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道場に近づくにつれて相変わらず道場の方から喧騒が聞こえてきた。
柔 「う~、また人が沢山集まってそう・・。」
耕作 「柔さんって人に好かれ易いんだよ、きっと、だってこんなに可愛いんだから。」
柔 「もう~、耕作さんったら~、そんな事を言っても何も出ないよ?」
耕作 「いやいや、俺は事実を言ってるだけだから、それに俺も柔さんの事をそう思ってるよ?」
柔 「ありがとう~、耕作さん。」
そんな他愛もない会話を続けていると、いつの間にか群衆が集まっている道場の近くまで来ていた。
群衆 「イノクマ~、イノクマ~。」
そう呼んでいる群衆の前に行くと、柔は群衆の皆へ一礼をしていた。
耕作 「さすが、柔さんだね、この前、聞いてた事をちゃんとするんだ。」
柔 「わざわざ、あたしの為に集まってくれてるんだから、それはしないと
集まってくれてる人に悪いから。」
耕作 「そういうことをさり気なく出来るのは素晴らしい事だと思うよ。」
群衆の傍に来た二人はどうやって入ろうか悩んでいた。
道場の中からいつもの様に、道場生のマイケルが出てきて、また群衆に何か言うと、
群衆が柔の為に道場までの通路を作ってくれた。
柔 「いつも、すみません。」
マイケル 「いえ、この位はしないと、わざわざここに来てくれる
ミス・イノクマに悪いですから。」
マイケルは隣に居る耕作に気が付きいた。
マイケル 「おぉ~、今日はミスター・マツダも一緒に来てたんですね、取材ですか?」
耕作 「そうだよ、さっき、柔さんに会って、ここに来る事を聞いたので
取材の為に同行させて貰ったんだ。」
マイケル 「なるほど、お仕事熱心ですねミスター・マツダは。」
それを聞いていた柔が笑いながら耕作に耳打ちした。
柔 「耕作さん、さらっとそんな事が言えるって凄いね。」
耕作 「こう言っておかないと、俺たちの仲は実際はほんとの事だけど、
勘違いされて周囲に広まると大変だからね。」
柔 「そうよね。」
柔は道場に一礼をして中に入るとマイケルに話し始めた。
柔 「それじゃ、いつもの様にトレーニングから始めさせて頂きます。」
マイケル 「どうぞご自由にお使い下さい。」
マイケルは他の道場生の所へ戻って行った。
柔と耕作は周囲を見回してTV局が数社来ているのを確認した。
柔「また来てるのか~、余り期待されても困るな~。」
耕作 「滋悟朗さんに安心してもらう為だって割り切ると良いよ。」
柔 「そうね、耕作さん、滞在延長を許可して貰った事へのお礼と考えるしかないよね。」
耕作 「そうだよ、柔さん。そう思えば気にもならないさ。」
柔 「うん、それじゃ、着替えてくるね。」
耕作 「いってらっしゃい。」
柔は着替えに行って、暫くすると柔道着姿で戻ってきた。
柔 「耕作さん、それじゃ、練習を始めるね。」
耕作 「うん、柔さん、頑張れよ。」
柔 「はい!」
柔は周囲の道場生達に一礼をした後に日本でいつも見ていた練習メニューを開始した。
耕作 「(相変わらずハードな練習だな~。)」
耕作はそう思いながら練習をする柔をカメラに収めていった。
周りから感心する様にざわめきが聞こえていた。
耕作 「(なるほど、柔さんの言ってた通りだ。)」
耕作 「(あんなに激しい練習でも柔さんは輝いて見えるからかな?)」
そう思いながら柔の方を見るといつもの真剣そのものの表情だった。
しかし、柔が耕作の方を見た時は微笑んでいた。
耕作 「(今の真剣な表情と俺の傍に居る柔さんの表情のギャップを
知ってるのは俺だけなんだな。)」
そう思うと耕作は内心嬉しくなった。
そんな事を思っている間に柔は打ち込みの練習に移っていた。
ここでも周りからは感嘆の声が起こっていた。
耕作 「(相変わらずキラキラと輝いて見えるな~、柔さんは。)」
