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柔はキッチンに行くとお昼ご飯を作り始めた。
耕作 「煮物の匂いがするね。」
柔 「さすが、耕作さん、匂いだけで分かるのね。」
耕作 「この前も言ったよね?」
柔 「うん、そう言ってたね。」
ジョディー 「もう、二人、今直ぐ、結婚すると、良いだわ。」
柔、耕作 「それは許可を貰わないとね?」
ジョディー 「あ~、私、早く、帰りたくなっただわよ~。」
三人 「ふふふ。」
耕作 「ジョディー、空港には三人でタクシーで行こうか?」
ジョディー 「それが良いだわ。」
柔 「ジョディー?荷物は全部持ってきてるの?」
ジョディー 「持ってきてるだわ、柔。」
柔 「それなら心配いらないね。」
耕作 「ここを出る時に待ち合わせ場所にタクシーを呼んでおくね。」
柔 「耕作さん、お願いね。」
ジョディー 「耕作さん、お願いだわ。」
柔 「あ~、あたしの耕作さんをファーストネームで呼んでる~。」
ジョディー 「柔?松田、取ったり、しないだわよ?」
柔 「も~、ジョディーは~。」
柔、ジョディー 「あはは。」
柔 「出来たよ~、持って行くね~。」
柔はキッチンから料理を持ってくると、次々とテーブルに並べていった。
並べ終わった柔は耕作の隣に座った。
柔 「どうぞ、召し上がれ~。」
三人 「いただきま~す。」
耕作 「今日のも美味しいね~。」
ジョディー 「今日のも美味しいだわ~。」
耕作 「ジョディー、また真似してる。」
ジョディー 「あはは。」
耕作 「この卵焼きは、何を入れてるの?」
柔 「小エビを刻んで入れてみたよ。」
耕作「美味しいね~、これも合格だね。」
柔 「わ~い、また増えた~。」
ジョディー 「相変わらず、見せ付けて、くれるだわさ。」
柔、耕作 「あ、ごめん、ジョディー。」
ジョディー 「良いだわさ、二人、最高だわ。」
柔、耕作 「ありがとう~、ジョディー。」
柔 「二人共お替わりは?」
耕作 「お願いね。」
ジョディー 「お願いだわ。」
柔 「また同じ事言ってるね、ちょっと待ってて。」
柔はキッチンに二人の茶碗を持って行くとお替りを持って来た。
柔 「はい、お待たせ~、二人共どうぞ~。」
耕作 「ありがとうね。」
ジョディー 「ありがとうだわ。」
こうして三人は楽しく賑やかに昼ご飯の時間を過ごした。
ジョディーは結局、お替りを三杯追加していた。
三人 「ごちそうさま~。」
柔 「お粗末様でした。」
柔 「片付けしてくるね。」
柔はキッチンに食器を持って行くと二人にコーヒーを入れて持って来た。
柔 「耕作さん、どうぞ。」
耕作 「ありがとうね。」
柔 「ジョディーもどうぞ。」
ジョディー 「ありがとうだわさ。」
柔はキッチンに行き片付け始めた。
ジョディー 「柔?」
柔 「何?ジョディー。」
ジョディー 「柔、言ってる、「お粗末様でした」、どういう意味だか?」
柔 「本来は、あたしが作った食事を謙遜して言う事なんだけど、あたしはお礼の
意味で使ってるの、美味しく食べてくれてありがとうって意味でね。」
ジョディー 「そうだったか、日本語、奥深いだわさ。」
耕作 「柔さん、ほんとの意味を知ってたんだね。」
柔 「そうだよ?」
耕作 「さすが短大卒だね?」
柔 「ふふふ、見直した?」
耕作 「うん、見直したよ?」
ジョディー 「あ~~、もう~~、見せつけるなよ?」
柔、耕作 「あ~、ごめんよ~、ジョディー。」
