柔と耕作(松田)米国滞在日記 (7日目午後編・後編)
      お断り:文書量(文字数)が多くなりましたので1日を5分割してお届けします。






      道場に着いた二人を大勢の群衆がいつもの様に出迎えた。
      今日はマイケルが出て来なくても道場への通路が出来ていた。
      柔は群衆へ一礼をして入り口に進み、入る前に道場に一礼して道場に入った。

      マイケル 「ようこそ、ミス・イノクマとミスター・マツダ。」

      柔 「今日もお世話になります。」

      マイケル 「いえいえ、こちらこそ色々と教えて貰ってますから。」

      柔 「それでは早速始めます。」

      マイケル 「では後程。」

      柔 「耕作さん、着替えて練習を始めるね。」

      耕作 「うん、柔さん、頑張って。」

      柔「はい!」

      柔は着替えに行って出てくると周囲の道場生達に一礼して早速練習を始めた。
      耕作は周囲を見渡すと相変わらずTV局も来ているのを確認出来た。
      トレーニングと打ち込みが終わると柔は耕作の元へと戻ってきた。

      耕作 「お疲れ様~。」

      柔 「耕作さん?」

      耕作 「何?柔さん。」

      柔 「今日はどの人が良いと思う?」

      耕作 「あぁ、そうだね~。」

      耕作は道場生の皆を見回した。

      耕作 「あの高校生みたいな女性はどうかな?」

      柔 「さすがは耕作さん、やっぱりあたしと同じ考えなのね。」

      耕作 「なるほど、柔さんもそう思ってたんだね。」

      柔 「うん、あの子にはあたしと同じ雰囲気を感じたの。」

      耕作 「俺もそう感じたよ、柔さん。」

      柔 「それじゃ、マイケルにまた聞いてくる。」

      柔はマイケルに昨日と同じ様に話しているみたいだった。
      話し終わると、柔は耕作の元に戻ってきた。

      柔 「耕作さん、それじゃ、始めてくるね。」

      耕作 「うん、頑張ってね。」

      柔 「はい!」

      さっき話していた女性の傍にマイケルを伴って近寄った。
      柔は色々と話してそれをマイケルが通訳していた。
      それが終わると練習が開始された。
      暫く技の掛け方を教えていた柔が昨日と同じ様に何度も投げられ始めた。
      周囲からはどよめきが起こっていた。
      更に時間が経つと柔の表情に変化が起きたのを耕作は見逃さなかった。

      耕作 「柔さん本気だな、なるほど同じ雰囲気だって言ってたのが分かるな。」

      練習がいつの間にか本気の乱取に変わっていた。
      そうなると柔にかなう訳はなく、その女性の方が何度も投げられていた。
      耕作はこのままじゃいけないと思い柔に声をかけた。

      耕作 「柔さん!本気を出し過ぎだから。」

      柔はその声に反応してまた投げられ役に徹しだした。
      それが暫く続いた後にようやく練習が終わった。
      柔は女性に謝っていたみたいだ、柔はマイケルを通じて柔が
      感じた事を女性に伝えて貰っている様だった。
      その後、柔は女性と礼と握手を交わして耕作の元へ戻ってきた。

