「一生に一度しかない自分の人生、
賢く安全に歩きたいとは思わない」



※文末より

著者 : 諸星和己
出版社 : 主婦と生活社
発売日 : 2004年5月1日

著者略歴

1970年、静岡県生まれ。1987年、ローラースケートを履いたアイドルグループ光GENJIのメンバーとしてデビュー。1988年には「パラダイス銀河」で第30回レコード大賞を受賞。1995年、光GENJI解散。同年、自ら個人事務所を立ち上げ、ソロアーティストの道へ。


概要 主婦と生活社HPより

元光GENJIの諸星和己の書き下ろしエッセイ。「ニューヨークにアパートを借りて3年になる。この街で、1人のホームレスのオヤジ、ジョンと出会った。彼から英語のレッスンを受けた。過去のことを少しずつ話すことからレッスンが始まった。ジョンは聞き役としていい先生だった。俺は33年間の人生で起きたすべての事を彼に話した。この本はこうして生まれた」――諸星和己 彼だからこそ歩むことができた激動の人生、パワーあふれるポジティブな生き様にただただ圧倒させられる一冊。


2001年5月 渡米、ニューヨークへ

2001年9月11日 アメリカ同時多発テロ事件


光GENJI

1987年6月25日 結成
1987年8月19日 レコードデビュー (チャゲ&飛鳥が楽曲提供した「STAR LIGHT」)

【光】

内海光司 (1968年1月11日) johnnys-net 

大沢樹生 (1969年4月20日) website Twitter Instagram

【GENJI】

諸星和己 (1970年8月12日) website  ブログ  旧ブログ

佐藤寛之 (1970年11月2日) website  YouTube

山本淳一 (1972年2月28日) website  Twitter Instagram YouTube

赤坂晃 (1973年5月8日)  Twitter Twitterお店 Instagram YouTube

佐藤敦啓 (1973年8月30日) johnnys-net Instagram


※内海光司・大沢樹生の2人は光GENJI以前のキャリアが長い。

※佐藤敦啓→佐藤アツヒロ(現)

※2024年5月時点で旧ジャニーズ事務所所属は、

 内海光司と佐藤アツヒロの2名。他5名は個人事務所。

ありがとうございます。


※感想につき主観です。敬称略で失礼します。



而立、自分の足で立つということ


〈そこには愛がある〉




 『最初に断っておくが、この本には生きていく上でためになるようなことは一切書いていない。読んでいて、思わずホロリとさせられるような心温まる話もない。むしろ、その逆だろう。』


 この前書きから始まる本の、内容の一部を紹介する。書いたのは「かーくん」こと諸星和己さん、出版したのは2004年、33歳の時。2001年5月にニューヨークに渡ってから、英語の勉強のため自分自身について書き留めていたが、同年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件をきっかけに今までの自分への決別のつもりで書いた本だということだ。


 1995年9月、諸星和己が卒業コンサートステージ上でファンに土下座をし、光GENJIの歴史に幕を下ろしたのが25歳。最近のアイドルに比べると、こんなにもまだ若かったのかと驚く。「誰のバックでも踊ったことがない」と言う言葉通り、早々にブレイクし日本中を熱狂させて社会現象を起こし、昭和から平成をまたぐアイドルのアイコンとなった。


 下積みと言える期間もないまま一躍日本のトップアイドルの座に躍り出た自分のことを、夢のドリームジャンボ宝くじの1等賞に3回続けて当たったようなものだとか、幸運の鉄砲水が一気に別世界へ押し流したとか、芸能界版ガリバー旅行記と表現している。

 しかし運だけではないだろう。それ程の高みに到達したのはアイドルとして1番になりたい、売れている先輩よりも、自分以上のキャリアを持つメンバーよりも、何が何でも上に行くのだという並々ならぬ向上心だ。一目瞭然、根性という言葉を人にしたようだと遠い記憶に思ったものだ。光GENJI時代の骨折は14回。ギプスをしたままバク転をし、松葉杖を掲げてステージに立っている。会場の全ての人を自分のファンにするつもりでパフォーマンスをしたという。他を寄せ付けない気概が自らを引き上げトップに立ったに違いない。


 決して道半ばで、突然に辞めたのではない。光GENJIは賞という賞を手にしている。夏も冬もオリンピックを歌った。この先もう破られることはないミュージックステーション最多出演も果たした。労働基準法にかかり国会も動かした。もう充分だったのだろうか。退所までの1年間、契約満了まで待ったという。アイドルはハタチそこそこでマイクを置いて次段階へ歩むのが美しく、それをした人の記憶が強烈に残る時代だった。

 濃厚な7年間の活動を経て、まずはグループから大沢樹生、佐藤寛之の2人を涙で送り出した。そして1年後、5人(内海光司、諸星和己、山本淳一、赤坂晃、佐藤敦啓)はローラースケートを脱ぎ揃えた。著者が4人と離れて1人で退所したのは、次のステップを登る為。真実は知る由もないが表向きの年表ではそうなる。