三人 「あはは。」
柔 「さてと、終わった~。」
柔はキッチンから出てきて耕作の隣に座った。
耕作「ジョディー、少し寛いでから出掛けようか。」
ジョディー 「OK~、そうするだわ。」
耕作 「柔さんは少し休んだら・・。」
柔 「うん、分かってるよ。」
耕作 「直ぐ出られる様にね?」
柔 「うん。」
ジョディー 「二人、会話、他の人、聞いても、分からない、思うだわ。」
柔、耕作 「うん、そう思う、きっと分からないね。」
耕作 「気心が知れてるジョディーだから、俺達のこういう所を見せられるのさ。」
柔 「あたしもそう思う。」
ジョディー 「そうだか、それは、嬉しいだわ。」
柔 「耕作さん?」
耕作 「うん、行っといで。」
柔は外出着を持つと風呂場へ行った。
ジョディー 「なるほどだわ、そういう事、だっただか。」
耕作 「うん、そういう事なんだ。」
ジョディー 「松田、着せ替えて、やらないだか?」
耕作 「また、そういう事を言う~、ジョディーは。」
柔 「耕作さん?」
耕作 「柔さん、分かってるよ。」
柔 「ふふふ。」
ジョディー 「何、言ってるか、分からないだわ。」
柔、耕作 「ふふふ。」
柔 「お待たせ~。」
耕作 「うん、今日もいつも以上に可愛いね。」
柔 「ありがとう~、嬉しいな~。」
ジョディー 「あ~、もう~、空港、行くだわよ~。」
柔、耕作 「あ、ごめん、でも、そろそろ出ようか。」
柔 「あ、ジョディー、これ持ってってね。」
ジョディー 「これ、何だか?」
柔 「スキヤキのレシピよ、ご主人に食べさせてね。」
ジョディー 「おぉ~、主人、喜ぶよ~。」
ジョディー 「柔、ありがとうだわ、松田、先に行くだわ。」
ジョディーは先に出て行った。
耕作 「それじゃ、行こうか。」
柔 「その前に、でしょう?」
耕作 「うん。」
耕作は柔を優しく抱き寄せてキスをした。
柔も手を耕作の体に回し抱き付いて、それに応えた。
柔 「先にいつもの所に行ってるね。」
耕作 「うん、タクシーを呼んだら直ぐに行くから。」
柔は耕作を振り返りながら出て行った。
耕作はタクシーを手配すると、後を追う様に部屋を出て行った。
耕作 「二人共、お待たせ~。」
柔 「ううん、大丈夫よ。」
ジョディー 「ううん、大丈夫だわ。」
柔 「もう~、ジョディーは~。」
三人 「ははは。」
暫くするとタクシーが三人の元にやって来た。
三人は乗り込むと空港に向かった。
空港に到着した三人はロビーに入って行った。
ジョディー 「搭乗手続き、してくるだわ。」
柔 「あ、ジョディー、それは、あたしがやるから良いよ。」
ジョディー 「良いだか?お願いしても。」
柔 「ジョディー?これでも旅行代理店勤務だよ?あたしは。」
ジョディー 「そうだっただか。」
柔はジョディーからバッグと航空券を受け取ると搭乗手続き
カウンターに行きテキパキと手続きを済ませた。
柔 「はい、ジョディー、こっちが搭乗券でこっちがバッグとかの預かり証ね。」
ジョディー 「ありがとうだわ、柔。」
柔 「元気でね、ジョディー。」
耕作 「体に気を付けて、ジョディー。」
ジョディー 「柔、松田、元気で。」
ジョディー 「出来るだけ、早く、会いたいだわ。」
柔はジョディーに抱き付いて別れを惜しんでいた。
耕作 「ジョディー、そろそろ出発だよ。」
ジョディー 「分かっただわ、それじゃ、シー・ユー・アゲイン、また日本で。」
柔、耕作 「うん、また日本で会おうね~。」
三人は互いに手を振り名残惜しんだ。
