今は亡き義母の遺品。



義母は高級志向の人だったので、身につける物は良いものばかり。



例えば、銀座マギーの洋服とか、ロベルタのパンプスなど、何万円もするものを何十年も大切に使う人であった。



私は義母を毛嫌いしていたので、どんなにいい物でも義母が身に付けていた物など残したくなかったから、ほとんどの衣料品を毎週利用している宅配システムのトドックに引き取ってもらった。



シミがあっても、デザインが古臭くても、無料で引き取ってくれる。




途上国へ寄付して、必要な人に着てもらえるので、ゴミに出して地球を汚すより気持ちがいい。



相当な量を少しずつ整理して片付けたのだが、愛用していた化粧品がまだ残っていた。




義母は何十年もKOSEの化粧品を愛用しており、プレディアというラインをとりわけ愛用していたのだか、ナイトクリームが40gで20,000円もすることを、私は最近知った。




義母の生前から、我が母は遊びに来る度に義母から借りて使っており、いい化粧品はやっぱり違うと驚いていた。




だから、母が使うだろうと思ってしまっておいた物だった。





でも、母は今、コロナ禍でうつ病が再発してしまい、何もする気が起きない抑うつ状態なので、化粧品なんて見たくもないと言う。





ほぼ未使用の基礎化粧品やヘアケア用品がいくつもあり、未開封ではないからメルカリへの出品もためらわれ、かといって貧乏性の私はなかなか捨てられずにいた。




効果の程はいざ知らず、私が使っている物よりははるかに高いので、捨てるくらいなら私が使ってしまおうと思った。




もう半分以上は使っただろうか。




この化粧品、嫌いな女性はいないかもってくらいに上品で上等な香りがする。




本当にいい香りで、そのシャンプーを使っていると「どこのシャンプー使ってるんですか?すごくいい香りがする」と褒められるから悪い気はしない。





化粧品やヘアケア用品以外にも、ノベルティと思われるルームフレグランスやファブリックフレグランスなどのグッズまで、この上等な香りが使われている。





でも、私はどうしても好きになれない。





義母を連想させるこの香りが、私の気分を下げるのだから。




なぜあんなにも義母を嫌ったのか、自分でも明確な答えは見つからない。



見知らぬご老人には優しくできるのに。



小さないざこざはたくさんあったが、金銭面でも日々の子育てでも、近くにいた分お世話にもなったのに。



遠くに住む自分の母と比べては、気が利かない義母をいつも責め、疎ましさだけが増していった。





今思えば、私が勝手に義母に期待して、裏切られたと憤慨して感情を爆発させていただけの事なのだろう。




義母亡き今、勝手に感じていた尽きないストレスからは解放された。




でも、義母をないがしろにしてきた良心の呵責から解放されることはない。




自分の母と父方の祖母の確執を嫌というほど身近で見て育ったのに、私はそれを良い方向に活かす事ができなかった。




最大の失敗は「同居」に他ならない。




義母が望んだわけではない。
一軒家で独り暮らしをしていた高齢の義母の将来を考えて、私たち夫婦が決めたこと。





同居さえしなければ、お互いに多少なりとも遠慮しあって、それなりにいい関係が続いたように思う。




私には息子が3人いる。




将来は義理の娘が3人できるかもしれない。




どんなにいいお嫁さんでも、同居だけは絶対にしないつもりだ。




他人と暮らすのはなかなか難しい。
お嫁さんは、子供を育てる運命共同体の夫とはやはり違う。




お嫁さんに、よけいな苦労をかけたくないとも思う。




だから、諭されても同居は絶対に断ろう。




たとえ、夫に先立たれて独居老人になり、孤独死することになっても。




3人のうち、誰か一人くらいは遅かれ早かれ見つけてくれるだろう(笑)。




これからはせいぜい、息子たちに負担をかけないように、一人でも何とか生活できるだけの蓄えと、健康でほどほど生きられる体作りに務めようと思う。