お断り:文章量(文字数)が多くなりましたので1日を5分割してお届けします。
柔 「出来た~、卵焼きは、ちょっと不安だけど。」
耕作 「大丈夫、柔さんの料理の腕前は十分に知ってるから。」
柔 「今、そっちに持っていくから。」
耕作 「うん、座って待ってるよ。」
柔は料理を次々にテーブルに並べていった。
耕作 「特製卵焼きの中に何か入れたんだね。」
柔 「うん、韮を刻んで入れてみたの。」
耕作 「ほんとに料理も器用だよね、柔さんって。」
柔 「伊達に家政科卒業じゃないんだからね。」
耕作 「そうだったね。」
柔 「今日も焼き魚とかの和食風味だよ~。」
耕作 「和食は癒されるね、勿論、柔さんが作った料理は全て癒されるんだけどね。」
柔 「それじゃ、食べよっか。」
耕作 「うん。」
耕作、柔 「いただきま~す。」
耕作 「柔さんがここに来てから一緒に食べる様になって食事の時間が楽しくて
毎回楽しみになったよ。」
柔 「あたしもこっちに来てから耕作さんの為にお料理をするのがより一層楽しくなったかも。」
耕作 「ほんとに柔さんと一緒に暮らせるのが楽しみだ。」
柔 「うふふ、今も一緒に暮らしてるけどね。」
耕作 「確かにそうだよね。」
耕作 「柔さん、卵焼き美味しかったよ、あれ大成功だね。」
柔 「ほんとに~?良かった~、一つ種類が増えた~。」
耕作 「嬉しそうにしてる、柔さんも最高だね。」
柔 「うふ、晩御飯も頑張っちゃう~。」
耕作、柔 「ごちそうさま~。」
柔 「お粗末様でした。」
柔 「コーヒーを入れてくる~。」
耕作 「うん、待ってるね。」
柔はキッチンへ食器を持って行くと直ぐにコーヒーを入れて戻ってきて耕作にコーヒーを渡した。
柔 「どうぞ、コーヒーお待たせ~。」
耕作 「ありがとうね~。」
柔はキッチンに行くと鼻歌交じりで片付け始めた。
耕作 「柔さん?」
柔 「な~に?耕作さん。」
耕作 「言い忘れてたけど、柔さん、そのエプロン凄く似合ってるよ。」
柔 「えへ、そう言って貰うと嬉しいな~。」
耕作はソファーに座り直して柔を見ていた。
耕作 「(エプロン姿の柔さんも可愛いな。)」
柔 「耕作さん、ありがとう~。」
耕作 「(上機嫌だな、柔さん。)」
柔 「片付け終了~。」
耕作 「お疲れ様~。」
柔はキッチンから出てくるとエプロンを外し畳んでテーブルの傍の椅子に掛けた後、
耕作の膝に座ってきて頭を耕作の肩に預けてきた。
耕作 「練習まで間が有るけど何かする?」
柔 「こうしていたい。」
耕作 「うん、そのままで良いよ。」
耕作は柔の頭を優しく撫でた。
暫くすると柔は静かな寝息を立てながら眠ってしまった。
耕作 「やっぱり疲れているんだろうな。」
耕作 「柔さんは頑張り屋さんだから弱音は言わないけど、色々と俺の為にしてくれてるから。」
耕作は柔を優しく抱き寄せて、倒れないように支えた。
静かになった空間に柔の寝息だけが響いていた。
耕作が柔の顔を見ると微笑んでいた。
耕作「買い物に連れて行って良かったな~、あんなに喜んでくれていたし。」
耕作 「そう言えば窮屈な服のままだったのか、俺のプレゼントだから
無理して着てるんだろうな、でもそれも今日までかな?」
耕作 「柔さんごめんよ、色々と無理させてるんだろうな。」
暫くそうしていると、柔が目を覚ました。
柔 「あ、耕作さん、ごめんね~、あたし寝ちゃってたのね。」
耕作 「良いよ?よく眠れた?」
柔 「うん、ぐっすり寝てた。」