      耕作 「お疲れ様~。」

      柔 「思わず本気になってた・・、耕作さんが声を掛けてくれなかったら
         練習になって無かったかも。」

      耕作 「それで、どうなのあの子は?」

      柔 「あたしと同じ感性を持った子だった。」

      柔 「もっと練習をすれば下手をしたら、あたしも苦戦しそうな相手になるかも?」

      耕作 「フランスのマルソーみたいに?」

      柔 「いいえ、それ以上だよ。」

      耕作 「そんなに凄い子なんだ。」

      柔 「うん、かなりの感性だね。」

      そんな話をしていると、マイケルが近寄って来た。

      マイケル 「ミス・イノクマ、あの子はどうでした?」

      柔 「あの子はもっと練習をしたら、ここに居る人達の誰よりも強くなります。」

      マイケル 「そうなんですか?」

      柔 「さっき練習をしてる時に、あたし少し本気になってたんですけど、それでも
         何度も投げられそうになりましたから。」

      マイケル 「え?ミス・イノクマを?」

      柔 「そうです、将来はアメリカでも有数の柔道家になると思いますよ。」

      マイケル 「それなら今後は見守っていきたいと思います。」

      柔 「今日はあたしにとっても有意義な日になりました。」

      柔 「今日はこれで帰ります、明日またお邪魔させて頂きます。」

      マイケル 「ミス・イノクマ、どうもありがとうございました、明日もお待ちしています。」

      柔 「それでは失礼いたします。」

      マイケルはさっきの女性の元へ行って柔が話していた事を
      伝えている様で、その女性は驚いた様な表情をしていた。

      柔 「耕作さん、着替えてくるね。」

      耕作 「うん、待ってるから。」

      柔は着替えに行って、暫くして戻ってきた。

      柔 「耕作さん、帰りましょうか。」

      柔が帰ろうとしていた時、あの女性がマイケルと一緒に柔の元へやって来た。

      暫く、その女性とマイケルに通訳をして貰いながら話し込んでいた。
      女性は柔に握手を求め一礼をした後、乱取に戻って行った。
      耕作がその様子を見ていると柔が傍に寄って来た。