耕作が周りを見るとTV局の取材陣は熱心に柔の練習風景をビデオに収めていた。
耕作 「(おっと、俺もカメラで撮っていないと取材って思われないな。)」
耕作はそう思うとカメラで柔の姿を写し始めた。
ファインダー越しに見る柔の表情はより一層輝いて見えた。
耕作 「(柔さん最高だよ、その輝きこそ俺が最初に柔さんを見てから
感じていた輝きなんだ。)」
たまに耕作に見せる微笑みは周囲の人には分からなかったみたいだ。
耕作 「(俺に対してのあの表情は皆には理解出来ないだろうな。)」
そんな事を色々と思っていると、柔の打ち込みも終わっていた。
柔は耕作の元へと戻ってきた。
柔 「耕作さん、どうだった?」
耕作 「柔さん、相変わらず輝いていたよ。」
柔 「そうなんだ、あたしには分からないけど、耕作さんが喜んでるのなら嬉しいな。」
耕作 「今日はこの後どうするの?」
柔 「特に考えて無かったけど、耕作さんはどうしたら良いって思う?」
耕作 「みんなに乱取をして貰って、それを柔さんが見て気が付いた事を
アドバイスしてあげたら?」
柔 「これだけ大勢いると全員にそれをするのは難しいかも?」
耕作 「それもそうか~、君が英語を話せないっていうのも有るし、
マイケルに付きっきりで通訳をさせるのも忍びないね。」
柔 「そうね、あの人、マイケルが一緒に居ないと皆には、あたしの思ってる事も
伝えられないのよね。」
耕作 「柔さん、君は柔道の天才だから君の感性を普通の人に伝えるのも難しいよね。」
柔 「もぅ~、耕作さん、そんに煽てても何も出ないよ?」
耕作 「いやいや、柔さんが柔道の天才っていうのは紛れもない事実だよ?」
柔 「う~ん、あたし自身はそう思った事は一度も無いのよね。」
耕作 「まあ、当の本人には分からない事では有るんだけど。」
耕作 「そうだ、滞在も延長されてんだから、柔さんが三葉でやってた様に、
これと思う人にあのやり方で教えてあげたら?」
柔 「そうね、余り上手く柔道になって無い人にそれをするのは良いかもしれないかな。」
耕作 「そうなると、マイケルにも手数を掛ける事にはなるけど。」
耕作 「マイケルにその事を話して了解を貰えたらするってのはどうかな?」
柔 「うん、ちょっと話してきてみるね。」
耕作 「いってらっしゃい。」
柔はマイケルの元に行って、今の事を話している様だった。
話し終えると柔は耕作の元へと戻ってきた。
耕作 「柔さん、どうだった?」
柔 「自分の勉強にもなるからって快諾してくれたよ。」
耕作 「それは良かったね、柔さん。」
柔 「うん、それじゃあ、早速さっきお話してた事をやってくるね。」
耕作 「柔さん、頑張れよ。」
柔「はい!」
柔はマイケルの元に行って何か話している様だった。
暫くすると耕作の目で見ても余り柔道になって無い女性の傍にマイケルと共に行って
何か話していた後に技の掛け方を教え始めていた。
三葉の時と同様に柔は教えながら投げられ役に徹していた。
周りを見ると、TV局の取材陣は驚いた様にその様子を映し始めていた。
耕作 「(あのTVクルーにとっては柔さんが、あんなに簡単に投げられるのは
初めて見る光景だから、あの反応は至極当たり前か。)」
耕作も柔の姿をファインダーに収めていった。
暫く教えていた柔だったがマイケルに何か話した後、その女性と別の道場生との
乱取が開始された。
柔が教える前と、今、乱取をしている彼女とでは明らかに柔道が変わっていた。
かなりの頻度で技を掛ける事に成功していたのだ。
耕作 「(さすが柔さんだな、あの短い時間であれだけ進歩させるなんて。)」
耕作 「(そういえば三葉でも、あのキョンキョンに出足払いを的確にマスターさせていたし、
試合でも、実績の有る相手から有効を奪ってたな。)」
TV局の取材陣に目をやると、その事に対してもかなり驚いている様だった。
柔は女性とマイケルに挨拶をした後、耕作の元へと戻ってきた。
柔 「どうだった?耕作さん。」