耕作 「それなら良かった、少しでも休息になれば良いから。」
柔 「耕作さん?」
耕作 「何?柔さん。」
柔 「あたし夢を見てた。」
耕作 「どんな夢なの?」
柔 「耕作さんがあたしに色々と話しかけてくれてた。」
耕作 「色々って?」
柔「話してた内容はあんまり覚えていないけど、何故か耕作さんが謝ってた様な気がする。」
耕作 「(俺が話してた内容が夢に出たのかな?)」
耕作 「俺が柔さんに?」
柔 「うん、でも悲しげじゃなかったから安心した。」
耕作 「不思議な夢だね?」
柔 「うん、そう言えばあたしの胸がどうとかも言ってた気がする。」
耕作 「おれが?そう言ってたの?」
柔 「良く分からないけど、そんな風に言ってる様に思った。」
耕作 「それって、その服のせいじゃないの?」
柔 「そうかもしれない。」
耕作 「折角買ってきたんだし、新しい服に着替えたら?」
耕作 「その服じゃ道場に行く時も窮屈な思いしそうだし。」
柔 「そうしようかな?」
耕作 「その方が良いよ、せめて上だけでも着替えないと。」
柔 「じゃあ、そうする~。」
柔 「着替えを持ってくる~。」
耕作 「柔さん?」
柔 「な~に?耕作さん。」
耕作 「もしかしなくても、君はここで着替えるつもり?」
柔 「いけない?」
耕作 「いけなくはないけど。」
柔 「じゃあ、ここで着替えるね。」
柔は耕作の膝を指さした。
耕作 「え?ここって俺の膝の事だったの?」
柔「うん、そうだよ?」
耕作 「こんなに近くで着替えたら、見えちゃうかもよ?」
柔 「あたしは平気だよ?」
耕作 「いやいや、柔さんが平気でも、俺が平気じゃないから。」
柔 「え~、どうして~?」
耕作 「どうしてって言われても・・。」
柔 「耕作さんは嬉しいって前に言ってなかった?」
耕作 「確かに言ってたけど、こんなに近くじゃなかったし、あの時は。」
柔 「近くじゃダメなの?嬉しくない?」
耕作 「いや、嬉しくない事は無いけど。」
柔 「それなら良いじゃない~。」
耕作 「仕方ないな~、柔さんは一度言い出すと引かないからな~。」
耕作 「じゃあ、ここで着替えて良いから機嫌を直してね?」
柔 「わ~い、耕作さんの近くで着替えられる~。」
耕作 「そんなに嬉しい事なの?柔さんにとっては。」
柔 「大好きな人の傍だから。」
耕作 「じゃあ、着替えを持ってきて良いよ。」
柔は服の着替えを持ってきて耕作の膝に座った。
柔は耕作にシャツを渡すと何もせずにじっとしていた。
耕作 「あの~、や・わ・ら・さ・ん?」
柔 「な~に?耕作さん。」
耕作 「着替えないの?」
柔 「え~、耕作さんが着替えさせてくれるんじゃないの~?」
耕作 「え~、俺が着替えさせるの?」
柔 「ね~、良いでしょう~?着替えさせて~。」
耕作 「(こういう時の柔さんってまるで子供だな・・。)」
耕作 「(おとうさんにこういう事をして貰えなかった反動かな?)」
柔 「ね~、お願~い。」
耕作 「分かったから駄々を捏ねないでね?」
柔 「着替えさせてくれるの?」
耕作 「余り動かないでね?」
柔 「うん、おとなしくしてる~。」
耕作 「後で怒らないよね?」
柔 「そんな事しないから、早く~。」
耕作 「分かったから、じゃあ、まず今着てる服を脱がさないと。」
柔 「早く~。」
耕作 「ボタンを外して・・難しい・・。(柔さんに直に触れない様にしないと。)」
柔 「耕作さん、早く~。」
耕作 「柔さん動いちゃダメだって。」
