柔と耕作(松田)米国滞在日記 (1日目)
渡米初日。
長い長い飛行機旅の末にアメリカのアトランタに13時過ぎに到着した柔だったが、
松田に対する不安で一杯だった。
柔 「(あたしが来た事で、松田さんに迷惑を掛けないかな?)」
柔 「(あたしの事を忘れてないと良いんだけど。)」
柔 「(別に彼女が出来ていたらどうしよう。)」
そういう考えが柔の頭の中を過っていた。
柔 「(ここまで来ちゃったんだから、取敢えずは会いに行かないと。)」
柔は空港から急ぎタクシーで松田の職場に向かった。
日本とは違って、やや大きめのビルの一角に日刊エブリーのアメリカ・アトランタ支局は有り、
その中の編集部の慌ただしさは日本とは変わらなかった。
柔 「(松田さん、居るかな?外出してないと良いけど。)」
柔は知らず知らずのうちに編集部の中を見回して松田の姿を探していた。
松田 「柔さん?」
不意に後ろから声を掛けられた。
驚き振り返った柔は目に涙を滲ませながら思わず松田の名前を呼んでいた。
柔 「松田さん!」
松田 「やっぱり柔さんだ~、ほんとに来ちゃったんだ!」
松田の以前と少しも変わらない笑顔と振る舞いを見て、柔は突然泣き出してしまった。
松田 「柔さん、どうしちゃったんだよ!ちょ、ちょっと~。」
柔 「ごめんなさい、松田さんの顔を見たら安心しちゃって。」
松田 「このハンカチで涙を拭いてね。」
柔はハンカチを受け取ると涙を拭った。
柔 「以前も、こんな事がありましたね。」
松田 「そうだったね、ユーゴの時だったかな?」
松田 「あっ、そうだ、俺まだ仕事が残ってるんだった、直ぐに済ますから、
先にアパートに行ってて?」
柔 「はい、分かりました、直ぐに帰って来て下さいね?」
松田 「うん、分かった、終わり次第直ぐに戻るから、待ってて。」
松田は柔に鍵と走り書きをした地図を渡して同僚のアメリカ人のスタッフと仕事に戻っていった。
柔は松田の後ろ姿を暫く見ていたが松田のアパートへと歩き始めた。
柔が地図を見ながら、大通りを歩いていくと、支局の直ぐ近くに松田のアパートはあった。
柔はドキドキしながら玄関のドアを開けて中に入ると、そこには以前と変わらない
掃除が苦手な様子が伺える部屋が有った。
だが、柔は以前と同様の変わらない松田の事を思いながら安心していた。
そして部屋の中を見回している時に以前日本でもずっと貼っていた例の写真を見つけた。
柔 「(松田さん、あたしとの出会いの記念にしてるのね。)」
柔はそう思いながら昔の事を走馬灯の様に思い出しつつテキパキと
部屋の中を片付けていった。
かなり時間が経ってから松田が帰ってきた。
松田 「ただいま~、遅くなってごめん、柔さん、居るの~?」
柔 「お帰りなさい、松田さん。」
松田はすっかりきれいになった自分の部屋の中を見て叫んだ。
松田 「うそっ~、ほんとに?これが俺の部屋か~?」
柔 「松田さん?その台詞前にも聞きましたよ?」
松田 「そ、そうだっけ、やっぱり俺って整理整頓は苦手なのかな~。」
柔 「うふふ、松田さん、はい、これお土産です。」
松田 「お~、ありがとう~。」
柔 「いえ・・、ところで・・。」
柔は壁に貼ってある例の写真に視線を向けた。
柔 「松田さん、まだ、この写真飾ってたんですか~?」
松田 「ああぁ~、い、いや、す、直ぐに外すから~。」
松田は壁の写真を剥がそうとした。
その時、柔が思いがけない事を言った。
柔 「そのままで構いませんよ?」
柔 「あたし達の関係の始まりの最初の一枚なんですから。」
松田 「柔さん、何て言って良いのか。」
柔 「でも、普通に写ってる写真も貼ってくれると嬉しいな~、柔道着姿以外のあたしをね?」
松田 「うん、これからそうするよ。」
松田 「そうだ、もうすぐ晩御飯の時間だけど、柔さん、お腹空いてる?