      柔 「素直な良い子でした、あれなら直ぐに上達するでしょう。」

      耕作 「うん、今、見ていたけど柔さんと練習をする前と今とでは雲泥の差だって分かるよ。」

      柔 「耕作さん、さすがね、あたしの才能を一瞬で看破したのは伊達じゃないのね。」

      耕作 「柔さん?」

      柔 「何?耕作さん。」

      耕作 「楽しみが更に増えたね?」

      柔 「耕作さんには何でもお見通しなのね。」

      耕作 「柔さんの今の顔を見たら分かるよ。」

      柔 「うふ、それじゃ、帰りましょうか。」

      耕作 「うん、そうしようか。」

      柔は道場生全員に一礼をすると道場から出る前にまた一礼をした。
      更に外に居た群衆にも一礼してその場を耕作と一緒に離れた。

      柔 「耕作さん?」

      耕作 「なに?柔さん。」

      柔 「今のあたし達って他の人から見たらどう見えるのかな?」

      耕作 「柔道家と追っかけ新聞記者かな?」

      柔 「耕作さん、それじゃまんまじゃないの~。」

      耕作 「うそうそ、恋人同士位には見えてるかもね?」

      柔 「ほんと~?」

      耕作 「うん、だからね?」

      柔 「だから?って?」

      耕作 「外では余りイチャイチャ出来ないな~って。」

      柔 「え~、どうして~?」

      耕作 「マスコミにあらぬ事を報道されると後の収拾がつかなくなるから。」

      耕作 「実際は事実でも、今はそれは良くないって、柔さんも分ってるでしょう?」

      柔 「うん、そうなったら日本に居る人にも知られちゃうもんね。」

      耕作 「うん、そうなるから、今は外では我慢してね?」

      柔 「はい、耕作さんの言う通りにするね。」

      耕作 「今の返事へのご褒美は部屋に戻ってするから。」

      柔 「それなら早く部屋に戻らないと。」

      耕作 「柔さん?」

      柔 「何?耕作さん。」

      耕作 「楽しみは待つ時間が経つほど喜びも大きくなるんだよ?」

      柔 「そうなの?」

      耕作 「直ぐにプレゼントを受け取るのと、プレゼントの中身が何かを想像する
           時間があって、その後で受け取るのとどっちが良い?」

      柔 「それは色々と考えてる時間も楽しいから後の方が良いかな。」

      耕作 「でしょう?そういう事なんだよ?」

      柔 「そうね、でも耕作さんって本当に例え話が上手なのね。」

      耕作 「(柔さんに理解して貰おうとしたら上手く言わないとって考えてると
           自然と分かり易い例えが出るとは思わないだろうな。)」

      耕作 「まぁ、それも柔さんのお陰なんだけどね。」

      柔 「そうなの?」

      耕作 「柔さんに分かって貰うには分かり易い例えの方が良いかなって考えてるからね。」

      柔 「う~ん。」

      耕作 「どうしたの?柔さん。」

      柔 「今の喜んで良いのか悲しむべきなのか悩むな~。」

      耕作 「どうして悲しまないといけないの?」

      柔 「あたしの理解力が足りないのかな?って思ったから。」

      耕作 「あ、柔さん、俺はそう言う意味で言った訳じゃないから悲しまないでね?」

      柔 「じゃあ、どういう意味で言ったの?」

      耕作 「(何か泥沼に嵌っていってる気が・・。)」

      耕作 「えっとね、俺が柔さんに分からない事を説明してた時って柔さんは
           別な考えになってた事多くなかった?」

      柔「・・、そういえばそうね。」

      耕作 「(納得してくれそうだ・・。)だったよね?だから俺は柔さんが
           分かり易い様に例えを話してただけだから。」

      柔 「そうだったのね~、やっぱり耕作さんは優しいな~。」

      耕作 「(良かった、分かってくれたか。)いや~、それほどでも。」

      耕作 「おっと、もう直ぐアパートだ。」

      柔 「そうね、耕作さんとお話してると時間が過ぎるのが早いね。」

      耕作 「そうだね、それじゃ、また部屋でね?」

      柔 「うん、あたし先に戻ってる~。」

      耕作 「うん、俺も後から直ぐに戻るから。」

      柔「 後でね~。」

      耕作 「うん。」

      二人は別々に部屋へと戻った。


      耕作 「今、戻ったよ~、柔さん。」

      風呂場から柔の返事がした。

      柔 「耕作さん、お帰り~。」

      耕作 「汗を洗い流してるの?柔さん。」

      柔 「うん、直ぐ終わるから座って待っててね~。」

      耕作 「慌てなくて良いからね?」

      柔 「は~い。」

      暫くすると柔が風呂場からいつもの格好で出てきた。

      耕作 「練習、お疲れ様でした。」

      柔 「ありがとう~、耕作さん。」

      耕作 「や・わ・ら・さ・ん?」

      柔 「な~に?耕作さん。」

      耕作 「君・・何も身に着けていないでしょう?」

      柔「や~ん、耕作さんのエッチ~。」

      耕作 「ま~た、俺を揶揄ってるな~?」

      柔 「揶揄ってなんかいませんよ~だ。」

      耕作 「そうかな~?」

      柔 「そうだよ?耕作さん。」

      耕作 「それなら良いんだけど。」

      柔 「でも、耕作さん、何で、あたしが何も着てないって分かったの?」

      耕作 「それはね?」