 光が強ければ影もまた濃いというが、光GENJIの場合、光を華々しい栄光だとすると影とは何か。不仲の憶測か凝縮された活動期間か。もしそれらがあるとするならば、光と本影の他に現れる、薄いグレーの半影にすぎない。こちらから全く見えなかった漆黒の本影は、血の滲むような努力と苦労だろうか。それなくしてあのパフォーマンスは絶対に有り得ないと思うのだ。

 次に、グループ内で例えるとどうか。中期までは特に、光が当たったのは一番目立った諸星和己で自他共にその認識だろう。では他のメンバーに対して著者がどう感じていたか。(影という言い方はしないし、この本にも書かれていないことを断っておく。) 著書にはこう書いてある『あれだけ自分一人の力でやってみたいなんて思っていた自分が、あっけないくらい孤独に弱いことがわかった。俺が自信をもてたのは、他の6人のメンバーがいたからなのだということに気づいた。やつらがいなくなったとたん、俺は自分に対しての自信がなくなった。よく相乗効果などと言うが、俺たちの関係がまさにそれだったと思う。』


 さて、著者は大前提として言い訳をしないように見受けられる。全くではないにしろ、ネットニュースに対してもせいぜい「もっといい写真使ってくれよな」程度の反応となる。自分に降りかかる幸運もその逆も、栄光も批判も柔らかく受けとめる。キリがないというのもあるだろうし、愉しんでいる節もある。そして文中にある、強烈に効いたパンチだったという辰吉丈一郎さんの指摘「かあくんなあ、もっと恥をかいたらどうや」という言葉が残っているのか、恥をかいてナンボという心構えがあるのかもしれない。


 そうですかと微笑み、そうですねと笑う。話題のあの人に似ていますかと笑う。心外な話ですら反論をしない。自分は世間からそのように思われているのかと納得した面持ちで受けとめる。テレビが求める強力なインパクトを、他人を傷付けることのない曖昧な表現で盛り上げる話術でその手の番組に重宝され、こちらを楽しませてくれた。これは中々気づかれない為わかりにくいのかも知れないが、トップアイドルのキャリアと話術を合わせ持ち、且つ少し怪しげながらも怪しくない者が、他には誰ひとりいないのだ。世の中、逆は多いというのに。


 諸星和己が秘密を話す時、なんだか物凄い話を聞いたような気はすれど、核心は煙に巻かれたことに気づくだろうか。逆に、諸星和己が核心をついた時、それは笑いで覆われ見過ごされがちな事に気づくだろうか。時が経ち、素晴らしき栄光は伝説となった。しかし不名誉な憶測は真実味を帯びた噂へと変わり、独り歩きを始めた。

 目に見える真実は、当時のアイドルとして誰も到達できない高みへ上がったこと。憶測を掻き分けて見える真実は、文章と歌詞の中に見え隠れするように思う。


 さて、ジャニーズ時代の10年間を振り返ったこの本には媚びがない。エピソードには、時代の顔となった数々の先輩方が登場する。話が進むまでのジャニー喜多川氏は犬を連れたオジサンであり、同グループの先輩はもちろん内海・大沢と呼び捨てだ。トシちゃんへは『「ハッとしてグー」?「ひょっとしてパー」の間違いじゃねぇの』マッチにいたっては『なにが「ペアでそろえたスニーカー」だよ笑っちゃうよ』と自分の「しゃかりきコロンブス」を棚に上げ当時の思いそのままに記してある。そして案の定、元気の良すぎた諸星少年は先輩方から恐怖の洗礼を受けることになる。


 それが一つ一つのエピソードを読み進めるうちにどうなるか、先輩方に尊敬の念が湧き上がるのだ。要するに好きになった。田原さん、近藤さん、少年隊の皆様、かーくんの負けず嫌いが行き過ぎてご迷惑をかけたのですか、さぞかし大変だったでしょう。メンバーの皆様、代々のマネージャー様、心中お察ししますと。事務所の皆様方、デビューさせていただき見守っていただき、現在まで受け継がれる名曲を作っていただき感謝しますと。


 自伝を読みながら、周りの先輩まで気になり始めるとはどういうことだ。流行りのフレーズを借りると、著者が本の中で語る言葉、そこには愛があった。先輩方のことは一般的な範囲でしか存じ上げなかったが、斜に構えながらも語られるのは、登場人物の人となりが感じられる愛すべきエピソードだった。

 田原俊彦さんは事務所内でも絶対的なカリスマであり、しかし大好きなイチゴ牛乳に104(トシ)と書いて譲らない、部屋がぬいぐるみだらけの可愛い人で、2回のブレイクが後輩の希望となったと知った。