近くのレストランにでも行こうか?」
柔 「松田さん?こっちでは、いつも何を食べてるんですか?」
松田 「やっぱり、こっちは日本食が少ないから、ファーストフード
が多いかな?」
柔 「松田さん?そんな物だけ食べてちゃダメですよ?そんな事だろうと思って、
日本から食材を持ってきたんで今から作りますね。」
柔 「食材は一度ボイルして冷凍して持ってきてますから安心して下さいね。」
松田 「料理と柔道に関しては柔さんを信頼してるから大丈夫だよ。」
柔 「うふふ、ありがとうございます、作ってきますね。」
柔は食材を持ってキッチンへと向かった。
松田 「ほんとに?さすが柔さんは気が利くね!」
松田 「お、富士子さんの実家のお茶もあるんだ。」
柔がキッチンから戻って来て、松田から富士子のお茶を受取った。
柔 「今、お茶を入れてきますね。」
柔はキッチンへ行きお茶を入れて戻ってきた。
柔 「晩御飯が出来るまで、これ飲んでて下さい。」
柔は松田にお茶を差し出した後またキッチンへ戻った。
松田 「柔さん、ありがとう。」
松田は柔からの土産の茶菓子を食べながらお茶を飲みつつ一生懸命に料理を作る
柔を微笑ましくじっと眺めていた。
松田 「(手紙とかのやり取りをしていたとはいえ、柔さんの元から離れてしまい
会いに行く事もしなかったな~、申し訳ない。)」
柔が料理を持ってきて松田の向かい側に座りつつテーブルの上に置いた。
柔 「出来ましたよ~、これ覚えていますか?」
松田 「えっと、ビーフ・・ストロングだったっけ?」
柔 「もう~、ビーフ・ストロガノフです~。」
松田 「あ~、そうだった、うわ~懐かしいな~、いただきま~す!」
松田 「柔さんも食べてね?」
柔 「はい!いただきま~す。」
松田は相変わらず早食いでがつがつと美味しそうに食べていった。
柔は一緒に食べながら嬉しそうにそれを眺めていた。
松田 「柔さん、余り手紙出さなくて、ごめんよ。」
柔 「ううん、松田さんもこっちに来て色々大変だったでしょう?」
松田 「そうだね、言い訳がましくなるけど、覚えないといけない事が多くて。」
柔 「あたしも入社して暫くはそんな感じだったから良く分かります。」
松田 「そうだったんだね、新人は覚える事が多いから。」
柔 「そうですね、覚えても覚えても次々に新しい事が出てきて大変ですよね。」
松田 「その通りだね、際限無いって言うか、まだ有るのかって言う位多いから。」
柔 「松田さんの場合は、それに加えて英語も覚えないといけませんものね。」
松田 「うん、そうなんだ、苦手なりに日常会話位は何とか出来る様にはなったけど。」
松田 「仕事に関しては、まだまだなんだ。」
柔 「頑張ってるんですね~、あたしも頑張らないと。」
松田は柔の楽しげに話す姿を見ていると懐しさが込み上げてきて、
すっかり日本のアパートのあの時の感覚になっていた。
松田 「あ~、美味しかった~。」
松田、柔 「ごちそうさまでした。」
柔 「お粗末様でした。」
柔 「それじゃ、片付けてきますね。」
柔は食器を持ってキッチンへと向かった。
松田 「ふ~、久々にちゃんとした料理を食べたかも?相変わらず美味しかった!