耕作 「さすがは柔さんだって思ったよ。」
柔 「そうなの?」
耕作 「俺の目から見ても彼女の柔道はかなり進歩したのが分かったし。」
耕作 「何よりあそこで取材してるTVクルーの目にもそう映ってたみたい。」
柔 「そうなんだ、やって良かった~。」
耕作 「一度に大勢には無理だろうけど、まだ数日有るから色々な人に
教えてあげる事は出来そうだよね?」
柔 「そうよね、少しでもここを借りているお礼になればそうしたいな~。」
そう話をしているとマイケルが柔が教えていた女性を伴ってこちらに向かって来た。
マイケル 「ミス・イノクマ、この女性があなたにお礼を言いたいというので連れてきました。」
柔 「わざわざ、お礼なんて良いのに、あたしの教えた事をこれからは実践して貰えたら、
それがあたしへのお礼になるんですから。」
マイケルはその事を女性に伝えていた。
女性から柔に握手を求めてきていたので、柔はそれに応じていた。
女性道場生「サンキュー、ミス・イノクマ。」
女性はそう言うと握手をしてまた乱取に戻って行った。
マイケル 「ミス・イノクマ、あなたの教え方は素晴しいです、私も見習いたいです。」
柔 「いえ、それほど大したことはしていませんよ?相手が掛けた技にタイミング良く
掛かってあげて投げられてやれば、そのタイミングを覚えていきますから。」
マイケル 「なるほど、私もこれからは教える時はその事を心掛けていきます。」
柔 「昨日は今日までと言いましたが、滞在が少し延長になりましたので
明日もまたお邪魔させて下さい。」
マイケル 「おぉ~、それは良かった、その事を聞いたら、ここの皆も喜ぶと思います。」
柔 「それでは、今日はこれで失礼します、また明日来ますから。」
マイケル 「ご指導ありがとうございました、また明日もお待ちしています。」
マイケルはみんなの所へ戻ると明日以降も来てくれる旨を皆に話したみたいで、
柔の方を見て歓声を上げ拍手した後、全員で柔に対して一礼をした。
柔もそれに対して一礼して応じていた。
耕作 「柔さん、良かったね、皆に喜んで貰えて。」
柔 「うん、明日からも少しずつだけど教える張り合いが出てきた~。」
耕作 「うん、柔さんも嬉しそうにしてるから俺も嬉しいよ。」
柔 「耕作さんに喜んで貰えるのが、あたしにとっては一番嬉しいの。」
柔 「それじゃ、着替えてくるね。」
耕作 「うん、待ってるよ。柔さん。」
柔は着替えに行って、暫くして耕作の所へと戻ってきた。
柔 「それじゃ、帰ろうか?耕作さん。」
耕作 「うん、そうしようか。」
二人は道場から出ようとした時、柔は当然の様に道場に一礼をして耕作と一緒に外に出た。
外に出ると群衆から拍手と歓声が起こり、柔はその群衆に対しても一礼をして
その場を耕作と二人で後にした。
柔 「耕作さん、わざわざ付き合ってくれて、ありがとう~。」
耕作 「俺こそ、久しぶりに柔さんの道場での姿を直に見られてお礼を
言いたい位だから、誘ってくれてありがとうね。」
柔 「一度、耕作さんのお部屋に戻ってから買い物に出かけるね。」
耕作 「途中で寄っても構わないよ?」
柔 「耕作さん?あたしと一緒に買い物とかしても大丈夫かな?」
耕作 「あっ、それもそうか、でもそれも密着取材って事にすれば問題無いんじゃないかな?」
耕作 「お店の了解を取って写真を写してたらそう見えるだろうし。」
柔 「写真を撮られるのって恥ずかしい気もするけど、そうしないと密着取材に
ならないから良いかな?」
耕作 「それじゃあ、寄ってから帰ろう?」
柔 「うふふ。」
耕作 「柔さん、嬉しそうだね?」
柔 「だって、大好きな人と一緒にお買い物するなんて最高じゃないですか~。」
柔は満面の笑みでそう言った。
二人はお店に入り、耕作はお店の責任者にさっきの事を話して許可を貰っていた。
柔が買い物をしている姿を耕作はカメラに収めていた。