 近藤真彦さんは、朝まで一緒にパズルを作らされたり夜中に鈴鹿に呼び出す少年ぽさを持ちながらも、かーくんが頭が上がらない程の世話をしてくれた人だと知った。

 東山紀之さんは服も紙幣も順番に並べ寒気と共に尊敬するほど几帳面だが、ナルシストなどという言葉では片づけられない、自分自身に対する厳しさがあり見習うべき人だということだ。


 本を手にした時は、波乱万丈なエピソードや芸能界の裏事情を垣間見られる「ここだけの話」本かと思っていた。確かに知りたくはないゲンナリする話もあった。その解釈で構わないという表紙ではないか。そう思えというタイトルではないか。読者に足を向けた表紙には「青春はたるい!」という尖った一言の帯を締め完全武装である。裏返していたカバーを久しぶりに表にすれば、唯一の安心材料は「主婦と生活社」という出版社名だけだ。諸星和己が怖い人ではないとわかっているが勘違いされたら困る為、裏返したのだ。もしやこちらが試されたのか。本でしか話せないとんでもない話というよりは、本でしか真面目に話しませんの解釈が正しいのか。これだけ威嚇して「ためになるようなことは一切書いていない」と言いながら、兎もかく空疎な内容ではなかったのだ。


 栄光は夢のようにまばゆく天まで虹がかかり、まだ青かった心の内は透き通る湖にゆっくりと沈むように深く深く落ち荒む。その葛藤はどうにも切なくて胸が痛んだ。解散前のくだりは、ただ苦しい。あの若さで普通を知ることなく頂点に達し、技を磨いても歌っても後は落ちるだけの不安と隣り合わせの日々。7人が初めて腹を割って話すのがデビュー前でも後でもなく、解散の時だと気づいた時、背中に寒気が走るのを感じたという。華やかに見える裏の孤独を思うと表す言葉が見つからない。


 こうして諸星和己、いや、かーくんは20代半ばにして晴れて自分の足で立つことになった。その後は自分のやりたい事を一つ一つ紡いできたということなので、気持ちを切り替えて華麗なる波乱万丈に話を進める。明石家さんまさんに励まされ、北野たけしさんが出す宿題のようなアドバイスに頭を悩ませ、進む道を模索する。自称ジャパニーズ・マイケルジャクソンは、ニューヨークでハンバーガーひとつ上手く買えず、公園で知り合ったホームレスに英語を教わる。自分はスケートと踊りが巧いだけのただのアンチャンではと愕然とする。キングカズを訪ねてイタリアへ行きモナコ王室の王子にまで会う。美川憲一さんにお年玉をもらい、パーティーではブルース・ウィリスを遠目に追うと、マイケル・ジョーダンが登場する。テーブルの紙を丸めてパスをすると「バスケは辞めた今は野球だ」と返される。かーくんの華麗なるエピソードは突き抜けていて気持ちがよくカラリとして明るい。まるで、着いて行って別世界を見せてもらったような気分になる。


 しかし不思議だ。日本内外問わず色々な人が登場したが、特に具体的なエピソードのあったトシちゃんやマッチ、光GENJI以前を作った先輩方に親近感が湧き身近な存在になってしまった。本以外にもかーくんの口から出たエピソードを思い出すと、郷ひろみさんやザ・グッバイ(THE GOOD-BYE)、紐を持って楽しい歌を歌っている認識だったフォーリーブスさんも身近になった。遂にはジャニーズから飛び出して沢田研二さんや西城秀樹さんまでもこちらへ笑いかける。誰かの良いニュースを見れば安堵し、良くないニュースを見ればファンではなくても心配するようになってしまった。HiHi Jetsのローラースケートだって見たいのに、これでは流れに逆らっている。本当にどうしてくれようか。


 この本の中に、人への忠言は微塵もなかった。しかしそれはもう、テレビで見る姿とは真逆の、背中をさすりたくなる程の自問自答。あったのは、自分の足で立ち続ける為の決意と、未熟だった自分への壮大な反省、過去の自分とグループへの誇り、そして関わってきた人への言い尽くせない感謝だった。






















そうだ。


面白かった、と追記しなければならない。


『…それでいつもジャニーさんは、ドリフがコントで着るような、縞々のパジャマを着たままキッチンの中をウロウロしながら「缶詰がなくなってる。缶詰がなくなってる。」と騒いでいた。おかしなことに金がなくなったとき以上に騒ぐのである…』


シリアスな話を抜けば終始一貫この調子である。終始一貫この調子の間にシリアスと言った方がよいか。


思わずホロリとさせられここまで書いて今更だが、なんだか展開が変わるのは著者に倣ったということで。








2020年

光GENJI 33周年

諸星和己さん 独立25周年






記載有り (エピソード有り無し、例えや流れで出る人問わず)

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