柔さん、長旅で疲れてるのにごめん。」
柔 「いえ、あたしの方こそ急に押しかけてきてごめんなさい、でも松田さんの
元気な姿を見て安心しました。」
松田 「ところで、柔さん?やっぱり、今までの試合では不安だったの?」
柔 「ええ、オリンピックの後に何度か練習試合に出たんですけど、もう散々でした。」
松田 「実はさ、滋悟朗さんから会社に電話がかかってきて少し話をしたんだ。」
松田 「スランプだから柔さんの事を記事にしてハッパをかけろとか、さやか嬢は今は
どうしているんだとか。」
柔 「え~、おじいちゃんが?全くも~、でも、心配かけちゃいけないとは思ってるんです。」
柔 「おじいちゃんも最近は昔程うるさく言わなくなったから、逆にあたしは
不安になってたんです。」
松田は柔の顔をじっと見つめて徐にこう切り出した。
松田 「そうだったのか~、柔さん?折角だから散歩に行ってみない?」
松田 「車で少し行くと、この近くの川沿いにと~っても綺麗な夜景スポットがあるんだけど。」
柔は満面の笑みを浮かべた。
柔 「はい!是非!」
松田は微笑んで柔の手を取り外に連れ出して車に乗り込んだ。
松田と柔は車で目的の川沿いを目指していた。
移動中、柔は逞しさと頼りがいが少し増した様な松田を嬉しそうにじっと見ていた。
柔 「松田さんって、車も運転出来たんですね?」
松田 「ああ、日本だとお金が無くてバイクばっかりだったけどね。」
松田 「やっぱり、こっちは取材するのにも移動距離が長いから。」
柔 「バイクで松田さんの後ろに乗るのって、結構、怖かったですもんね、
あたし悲鳴ばかり上げてた気がします。」
松田 「大抵、俺が柔さんを乗せてる時って、切羽詰まった時が多かったしな~。」
松田 「最初は確か学校の校門前まで助けに行ったんだよな。」
柔 「そうそう、記者がいっぱい詰めかけちゃって、あたしが困っている時でしたね。」
柔 「あの時は別な人と勘違いしちゃってごめんなさい。」
松田 「いや、あの時の状況だと仕方が無かったから、気にしないで?」
柔 「後は、葉山まで柔道着のまま連れて行かれたり。」
柔 「(あの時に洋服をプレゼントして貰っちゃったんだった、そう言えば
お礼言って無かった・・。)」
柔 「えっと、・・大変遅くなちゃいましたけど、あの時に頂いたお洋服・・、
物凄く嬉しかったです、ありがとうございました。」
松田 「あ~、そういう事もあったね、今考えると無茶ばっかりしてたよな~。」
松田 「そうそう、後は羽衣さんからいきなり電話があって・・。」
柔 「接待旅行とブッキングした大会の時ですよね?」
柔 「あの時はほんとに松田さんの事をお仕事も含めて見直しちゃいました!」
柔 「それと大怪我までさせちゃってごめんなさい。」
松田 「確か見舞って貰った時にもそんな事を言ってたね。」
松田 「でも、怪我の事は、あの時も言ったけど俺が事故を起こして負ったんだから。」
柔は悲しげな表情で松田の顔をじっと見ながら話を続けた。
柔 「あの後、あたしが勝手に勘違いばかりしちゃって、松田さんの事を振り回す結果に
なっちゃって、ほんとにごめんなさい。」
松田 「その事はクリスマス・イブの時に君が俺に言ってくれた「あたし、柔道やりますから。」
っていう言葉を聞いた時点で、俺の中では全て解消されたから気にしないでね?」
柔 「そう言って貰えると、あたしも気持ちがやすまります。」
松田 「おっと、そろそろ着いたかな?ここなんだ。」
二人は車を降りて手を繋いで、そのまま目的の場所へとゆっくりと歩いていった。
松田が案内した場所は、オフィス街が対岸にあり綺麗な夜景の見える公園だった 。
辺りには二人と似た様なカップルがちらほらと居て夜景を眺めている。
柔 「わ~、凄い、凄い、ビルの夜景、とってもきれいですね~!」
松田 「だろ~?俺もたまたま見つけたんだ。」
松田 「こっちに来たばっかりの時に少し息抜きしたいと思い、ここでぼ~っと