柔 「耕作さん、何か欲しい物とかある?」
耕作 「うん、勿論あるよ?柔さん。」
柔 「何が欲しいの?耕作さんは。」
耕作 「柔さんは何と思う?当ててごらん?」
柔 「う~ん、何だろう?」
耕作 「ヒント、それは柔さんに関係している物です。」
柔 「あたしに?余計に分からなくなっちゃった。」
耕作 「柔さん?降参かな?」
柔 「参った!」
耕作 「柔さん、それはね・・?」
柔 「それは?」
耕作 「柔さん、君の笑顔だよ?」
柔は顔を紅潮させた。
柔 「もぅ~、耕作さんたら~。」
そんな会話をしながら買い物を終えた二人は耕作のアパートへ戻って行った。
耕作 「じゃあ、俺はまた裏口から部屋に戻るから、柔さんは先に戻ってて。」
柔 「あ~、早くこんな事しないで良い様にならないかな~。」
柔は先に部屋へと戻って行った。
耕作は少し時間を潰した後に裏口から部屋へと戻った。
耕作 「柔さん、ただいま~。」
風呂場の方からシャワーの音ともに柔が返事をしてきた。
柔 「耕作さん、お帰り~。」
耕作 「そっか、練習後だったね、そういえば。」
柔 「汗かいたままじゃ、耕作さんに嫌われちゃうじゃない?」
耕作 「嫌ったりしないよ?でも柔さんがそう思うならそうして良いかな?」
柔 「乙女の身だしなみだから、汗かいたままなんて出来ないよ~。」
耕作 「乙女の身だしなみは良く分かるけど、柔さんまたバスタオル一枚で
出てくるつもりじゃないよね?」
柔 「耕作さんが嫌ならしないけど?」
柔 「でも・・。」
耕作 「柔さん、でも何?」
柔 「Tシャツが汗で張り付いた姿でも良いならそうするけど?」
耕作 「う、そっちの方が刺激が強烈だからバスタオルで良いよ。」
柔 「あはは、あたしの勝ち~。」
耕作 「別に勝負をしてる訳じゃないけどね。」
柔 「うん、分かってるよ~。」
柔はバスタオル一枚の姿で風呂場から出てきた。
耕作 「いつ見ても柔さんの湯上りの姿って可愛いね~。」
柔 「もう、耕作さんってば煽てても何も出ないよ?」
耕作 「でも、ほんとの事だよ?柔さんが可愛いのは事実なんだし。」
柔を見ると顔を紅潮させて恥ずかしそうに耕作を見ていた。
柔 「もう~、耕作さんのバカ~。」
柔は耕作に抱き付いてきた。
耕作 「ちょっと、柔さん、その恰好で抱き付くと危ないから~。」
柔 「耕作さん?嫌なのこの格好で抱き付くのって。」
柔は少し悲し気に耕作を見上げてきた。
耕作 「いやいや、嫌な事は無いって言うか嬉しいけど、その・・何だ・・。」
今度は耕作が顔を紅潮させて恥ずかしそうに言った。
柔 「なら、良いんじゃないの?」
耕作 「柔さん?えっとね・・。」
柔 「どうしたの?耕作さん。」
耕作 「この姿勢だと俺が上から柔さんの事を近くで見下ろす形になるから・・、
その・・あれ何だよね・・。」
柔 「あれって何なの?耕作さん。」
耕作の顔が益々紅潮していった。
柔 「耕作さん?熱でもあるんじゃないの?顔が真っ赤だよ?」
耕作 「もぅ~、柔さんこの前も言ったじゃない?君は天然だからその辺りは自覚してって。」
柔 「あたしが天然って事と今の事は関係があるの?」
耕作 「柔さ~ん、もっと乙女として自覚してよ~。」
柔 「こら~!耕作~!」
耕作 「あっ、はい、柔さん。」
柔 「この前、耕作さんが言ったじゃないの、言いたい事が有ったらはっきり言うって。」
耕作 「分かったから、怒らないで聞いてね?」
柔 「怒らないから言いなさい、耕作!」
耕作 「何だか、お袋に言われてる感じがしてきた。」
柔 「早く言いなさい!耕作!」
耕作 「怒らないでね?この姿勢のまま俺が柔さんを見ると・・。」
柔 「あたしを見ると?」
耕作 「うぅ~、柔さん察してよ~。」
柔 「あたしは分からないから聞いてるのに~。」
耕作 「は~、ほんとに分からないみたいだね?柔さんは。」
柔 「うん、全然あたしには分からないの~。」
