柔と耕作(松田)米国滞在日記 (8日目午後編・後編)
      お断り:文書量(文字数)が多くなりましたので1日を5分割してお届けします。







      耕作 「柔さん、戻ったよ~。」

      柔 「耕作さん、お帰り~。」

      いつもの様に風呂場から返事が返ってきた。

      耕作 「(乙女の身だしなみか、しっかり、女の子してるな~柔さんは。)」

      柔 「そうだよ~、耕作さんに恥はかかせられないから。」

      耕作 「(上機嫌そうだな。)気を遣って貰ってありがとうね。」

      耕作はソファーで寛いだ。
      暫くしたら柔はいつもの格好で風呂場から出てきた。

      柔 「コーヒー入れるね。」

      柔はキッチンへ向かい、コーヒーを持って耕作の元へやってきた。

      柔 「はい、どうぞ~。」

      耕作 「いつもありがとうね~。」

      柔は暫く立っていた。

      耕作 「柔さん?」

      柔 「な~に?耕作さん。」

      耕作 「座らないの?」

      柔 「この格好のままだと耕作さん嫌でしょう?」

      耕作 「嫌って訳じゃないよ?」

      柔 「座っても良いの?」

      耕作 「うん、構わないよ?」

      柔は微笑みながら耕作の膝に座ってきた。

      柔 「耕作さんは、ほんとにあたしの事を良く見てるよね。」

      耕作 「もう何度もその姿を見てるから。」

      耕作 「今日の練習、お疲れ様。」

      柔「 ありがとう~。」

      耕作 「これからどうする?まだ晩御飯まで時間が有るけど。」

      柔 「久しぶりにスクラップブックでも見ようか?」

      耕作 「そうしようか。

      柔 「それじゃ、持ってくる~。」

      耕作 「着替えてからでも良いんじゃない?」

      柔 「乾くまで時間が掛かりそうだから、見ている間に乾くと思うよ?」

      耕作 「それもそうだね。」

      柔はスクラップブックのVol.3を本棚から取り出すと耕作の膝に座った。

      柔 「この前は開かずにお話ししたから2ページ目からだよね。」

      耕作 「そうだったね、何を貼ってたかな?」

      柔 「もう開くよ?また前みたいになりそうだから。」

      耕作 「ははは、そうだね。」

      柔が2ページ目を開いた。
      そこには写真は無かったが3ページ目も使ってユーゴでの試合後の二人の様子が書いてあった。

      耕作 「あ、そうか、あの出来事が思い出深かったから、その事を書いたんだった。」

      耕作、柔 「あの時、勇気を出していれば・・。」

      柔 「あは、同じ事を思ってたね。」

      耕作 「そうだね、あの時告白していたら二人の関係はまた違っていたかも。」

      柔 「そうだよね。」

      耕作 「あの後は暫く普通に柔道をしてる柔さんとそれを取材する俺だったから。」

      柔 「その時でも耕作さんの存在を大切に思ってた、それは試合結果にも表れてたと思う。」
 
      4ページ目はユーゴ後の全日本選手権の試合の記事だった。

      耕作 「柔さんが就職して最初の大会だったね。」

      柔 「あたしがお仕事を優先させて、不戦敗になりそうだった大会だよね。」

      耕作 「あの時は滋悟朗さん、かなり怒ってたよ?」

      柔 「あたしもそう思ったんだけど、最初に取れたお仕事だったので、富士子さんにも
         相談したら、お仕事を優先させなさいって言われてお仕事を取っちゃった。」

      耕作 「あの時、羽衣さんは首を覚悟してたって後で聞いたよ。」

      柔 「そうだったんだ・・、申し訳ない事をしちゃったな・・。」

      耕作 「ううん、羽衣さんは柔さんに柔道を優先して欲しかったみたいだから、
          後悔はしてなかったと思うよ。」

      柔 「そういえば、羽衣課長代理はあたしを空港に行かせる時に「君は柔道をしなくちゃ
         いけないんだ、こんな事をしてる場合じゃないんだって。」って言われた。」