夜景を見てたんだ。」
柔 「松田さんも仕事していて不安になった時ってあるんですか?」
松田 「俺でも不安はあるさ~、まぁ~、俺の場合はノー天気だから、直ぐ忘れちまうんだけど。」
松田 「でも、柔さんの事だけは片時も忘れた事は無いんだよ?」
柔 「松田さん・・。」
松田 「そうそう、こっちでも最近は柔道の取材を出来る様になったんだけど、
こっちの人って日本人だと、みんな柔道が出来ると思ってるらしくて、
バーンと投げられちゃったよ。」
柔 「松田さん、よく投げられますよね。(あたしもよく投げちゃったけど。)」
松田 「あ~、そうかもな~、特に誰かさんに沢山投げられた気がするんだけど?」
柔 「う~、ごめんなさい。」
松田 「あはは、良いよ?俺が柔さんに対して心良く思われない事をした時に
投げられてた訳だしね。」
松田 「でも、取材の時に柔さんの話をすると、みんな目の色変えて真剣に
質問をしてくるんだ。」
松田 「あんなに小柄な彼女なのに何で強いのか、普段は何を食べてるのか?ってね、
さすがは柔さんだよね。」
松田 「やっぱり、アメリカでも君の知名度は凄いんだなって思ったよ。」
柔は真顔になって話し始めた。
柔 「松田さんって・・やっぱり強いですよね、精神的に。」
松田 「えっ?そうかな?」
柔 「あたしなんて、やっぱり、松田さんが近くに居ないと試合の時は凄く不安なんです。」
柔 「克服しなきゃって思うんだけど、やっぱり、強くなれないんですよね。」
松田 「そんな事はないさ、そんな事は・・無いよ? 」
松田 「ジョディーだって素敵な旦那さんがサポートしてたよね?フランスのマルソーにだって
コーチの彼氏が居た訳だし。」
松田 「やっぱり、どんな競技でも、それをする女性には、ちゃんとしたパートナーが
必要なのかもって思った。」
柔 「・・・。」
柔はユーゴの時の事を思い出していた。
松田 「話は変わるけど、実は俺、来月には日本に帰る事になってるんだ!」
柔は松田からの突然の話に驚きながらも嬉しさを隠さなかった。
柔 「えっ?そうなんですか?」
松田 「元々、俺がアメリカに来たのは、こっちの人が怪我したから代理で来てただけ
なのは手紙でも知らせてたよね?」
松田 「その人がもう直ぐ復帰するんだ!」
柔 「ほんとなんですか?!」
柔 「でも、松田さんは折角の機会だからって、こっちで本場の色々なスポーツに
触れてみたいって手紙に書いてませんでした?」
松田 「ああ、そうだったね、確かに年中大きな大会をあちこちでやってるし、
遣り甲斐はあるかもしれない。」
松田 「でもね?他に俺にとってもっと大事な事が有るんじゃないかって、最近になって
気が付いたんだよ。」
柔 「松田さんにとってもっと大事な事?」
松田 「えっと、俺は日本に帰って、その・・、だな・・、何だ・・。」
柔 「?・・・。」
柔は松田の顔を怪訝そうに見上げた。
松田 「俺はこれからは、ずっと君の傍に居ようと決心したんだ。」
柔 「ずっと?あたしの傍に?」
松田 「当然、仕事でじゃなくて、これから先もずっと、柔さん、君の事を支えていきたいんだ!!」
松田を見上げていた柔の目には涙が滲んだが表情はみるみる明るくなった。
柔 「松田さん!」
松田 「ごめんよ、急にこんな話をしちゃって。」
松田が言い終わる前に柔は涙ぐみながらも満面の笑みを浮かべてその小さな体躯で
松田にギュッと抱きついた。
松田も柔の小さな体躯を抱き締めながら話を続けた。
松田 「柔さん?これから先、ずっと、君の傍に居ても良いかな?」
柔 「はい!ずっと、あたしの傍に居て下さい。」
柔 「あたしからは絶対に離れたりしないで下さい!」
松田 「大丈夫だよ?ずっと、柔さんと一緒にいるよ、絶対に!」
柔 「はい!」
松田は抱擁を解くと優しく柔の左手を取り薬指に指輪を嵌めた。
松田 「俺の給料は余り高くはないから、これで精一杯なんだけど、これを受け取って欲しい!」