ジョディーが搭乗口に消えていった。
柔 「行っちゃったね~。」
耕作 「直ぐに日本で会えるさ。」
柔 「そうだよね、直ぐに会えるよね。」
耕作 「この後どうする?」
柔 「耕作さんが言ってた様に買い物を先にしようか?」
耕作 「そうだね、いつまでもしてないんじゃ落ち着かないだろう?」
柔 「もう~、耕作さんのエッチ~。」
柔は小声でそう言った。
耕作 「これこれ、小声でも安心出来ない事言わないの。」
柔 「は~い、分かった~。」
耕作 「柔さんは、その返事ばかりだね。」
柔 「ふふふ。」
耕作 「それじゃ、行こうか。」
柔 「うん。」
柔 「あ、耕作さん、会社は?」
耕作 「あ、そうだった、お店に行く前に寄っても良いかな?」
柔 「当たり前だよ?記事を出さないと取材を打ち切られるかも?」
耕作 「そうだね、じゃあ、先に会社に行くね。」
柔 「うん。」
柔 「耕作さん?原稿は?」
耕作 「大丈夫だよ、いつでも出せる様に持ってるから。」
柔 「さすがね~。」
二人は空港を出るとタクシーを拾い会社に向かった。
二人は会社の前でタクシーを降りた。
耕作 「じゃあ、ちょっと行ってくる、いつもの場所で待ってて。」
柔 「うん、行ってらっしゃい。」
耕作と柔は手を振りあって別れた。
耕作はビルの中に柔は公園のベンチへとそれぞれ向かった。
柔 「(また、耕作さんに心配かけちゃったな。)」
柔 「(頭では分かってるんだけど、心がどうしても離れたくないって
思ってるのよね。)」
柔 「(それは今でもだけど。)」
柔 「(でも、耕作さんの説得って納得出来るから不思議だな。)」
柔 「(耕作さんが言うからあたしも安心出来るのかな?)」
柔は耕作の声に反応した。
耕作 「柔さん、待たせちゃったね。」
柔 「大丈夫だよ?以下略。」
耕作 「これこれ、分かってるけど以下略は無いんじゃない?」
柔 「うふふ、ごめんね~。」
耕作 「じゃあ、買いに行こうか。」
柔 「うん。」
二人は店に向かって歩いて行った。
暫く歩くと店に到着した、二人は早速、店に入った。
耕作 「今、持ってるのが全滅だとすると幾つ必要なの?」
柔 「両手の数じゃ足りないかも?」
耕作 「さすが女の子だね?」
柔 「うふふ、全部は耕作さんには見せてないね?」
耕作 「まあ、持ってきてるのは大半見てるかも?」
柔 「耕作さん、鼻の下伸びてるよ?」
耕作 「これこれ、揶揄わないの。」
柔 「うふふ、でも余り買えないね。」
耕作 「どうして?」
柔 「荷物が入りきらなくなっちゃう。」
耕作 「そうか、旅行バッグも買おうか?」
柔 「悪いよ~、そこまでして・・。」
耕作 「君は俺の・・。」
柔 「分かってるよ?ありがとう~。」
耕作 「そうそう、素直が一番だね。」
柔 「じゃあ、10程買うね。」
耕作 「もしかして、俺にも評価させるつもりじゃないよね?」
柔 「大当たり~。」
耕作 「大当たり~、じゃないから、他の人に見られたらどうするの?」
柔 「大騒動になるね?」
耕作 「そう、良く分かってるじゃない?」
柔 「じゃあ、一つだけ希望を言っても良い?」
耕作 「言いたい事は分かってるから、柔さんの買いたい物を買って良いからね?」
柔 「うふふ、後で着せて貰うね?」
耕作 「こらこら、またそうやって・・。」
柔 「耕作さんが嫌ならしないけど。」
耕作 「また、・・。」
柔 「じゃあ、お願いね~。」
耕作 「以心伝心もこういう時は不利だな、俺。」
柔 「じゃあ、選んでくる~。」