耕作 「柔さん、まさかとは思うけどわざとやってないよね?」
耕作が柔を見ると目に涙を滲ませていた。
耕作 「あ、ごめんね、柔さん、俺は君を信じてるけど、たまに君の事が
分からなくなる事があるんだよ、こんな風に。」
柔 「ね~、耕作さん、早く教えて?ほんとに、あたしには分からないから。」
耕作 「えっとね、この状況で俺が柔さんを見ると。」
柔 「うん。」
耕作 「当然上から見る事になるよね?」
柔 「そうね、耕作さんはあたしより身長高い訳だし。」
耕作 「それって柔さんが自分で下を見た時と同じ状態になるんだよ?」
柔 「あたしが自分で下を見た状態?」
柔は下の方を見た。
柔 「あっ!」
今度は柔の顔が見る見る紅潮していった。
柔 「そういう事だったのね・・。」
耕作 「そういう事なの・・。」
柔 「でも、耕作さん?耕作さんはこういうの嫌なの?」
耕作 「ううん、正直言うと、嬉しい。」
柔 「少し恥ずかしいけど、耕作さんが喜ぶなら、あたしは構わないよ?」
耕作 「あ~、良かった~。」
柔 「何が良かったの?耕作さん。」
耕作 「柔さん?」
柔 「うん、な~に?耕作さん。」
耕作 「柔さん、君が少し恥ずかしいって言った事が良かったって思ったから。」
柔 「そうなんだ・・。」
耕作 「柔さんは以前、俺に裸を見られても平気だって言ってたよね?」
柔 「うん、そう言ったね。」
耕作 「だから俺は柔さんは羞恥心を俺に対して持ってないのかなって
心配になってたんだよ。」
柔 「平気とは言ったけど丸っきり恥ずかしい訳じゃ無かったんだけどね?」
耕作 「うん、だから今恥ずかしいって聞いて安心したの。」
柔 「そうだったのね。」
柔 「あ~、残念、もう乾いちゃった~。」
耕作 「柔さん?何が残念なの?」
柔 「だって~、耕作さんが今あたしのこういう姿を見るのが嬉しいって
言ってくれたのにもう終りなんだって思ったから。」
耕作 「柔さん、君って優しいんだね~。」
柔 「えへ、耕作さんに褒められちゃった~。」
柔 「じゃあ、もう少しこのままで居ようかな?」
耕作 「いやいや、バスタオルが取れたら、それこそさっきの状態の比じゃないよ?」
柔 「あたしは別に構わないんだけどな~。」
耕作 「いやいやいや、そうなると俺自身が折角決めた、けじめを
付けきれなくなるからダメだって。」
耕作 「柔さんは俺を嘘吐きにしたくないでしょう?」
柔 「それもそうよね・・、そっか~、じゃあ、残念だけど着替えてくるね?」
耕作 「うん、早く着替えてきてね?」
柔 「は~い。」
柔は風呂場へ行った。
耕作 「ふぅ~、う~ん、こんな状態が続くんなら滞在の延長を勧めない方が
良かったんじゃないかって思えてきた。」
耕作 「この先こんな状況が続いたら、けじめを守れるか心配になってきた。」
柔 「耕作さん、お待たせ~。」
柔 「これ持ってきてたの忘れてた~。」
柔が風呂場から出てきた姿を見て耕作は驚いた。
耕作 「あの~、柔さん?それどうして持ってきたの?」
柔 「この方が動きやすい時もあるかなって?」
耕作 「まあ、確かに運動をする為の服だからそうなんだけど。」
柔 「でしょう?」
耕作 「柔さん?まさか君ってコスプレマニアじゃないよね?」
柔 「耕作さん?コスプレって何?」
耕作 「あっ、何も知らないならそれで構わないから。」
柔 「ね~、耕作さ~ん、コスプレって何~?教えて~。」
耕作 「柔さん、それを知ってどうするつもりなのかな?」
柔 「何もするつもりはないけど?」
柔 「ね~、教えて~、耕作さん。」
耕作 「(これは教えても大丈夫なのかな?知ると何かしてきそうで
怖い気がするんだが・・。)」
耕作 「(後、下手な教え方をすると柔さんの事だから曲解してしまいそう。)」
柔 「ね~ってば~、早く教えてよ~、耕作さ~ん。」
耕作 「仕方ないな~、でも柔さん?」
柔 「何?耕作さん、教えてくれるの?」