      柔 「それはって?」

      耕作 「柔さん、君のバスタオルの巻き方でね?」

      柔 「耕作さんって、ほんと~に、あたしの事を良く見てるのね?」

      耕作 「何度も見てきてるから、その姿は、だから分かったの。」

      柔 「耕作さんって、さすが新聞記者ね~、観察眼が半端じゃないのね。」

      耕作 「記者やってると誰でもそうなるかもね。」

      柔 「だから、あたしの事も良く分かる?」

      耕作 「うん、そうだよ?」

      柔 「あ、そうだった。」

      耕作 「何?急にどうしたの?柔さん。」

      柔 「耕作さんは何か忘れてないかな~?」

      耕作 「俺が何か忘れてる?」

      柔 「耕作さん、意地悪してない?」

      耕作 「いやいや、ほんとに分からないんだってば。」

      柔 「あ~、耕作さん帰り道で言った事、もう忘れてる~。」

      耕作 「あ、ごめん、そうだったね。」

      耕作は柔に近寄って優しくキスをした。

      柔 「えへ、ありがとう~。」

      耕作 「機嫌は直ったかな?」

      柔 「うん、じゃあ、あたしもお礼を。」

      柔も耕作にキスをした。

      耕作 「お礼って、それやってたら延々キスをしていないといけなくなるよ?」

      柔 「それもそうだった、じゃあ、あたしをあ・げ・る。」

      耕作 「ストップ、ストップ柔さん。」

      柔 「どうして~?」

      耕作 「柔さん?」

      柔 「な~に~?耕作さん。」

      耕作「 柔さん、今バスタオル外そうとしてなかった?」

      柔 「ばれてたか・・。」

      耕作 「ばれてたかじゃないの~、そういうのは今はダメだって何度も言ってるじゃない?」

      柔 「今はね?うふふ。」

      耕作 「もう、ほんとにこの子は~。」

      柔 「耕作さん、怒ってる?」

      耕作 「怒ってないからね?」

      柔 「ほんと~?」

      耕作 「ほんとだから柔さん、俺を余り過激に誘惑しないでね?」

      柔 「どうして~?」

      耕作 「もう~、柔さんったら分かってるでしょう?何度も言ってきたんだから。」

      柔 「ごめんなさ~い。」

      耕作 「柔さんは、可愛いから許す。」

      柔 「わ~い。」

      柔は喜びながら耕作に抱き付いてきた。

      耕作 「ち、ちょっと~、柔さん、その恰好で抱き付いたらダメだってば~。」

      柔 「どうして~?」

      耕作 「柔さん、君は今バスタオル一枚だけしか巻いてないんだからね?」

      柔 「うん、そうですよ?」

      耕作 「そうですよって、柔さんは、ほんとに分かって無いみたいだね。」

      柔 「何が?」

      耕作 「そんな恰好で抱き付かれたら、俺の理性が吹き飛ぶよ?」

      柔 「今、吹き飛んでるの?」

      耕作 「う、まあ、今は必死に耐えてるからね?」

      柔 「なるほど、耕作さんって我慢強いんだね?」

      耕作 「それはね、けじめは絶対に守るって誓ったから。」

      柔 「分かった~、うふふ。」

      柔は耕作から離れた。

      耕作 「やっと分かってくれたみたいだね。」

      耕作 「ところでなんでそんなに嬉しそうなの?」

      柔 「うふふ、耕作さんがあたしに魅力を感じてるんだって分かったから。」

      耕作 「なるほど、でもね?」

      柔「でも、何?」

      耕作 「柔さんは存在自体が魅力的だから、そういう格好をしなくても十分だよ?」

      柔 「そうだったんだ、じゃあ、この格好ではもう抱き付いたりしないね。」

      耕作 「うん、そうしてね、残念だけど。」

      柔 「ありがとう~。」

      耕作 「何でお礼を?」

      柔 「今、耕作さんが残念だって言ってくれたから。」

      耕作 「あ、そういう事ね。」

      柔 「それじゃ、乾いたみたいだから着替えてくるね。」

      柔はお風呂場へと向かった。

      耕作 「(この先、俺は耐えきれるだろうか?不安になってきた。)」

      柔 「もうしないから~安心してね?」

      耕作 「(機嫌は良さそうで安心した。)」

      耕作 「ありがとうね~、柔さん。」

      暫くして柔が風呂場から出てきた。

      耕作 「あの~、や・わ・ら・さ・ん?」

      柔 「どうかした?耕作さん。」

      耕作 「どうしてそんな服を持ってるの?君は。」

      柔 「変かな?」

      耕作 「うん、普通はそんな服は持っていないと思うんだけど。」

      柔 「そうなの?」

      耕作 「普通は家でも外でもそんな服は着ないんじゃない?」

      柔 「確かにそうね。」

      耕作 「じゃあ、柔さんはなんでその服を持ってるのかな~?」

      柔 「さて、ここで問題です。」

      耕作 「また、クイズにするんだね、君は。」

      柔 「何で、あたしはこの服を持っているんでしょう~か?」

      耕作 「唐突すぎて回答不能~。」

      柔 「え~、少しは考えてよ~、耕作さん。」

      耕作 「仕方ないな、えっとね、柔さんがバイトしてた所の服だから。」

      柔 「耕作さん?」

      耕作 「うん?どうしたの?柔さん。」

      柔 「どうして分かったの?」

      耕作 「え?ほんとにそうだったの?」