耕作 「ふ~、良いよ、行っておいで。」
柔 「わ~い。」
耕作 「(まるで子供だよな~、こういう時の柔さんは。)」
耕作は柔が選び終わるまで待っていた。
暫くすると買い物カゴ一杯にブラを持って来た。
耕作 「そんなに種類有るんだね。」
柔 「うん、有るんだよ~?」
耕作 「それで良いかい?」
柔 「うん、これで良いよ。」
耕作 「じゃあ、会計済ませようか。」
柔 「うん。」
二人は会計を済ませると店を後にした。
耕作 「さっき見た感じだと、色取り取りあったね。」
柔 「うん、見た目が良い物とか大きく見せるのとか有るんだよ?」
耕作 「大きく見せる?」
柔 「そうだよ?」
耕作 「そう言うのもあるのか・・。」
柔 「帰ったら試してみようか?」
耕作 「柔さんがそうしたいなら構わないよ?」
柔 「え~、あたしは耕作さんに喜んで貰おうと思って買ったのに~。」
耕作 「それは分かってるけど。」
柔 「耕作さんは見たくないの?」
耕作 「あ、そろそろだから、いつもの様にね。」
柔 「は~い、先に戻ってるね~。」
耕作 「うん、直ぐ戻るから。」
柔 「直ぐ戻るの?じゃあ、・・。」
耕作 「それまで!」
柔 「う、く・・。」
耕作 「それまで!」
柔 「あ~ん、耕作さんが喋らせてくれない~。」
耕作 「もうね~、早く部屋に戻ろう?ここでこんな会話してると危ないって。」
柔 「くすん、分かった~、直ぐ戻ってね?」
耕作 「直ぐ戻るから機嫌直してね?柔さん。」
柔 「うん、待ってるよ?」
耕作 「うん。」
柔 は足早に部屋に戻って行った。
耕作 「(俺を喜ばせようとしてるのは分かるんだけど、)ふぅ~。」
耕作は部屋に戻って行った。
耕作 「柔さん、今、戻ったよ~。」
柔 「お帰り~、耕作さん。」
耕作 「(機嫌は直ってるみたいだな、良かった。)」
柔は部屋着に着替えていた。
耕作 「柔さん?」
柔 「な~に~?耕作さん。」
耕作 「新しく買ったの着けたの?」
柔 「何で分かったの?」
耕作 「だって、柔さんの胸。」
柔 「あ~、これ?どうかな?」
耕作 「ほんとに、大きくなるんだね・・。」
柔 「どうかな?」
耕作 「うん、良いね、それ。」
柔 「ほんと?」
耕作 「うん、ほんとだよ?」
柔 「良かった~、気に入って貰えて。」
耕作 「ただね?」
柔 「どうしたの?」
耕作 「それを着るのは俺の前だけにして貰えると嬉しいかな~って。」
柔 「何で?」
耕作 「俺しか知らない柔さんで居て欲しいから。」
柔 「耕作さんがそう言うならそうするね。」
柔 「じゃあ、着替えてくる~。」
耕作 「(あれで外を歩かれるかと思うと、俺、嫉妬してるのかな?)」
柔 「着替えたよ~、ついでに服も。」
耕作 「あの~、柔さん?」
柔 「どうかしたの?耕作さん。」
耕作 「柔さんの胸の。」
柔 「あたしの胸の?何?」
耕作 「それ、谷間を強調し過ぎてない?」
柔 「そうかな?」
耕作 「出来ればそれも、俺の前だけに。」
柔 「うん、ならそうするね。」
柔 「また着替えてくるね。」
耕作 「(両方とも俺を喜ばせる為に買ったのか、健気な子だな。)」
柔 「これはどうかな?また服も着替えたけど。」
耕作 「うん、それ良いね、それなら大丈夫だから。」
柔 「そうなんだ、これにするね?今日のは。」
耕作 「(俺が着替えさせるのは忘れてるみたいだから良かった。)」
柔 「ところで、耕作さん?」
耕作 「何だい?柔さん。」