耕作 「柔さん?教えるけど決して真似しないって約束出来る?」
柔 「真似?」
耕作 「うん、そういう事はしないって約束出来るなら教えるよ。」
柔 「うん、しないから教えて?耕作さん。」
耕作 「えっと、コスプレってそういう、つまり今、柔さんが着ている様な服を着て、
その様な服を着ている年齢又は職業の人に自分がなりきる事なの。」
柔「・・・?自分が?なりきる?」
耕作 「(何か危ない雰囲気が漂ってきた。)」
耕作 「柔さん?君は今OLだよね?」
柔 「うん、鶴亀トラベルのOLだよ?」
耕作 「そのOLである柔さんがその服を着て高校生の真似すると変だよね?」
柔 「OLのあたしが高校生になれる訳無いじゃないの~。」
耕作 「(あ~、これはダメそうだな、理解してくれなさそう。)」
耕作 「柔さん、今、君は、なれるって言ったけど、実際になる訳じゃなくて、
そういう気持ちになるって事なんだよ。」
柔 「なるほど、そういう事か~、分かった~、あたしはそういうのはしないから
安心してね?耕作さん。」
耕作 「(ほんとに分かっているのか怪しいな~。)」
耕作 「柔さんがそうしないなら安心だね。」
柔 「耕作さんの前でだけだよ?こういうの着るのは。」
耕作 「(やっぱり分かってないみたいだ・・。)」
耕作 「うん、ありがとうね~、ただし絶対他の人に見せちゃだめだよ?」
柔 「うん、絶対に他の人には見せないから。」
耕作 「(やっぱり、柔さんって天然なんだな・・。)」
耕作 「ところでその服に着替えたけど何かするの?」
柔 「う~ん、特には今はしないかな?」
耕作 「今は?って柔さん、この先何かするつもりなの?」
柔 「後でお洗濯しようかな~って考えてた。」
耕作 「あ~、そういえば洗濯しないといけなかったね。」
耕作 「(良かった~、安心した。)」
柔 「じゃあ、お洗濯してくるね。」
耕作 「うん、せいがでるね~。」
柔 「えへ、頑張るね~。」
柔は洗濯を始めた。
洗濯の途中で戻ってきた柔は今度はキッチンへと向かった。
柔 「ついでに晩御飯の仕込みもするね~、その前に耕作さんにコーヒーを
入れるから待っててね~。」
耕作 「いつも、ありがとうね~。」
柔がキッチンから戻って来て耕作にコーヒーを渡した。
柔 「どうぞ~、耕作さん、高校生が入れたコーヒーだよ~。」
耕作 「(しっかりコスプレしてるし。)」
耕作 「サンキュー、柔さん。」
柔 「じゃあ、晩御飯の仕込みしてくるね。」
耕作 「うん、頑張ってね~、柔さん。」
柔 「は~い。」
柔はキッチンへと向かった。
柔「取敢えず仕込みは完了~、後は調理するだけだから。」
柔はテーブルの所へと戻ってくると耕作の膝に座った。
耕作 「あの~、柔さん?またそこに座るの?」
柔 「耕作さんが嬉しいって言ってくれたから。」
耕作 「確かに、俺はそう言ったけど・・。」
柔 「そう言ったけど?何?耕作さん。」
耕作 「いや、柔さんも喜ぶならそれで良いよ。」
柔 「うふふ。」
耕作 「どうしたの?柔さん、嬉しそうにして。」
柔 「あたしが高校生の時にこうしてたら、耕作さんはどうしたのかなって
考えたら何だか嬉しくなっちゃった。」
耕作 「もし俺が柔さんが高校生の時にこんな事してたら、皆から俺が
白い目で見られたかもしれないよ?」
柔 「何で?耕作さんが白い目で見られるの?」
耕作 「柔さん?その当時の事を思って今の状況を考えてみて?」
柔 「う~ん、何か可笑しいのかな?」
耕作 「その当時、俺が23歳で柔さんは16歳でしょう?」
柔 「うん、そうだったね~、それが何か?」
耕作 「そういう年齢差でこういう事をしてたら、皆はどう思うか考えてみたら
分かるんじゃない?」
柔「みんながどう思うか?」
耕作 「うん、皆がどう思うと思う?」
柔 「分かんな~い。」
耕作 「即答ですか?柔さん。」
柔 「だって、ほんとに分からないんだもん。」
