地面が近づいてきたよ?」
耕作 「そろそろか。」
タイヤが地表に接触した衝撃が伝わってきた。
逆噴射の轟音が聞こえてきた、体が前方に引っ張られるように感じた。
速度が徐々に遅くなっていき、空港の建物が見えてきた。
柔 「着いたね~。」
耕作 「うん、これで落ちる事は・・。」
柔 「し~~~、不吉な事は言わないの。」
耕作 「え?何で不吉なの?」
柔 「あたし達は良いけど乗務員は帰りも乗らないといけないんだよ?」
耕作 「あ、そうだった、忘れてた。」
搭乗口にボーディング・ブリッジが接続された。
柔 「いよいよ降りれるのね。」
耕作 「そうだね。」
柔 「手荷物は、これだけだから大丈夫と。」
耕作 「預けたのを受取らないと。」
柔 「搭乗口の扉が開いたよ?」
耕作 「案内があるまでそのままかな?」
CA 「皆様、長旅、お疲れ様でした。」
CA 「搭乗口は前方と後方をお使い下さい。」
CA 「お降りの際はお忘れ物が無いか周囲をご確認下さい。」
CA 「それでは、どうぞ、お降り下さい。」
柔 「以上、報告終わります。」
耕作 「君が言ったんじゃないから。」
柔 「え~、良いじゃない?少し位。」
耕作 「さあ、降りよう?」
柔 「うん。」
二人は前方から降りて行こうとした。
CA 「大変、楽しませて頂きました、またのご利用をお待ちしています。」
耕作、柔 「ご丁寧にどうも、楽しんで頂けて良かったです、では。」
二人は通路を空港内へと歩いて行った。