柔 「あ~、耕作さんがあたしの胸を触った~。」
耕作 「だから、動いちゃダメだって言ったのに~。」
柔 「耕作さん?」
耕作 「何かな?柔さん。」
柔 「あたしの胸を触れて嬉しかった?」
耕作 「(下手な返事をすると、また何か言いそうだな。)」
柔 「ね~、嬉しかったの~?」
耕作 「うん、嬉しかったよ?」
柔 「えへ、もっと触っても良いよ?」
耕作 「柔さん?」
柔 「な~に?耕作さん。」
耕作 「柔さん、わざとやってるでしょう?」
柔 「・・・、ばれてた?」
耕作 「もう~、君は~。」
柔 「あ~、耕作さんに怒られる~。」
耕作 「怒ったりしないって。」
柔 「ほんと~?」
耕作 「ほんとだから、ちゃんと着替えようね?」
柔 「うん、じっとしてる。」
耕作 「じゃあ、脱がすよ?」
柔 「耕作さんって、何かエッチぃ~。」
耕作 「こらこら、普通に言ったつもりなんだけど?」
柔 「えへへ。」
耕作 「良しっと、どうにか脱がせることが出来た。」
柔 「ね~、耕作さん?」
耕作 「何かな?柔さん。」
柔 「あたしの下着姿ってセクシー?」
耕作 「な、、(柔さんって、どこでこんな事を覚えてくるんだ?)」
耕作 「うん、理性の箍が外れそうな位にセクシーだよ?」
柔 「ほんと~?」
耕作 「ほんとだよ?だから早く服を着ようね?」
柔 「うん、早く着せて?」
耕作 「分かったから、動いたらダメだからね?」
柔 「わ~い、この服可愛い~。」
耕作 「俺からしたら柔さん自身が可愛いんだけどね。」
柔 「えへ、嬉しいな~。」
耕作 「ボタンを留めるから動かないでね?」
柔 「・・・。」
耕作 「柔さん?」
柔 「な~に?耕作さん。」
耕作 「今、柔さん、動こうとしてたでしょう?」
柔 「耕作さんってエスパーなの?」
耕作 「やっぱり動こうとしたんだね。」
柔 「何で分かったの?」
耕作 「だって、柔さん返事しなかったじゃない?」
柔 「そうでした~。」
耕作 「もう~君は~。」
耕作 「この状況を楽しんでるよね?」
柔 「だって~、普通に着替えても面白くないよ?」
耕作 「なるほど、柔さんはそう思ってたのか。」
柔 「耕作さん、怒ってる?」
耕作 「いや、怒ってないから。」
柔 「ほんとに~?」
耕作 「ほんとだから、早く服を着て~お願い~。」
柔 「は~い、ボタン止めてね?」
耕作 「着替えするだけで、冷や汗ものだよ?」
柔 「この前、耕作さんがたまには過激にしても良いよって言ってたから。」
耕作 「あ、それでだったのか。」
柔 「どうだった?ドキドキした?」
耕作 「うん、心臓が破裂するかと思うくらいにね。」
柔 「あたしもドキドキしてた。」
耕作 「もうね~、柔さん、結婚したらいつでも出来るから今は余り過激にしないで?」
柔 「余り、よね?」
耕作 「う、まあ、嬉しかったから、余りでも良いよ。」
耕作 「でもさ、柔さんってどこでこういうの覚えてくるの?」
柔 「だって、以前、耕作さんの部屋を片付けした時にそういう感じの本とか
ビデオを持ってたでしょう?」
耕作 「はい、確かに持ってました。」
柔 「だから、こんな感じにしたら耕作さんも喜ぶかなって思ったの~。」
耕作 「はい、大変に喜ばさせて頂きました。」
柔 「耕作さん?」
耕作 「今度は何?柔さん。」
柔 「コーヒー飲みたい?」
耕作 「もう平常運転に戻ってるんだね。」
耕作 「いただきたいな~。」
柔 「じゃあ、入れてくるね。」