柔 「今、大丈夫って言ったのはどういう事なのかな?」
耕作 「ごめん、柔さん。」
柔 「何で耕作さんが謝るの?」
耕作 「さっきの二つ、俺を喜ばせようとして買ったんだよね?」
柔 「うん、そうだよ?耕作さんに喜んで貰う為に買ったの。」
耕作 「他の人に見られるかと思うと、その見る人に嫉妬してた。」
柔 「ほんと?」
耕作 「うん、ほんとだから、ごめんね。」
柔 「嬉しいな~。」
耕作 「何で?」
柔 「あたしに焼餅焼いてくれたから。」
耕作 「それで嬉しいの?柔さんは。」
柔 「だって、それって、あたしを大事に思ってくれてるからでしょう?」
耕作 「あ、そうだね、そうなるね。」
柔 「あたしも耕作さんを大事に思ってるから、同じだって思ったの。」
耕作 「なるほど、そうなんだね。」
柔 「あ、・・。」
耕作 「うん、お願いね。」
柔 「うふふ。」
柔はキッチンに行くとコーヒーを入れて耕作の所に来た。
柔 「耕作さん、ソファーに座ろう?」
耕作 「うん、そうするね。」
耕作がソファーに座ると柔はコーヒーを渡していつもの姿勢で膝に座った。
柔 「耕作さん、あたし、明日帰るけど直ぐに日本に帰って来てね。」
耕作 「勿論そのつもりだから安心してね、柔さん。」
柔 「あたしが帰った後もちゃんと食事はしてね?」
耕作 「うん、君に心配は掛けたくないからキチンとした食事をするよ。」
柔 「あたしが帰った後も部屋は余り汚さない様にしてね?」
耕作 「うん、出来るだけ汚さなようにするから。」
柔 「・・・。」
柔 「耕作さん、・・やっぱり、あたし帰りたくない。」
耕作 「そう言うと思ってた、柔さん、この前話した事は覚えてるよね?」
柔 「うん・・、覚えてるよ。」
耕作 「今の悲しみとか寂しさは日本での二人の生活する時に大きな喜びを
もたらすものだって、君も十分に分かってるよね?」
柔 「うん・・、分かってる・・けど・・。」
耕作 「柔さん?これが永遠の別れじゃないのも分かるよね?」
柔 「うん、・・分かってる。」
耕作 「うん、分かってるなら俺が頼んだ事も覚えてるよね?」
柔 「うん、分かってるよ。」
耕作 「じゃあ、俺が頼んだ事をする為にはどうするかも分かるよね?」
柔 「うん、あたしが日本に帰らないと頼まれた事が出来ないんだよね?」
耕作 「それなら、柔さんがこの先するべき事も分かるよね?」
柔 「うん、直ぐにでも帰って頼まれた事をやって耕作さんに良い知らせを
しないといけないんだよね?」
耕作 「うん、そうだね、だから柔さんは俺の為にも日本に
帰らないといけないんだよ?」
柔 「うん、分かった、明日、日本に帰って耕作さんに出来るだけ早く
良い知らせをするね。」
耕作 「柔さん、お願いね、俺達が一緒に暮らす為に日本に帰ってね。」
柔 「うん、あたしもそれを楽しみにして日本に帰って、耕作さんを待ってる。」
耕作 「それでこそ、俺が心から愛してる柔さんだから。」
柔 「耕作さん、あたしもあなたを心から愛してる。」
二人は見つめ合い長めのキスをした。
柔 「耕作さん、ごめんね、やっぱり、あたし、あなたに助けられるね。」
耕作 「いや、俺だって君を傍から離したくないって思ってる、でも前も
言った様にこのままじゃいけないって分かってるから。」
柔 「そうだよね、このままじゃ先に進めないんだよね。」
耕作 「うん、その通りだよ、良く分かってるね、柔さん。」
柔 「やっぱり、まだまだ弱い部分あるね、あたしって。」
耕作 「俺も柔さんと同じで弱い部分は持ってるから。」