      柔 「うん、でもどうして分かったの?耕作さんに。」

      耕作 「えっと、そういうのはそういう場所でしか使ってないしね。」

      柔 「それはそうだけど、あたしがこういう服を着てするバイトは
         耕作さんには教えて無かったよね?」

      耕作 「うん、最初のバイトの時に柔さんに迷惑かけたからバイトの事は
           もう詮索しない様にしてたから。」

      柔 「耕作さん、そこまで気を遣ってくれてたのね。」

      柔は耕作に飛びつく様に抱き付いた。

      耕作 「柔さんには、したい様にしてて欲しかったしね、柔道さえ忘れないなら。」

      柔 「耕作さん、大好き~。」

      柔は耕作に抱き付くとキスをしてきた。
      耕作も柔を優しく抱きかかえてそれに応じた。

      柔 「それでは、コーヒーのご注文でよろしいでしょうか?お客様。」

      耕作 「そんな風に応対してたんだね?」

      柔 「えへ、そうだよ~。」

      柔 「直ぐに、お持ちしますので少々お待ち下さい。」

      耕作 「うん、待ってる。(コスプレ好きなのかな?柔さんって。)」

      耕作はテーブルに着いて待つ事にした。

      柔 「お待たせしました、お客様。」

      柔は耕作の前にコーヒーを置いた。

      耕作 「柔さん、完璧だね~。」

      柔 「そうなの?」

      耕作 「うん、喫茶店に居る気分になった。」

      柔 「えへへ、耕作さんに褒められちゃった~、嬉しいな~。」

      耕作 「でも、他の人がいる時は止めた方が良いかな?」

      柔 「どうして~?」

      耕作 「だって、ほら、俺が柔さんにさせてるって思われたら。」

      柔 「あ、そうか、耕作さんが他の人に変な目で見られるね。」

      柔は耕作の膝にちょこんと腰かけた。

      耕作 「柔さんは俺の予想を遥かに超えた事をしてくるよね~。」

      柔 「耕作さんはそういうの嫌?」

      耕作 「ううん、逆に嬉しくなるかな?」

      耕作 「あ、でも、柔さんがわざわざ、そうしようとしなくて良いからね?」

      柔 「うん、分かった~。」

      耕作 「(今日はやけに素直だな。)」

      柔 「晩御飯までは時間が有るけど、何かする?」

      耕作 「う~ん、その前に場所を移動しようか?」

      柔 「どこに行くの?」

      耕作 「ソファーに座り直そうかと。」

      柔 「何でソファーに?」

      耕作 「ここだと柔さんの足が床から離れてて不安定で落ちると危ないしね。」

      柔 「やっぱり、耕作さんって優しいのね、嬉しいな~。」

      耕作 「じゃあ、ソファーに座ろうか。」

      柔 「うん。」

      耕作は柔を連れてソファーに移動して座った。
      一緒に寝る様になってソファーは元の位置に戻されていた。
      ソファーに座った耕作の膝に柔が腰掛けてきた。
      柔は腰掛けた後、頭を耕作の肩に預けていた。

      耕作 「柔さんはそうしてると落ち着くの?」

      柔 「うん、ほら、あたしっておとうさんとこうした事が無かったでしょう?だから
         やってみたかったっていうのもあるけど、耕作さんだから落ち着くの。」

      耕作 「そういえばソウルの時に俺の事をおとうさんみたいだったって
           言ってたね、そういうのもあるのかな?」

      柔 「そうかも?あたしが失神してた時に声を掛けてくれてた時もそうだったんだけど、
         その後に「大丈夫か?」って言われた時も安心する声なんだって思ったの。」

      耕作 「試合が終わって柔さんがもう柔道はしませんって言った後、同じ様に
           こういう風に俺の肩に頭を預けて寝ちゃってたね。」

      柔 「耕作さんだから安心して寝てしまったのかも。」

      柔 「あの時はあたしが起きてからお礼も言わなくてごめんなさい、
         あたし恥ずかしくなって慌てて戻ってしまったから。」

      耕作 「それは良いよ、俺は柔さんに肩に凭れ掛かられて寝てくれて嬉しかったから。」

      耕作 「ところでその時なんだけど。」

      柔 「うん、どうしたの?耕作さん。」

      耕作 「多分、柔さんが寝てしまった後だと思うんだけど、君に好きだって勇気を出して
           告白したんだよ、そうしたら君は寝てて半分安心してしまった。」

      柔 「耕作さんが?あたしに?無理にでも起きてれば良かった~。」

      耕作 「仕方ないよ、テレシコワとの試合は結構激しかったんだし。」

      柔 「そう言えば半分安心って何で?」

      耕作 「もし柔さんに拒否されてたらって思ったからかな?」

      柔 「確かにあの時のあたしなら拒否まではしなくても半信半疑にはなっていたかも?」

      耕作 「それなら、柔さんが寝ててよかったんだ。」

      柔 「でも、好きだって聞いてたら、その後のあたしの耕作さんに対する態度も
         変わってたと思うよ?」

      耕作 「そうなの?」

      柔 「あの時は既に耕作さんの事は好きかもとは思っていたから。」

      耕作 「そうだったのか~、しかし、今思うと俺と柔さんって擦れ違い
           みたいな事多かったよね。」

      柔 「うん、気持ちの擦れ違いだよね?」

      耕作 「そうだね、それがその後の遠回りにも繋がったんだ。」

      柔 「今だから分かる事だね。」

      耕作 「その通りだと俺も思う。」