柔は膝から降りてキッチンへと向かった。
コーヒーを持って戻て来た柔は耕作の膝に座りつつ耕作にコーヒーを渡して、
柔は頭を耕作の肩に預けた。
柔 「耕作さん、ごめんね、あたしの戯れに付き合わせて。」
耕作 「俺も正直に言うと嬉しかったから気にしないで?」
柔 「耕作さんはやっぱり優しいのね、嬉しくなっちゃう。」
耕作 「柔さん?」
柔 「な~に?耕作さん。」
耕作 「俺って柔さんに信用されてるのかな?」
柔 「ここに来てあたしは耕作さんの事を信じてますって何度も言ってたはずなんだけど?」
耕作 「あっ、確かに何度もそう言ってたね、柔さんは。」
柔 「けじめを守るって事も信じてるから。」
耕作 「あ~、そういう事なんだね。」
柔 「ここまではやっても大丈夫かな?って思ってしてた。」
耕作 「確かに、今までのもそういう感じだったかな?」
柔 「大好きな耕作さんを本当に困らせる事はしないって決めたんだもん。」
耕作 「柔さんって、キチンとした考えを持って行動してたんだ。」
柔 「耕作さんがどうしたら喜ぶのかなって考えてた。」
耕作 「刺激的だったけど楽しませて貰ったよ、ありがとうね。」
柔 「そう言って貰えると良かった~。」
耕作 「そろそろ練習に出かけなくても良いの?」
柔 「そうね、耕作さんも勿論一緒だよね?」
耕作 「うん、密着取材だから。」
柔 「その割には抱き付いてくれないのね。」
耕作 「や・わ・ら・さ・ん?」
柔 「どうかしたの?耕作さん。」
耕作 「道場でそれしたら、どうなるか分かってるよね?」
柔 「大騒動になるよね?日本の人達も巻き込んで。」
耕作 「そうだよ?それに密着取材ってそういう意味じゃないから。」
柔 「分かってるよ?」
耕作 「あ~、こら~、分かってて言ったんだね。」
柔 「あはは、耕作さん、ごめんなさ~い。」
耕作 「柔さんってお茶目だね。」
柔 「あたし、褒められた?」
耕作 「俺にとっては柔さんに対しての褒め言葉だって思うよ。」
柔 「そうなんだ、嬉しいな~。」
耕作 「じゃあ、出かけようか、帰りが遅くなるから。」
柔 「は~い。」
柔は耕作に抱き付いてキスをした。
耕作も柔を優しく抱き寄せて応じた。
柔 「それじゃ、いつもの場所で。」
耕作 「うん、待ってて。」
二人は別々にアパートを後にした。
耕作 「柔さん、お待たせ~。」
柔 「ううん、余り待たなかったよ。」
耕作 「じゃあ、行こうか?」
柔 「うん。」
二人は道場へと歩いて向かった。
今日は群衆の数が減っていたのですんなり道場の入り口に行けた。
柔はいつもの様に群衆に一礼をして、中に入ると道場にも一礼した。
そして、道場生達にも一礼した。
柔 「また、お邪魔します。」
柔の姿を見つけたマイケルがこちらに向かってきた。
マイケル 「お待ちしていました、ミス・イノクマ。」
柔 「お世話になります。」
マイケル 「ご自由に始めて下さい。」
柔 「ありがとうございます。」
マイケル 「ミスター・マツダも取材頑張って下さい。」
耕作 「うん、自由にさせて貰うね。」
挨拶が終わるとマイケルは皆の所へ戻って行った。
柔 「あの方が居たから本当に助かったよ。」
耕作 「だから、ここを紹介したんだけどね。」
柔 「なるほど~、耕作さんってほんとに、あたしを気遣ってくれてるね。」
耕作 「柔さんに喜んで貰いたいから。」
柔 「それじゃ、始めるね。」
耕作 「うん、柔さん?」
柔 「何?耕作さん。」
耕作 「練習頑張って。」
柔 「はい!」