耕作 「それを補う為にも早く二人で一緒に暮らさないと
いけないんだって思うんだ。」
柔 「その為にも二人で一緒に暮らす、うん、分かる気がする。」
耕作 「ここでの生活を思い出してごらん?」
柔 「うん、ここでの生活を日本で一緒になっても続けるって言ったね。」
柔 「二人だと全てが楽しく思える、二人だと何でも乗り越えられる、
二人だとお互いを思って安らげる。」
柔 「そういう生活を日本でも一緒にやっていくのが大事なんだよね。」
耕作 「うん、お互いが同じ考え、同じ思いを持ってると今は確信出来る
から強くなれるんだよ。」
柔 「耕作さん、ありがとう、あたし、あなたの為にも日本に帰るね。」
耕作 「うん、そうしてね、俺は一刻も早く帰る様にするから。」
柔 「うふふ、やっぱり、あたしには耕作さんが必要だね。」
耕作 「俺にも柔さんは欠かす事が出来ない存在だから。」
柔 「それじゃ、そろそろ、最後の練習に行くね。」
耕作 「うん、俺もここでの最後の記事になる練習に同行するね。」
柔 「キスはさっきしたから良いよね?」
耕作 「君が望めば何度でも。」
柔はそっと目を瞑り耕作を見上げる様に顔をあげた。
耕作は両手で優しく頬を包むと優しくキスをした。
柔 「耕作さん、ムードあるキスも上手になったよね。」
耕作 「柔さんも今の仕草は最高だったよ。」
柔 「うふふ、それじゃ、いつもの場所で待ってる。」
柔は耕作を何度も振り返りながら出て行った。
耕作も少し間をおいて柔の後を追う様に部屋を出て行った。
耕作 「柔さん、お待たせ~。」
柔 「ううん、余り待たなかったから。」
耕作 「行こうか。」
柔 「うん。」
二人は道場に向かった。
道場周辺は少なくなったとはいえ、依然群衆は居た。
柔は群衆の近くに行くと一礼をして道場の入り口に向かった。
道場に入ると、周囲から拍手が聞こえてきた。
柔は道場に一礼して、その拍手のする方向にも一礼した。
マイケルが直ぐにやって来た。
マイケル「ミス・イノクマ、これで最後になりますが今日もよろしくお願いします。」
柔 「こちらこそ、短い間でしたがお世話になりました。」
マイケル 「では、準備が出来たら声を掛けて下さい。」
柔 「はい、トレーニングとか終わったら声を掛けますから。」
マイケルはみんなの所へ戻って行った。
柔 「耕作さん、着替えたら直ぐに始めるね。」
耕作 「うん、頑張れよ。」
柔 「はい!」
柔は着替えに行って柔道着姿になると早速、トレーニングを始めた。
耕作 「(今日はもうさすがにマスコミも数社になったか。)」
耕作 「(柔さん、相変わらずのペースの速さだな。)」
耕作はカメラを構えると柔の姿を続けざまに収めていった。
耕作 「(柔さん、直ぐに帰るから待っててくれよ。)」
耕作 「(相変わらずキラキラと輝いてるな。)」
耕作 「(あれから7年近くなるのに、俺の中での柔さんは色褪せるどころか
輝きを増してる気がする。)」
柔は打ち込みを始めていた。
耕作 「(凄い気魄だな、試合をしてる様な顔をしてる。)」
耕作 「(打ち込みでも相手を想定してる様な感じだな。)」
柔は相変わらず耕作を時々見ていた。
耕作も見られる度に相槌を打つ様に頷いて見せた。
やがて柔は打ち込みが終わると耕作の元に戻ってきた。
耕作 「お疲れ様、柔さん。」
柔 「はい、今日はどうだった?」
耕作 「今日も相変わらずのハイペースだね。」
柔 「そうなんだ、良かった。」
耕作 「今日はどうするの?」