耕作 「じゃあさ、これなら分かってくれると思う。」
耕作 「柔さん?その時は俺の事を何とも思ってなかったでしょう?」
耕作 「って言うか、疎ましくさえ思ってなかった?」
柔 「う~ん・・、確かにその時は迷惑な記者さんだなって、としか思ってなかったかな。」
耕作 「でしょう?それなのに、こういう状況になってたら、俺が柔さんを誘惑して
いる様にしか周囲の人は見ないと思うんだよね?」
柔 「そうなの?」
耕作 「想像してみて?柔さん、高校生を誘惑している新聞記者の様子を。」
柔 「・・・、そっか、やっぱり変よね。」
耕作 「そうでしょう?」
柔 「うん、確かに周りから見ると、この新聞記者は何してるんだって思うかも?」
耕作 「ふ~、やっと正解になった。」
耕作 「だから、俺が白い目で見られる事になる訳なの。」
柔 「なるほど~、耕作さんの言う通りね~。」
耕作 「やっと柔さんに納得して貰えた。」
柔 「これからは気を付けるね。」
耕作 「うん、そうしてね?柔さん。」
柔 「周囲の目が無い時なら大丈夫って事だよね?耕作さん。」
耕作 「(理解してそうでキチンとは理解してないな・・。)」
柔 「耕作さん?」
耕作 「な、何かな?柔さん。」
柔 「コーヒーのお替わりは?」
耕作 「あっ、それね、お願いしようかな?」
柔 「耕作さん?」
耕作 「うん?どうしたの?柔さん。」
柔 「今、耕作さんは「それね?」って言ったけど、何か他の事を想像してたの?」
耕作 「いや、他に特定した事を想像していたんじゃなくて単純にコーヒーを
入れる事だったんだな~って、思っただけだよ?」
柔 「ほんとに~?」
耕作 「ほんとだってば、柔さん。」
柔 「まぁ、いっか、じゃあコーヒーを入れてくるね。」
柔は膝から降りてキッチンへと向かった。
耕作「お願いします。(柔さんは俺の言った言葉に何でか反応するな~。)」
キッチンから柔の声がした。
柔 「耕作さんが何を考えてるか知りたいだけなの~。」
耕作 「(うぉ、また考えを読まれたのか?)」
耕作 「そうだったんだね、柔さん。」
柔 「はい、コーヒーお待たせ~。」
柔は耕作の膝に座りながらコーヒーを差し出した。
耕作 「いつもありがとうね~。」
柔 「いえ、耕作さんに喜んで貰えるだけで嬉しいから。」
耕作 「今ね?柔さんって、ほんとに猫みたいって思った。」
柔は耕作の胸に頭を擦りつけてきた。
耕作 「あはは、可愛いね~柔さん。」
柔 「えへ、耕作さんに褒められちゃった。」
耕作は思わず柔の頭を撫でていた。
柔は更に頭を擦りつけてきた。
耕作 「だめだって~、柔さん、また可愛くて撫でてしまいそうだよ?」
柔 「耕作さ~ん、撫でて~撫でて~。」
耕作 「分かった分かった。」
耕作はまた柔の頭を撫でた。
柔 「嬉しい~な~。」
耕作 「柔さんに喜んで貰えるなら何度でも撫でるよ?」
柔 「ほんと~?もっと撫でて~。」
耕作 「今夜寝る時に撫でるから、ここまでにしておこうね?」
柔 「むぅ~~~。」
耕作 「柔さん、また、そんなにふくれっ面して~、折角の可愛い顔が台無しだって。」
柔 「あたし、可愛くないも~ん。」
耕作 「柔さん、前も言ったけど、君は十分にきれいで可愛いからね?」
耕作が柔を見ると満面の笑顔で耕作を見上げていた。
柔 「嬉しいな~、耕作さんにそう言って貰えると。」
耕作 「(この様子を他の人が見たら、あの二人バカじゃないかって思いそうだな。)」
柔 「耕作さん?」
耕作 「うん?何?柔さん。」
柔 「今のあたし達ってバカみたいに見えるの?」
耕作 「(何て鋭いんだ、柔さんは、俺の表情で俺が何を考えてるのか分かるのかな?)」
耕作 「ううん、バカみたいじゃなくて、微笑ましいって思うかな?」
柔 「そうなんだ、それなら良いけど。」
柔 「あ、そろそろ晩御飯の仕度するね。」
耕作 「うん、頑張ってね。柔さん。」