柔は着替えに行って柔道着に着替えると練習を始めた。
周囲からは感心する声がしていた。
耕作 「(さすがに驚きは無くなったけど練習量には感心してるみたいだ。)」
打ち込みまで終わらせると柔は耕作の所へ戻ってきた。
柔 「まだTV局が来てるのね。」
耕作 「それは柔道世界一の君が居るからだよ?それだけでも十分に話題になるから。」
柔 「そうなのかな~?」
耕作 「柔さんはそういうのをもう少し自覚すると良いんだけど。」
柔 「う~ん、今のあたしが柔道をしてるのは耕作さんの為なんだけど。」
耕作 「そう言って貰うと、俺は嬉しいよ。」
柔 「その為だから。」
耕作 「どういう事?柔さん。」
柔 「耕作さんに喜んで貰えるから。」
耕作 「あ、そういう事か。」
柔 「ところで今日はどうしようか?」
耕作 「また今までと同じで個別に指導する?」
柔 「そうね~、今日からは一人じゃなくて数人に指導しても良いかな?」
耕作 「そうだね、俺も見てきたけど他の人達は大体同じレベルみたいだしね。」
柔 「それじゃあ、そう言ってくるね。」
耕作 「柔さん、頑張って。」
柔 「はい!」
柔はマイケルの所へ行って今の内容を話していた。
それを聞いたマイケルは感激している様だった。
道場生全員を集めてその事を話したみたいで歓声が上がった。
五人が選抜されて練習が開始された。
周囲はその様子を見ていた。
まずは試合形式でその五人と柔が順に対戦したがやはり
柔に簡単に投げられていた。
その後、柔が一人一人と組んでどこが悪いのかを指摘している
様で柔は投げられ役に徹していた。
一通り終わったみたいで五人が柔に一礼して一人一人が
柔にお礼を言っていた。
その間マイケルはずっと付きっきりで通訳をしていた。
全てが終わると柔は耕作の元へ戻ってきた。
柔 「耕作さん、どうだった?」
耕作 「柔さん、完璧だったよ。」
柔 「そうなんだ、耕作さんに、そう言われると安心する。」
柔「 それじゃ、着替えてくるね。」
柔は着替えに行って、暫くすると戻ってきた。
するとマイケルがやってきた。
マイケル「ミス・イノクマ、今日もありがとうございました、わざわざ個別に
ご指導して頂いて恐縮です。」
柔 「ここを使わせて貰っていますから、その位しないといけないと思っています。」
マイケル 「明日も同じ様にされますか?ミス・イノクマ。」
柔 「そうですね、出来れば全員にしたいと思っていますから。」
柔 「後5日はお世話になる予定ですし。」
マイケル 「お~、そうでしたか、みんなも喜ぶと思います。」
マイケル 「それでは明日以降のメンバーを決めておきたいと思います。」
マイケル 「そうすれば選抜する時間の分が練習に回せますので。」
柔 「そうして頂いたら、あたしも練習をもう少し密に出来るので
詳しく教えられると思います。」
マイケル 「なるほど、ではこの後に皆と相談してメンバーを決めておきます。」
柔 「お手間を取らせて申し訳ありません。」
マイケル 「いえいえ、わざわざご指導して頂くのですから、これ位はしないと。」
マイケル 「明日は私もお願いします。」
柔 「分かりました。」
柔 「ところで、ここの道場は柔道着を売ってましたよね?」
マイケル 「はい、勿論置いています。」
柔 「それは、あたしでも購入できますか?」
マイケル 「ミス・イノクマがですか?」
柔 「はい、そうです。」
マイケル 「ミス・イノクマに使って頂けるなら無料で提供致しますが?」