柔 「昨日と同じでも良いかな?」
耕作 「柔さんの事だから、また何か気が付いたらどこかを変えるんだろう?」
柔 「そうなるかも?」
柔 「それじゃ、最後の練習に行ってくるね。」
耕作 「うん、頑張れよ。」
柔 「うん、頑張る。」
柔はマイケルの所へ行くと練習を始める旨を話していた。
いつもの様に柔の周りに五人が集まった。
柔は一人ずつ乱取を開始した。
相手に技を掛けさせるのは昨日までと同じだったが、今回は
かわさなくて相手が技を掛ける寸前で柔が技を掛けていた。
次に移る時に、何故そうなったのかを相手に教えている様だった。
相手が注意した点を改善して技を掛けた時に柔は投げられていた。
相手が改善していない時は柔は相手に同じ様に技を掛けて
倒した後に再び注意点を教えていた。
それを何度か繰り返して相手が注意した点を完全に改善した所で
次の道場生と交代し、同様のやり方で乱取を行っていた。
五人全てが終わって終わりかと思われたが、今度は試合形式で
その五人で乱取を開始した。
柔はその様子を見ていて、どちらかが倒された時に何故
そうなったのかを丁寧に説明していた。
これを五人総当たり形式で行って、全てが終了した。
柔の前に五人が整列して一礼を交わした後、五人と握手を交わし
一人一人と何か話をして耕作の元に戻ってきた。
マイケルは最初からずっと柔に付きっきりで通訳をしていた。
柔 「耕作さん、どうだった?」
耕作 「また、変えてたねやり方。」
柔 「うん、技を掛ける際は自分も隙が出来易い事を教えたかったの。」
耕作 「良くそういう事を思いつくよね、柔さんって。」
柔 「これは、あたし自身もそうだから、この隙を相手に付かせない様に
するには、どうすれば一番良いかを教えたかったの。」
耕作 「柔さん、君は教え方も進歩する事が出来るんだね、凄いよ。」
柔 「そうなのかな?自分だとこうするって言うのを教えたかっただけなんだけど。」
耕作 「柔さんって何でもそうだけど、閃きが凄いんだと思う。」
柔 「どういう事なの?」
耕作 「君って料理でもそうじゃない?食材を見て、これを作るんだって
閃いてるでしょう?」
柔 「あ、そういえばそうだったね。」
耕作 「柔道でもこうすればって閃いてるんだと思うよ?」
柔 「そう言われれば、そうかもしれないかな?」
耕作 「ジョディーも言ってたけど駆け引きも以前と違って凄かったって、
俺が思うに駆け引きもその場その場で閃いて対処してるんだと
思うんだ。」
柔 「そうなのかな?自分では余りそこまで考えてない気がするんだけど。」
耕作 「君がその片鱗を見せた試合があったでしょう?」
柔 「どの試合だろう?」
耕作 「前回のオリンピックの体重別の決勝戦のマルソー戦だよ?」
柔 「あ~、あれは、あたしが一本背負いでマルソーさんに投げられて、
動きを崩すにはどうすれば良いかを思い付いた方法をやっただけ
なんだけど。」
耕作 「うん、そうだったね、周りの人達はそれに気が付いて無かった、
単に君が苦戦していたとしか見てなかった。」
耕作 「今、君が思い付いたって言ってた事が閃きなんだと思う。」
耕作 「この闘い方は滋悟朗さんも見抜けなかったみたいなんだ。」
柔 「え?そうなの?おじいちゃんも分からなかったんだ。」
耕作 「そうだよ、その事から柔さんはその点では滋悟朗さんを
超えたんだと俺は思ってる。」
柔 「まさか~、あたしなんてまだまだだと思うよ?」
耕作 「そう思うって事は、柔さんの柔道にはまだ伸びしろが、