      柔 「それに日刊エブリーであたしの試合結果をわくわくしながら読んでたとも言ってた。」

      耕作 「そうだろう?だから申し訳ない事は無いと思う。」

      柔 「そうかもしれないね。」

      耕作 「柔さん、これからもそういう人達の為にも柔道を頑張らないとね?」

      柔 「はい!」

      柔 「乾いたみたいなので着替えるね。」

      柔はスクラップブックを本棚に戻した。

      耕作 「柔さん?」

      柔 「どうしたの?耕作さん。」

      耕作 「君、まさかここで着替えるつもりじゃないよね?」

      柔 「ダメなの?」

      耕作 「柔さんがそう決めていたら、俺が言っても聞かなんじゃないの?」

      柔 「耕作さんが嫌ならしないよ?」

      耕作 「それを言われると弱いんだよね、俺。」

      柔 「弱いって?」

      耕作 「嫌って訳じゃないから。」

      柔 「それなら良いのかな?」

      耕作 「柔さんが良いなら構わないって、前も言ったからね。」

      柔 「ほんと~に、ここでも良いのかな?」

      耕作 「柔さんは今日言ってたでしょう?ここまでなら大丈夫っていう事ならしますって。」

      耕作 「だから、俺も柔さんを信じてるから君の判断に任せるから、君が決めて良いよ?」

      柔 「わ~い、じゃあ、着替えを持ってくるね。」

      耕作 「(一抹の不安が無い訳じゃないんだけど。)」

      柔 「持ってきたよ~。」

      耕作 「や・わ・ら・さ・ん?」

      柔 「な~に?こ・う・さ・く・さ・ん。」

      耕作 「真似しないの。」

      柔 「えへへ。」

      耕作 「柔さん、君をちゃんと見ているつもりだったけど今回は俺も見誤った、
          君は何も着ていなかったんだね?」

      柔 「え?そう思っていたんじゃなかったの?」

      耕作 「見誤ってた、松田 耕作、一生の不覚。」

      柔 「そんな大袈裟な~。」

      耕作 「いやいや、さすがに裸はまずいよ裸は。」

      柔 「そうなの?」

      耕作 「柔さんは恥ずかしく・・、そうか前に言ってたね、君は。」

      柔 「うふふ、耕作さん、良く覚えてたね?」

      耕作 「少し恥ずかしいけどとは言ってたけど。」

      柔 「着替えても構わないかな?」

      耕作 「ちょっと待ってね、気持ちを落ち着かせるから。」

      柔 「どうしてそんな事をするの?」

      耕作 「理性の箍が外れない様にする為なんだけど。」

      柔 「耕作さん、箍が外れそうなの?」

      耕作 「今回はけじめを守れるか不安なんだよ~。」

      柔 「じゃあ、止めようか?」

      耕作 「柔さん、止めてくれるの?」

      柔 「耕作さんがそれを望むなら。」

      耕作 「やっぱり、さすがに裸は今はダメだから、是非、お願いします。」

      柔 「今、はダメなのね?」

      耕作 「う、うん、結婚の許可を貰って、結婚したら柔さんがしたい様にしても構わないから。」

      柔 「うふふ、今の言葉、あたしの記憶に留めたよ?」

      耕作 「構わないよ。」

      柔 「少し残念だけど、ゆ・る・し・て・あげる。」

      耕作 「柔さん、君って柔道の駆け引きも上手いけど、こういう駆け引きも上手いんだね。」

      柔 「別に駆け引きをしてたつもりは無いんだけど。」

      耕作 「無意識でそれが出来るって凄いよね、柔さんって。」

      柔 「それじゃあ、着替えてくるね。」

      柔は風呂場へと向かった。

      耕作 「(危なかった~、まんまと柔さんの罠に嵌る所だった。)」

      柔 「罠なんかかけてないよ?」

      耕作 「(柔さん上機嫌なんだな。)そんな事は思っていないよ?」

      柔 「そうなの?」

      耕作 「うん。」

      柔が風呂場から着替え終わって出てきた。

      耕作 「やっぱり、それを着たんだね?柔さん。」

      柔 「やっぱりって事は予想はしてたのね?耕作さんは。」

      耕作 「さっき、着たそうにしてたから。」

      柔 「あの頃に戻ったみたいだよね?」

      柔は耕作の膝に座り頭を耕作の肩に預けてきた。

      耕作 「あの頃はお互いに苦い思いを結構してたと思うけど。」

      柔 「確かにそうかもしれないけど、楽しかった思い出も沢山有るからね~。」

      耕作 「俺も柔さんを泊めたのは良い思い出かな?」

      柔 「そうだったの?」

      耕作 「君から自身の思いを聞いたし、それに優しい君も見られた、後、
          やっぱり普通の女の子だっていうのも分かったから。」

      耕作は柔の顔を見た、柔も顔を上げて耕作の顔を見ていた。

      柔 「あたしは普通にしてただけなんだけど。」

      耕作 「柔さん、意識せずに普通にああいう事が出来るのは素晴らしい事だと
           今でも俺はそう思うよ。」

      柔 「えへ、耕作さんに褒められちゃった~。」

      耕作 「今でもそれは続いてるみたいだし。」

      柔 「そうなの?」

      耕作 「そうだよ?こっちに来てから柔さんが取った行動は俺の為に、料理を作る事と
           俺に対して過激な事をする以外はそうしてる様に思うんだけど違うかな?」

      柔 「う~ん、そうなのかな~?」

      耕作 「ね?思い当たらないって事は柔さんは意識して行動してないんだよ。」

      柔 「そう言われたら、そうかもって思うかな?」

      耕作 「柔さん、君はやっぱり素敵な女の子だね。」

      柔 「えへ、また褒められちゃった。」

      耕作 「柔さんは今では素直にそうやって喜んでくれるから俺も嬉しいよ、
           これも意識してない事の一つだけど。」

      柔 「確かに、あのクリスマス・イブ以前だと耕作さんを意識する余り、素直じゃない
         自分が居た事は間違い無いと思うの。」

      耕作 「柔さん、今だから思うんだけど、君って恋する事に憧れてた気がするんだよね。」

      耕作 「そういう経験が無かったっていうのも有るんだろうけど。」

      柔 「うん、それは、あたしも今だからそう思うかな?」

      柔 「今になって思い返すとデートも素敵な恋もしたいって思ってたけど、どう考えても
         耕作さんとやった事って他の人が見たら、そのどちらも当て嵌ってた気がする。」

      耕作、柔 「だからジョディーがああいう風に思ったのかも。」

      柔 「あはは、また同じ事を考えてたね。」

      耕作 「そうだね、やっぱり似た者同士なんだ、俺達って。」

      柔 「あ、いっけな~い、晩御飯を作らないと~。」

      耕作 「もうそんな時間になってたか、相変わらず柔さんと話してると
           直ぐに時間が経つね~、楽しいから。」

      柔 「コーヒーのお替わりは?」

      耕作 「お願いね。」

      柔 「は~い。」

      柔はエプロンを着けてキッチンへ行きコーヒーを持って戻って来て耕作に渡した。

      柔 「はい、あたし達の思い出が沢山入ったコーヒーをどうぞ~。」

      耕作 「ありがとうね、改めて思い出しながら頂くね。」

      柔 「それじゃ、作ってくるから、ゆっくりしてて。」

      耕作 「うん、待ってる。」