柔 「ありがとう、松田さん、ううん、耕作さん!」
耕作 「柔さん、俺、必ず君を幸せにするよ!」
柔 「耕作さん?あたし今も幸せですから。」
お互いを暫く見つめた後、二人は改めて抱き合いながら優しく短めにキスをした。
その後、二人は暫く抱き合っていた。
耕作 「そろそろ戻ろうか?ところでどこかホテルとか予約してるの?」
柔 「戻りましょうか、ホテル・・ですか?」
柔は顔を紅潮させながら続けた。
柔 「耕作さん、もし迷惑じゃなかったら、ずっと前みたいに耕作さんの部屋に
泊めて貰いたいかなって。」
耕作も顔を紅潮させながら答えた。
耕作 「俺は迷惑とか思ってないけど、柔さんこそ良いの?」
柔 「あたしはそのつもりでこっちに来たから・・。」
柔はニコッと笑ってこう続けた。
柔 「でも・・、ずっと前みたいに耕作さんは外で寝るんですよ?」
耕作 「え~、また風邪引いちゃうよ~。」
柔 「うそうそ、冗談ですよ?」
二人は昔の事を思い出しながら笑った。
耕作 「戻ろうか?」
柔「はい!」
耕作は柔の腕を取り車へと向かった。
柔は耕作に寄り添う様に肩に頭を預けて一緒について行った。
部屋に戻ってきた二人はソファーに寄り添う様に座って、柔が入れたコーヒーを
一緒に飲みながら談笑していた。
耕作 「今日は本当に嬉しかったよ。」
耕作 「柔さんが来てくれた事もだけど、自分の思いを伝えられた事、何より
柔さんの気持ちを再確認出来た事が一番嬉しかった。」
柔 「あたしも耕作さんの思いを知る事が出来たのが一番です。」
耕作 「でも、日本に戻ったら大仕事が待ってるんだけどね?」
柔 「大仕事ですか?どんな事ですか?」
耕作 「滋悟朗さんと玉緒さんに俺たちの結婚の事を話す事だよ?」
柔 「あぁ~、確かに大仕事ですね、おかあさんは・・多分だけど、感づいているから
大丈夫かな?でも、おじいちゃんはね~。」
耕作 「だろう?滋悟朗さんが何て言うか心配だ~。」
柔は微笑みながら耕作にこう言った。
柔 「頑張って下さいね?耕作さん。」
耕作 「うん、頑張るぞ~、これをクリアしないと柔さんとの一緒の生活も
何もかもが始まらないから。」
柔 「頼りにしてますよ?耕作さん。」
柔は耕作の顔をじっと見つめた。
耕作は照れくさそうにしていた。
耕作 「そろそろ寝ようか?」
耕作 「その前に柔さん?先にお風呂に入って良いよ?俺は後で入るから。」
柔 「いえ、耕作さんが先に入ってきてね?」
柔 「片付け物が有るから、あたしは後で良いですよ。」
耕作 「うん、分かったよ、じゃあ先に入ってくるね。」
耕作は風呂場に向かった。
柔は片付けをテキパキと終わらせて、耕作の為にビールを用意した。
暫くすると耕作が風呂から出てきた。
柔 「はい、耕作さん、ビール冷えていますよ?」
耕作 「お、柔さん、気が利くね~、ありがとう。」
耕作 「じゃあ、柔さんお風呂に入ってきて、ゆっくり浸かって旅の疲れを取ってね?」
柔 「はい!でも、余り長湯はしませんけど。」
柔は風呂場へと向かった。
耕作は寝る準備を整えていた、勿論、柔をベッドに寝かせて自分はソファーで寝る様にしていた。
風呂場から出てきた柔はそれを見て。
柔 「耕作さん?一緒に寝ないんですか?」
耕作 「柔さん!俺もそうしたいけど、やっぱり日本に帰って結婚の報告をするまでは、
けじめを付けておかないと滋悟朗さんと玉緒さんに合わせる顔が無くなるから。」
柔 「それもそうですね、じゃあ、せめてベッドの傍にソファーを置いて寝ましょうか?」
耕作 「それ位なら良いかな?」
耕作はソファーをベッドの傍まで移動した。
二人は仲良く寝床についた、暫くすると柔が手を差し伸べてきた。
柔 「耕作さん、手を繋いで寝ましょう?」
耕作 「うん、それで柔さんの気持ちが落ち着くなら構わないよ。」
柔は嬉しそうに耕作が出した手をしっかりと握りしめた。
耕作と柔は繋いだ手を通してお互いを感じているうちにいつの間にか眠っていた。