かなり残ってるって事になると思うよ?」
柔 「どうしてそう思うの?耕作さん。」
耕作 「俺が色々なスポーツをやって挫折した話をした事が有ったよね?」
柔 「うん、最初に泊まった時のお話だったね。」
耕作 「俺はそのスポーツで限界を感じて挫折したんだよ。」
柔 「そうだったの?」
耕作 「うん、限界が見えてくると、それ以上そのスポーツでは
上手く出来ないって事になるから挫折したんだけどね。」
柔 「そうだったんだ。」
耕作 「だから、今、柔さんがまだまだって言ったという事を
考えると君の柔道は限界に来てないって事なんだ。」
耕作 「つまり、限界が来てないって事は、柔さんの柔道は
更に上手く出来る様になるって事になるんだ。」
柔 「そうなんだね、じゃあ、まだまだ頑張っても良いんだね。」
耕作 「うん、柔さんが頑張れば更に君の柔道は進化すると思うよ。」
耕作 「その行き着く先が滋悟朗さんと虎滋朗さんが願ってる柔さんの
柔道を極めるって事になれば二人も安心出来ると思う。」
柔 「そうなれると良いな。」
耕作 「問題が無い訳じゃ無いんだけどね、そうなる為に。」
柔 「え?問題があるの?」
耕作 「君も聞いてるかもしれないけど、ジョディーから君と
試合をした感想を聞いたんだ。」
耕作 「ジョディーはこう言ってた「今の柔のスピードに追い付ける人は
居ない。」ってね。」
耕作 「これがどういう事か、柔さんになら分かるよね?」
柔 「現時点であたしに勝てる相手が居ないって事?」
耕作 「うん、その通り、それが問題なんだ。」
柔 「でも、ジョディーが居る、彼女なら練習であたしを追い越そうとして来る、
あたしには分かるの、彼女の柔道もまだ進化するって。」
耕作 「そうか、ジョディーか、そうだね、あの人ならやれそうだね。」
柔 「だから、あたしも頑張れるって思うよ。」
耕作 「あ、そろそろ帰ろうか、続きは帰ってからでもしよう?」
柔 「うん、じゃあ、着替えてくるね、ちょっと待ってて。」
耕作 「うん、でも慌てなくて良いから。」
柔 「うん、分かった~。」
柔は着替えに行くと、暫くして着替え終わって耕作の元に戻って来た。
柔が戻ってくると道場生達が柔の前に整列した。
マイケルが代表して柔に話しかけた。
マイケル 「ミス・イノクマ、短い期間でしたが有意義な練習が出来たと思います。」
柔 「いえ、これもみなさんが真剣に取り組んでくれたお陰です。」
マイケル 「これからもミス・イノクマに教えていただいた事を忘れずに
練習を続けていきたいと思っています。」
柔 「そうして頂けると、あたしもお教えした甲斐があります。」
マイケル 「ミス・イノクマ、本当にありがとうございました。」
すると道場生達からもこう言われた。
道場生一同 「ミス・イノクマ、アリガトウゴザイマシタ。」
たどたどしい日本語ではあったが心が篭っていた。
柔 「皆さん、こちらこそ、ありがとうございました、もし機会が有ったら、
また、ここに来たいと思います。」
マイケルが柔の話す事をみんなに丁寧に通訳してくれていた。
柔 「それでは、これで失礼します、シーユーアゲイン。」
柔は皆に一礼した。
皆も柔に一礼した。
道場生一同 「シ-ユーアゲイン、ミス・イノクマ。」
柔は何度も振り返りながら手を振って道場を出た、出る際には道場にも
一礼をして外に出た。
外に出ると群衆に拍手で送られる形になった、柔は群衆の皆にも
一礼をすると耕作と共にその場を後にした。