柔 「ご厚意は感謝しますけど、そういう訳にもいきませんから。」
マイケル 「分かりました、ではあちらに置いていますので見て下さい。」
柔 「耕作さん、ちょっと見に行きましょうか?」
耕作 「そうだね。」
二人はマイケルに案内されてついて行った。
マイケル 「サイズは多分あると思いますので試着されて構いませんから。」
柔 「じゃあ、拝見させて頂きます。」
柔は柔道着を見て回って、その中の一つを手に取った。
柔 「これを試着させて下さい。」
マイケル 「どうぞ、あちらに試着ルームがありますから。」
マイケルが指さした先にあった試着ルームに柔は入って行った。
暫くすると柔は出てきた。
柔 「では、これを購入させて頂きます。」
マイケル 「会計はあちらになります。」
マイケルはその場所を指さした。
柔 「耕作さん、行きましょうか。」
耕作 「そうだね。」
二人は事務所に行って購入を済ませてマイケルの元に戻ってきた。
柔 「無事に購入できました、ありがとうございました。」
マイケル 「いえいえ、お役に立てて光栄です。」
柔 「それではこれで失礼します、また明日伺います。」
マイケル 「お待ちしています。」
マイケルは何か言いたそうに躊躇しながら柔に、こう聞いてきた。
マイケル 「ミス・イノクマに失礼とは存じますが、ちょっと尋ねても構いませんか?」
柔 「どういった事でしょうか?」
マイケル 「ミス・イノクマとミスター・マツダは恋人同士なのでしょうか?」
柔は突然の質問に戸惑った。
柔 「どうして、そう思ったんですか?」
マイケル 「いえ、お二人が呼び合う時にファースト・ネームで呼び
合っていたものですから。」
マイケル 「こちらではそういう時は大抵が恋人同士なので。」
柔 「そうなんですか、でもあたし達は6年以上前からの知り合いなので自然と
そう呼び合う様になっただけなんですよ。」
マイケル 「6年以上も前からですか?それなら納得しました。」
マイケル 「ミス・イノクマに失礼な質問をしてしまい、申し訳ありませんでした。」
柔 「納得して頂いたので、それは構いませんよ。」
柔 「それでは失礼します。」
マイケル「それでは、また明日お願いします。」
耕作と柔は道場を後にした。
当然、柔は出る際に道場生達と道場に一礼をしていた。
群衆にも一礼をした後二人はその場を後にした。
少し離れて二人は顔を見合わせていた。
柔 「まさか、あんな質問されるとは思ってなかった。」
耕作 「そうだね、俺もびっくりしたよ。」
耕作 「しかし、柔さんってああいう対応も出来たんだね。」
柔 「これも就職してるお陰かも?」
耕作 「そうかもね、もし柔さんが返答に詰まりそうだったら、助け舟を
出そうと思っていたけど、杞憂だったね。」
柔 「耕作さんは最初から、あたしの事を柔さんって呼んでたから、あたしも
気にして無かったけど、周りの人からすると、ああいう風に思うんだって
改めて分かった。」
耕作 「そう言えば、俺、何で、柔さんの事を柔さんって呼んでたか覚えが無いんだ、
最初からそう呼んでたのかな?」
柔 「あたしの記憶を辿る限りでは、猪熊さんって呼ばれた記憶は無いかな?」
耕作 「やっぱり、そうだったんだ。」
耕作 「あ、アパートが近づいたから、いつもの様に戻ろうか。」
柔 「うん、先に戻って待ってる。」
耕作 「俺も直ぐに戻るから。」
柔 「うん、また後でね~。」
耕作 「うん、後でね。」
二人は別々に部屋に戻った。